中国語の部屋

ページ名:中国語の部屋

登録日:2010/09/02(木) 11:44:57
更新日:2023/10/03 Tue 13:45:41NEW!
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哲学 科学 人工知能 思考実験 部屋 頭の体操項目 雑学項目 中国語 工学 合成知能 機能主義 ジョン・サール チューリングテスト 空々空 中国語の部屋



ある密室があり、中には一人の男がいる。
見回すと四方平らで分厚い壁だけの部屋だが、一箇所だけ小さな穴が開いているのがわかる。
その穴からは、丸められた紙が頭を覗かせていた。
男はその紙を抜き取って目の前に広げてみたが、そこには男が見たこともない未知の記号が羅列されている。


部屋の中央にはテーブルと椅子、それから筆記具と分厚いマニュアルが一冊あった。
そのマニュアルには、男が手に持つ『未知の記号が書かれた紙』の『扱い方』が、極めて詳細に記されている。
まず、『差し入れられた紙の裏側に筆記具を使って以下の指示通りに記号を書き込み、丸めて再び穴に差し込め』とマニュアルの冒頭にはある。
以下、例えば『「○△+%&」と言う記号に対しては「▲=○×」と書き込め』などの指示がびっしりと示されていた。


ただし、どのページにも『未知の記号のそれぞれの意味』や『この行為の意味』などは一切書かれていない。
ゆえに、男は『今、自分がなにをしているのか』について知る由もない。


ただ男は、そのマニュアル通りに紙の裏側に記号を書き込み、それを穴に戻すと言う行為を黙々と続けている。
では、この時部屋の外では何が起こっていたのだろうか。
実はこの未知の記号とは中国語の漢字であり、部屋の外には中国人達が集まっていた。
中国人達は穴から返ってくる完璧な中国語の返事を目の当たりにしているので、『この部屋の中に居る人は中国語を理解している』と考えるであろう。


実際には、部屋の中の男は全く漢字の意味を理解しないまま、
ただマニュアルに従って返事を書いているだけであるにもかかわらず、である。




ここで、この密室と密室の中にいる男を、一つのコンピューターと考える。
このコンピューターは中国語に対して完璧な返答をする能力を持っているが、
中国語そのものを理解しているわけではなく、文字通り機械的に記号を処理しているだけである。


果たしてこのコンピューターを『知性を持った人工知能』と呼ぶことが出来るだろうか?




――――これが、哲学者ジョン・サールの発表した思考実験『中国語の部屋』である。
彼は知性を持った人工知能は実現不可能である、とこの問題で示そうとした。
また逆に、その意味を理解せずとも機能は成り立つ、とも示した。


人工知能の可能性については古くから重要な哲学的命題であったが、この『中国語の部屋』は、
実装された人工知能の知性の有無を判断する『チューリングテスト』を発展させたものである。


チューリングテストでは、パソコンの画面越しに一人の審判が一人の相手と文字のみのコミュニケーションを図る。
この時、画面の向こうの相手が生身の人間であるかコンピューターであるのかを見分けられなければ、
このコンピューターは人工知能として成立している、と言うわけである。


このテストに従えば、知性を持った人工知能は実現可能であり、
それどころか、『木片を打ち付けた立て板とそこを転がるビー玉』のような極めて原始的な構造をもつ『コンピューター』でも、
原理的には『知性を持ちうる』とされる。


これを否定、批判するために、上記の『中国語の部屋』は考えられたのだ。
しかし結果的に言えば、この設問にはいくつかの欠陥があった。
まず、このジョン・サールの主張に則ると、部屋中にあったマニュアルの製作者も中国語を全く理解していないことを証明しなくてはならないし、
その状態で一体どのようにしてマニュアルが製作出来るのかも考えなくてはならない。


また、例えば中の男がイギリス人で、マニュアルが英語で書かれていた場合、
もちろん中の男は英語の文章にはきちんと意味を理解した上で返答を書けるわけだが、
この時、いずれも外部から見れば完璧な『英語の返答』と『未知の記号(中国語)での返答』に、どのような機能的、
知性的差異が見られるかが具体的に説明出来ないのも、この設問の弱みであると言える。




このように、未だに人工知能の実現・実装については、哲学、工学、心理学など各方面で賛否両論の議論が巻き起こっているのが現状である。




「記号の機械的処理」ではなく、言葉を「理解している」者、追記・修正を求む。


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  • 要はこれってカンニングがばれないのと同じ事だよね……答えを丸移ししてるだけなのに良い成績を取っていると言う -- 名無しさん (2013-09-08 21:02:25)
  • 人工知能開発の大きなポイントは「自力で新たなプログラムを作れるかどうか」。この実験で例えると、部屋の中の男が未知の記号の解読を試み始めたり、マニュアルにない記号を返し始めたりすると、開発成功ということになる。 -- 名無しさん (2015-04-30 21:56:58)
  • 「1つ前のメッセージにあなたは何と返答したか?」 -- 名無しさん (2022-07-21 01:29:18)
  • (途中送信)…とか、「あなたが今日受け取ったメッセージの枚数は?」とか書いた紙が差し入れられたらどうするんだろう? -- 名無しさん (2022-07-21 01:30:57)
  • ↑マニュアルのどこにも書いてない内容が来たら「解答不能」と返せ、とマニュアルに入れておくべきだし、なかったとしてもエラーとして同様の結果になるだけでは -- 名無しさん (2023-02-08 14:32:00)
  • 「断片的にでも照合ができるまで『すまん、質問の意図が分からない。もうちょっと具体的に頼む』って返せ」とでも書いてあるんじゃないかな……それって結局理解してるってこととも、FAQでよくあるテンプレともとれるが。 -- 名無しさん (2023-05-07 14:33:49)

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