登録日:2022/03/10 Thu 08:00:06
更新日:2024/06/18 Tue 11:40:40NEW!
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菅田将暉 日本テレビ インターネット sns 誹謗中傷 教師 教室 武藤将吾 考えさせられる話 フィクションでは済まない問題 ドラマ ネットイナゴ フェイクニュース 該当日に建てられた項目 風刺 日曜ドラマ 二度とあってはならない 立てこもり 武藤将吾の本気 let's think! グッ、クルッ、パッ 3年a組-今から皆さんは、人質です- 19年冬ドラマ 3a ネットの恐ろしさがよくわかる項目 マインドボイス 言葉は刃物
Let's think!
概要
『3年A組-今から皆さんは、人質です-』とは、2019年1月6日~3月10日にかけて、日本テレビで放映されていたTVドラマ。主演は菅田将暉。
菅田氏は兼ねてより教師役を熱望しており、本作でついにその念願が叶った。
クラスの担任教師がある目的のために生徒らを教室に監禁し、その中で起こる10日間の出来事を描く。
そのため1話に付き1日経過する方式であり、話数も全10話である。
ちなみに最終話の日にちは「3月10日」の設定であり、その日は現実の放送日と重なるようになっている。
上記の内容から、当初は『悪の教典』のような「学園サイコホラー」の作風と思った人も多かったが、
その実は教師が命懸けで生徒らに物事を教える正統派の学園ドラマであり、教師は敢えて悪役を演じているだけに過ぎず、その点では『女王の教室』や『暗殺教室』に近い。
「狂人ドラマかと思って見てたら警告ドラマで肩透かしだった」と思った視聴者も多いかも知れない。
脚本は『仮面ライダービルド』や『ジョーカー 許されざる捜査官』など、数あるヒット作を手掛けた武藤将吾氏が担当。
また主演の菅田氏の出世作が特撮作品であることを反映してか、劇中ではあらゆるシーンで特撮要素が見受けられ、主人公・柊一颯が元々は特撮アクターだったり、生徒の一人が特撮オタクだったり、
更にはモブの一人が「お前の罪を数えろ」とどっかで見たことあるような決め台詞を呟く描写があったりする。
他にも、その『ビルド』に出演していたキャストの何人かが本作に出演している。
主要人物には菅田氏以外にも、椎名桔平氏や田辺誠一氏といった実力派の役者が起用されており、更に生徒役は全て厳選なオーディションを経てキャスティングされた。
故に本作が出世作となった若手役者も多い。
また菅田氏は本作の撮影にあたって10kgもの過酷な減量に挑んだという。
そうした製作陣の本作に対する熱の入れ具合も、本作の見所の一つと言えよう。
作品テーマ
教師が主人公の学園ドラマ宜しく、生徒たちが抱える悩みや弱さを教師が真っ直ぐに受け止め、それに対してアドバイスを送ったり、不徳を働いた教師との対比がされるといった展開が顕著である。
本作の特筆すべき点は、それらがインターネットを用いて表現されていることにある。
劇中で過ちを犯す人物はフェイクニュースの公開や誹謗中傷といった手段に及んでおり、それはインターネットが生活の必須ツールとなった現代社会の暗部に通ずるところがある。
更に本編ではそれが原因となって死に追いやられた人物がいることから、本作のネット問題の描写はこれでもかと言わんばかりに醜悪且つ顕著、そしてリアルであるといえる。
特に最終盤での柊の真っ当な指摘に対するネットイナゴ共の逆ギレぶりはかなり生々しい。
そのため本作はインターネットの負の側面の危険性を説いた作品と捉える人は多く、実際本作のヒットが要因の一つとなり現代日本が誹謗中傷等のインターネットの問題に関心を向けた節があるため、その見方は必ずしも間違いではない。
しかしそれは飽くまで一面的な解釈に過ぎず、主人公が物語を通して最も説きたいのは『大して考えもしない軽はずみな行動・言動(特に攻撃的なもの)は時に人の命を奪い兼ねない』ことである。
上記で記した過ちを犯した人物たちは、全てに於いて自らの私的感情の発散を優先して『考える』、『想像力を働かす』といったことをせず闇雲に愚挙に及んでおり、物語の発端となったとある女子生徒の死もそのようなことがあれば起こり得なかったことが明示されている。
例えば、第8話では"とある人物"のフェイクニュースが出回った際に、真偽も確かめずそれを真に受けてその人物を誹謗中傷して快楽に浸るSNSユーザーと、
連日の主人公の授業により「考える重要性」を学んだことで、その情報を疑い真実を解き明かし、且つそれを直ぐにネットに公開せずどうするか「考える」ことを選択した生徒たちが対比構造となるシーンがある。
故に本作で描かれる誹謗中傷は『考えること』が出来なかった者が犯した結果の一つと捉えるのがより正確である。
インターネットが主流となり様々な情報が飛び交うようになり、
人々が真偽も確かめず「考えぬまま」安易に情報を鵜呑みにしたり発信してしまうことが珍しくなくなった現代社会に於いて、
本作はその傾向にメスを入れる試みで製作されたと言えるだろう。
ストーリー
3月1日、私立・魁皇高校「3年A組」の生徒たち29人は卒業を目前に控えていた。
教室に担任教師の柊一颯が入室し朝のHRが始まると、彼は生徒たちに向けて唐突にこう告げる。
「今から皆さんには、人質になってもらいます」
その直後、クラスの周辺で爆発が起こり廊下が瓦礫で塞がれ、3-Aの生徒たちは教室に閉じ込められてしまった。
実はこのクラスには景山澪奈という女子生徒が在籍していたのだが、半年前に在らぬ疑いをかけられた末に自殺するという悲劇が起こっていたのである。
柊はそんな彼女が何故若くして自ら命を絶たなければならなかったのか、その真相を生徒たち、そして世間に明るみにするために立てこもりを決行したのである。
教師が生徒らを人質に教室に立てこもるという衝撃的な事件は瞬く間に世間の関心を掻っ攫い、SNS上でも大盛り上がりとなる。
生徒らは自分らが人質にされたことに動揺し、疑心暗鬼となり互いを罵り合うことがありながらも、立て篭もりの10日間に行われる柊の「授業」を通して澪奈の死の真相が明らかになるに従って、自らの過ちと愚かさを思い知りながら成長していく。
登場人物
魁皇高校
演:菅田将暉
「お前の他愛もない言葉一つで!簡単に!命を奪えるってことを忘れるな!!」
本作の主人公。3年A組の担任教師で担当科目は美術。年齢は27歳。
「ブッキー」という愛称で呼ばれているなど、生徒らとの関係は良好。
しかし卒業式が目前に迫った3月1日に半年前に自殺した澪奈の死の真相を生徒たち、そして世間に思い知らせるために教室の周辺を爆破して3-Aの生徒たちを閉じ込め立てこもり事件を引き起こし、その様子をSNSで中継する。
計画のために生徒らを脅しつけるなどしているが、実際は生徒のことを第一に考える教師の鑑と言える人格者。
劇中では生徒が抱えている悩みを真摯に受け止め、それにアドバイスを送ったり、『想像力を働かせる重要性』『言葉の暴力の危険性』『恥をかかずには強くなれない』といった「授業」に於いて重要な教訓を生徒たちに説いた。
- 茅野さくら
演:永野芽郁
「あんた達に何がわかるの!?澪奈の何がわかるの!?」
3-Aの女子生徒の一人。クラスの学級委員長。内気で陰気、かつ引っ込み思案なコミュ障気味の性格。それ故に他の生徒たちとの仲はあまり芳しくなく、面倒事を押し付けられがちである。
実は学級委員長を務めているのも自ら志願した訳ではなく、学年初めのクラス会で周囲から半ば強引に押し付けられたためであった。
生前の澪奈とは親しく、共に下校したり試合に応援に行ったりと仲睦まじい関係だったが、彼女のドーピング疑惑が話題になった際には澪奈自身から「やっぱりあなたとは友達になれない」という内容の手紙を受け取ったことで距離を置くようになる。
しかしその手紙の文字が涙で滲んでいた痕跡があることから、それは彼女自身がさくらにまで危害が及ばないようにするために泣く泣く書いたことを察していたために、彼女の死に対してはかなり責任を感じていた。
故に柊の立てこもり事件の最中に行われる「授業」にはクラスの中で一番熱心に取り組んでおり、初日には「なぜ澪奈が自殺したか」を考える議題に対して他のクラスメイトが他に責任転嫁する中「彼女の本心を知りながら他と同じく距離を置いた自分の所為だ」と一人だけ澪奈の死と真剣に向き合った行動を示していた。
なお、重度のプロレスマニアという一面があるのだが、物事を何にでもプロレスでたとえようとしてしまう傾向がある。
無論澪奈を含めてその話についてこれる人物は誰一人としていないのだが、当の本人はそれを逆に不思議がるほどの重症である。周囲から疎まれる原因ってこれじゃあ…
そんな彼女には更なる秘密があり…
「殺したの…私が澪奈を殺したの…」
実はさくらは澪奈が自殺するその日、現場となった廃ビルの屋上に彼女を呼び寄せていたのである。
目的は澪奈に「自分はいつまでも味方だから一緒に闘う、だから生きて欲しい」と説得するためであった。
しかし彼女はそんなさくらの懇願が励みにならないほどこの時点で精神的に衰弱しきっており、彼女の目の前で柵を乗り越えて飛び降りてしまう。
寸前のところでさくらは澪奈の手を掴み引き上げようとしたものの、彼女一人の力ではそれができるはずもなく、やがてさくらの手から澪奈は滑り落ち、虚しくもさくらの「澪奈に生きて欲しい」という願いは儚く散ってしまった。
無論この出来事は彼女にとって激しいトラウマとなり、更には「自分が澪奈を殺したも同然」とまで思い込むようになってしまった*1。
このことからわかるように、立て篭もり初日に述べていた「澪奈の手紙をもらったことで彼女と距離を置き、見て見ぬ振りをしていた」という証言は嘘であり、
むしろさくらは自身にまで及ぶかもしれない危害を顧みず、澪奈を謂れのないバッシングから救おうと尽力していたのである。
柊の授業に人一倍熱心に取り組んでいたのは、この悲惨極まりない経緯があるためであった。
しかし立て篭もり10日目(最終日)の朝、柊がライブを終了した後に校舎の屋上から身を投げようとした際、他の生徒たちと共に彼を救出する。
その身を挺した行動は上記のように澪奈が不当なバッシングを受けていた際に彼女を救おうと尽力した自身のために行ったことだと明かされ、彼から「もうお前は自分を責めなくていい」と労われたことに感謝し号泣した。
事件が収束して数年後、旧3-Aの教室で行われた同窓会に参加した際は、会が終わった後も一人教室に残り、事件後に持病で他界した柊の遺影に向けて「あの10日間は私にとって青春でした」と感謝を伝えた。
- 景山澪奈
演:上白石萌歌
「私はドーピングなんてやってない」
半年前まで3-Aに在籍していた女子生徒。
水泳部に所属しており、オリンピック出場が期待されていた程の実力を持つ選手で、容姿端麗さもあり世間ではアイドル並みの人気と知名度を有していた。
しかしある時、自身がドーピングをしている様子が映された動画がSNSで広まったことで周囲から嫌がらせやバッシングを受けるようになる。
本人は終始無実を主張していたが、最終的にはとある廃ビルから飛び降り自殺してしまった。
彼女の主張通り実際にドーピングには一切手を出しておらず、動画は自身が服用していたサプリメントの瓶のラベルを加工したフェイク動画であった。
自身の才覚と名声を一切鼻に掛けることはなく、周囲から疎んじられていたさくらと交友したり*2、表向きは理不尽に水泳部を退部させられてしまった涼音を部員の中で一人だけ彼女に寄り添い気を遣うなど、誰に対しても分け隔てなく好意的に接する優女の少女であった。
しかし彼女のその姿は、挫折や複雑な境遇などで心に弱さを抱えていた者たちに嫉妬心を抱かせてしまい、結果それが皮肉にも事件が起こる一因に繋がることになった。
澪奈の自殺は生前彼女から相談を受けていた柊の立て篭もり計画決行の動機となり、その10日間を通して当時の澪奈の苦悩が徐々に明らかにされるにつれ、生徒たちは自分らの過ちと愚かさを悟り改心する。
そして彼女の死の真相は…
「皆が敵に見えて…そんな風に思う自分が嫌で堪らなく嫌で…だから…もう無理なんだ…」
澪奈を自殺に追い込んだ真の要因は、フェイク動画で在らぬ疑いをかけられたことではなく、それが流出したことを発端に始まった彼女への誹謗中傷であった。
劇中の主要SNSである「マインドボイス」のユーザー数は国内で約5千万人規模。それだけの人数から罵詈雑言を浴びせられるとなれば、その人の精神的ダメージは計り知れぬことは間違いない。
当然澪奈も日夜浴びせられる謂れのないバッシングによって日に日に精神的に追い詰められることになり、ついにはその声が幻聴となって聴こえてくるようになっていた。
こうなれば、彼女が嫌でも自殺したくなってしまうのも頷けるだろう。正にネット社会の負の側面が引き起こした悲劇であったと言える。
また澪奈の自殺現場が廃ビルになったのは、その場所にさくらに誘い出されたためであった。
その廃ビルの屋上は2人が連んだ際に良く共に過ごしていた場所であり、さくらはそこで「自分はいつまでも澪奈の味方だから生きて欲しい」と彼女に伝える。
しかし上記の通りこの時点での澪奈の精神状態ではさくらのその説得が励みになることはなく、よりにもよって彼女の目の前で限界が訪れそのまま身を投げてしまった。
澪奈という親友の死を目の当たりにしたさくらのショックは凄まじく、尽力叶わず彼女を救うことが出来なかったことも相俟って、さくらは「自分が澪奈を殺したも同然」と思い込む程自責の念を抱くことになってしまった。
- 宇佐美香帆
演:川栄李奈
「なにそれ?それじゃまるでうちらが自殺の引き金を引いたみたいじゃん」
3-Aの女子生徒の一人。
生前の澪奈の友人の一人で、彼女の活躍を率直に喜んでいた。
しかし澪奈がさくらと過ごすことが多くなったのを機に彼女に不信感を覚え、澪奈のドーピング疑惑が世間で話題になった際には彼女に軽蔑の眼差しを向けていた。
柊が立て篭もりを決行した際には、他のクラスメイトと同じく激しく動揺し情緒不安定になり、1日目の「澪奈が何故死に追いやられたか」という課題に対しても知らん顔をして責任転嫁をしたりと、自分本位で無責任な面が目立つ。
そして立てこもり2日目には…
「私が『やり逃げX』でーす」
澪奈のフェイク動画をSNSに投稿したアカウント、「やり逃げX」の主。
上記のように彼女は澪奈が自分を差し置いてさくらと連み始めたことで、澪奈が自分を蔑ろにしていると思い込み彼女に一方的な憎悪を抱くようになった。
そして澪奈の競泳水着をハサミで切り刻んだり、彼女の家に石を投げ込んだり、1日中澪奈に付き纏ったりと、数々の悪質な嫌がらせを彼女に行っては、その様子を「やり逃げX」のアカウントに投稿するという愚挙に及んでいた。
無論澪奈のフェイク動画を投稿したのも、嫌がらせ目的である。
ただしフェイク動画自体はある日自身の鞄にいつの間にか忍ばされていたDVDからダウンロードしただけに過ぎず、本人は作成そのものには一切関与していなかった。
正体を自供した後、上記の辛い心境を吐露するが、柊から「お前に足りなかったものは『想像力』だ」と説かれ、そしてさくらから自身がプレゼントしたお揃いのハンカチを澪奈がいつまでも大事に持っていたことを話され、彼女が自身を大切な友人の一人と思っていたことを打ち明けられ、自らの愚かさを思い知り、その場で泣き崩れた。
- 里見海斗
演:鈴木仁
「なんでアンタにそんなことがわかるんだよ!」
3-Aの男子生徒の一人。クラスの陽キャグループの一人で、生徒たちとの仲も良く、特に甲斐とは共に連むことが多い。
柊が立て篭もりを決行した際、他のクラスメイトが動揺しパニックになる中、隙を見て逃走を図るよう提案するなど、冷静に立ち振る舞う傾向にある。
ただし人質となったことに焦りがあるのは本人も同じなようで、柊に対して怒りを露わにしたり、初日の「澪奈が自殺に追い込まれた理由」に関する課題に対しても、さくら以外のメンバーと同じく真剣に取り組まなかった。
そして立てこもり3日目には…
「俺はアイツに傷付けられた…だから傷付けようとした…」
澪奈のフェイク動画の元となった動画を撮影した張本人。
実はかつて彼女に好意を抱いており、意を決してその想いを本人に伝えたが、残念ながらそれは叶わぬ結果に終わった。
そうして傷心に苛まれていたある日の夜、繁華街を歩いていたところ背後から“何者か”に嫌がらせ目的で澪奈に関する動画を撮影するよう唆され、それに乗っかる。
そして彼女が出場した水泳大会の会場の更衣室に忍び込み、ロッカーから澪奈がサプリメントを飲む様子を隠し撮りした後、その動画を上記の依頼者に提供した。
但し本人は飽くまでフェイク動画の元となった動画を撮影しただけであり、それがドーピングをしているように加工されて世に出回ることは想定していなかったという。
無論自身のその行動は澪奈が陥れられるのに繋がることは察していたため、悪意があったことには変わりない。
罪が露呈した後、柊から郡司や真壁のように「逆境を乗り越え明日の活力に変えなかった」ことを指摘され自身の不甲斐なさを思い知り、自らの過ちを悔いた。
- 甲斐隼人
演:片寄涼太
「あいつは自殺したんだ、俺たちには関係ねぇ」
3-Aの男子生徒の一人。クラスの陽キャグループの中心的存在。地元のストリートダンスグループに所属し全国大会出場を目指していたが、とある理由から現在は脱退している。
柊が立て篭もりを決行した際、真っ先に反抗して彼に殴りかかるも返り討ちに遭い、隠し持っていたバタフライナイフ を没収された。
澪奈の死に関しては、他の生徒たちと同じく知らん顔をしていたが、立て篭もり初日に澪奈に対して「あんな奴死んで当然だったんだよ」という暴言がさくらの怒りを買い、彼女から飛び蹴りを喰らわされた。
そして立てこもり4日目には…
「景山が憎いんだろ?奴の動画を撮ってこい。盗撮でもなんでもいい、後はこっちで上手くやってやる」
澪奈のフェイク動画の元となる動画の撮影を里見に依頼し、宇佐美のスクールバッグにフェイク動画が焼きつけられたディスクを忍ばせた張本人。
実は彼は澪奈のフェイク動画の作成の依頼を受けていた半グレ組織「ベルムズ」に“あること”を理由に脅迫を受けていた。
澪奈の生前、ある日所属していたダンスグループのメンバーの一人から彼女に会わせてほしいと頼まれ、澪奈と共にその待ち合わせ場所に出向く。
するとそこへ一台のワゴン車が現れると、複数人の男たちが彼女を連れ去ろうとしたのである。
実は甲斐に澪奈と会わせるよう依頼したそのメンバーは「ベルムズ」の構成員の一人であり、真の目的は無論彼女を誘拐し乱暴するためであった。
これを目にした彼は、危険を顧みず澪奈を何とか逃して助けることには成功するも、これによって傷害事件として警察沙汰になることになった。
この事件によってベルムズのリーダー格である喜志から目を付けられてしまい、彼から大切な家族を人質に取られたことで、フェイク動画の作成に加担してしまったのである。
また要求を呑んだ理由はもう一つあり、それは彼自身の澪奈に対する個人的な嫉妬心もあった。
甲斐の家庭は母子家庭であり、1年前に母が交通事故に遭い寝たきりとなってからは一人で幼い弟妹たちの面倒を見たり、アルバイトをこなして家計を支えていた。
ダンスグループを離脱したのはそのためであり、それ故自身とは対照的に純粋に夢を追い成功を収めつつあった澪奈を内心羨ましく思っていた。
喜志の脅しに屈したのは、そんな彼女に対する嫉妬心故の恨みや、報酬として大金をちらつかされたためでもあったのである。
自身の罪と心情を自供した後、柊から一人で抱え込まず他者を頼りにしなかったことを指摘され、ダンスグループのメンバーである石倉からは「弟妹たちは自分たちが面倒を見るから心配はいらない」と説得され、自らの至らなさ、愚かさを恥じる。
そして柊から自分に動画の入手を依頼したのは誰か尋ねられ、彼を信頼した甲斐はそれが喜志だと明かす。それによって喜志は警察に逮捕され、家族も危害を受けず事なきを得た。
- 諏訪唯月
演:今田美桜
「でも澪奈が自殺した原因って言われてもねぇ…元々心を開くキャラじゃなかったし」
3-Aの女子生徒の一人。勝ち気で高飛車な性格。
クラスでは最も性悪な振る舞いが多く、柊が立て篭もりを決行した際には特にあからさまに不機嫌な態度が目立っていた。
他の生徒と同じく澪奈の死に関しては知らん顔をしており、その責任を彼女本人のせいにするなど、無責任な面を見せる。
ファッションモデル志望で、大手芸能事務所に所属しているらしく、読モとして活動している一面がある。
ベルムズのリーダー格が逮捕された際はなにやら動揺していたが…
「間違ってることくらいわかってる…でも私はこうやって生きてきたから…こうやって生きるしかなかったから!」
実はベルムズのリーダー格である喜志と交際しており、大手事務所に所属できたのは彼の影響力の賜物であった。
しかしながら実力でオーディションに合格できたわけではない*3ことに内心負い目を感じていたようだが、それでも成功を掴みかけているために引くに引けなくなっていた模様。
そのため純粋に実力で世間から認められていた澪奈には嫉妬心を抱いていた。
立てこもり4日目の夜にその事実が判明しそれを他の生徒たちから責められるも、上記の台詞のように内心は間違いと悟りつつも自分はこうするしかないと弁明する。
しかし柊からは「お前は間違っていない」「みんなみっともない。だがそれがいい、それでいい。恥をかかずには強くなれると思うな」と自身の行動を肯定され励まされたことに感極まり涙を流す。
澪奈のフェイク動画の一件には特に関与していなかったが、喜志からプレゼントされたペンダントの中にはフェイク動画の顧客リストのデータが入ったマイクロチップが入っており、上記のやり取りの後、それを机に叩きつけて破壊しチップを取り出す。
それによって澪奈のフェイク動画の依頼者が魁皇高校の教師であることが判明し、手がかり獲得に一役買った。
8日目には自由時間により柊から一旦返却された携帯電話から喜志に電話を掛け、澪奈のフェイク動画の作成に自身を関わらせなかったこと、そして今まで世話になったことへの礼を述べ、別れを告げた。
このことから、喜志とはビジネスライクな関係ではなく、互いに慕情を抱いていた真剣交際だったと思われる。
- 水越涼音
演:福原遥
「なんで私から水泳を取り上げたの?私は水泳が好きだった…」
3-Aの女子生徒の一人。
同クラスの中尾とは恋愛関係にあり、彼が立て篭もり初日に「澪奈の自殺の要因を考える」という課題をクリアできなかった生贄として柊に殺害されたと思われていた際には酷く悲しみ、唯一答えを出したさくらには「許さない、あんたが答えを外さなかったら蓮は死なずに済んだ」と怨み節を述べていた*4。
これ以降極限状況に置かれたこともあり精神的に荒んだ面が目立ち、4日目にはクラスの女子生徒の一人である小宮山愛華(演:日比美恩)と共に魚住の体臭を侮辱していた。
実は彼女はかつて水泳部に所属しており、部員の中でも一際熱心に練習に打ち込んでいた。
しかしある日、顧問の坪井から中尾との関係を理由に部を強引に辞めさせられるというあまりに理不尽な仕打ちを受け、以降は彼を憎悪するようになっている。
そのことから、立てこもり6日目に「ベルムズにフェイク動画の作成を依頼した魁皇高校の教師は誰か」という議題で坪井が候補に挙がった際には真っ先に彼を星と決めつけ、更には柊の目を盗んで自身が坪井に受けた仕打ちを告発する動画を撮影してSNSに投稿しようとする。
その日の夜、3-Aの生徒がオンラインで外に居る柊以外の魁皇高校の教師たちと対面した際、先陣を切って坪井を問い詰め、同時に自身が今まで抱いていた恨み辛みを彼に突きつける。
そして彼女が水泳部を辞めさせられた真相は…
「狡いよ…何で今更…そんなのないよ…」
本人は気づいていなかったが、実は水越は日頃の過度な練習が原因で発症した心臓疾患を患っていた*5。
無論その疾患を抱えたまま練習を続行するなど自殺行為でしかないのだが、誰よりも練習に取り組んでいた彼女が病気を理由に競技を離れるというのは酷であるのは言うまでもなく、下手をすれば本人がその事実に納得せず強引にでも練習に出てしまうことさえも考えられた。
そのため坪井が水越に告げた理不尽な退部勧告は、彼女を競技から無理矢理にでも離れさせるための苦肉の策だったのである。
真相が彼の口から告げられた後、何も知らぬまま安易に坪井に関する告発動画をSNSに投稿してしまったことを激しく後悔するが、柊が手を打って事前にそれを阻止していたことを知り安堵する。
しかし軽率な行動で他者を陥れようとした水越の愚挙に柊は無論激怒し、上記のやり取りの後何度も彼女を突き飛ばした挙句胸ぐらを掴んでは壁に叩きつけ、その行いに対して激しく怒鳴り散らされることになった。
このシーンは柊演じる菅田氏の鬼気迫る熱演もありかなり緊迫した描写となっており、本作の中でも取り分け印象的なシーンとなっている。
水越役の福原氏も、このシーンを撮影した際にはあまりのリアルさに、本番の際も内心本気でたじろいでいたという。
- 中尾蓮
演:三船海斗
「何すんだよ!離せ!離せよ!」
3-Aの男子生徒の一人。クラスの陽キャグループの一人で、同クラスの涼音とは恋人同士。
柊が立てこもりを決行した際には、他のクラスメイトと同じく動揺して疑心暗鬼となり、彼が提示した課題にも本気で取り組もうとしなかった。
初日には、結局答えを出せなかったことで柊の最初の生贄に選ばれてしまい、彼に失神させられた上で胸にバタフライナイフを突き刺されてしまう。
しかしその後…
「いや、先生に黙って待っているように言われたからさ」
上記の殺害は柊の偽装で本当は死亡しておらず、立て篭もり4日目の夜には柊が気を失ったことで生徒たちの前に姿を表す。
実は立て篭もり2日目に柊が警察に30人分の食料を要求していたことから、この際に彼の生存の伏線が張られていた。
クラスメイトたちと再会するまでの数日間、柊の姿を目の当たりにしたことで彼の真意を悟ったらしく、脱出を図ろうとする3-Aの生徒たちに残ろうと提案し、以降も柊に協力的な姿勢を見せた。
- 堀部瑠奈
演:森七菜
「最悪深夜アニメまでには帰りたいなぁ…」
3-Aの女子生徒の一人。電脳部所属でプログラミングが得意な他、特撮やアニメも好き。あと、かわいい。
柊が立て篭もりを決行した際には、他の生徒と違い悪態こそついてはいなかったものの、上記のようにその日の深夜に放送されるアニメを鑑賞出来るかどうかの心配をするなど呑気な面を見せ、無論同日に柊が出した課題にも全く取り組んでいなかった。
3日目の夜には澪奈のフェイク動画の元となった動画を撮影した犯人が名乗り出なかったペナルティとして、その日犠牲となる5人のうちの1人に選ばれてしまう。
しかしその翌日には…
「見て見ぬ振りしたあの時を、そうすごく、すごく悔やんでる。でも景山さんの時と今回は違う。だからもっと、もっとちゃんと考えよ」
殺害は柊の偽装であり、4日目の夜に柊が気を失ったことで他の5人と共にクラスメイトの前に姿を現す。
8日目には武智が澪奈を殺害したと思われる動画を疑問に思い、同じく電脳部所属の西崎と共に解析した結果、それがフェイクだったことを突き止めクラスメイトたちにそのことを告げる。
実は澪奈のフェイク動画が出回った当時、動画がフェイクだと西崎と共に見抜いていたが、自分たちも動画の拡散に加担していたことで気が引けてしまい、本物の動画を公開することなく結局見て見ぬふりをしてしまっていた。
そして澪奈の二の舞にならないよう柊のフェイク動画をSNSにアップロードしようとした西崎の行動を身を挺して阻止。
その日柊に教わった「グッ、クルッ、パッ」の法則できちんと考えようと説得し、彼を思い留まらせた。
その後、郡司との戦闘で柊の助太刀に参上したガルムフェニックス、ことファイター田中を画面越しで目撃した際には「ガルムフェニックスだ〜(嬉)」と一人興奮していた。流石オタク。
翌日、現場を去る田中と最後に握手を交わした後、「何故助けに来たのか?」という西崎の問いに対して、あまりにカッコ良すぎる返答を示したことに感極まり「やばい、どちゃくそ惚れる…」と感激した。流石オタク。あと、かわいい。
- 瀬尾雄大
演:望月歩
「ブッキーが来ないか廊下で見張ってろ!」
3-Aの男子生徒の一人。陸上部所属。
柊が立てこもり計画を実行した際には、他の生徒たち共々動揺し、悪態はついていないが当初は初日に里見の提案に乗って皆と脱出を図ろうとするなど、授業に取り組む姿勢を見せなかった。
武智の推薦により豪翔大学への入学が内定しており、その話を受けたのは実力が伸び悩みスポーツ推薦を貰える見込みが薄くなりつつあった最中だったこともあり、同じく推薦を受けた魚住と共に大いに喜んでいた。
立てこもり3日目にはフェイク動画の元となる動画を撮影した犯人が名乗り出なかったペナルティとして、その日犠牲となる5人の一人に選ばれてしまう。
しかしその翌日…
「知らねえよ…目の前のことに一杯一杯で考えたこともねぇよ…」
殺害は柊の偽装であり、彼が気を失った際には他の生徒たちの前に姿を表した。
立てこもり7日目では、武智がベルムズに澪奈のフェイク動画の作成依頼をした犯人と目されたことで推薦が取り消される恐れが出たことから、他の叛意を抱いていた一部の生徒たちと共に柊を襲撃する。
実は武智の推薦によって豪翔大学に入学した生徒の大半が1年以内に挫折してしまう実態を事前に知ってはいたのだが、それでも苦労の果てに巡ってきたチャンスに変わりはないことから、何がなんでもそれを手放したくはなかったのである。
甲斐たちによって結局襲撃は失敗に終わり、柊からは「お前のゴールはどこだ?スポーツ推薦で大学に入ることか?それとも大学を卒業して選手を続けることか?」と問われるも、彼はそれに対して上記の苦境を吐露するだけだった。
しかし同日の夜、武智は自身の不正が明るみに出たことで生徒を道具としか見ない醜悪な本性を露わにし、一方の柊はそんな彼を罵倒して生徒たちを人として寄り添う姿勢を見せた光景を目の当たりにしたことで心境が変化。
そしてさくらから「きっと今こそ明日の活力に変える時なんじゃないかな?」と投げかけられ、魚住から「瀬尾ならできる」と言葉をもらうと彼も「お前もな」と返し、互いを励まし合った。
この一件で推薦は残念ながら取り消されてしまったと思われるが、上記のように武智の推薦で豪翔大学に入学した学生の大半がハードな練習についてこれず途中で脱落するという有様を考えると、その年に進学できなかったのはある意味では幸運だったのかもしれない。
- 魚住華
演:富田望生
「全然話についていけないんだけど…」
3-Aの女子生徒の一人。柔道部所属。
柊が立てこもり計画実行の最中は他の生徒らと同じく動揺し怯えた素振りを見せるも、体得した柔術と屈強な体格故にクラス屈指の怪力を誇り、立てこもり4日目には固く閉ざされていた美術準備室のドアを体当たりでブチ破るという活躍を見せた。
その同日には須永が自身の体臭を指摘し揶揄してきた水越と小宮山を咎めたことで彼に好意を抱くようになり、上記で怪力技によりドアをこじ開けた際に須永から「ビーストだなお前」と評された際には「"ビースト"ってどんな意味だっけ?"ビューティ"の最上級?」と捉えてしまうお茶目さを見せた。
武智の推薦により豪翔大学への進学が内定しており、その話を上記の瀬尾と共に受けた際には彼と一緒に喜んでいた*6。
立てこもり7日目では…
「また次があるなんて簡単に言わないでよ…」
瀬尾が推薦取り消しを危ぶんだことで柊を襲撃した際に、それを非難し「今回はしょうがねぇだろ、お前ならまた次があるって」と告げた須永に対して、瀬尾が高校3年間必死で部活動に取り組んできた様を知っていたことから上記の反論をし、彼を擁護した。
その後柊が武智の不正を暴いたことで残念ながら豪翔大学への入学は取り消されてしまったと思われるものの、武智の醜態と柊と誠意ある姿勢に心を打たれたことで瀬尾と将来を誓い励まし合った。
ちなみに彼女は瀬尾と異なり、武智の推薦で豪翔大学に入学した学生の大半は途中でリタイアしているという実態を把握していなかった模様。
これを考えれば推薦が取り消されたのはある意味幸運だったと言える。
そして事件から数年後に開催された3-Aメンバーの同窓会では、
なんと須永と交際していることを公言し、一同と我々視聴者を驚愕させた。
更に驚きなのは両者が交際に至った経緯であり、なんと彼女は事件以降計11回も彼に想いを告げては断られ続け、12回目に豪雨の中須永を背負い投げして「私には須永くんしかいないの」と断言し、ついに彼が折れたという*7。
乙女心というはなんとも凄まじいものである…。
- 須永賢
演:古川毅
「うるせぇな!風呂に入ってねぇのは皆んな一緒だろ!」
3-Aの男子生徒の一人。クラスの陽キャグループの一人。
人質となった際には他の生徒と同じく動揺していたが、4日目には極限状況に陥ったことによる反動で華の体臭を侮辱し出した水越と小宮山を注意したり、同日夜に柊を襲撃した生徒たちの静止に加担し、その筆頭となった生徒を咎めたりと、比較的良識的な面が目立つ。
尚、華からは上記の一件で結果的に庇ったことから、それ以降彼女に好意を寄せられるようになっている。
そして数年後の同窓会では…
「まぁ愛するより愛される方が幸せになれると思って」
事件収束以降、華から計11回もの告白を受け、その都度断り続けるも12回に彼女の根気強さに遂に根負けし、華と交際することとなった。
2人の交際はクラスメイトたちと我々視聴者にとってかなり予想外だったらしく、この件を同窓会で明らかにした際には一同驚愕していた。
尤も、本人としては上記のように「愛される方が幸せ」と思っているようであり、結果オーライであると言える。
- 西崎颯真
演:今井悠貴
「昨日買ってもらったんだ!だから先生も知らないはず!」
3-Aの男子生徒の一人。電脳部所属。
柊が立てこもりを起こした際には他の生徒共々大いに動揺する。
初日にクラスメイト全員のスマホ等の電子機器が柊に没収された際には、事件発生のつい前日に親からタブレット端末を購入して貰っていたことで彼からそれの所有を把握されていなかったことから、そのタブレット端末で助けを呼ぼうとするも、その時に柊から盗聴によって気づかれたことで失敗に終わった。
3日目には澪奈のフェイク動画の元となった動画を撮影した犯人が名乗り出なかったペナルティとして、その日犠牲となる5人の生徒の一人に選ばれてしまう。
しかし翌日…
「景山の時みたいに何もしないで後悔したくないんだよ!」
殺害は柊の偽装であり、翌日の夜、彼が気を失ったことで生徒たちの前に姿を現した。
立てこもりを8日目には武智が澪奈と一緒に行動している動画を同じく電脳部所属の瑠奈と共に不審に思い解析した結果、動画がフェイクであることを突き止め、それをSNSにアップロードしようと考える。
実は澪奈のドーピング疑惑が話題になった当時、発端の動画がフェイクであることを瑠奈と共に突き止めていたものの、自身らもまたフェイク動画の拡散に関わっていたことで気が引けてしまい、結局見て見ぬふりを決め込んでしまっていたのである。
そのことから、澪奈と同じような後悔をしたくないと柊のフェイク動画をいざSNSに投稿しようとしたその時、瑠奈が身を挺してそれを阻止し、彼女からその日柊から教わった「グッ、クルッ、パッ」の理論を説かれ投稿を思い留まった。
翌日の朝、柊の助太刀に駆けつけたファイター田中に「なぜ助けに来たのか?」と尋ねると、彼があまりにカッコよすぎる返答をしたことに感極まり、「ヒーローってかっこいい…」と呟き、側にいた瑠奈からは「目覚めちゃった?」と指摘された。
そして事件から数年後に開催された旧3-Aメンバーの同窓会では、ファイター田中に弟子入りして特撮アクターを目指していることが判明した。
- 真壁翔
演:神尾楓珠
「だったら、外にいる先生に助けを求めてみるとか?」
3-Aの男子生徒の一人。水泳部のマネージャーで、故に生前の澪奈とも交流があった。
柊が立てこもりを決行した際は、他の生徒たちと同じく大いに動揺する反面、上記のように中から窓を通して外部へ助けを呼ぶこてあをクラスメイトたちに提案するなど、極限状況下でも他者を気遣う面がある。
同クラスで水泳部所属の熊沢華恋(演:堀田真由)とは幼馴染で、彼女からはヘタレ呼ばわりされている一方、同時に好意を寄せられている節もある。
彼がマネージャーを務めている理由は…
「大丈夫なわけないだろ…もう泳げないんだから…」
彼はかつて水泳部の選手であり、澪奈、華恋と共に全国大会出場を目指し意気込んでいた。
しかしある日、澪奈の悪質なファンたちから一方的な因縁をつけられ暴行を受け、その際に負った怪我により選手生命を絶たれてしまう。
当然本人の落胆は凄まじく、入院の最中見舞いに来た華恋やさくらに八つ当たりをしてしまう程自暴自棄になったりもしたが、さくらの提案でマネジャーとして部に貢献することを決意した。
そのため彼はさくらに感謝しており、無論彼女を疎んずることもしていない。
事件終結直後に美術準備室で行われた3-Aの生徒限定の卒業式では、自身の番の際に澪奈に対する恋慕を柊に打ち明けた。
- 逢沢博己
演:萩原利久
「先生が爆破させたんですか?」
3-Aの男子生徒の一人。美術部所属で、故に3-Aの生徒の中では柊と最も近しい間柄。
澪奈の生前は彼女のドキュメンタリーを撮影し一作の映画にしようと計画していた。
そのため何かと澪奈のことを気にかけていたようで、彼女のフェイク動画が出回った際もドーピング疑惑を信じず、さくらと一緒に澪奈の自宅を訪ねるなど、彼女の身を案じていた。
クラスの中では特に目立った活躍を見せなかったが…
「皆ここから出ようか?さもないと爆破する」
柊の立て篭もり計画の協力者の一人。
立て篭もり3日目に「内通者」として郡司とコンタクトを取っていたのも彼である。
協力の動機は無論澪奈の死に報いたいためであり、計画の最中柊が気を失った場合は代わりにそれを遂行する手筈になっていた。
ただし、彼自身も計画の全てを把握しているわけではなかったらしく、6日目に魁皇高校の教師たちに「自分がフェイク動画の依頼者だと名乗り出ない場合は教室を爆破する」と宣言した際には動揺していた。
事件収束から数年後に行われた同窓会には、完成した澪奈のフェイク動画を旧3-Aメンバーたちに披露した。
- 武智大和
演:田辺誠一
「あ、バレちゃいましたか?そうです!私が平成最後のカリスマ熱血教師!『武智大和』です☆」
魁皇高校に勤務する教師の一人。
しかしながら上記のように自身を「平成最後のカリスマ熱血教師」と自称してしまうナルシストさが鼻につく問題のある性格であり、周囲からは教師、生徒問わず内心鬱陶しがられている。
また教師の傍らタレント活動にも精を出しており、頻繁にTV出演していることから、世間からの知名度も得ている。
柊が立て篭もり事件を起こした際には、表面上は彼の暴挙を非難し人質となった3-Aの生徒たちを心配する素振りを見せていたが、
内心ではこの機会に乗じて名声を更に得ようと企んでいる節があり、事件の最中もタレント活動を優先して現場でTV番組の収録をするなど、自己顕示が目に余る行動を見せる。
劇中の大学である「豪翔大学」とコネクションがあり、自身が見込んだ幾人の生徒を同大学へ毎年推薦入学させているようで、生前の澪奈にも声をかけていた。
その本性は…
「結果が出ずに辞めたやつのことなんか知るか!勝ち続けなきゃ次がない!それがこの世の中だろ!?商品価値のないやつに用はないんだよ!!」
澪奈のフェイク動画の作成を半グレグループ「ベルムズ」に依頼した犯人。
その動機は、彼女が自身の不正を知ったことへの報復であった。
実は彼が生徒たちを豪翔大学へ推薦入学させていた目的は、同大学の理事長から多額の報酬を受け取るためであり、生徒たちはそのための道具に過ぎなかったのである。
更に武智の推薦で豪翔大学に入学した学生の大半は、大学から課される過酷な練習内容に着いていけず、結果なんの成果も上げられないまま1年のうちに挫折し退学に追いやられてしまっていた。
この不正の悪質さはこれだけに留まらず、澪奈や文香のように自身の裏の顔を知った者には、その人物が不謹慎な行動を働いていると見せ掛けるフェイク動画をベルムズに作成させ公開するという報復行為にも及んでいた。
即ち、彼の本性は「カリスマ熱血教師」などではなく、生徒らを自身の私利私欲のために無下に扱う畜生だったのである。
立て篭もり7日目の夜、校舎で柊に呼び出され対面した際にこれまでの悪事が彼の手で世間に暴露されたことで地位が失墜する。
そしてなにを開き直ったのか、自身の失態をこれまで将来を踏み躙ってきた生徒たちの実力不足のせいにして責任転嫁を図るも、そのあまりに醜悪な本性は柊を激怒させ、彼の項で記述した「生徒に寄り添い導くのが教師の務め」という生徒を第一に考えた教育論を説かれた。
「外面よく振る舞っているが、実際は生徒を自身のエゴのために利用する」武智は、「表面上は危険人物を演じていても、本心では生徒のことを第一に考え寄り添う」柊とで、教師としての在り方が対比された関係性であると言える。
また罪が明るみとなったと同時に、自身が澪奈と見られる女子生徒と自殺現場となった廃ビルに一緒に入る様子が映った動画がSNSで公開されたことで、澪奈殺害の濡れ衣を着せられてしまい*8、警察に連行される。
その結果SNS上では数多のユーザーたちから罵詈雑言で袋叩きにされることになり、解放された後にはそれが幻聴となって聞こえ、精神的に追い込まれてしまう。
しかし魁皇高校に戻った際、教師たちに怯えた様子を見せるも校長から「自分たちは味方だ」「あなたがすべきことは罪を償うこと」と叱咤激励されたことで正気を取り戻す。
そして例の動画がフェイクだったことが明らかとなり無実が証明され、一連の出来事で己の罪を身を以て悟ったことで改心。
事件終結後、被害者の一人であった文香に対して謝罪の意を示し、彼女から許しを貰ったことで再起を誓うのであった。
恐らく他者を犠牲にしてでも勝利や結果に執着する思考は元からではなく、それが全てと思い込む程の挫折や苦悩を過去に経験した結果芽生えたのかも知れない。
- 坪井勝
演:神尾佑
「男とイチャついている奴が練習に来ても迷惑なんだよ!金輪際俺がお前のコーチをすることはない!」
魁皇高校の体育教師で、水泳部の顧問。魁皇高校を水泳部の強豪校にした立役者だが、そのあまりに厳しい練習内容から退部者が跡を立たず、時には生徒の保護者からクレームを受けることもある。
かつて水泳部に所属していた涼音も当然彼の厳しい指導を受けていたが、ある日その彼女に前日練習を休んだことを咎めた後、目の前で恋人の中尾と一緒にいる隠し撮りした写真を数枚本人の前で(それも他の部員たちも見ている前で)ばら撒くという公開処刑同然の仕打ちで強制退部を告げた。
無論この一件で涼音からは恨みを買うことになり、事件6日目には水泳部の顧問だったことも相まって、3-Aの生徒たちにベルムズにフェイク動画の作成を依頼した人物と目されることになる。
その真意は…
「でも結果的に…それがお前を苦しめていたんだな…本当に申し訳なかった…」
彼が上記の手段で涼音に強制退部を告げたのは、彼女の身体が過酷な練習に耐えきれずに発症した心臓疾患によって競技続行が不可能になり、人一倍練習熱心だった涼音をなんとか練習から離れさせるための苦肉の策であった。
立てこもり6日目に強制退部の件を彼女に追求された際にその事実を告げ、謝罪した。
当然ベルムズに澪奈のフェイク動画の作成を依頼した教師も彼ではなく、その後柊が結局犯人が名乗り出なかったことで3-Aの教室を爆破したと思われた際には、彼に怒りを露わにしていた。
生徒や保護者からは厳しい指導方針を理解されず敬遠されはしているが、彼は紛れもなく生徒のことを思い寄り添う教師の一人であったといえる。
しかしいくら身の危険を顧みないほど練習に打ち込んでいた涼音を強引に競技から遠ざける口実だったとしても、皆が見ている前で本人に許可を得ずに勝手に撮影したプライベートな写真を彼女の前でばら撒くというのは考えものである。
そりゃ涼音の恨みもごもっともだし、もう少しマシな方法は思いつかなかったのだろうか…?
なによりこの一件の最大の問題点は「涼音に真実を伝えること」、「涼音を子供扱いせず真っ直ぐ向き合うこと」 から逃げたことであると言える。
実際もし彼女が真相を知らぬまま高校を卒業した場合、行動の自由が広がることから自主的に競技を再開して余計に病状を悪化させてしまう可能性さえも考えられる。
これを考慮すれば、坪井はやはり病気の事実を涼音に正直に伝え彼女とまっすぐ向き合うべきであったと言える。
それこそ競技から離れざる得なくなっても、別の方法で部に貢献していた真壁のように、涼音にも競技以外で部に関われる選択肢を示すことも出来た筈だが、それをせずに真相を伏せて理不尽な言いがかりを口実に無理に退部に追いやったのだから、この点に関してはやはり彼の教師としての至らぬ部分が表に出たと言わざるを得ない。
それが結果として在らぬ冤罪を着せられ危うく社会的地位の失落を招きかけたのを見るに、坪井もまた「考える」ことを疎かにして過ちを犯した人物の一人と言えるのかもしれない。
警察関係者
- 郡司真人
演:椎名桔平
「柊一颯、なにを企んでるんだ…?」
瀬ヶ山署所属の刑事。階級は警部補。
魁皇高校立て篭もり事件の捜査チームに加わり、事件解決に奔走する。
捜査の能力は優秀だが、逮捕する際犯人を暴行してしまう傾向が多々あるために、かなりの数の始末書を書いている。
実は警官になる以前は教師だったという異色の経歴の持ち主。
教師時代、教え子の一人が他校の不良学生たちによって暴行死した事件をきっかけに犯罪を根絶したいと思い、警察官に転向した。
その過去から、柊から一定の信頼を受け澪奈のフェイク動画に関する調査を依頼されることになり、その事件の真相を明るみにする功績に結果として一役買うことになった。
当初は柊を訝しんでいたが…
「いや、これは『怒り』じゃない…『祈り』だ…」
立て篭もり8日目の夜、実は柊と結託していた五十嵐に諭され単身魁皇高校に忍び込み、廊下で柊と対峙してそのまま戦闘になる。
彼が満身創痍の状態だったことから闘いを優位に進め柊を後一歩のところまで追い詰めるも、その時助太刀で加勢したファイター田中に敗北し、逆に捕らえられる。
しかしながら人質であるはずの3-Aの生徒たちが本気で柊を信頼している様子を見たことや、9日目の夜に事件を起こした真の目的を彼から聞かされたことでその真意を悟り、見方を改める。
10日目の朝、柊がライブ配信の後に自決を図ろうとしていることを生徒たち共々察し、彼ら、彼女らと協力して屋上に続く廊下の瓦礫を撤去し道を切り開く。
そして生徒たちが彼の自殺を阻止したのを最後に事の全てが終結すると、ある種の敬意として自ら柊に手錠を掛け逮捕する。
その際、複雑な表情で自身を凝視する生徒たちに対して「どっちが正義だかわからねぇな」と皮肉り、他の警察官たちと共に彼を連行して行った。
- 五十嵐徹
演:大友康平
「派手にやりやがって…」
警視庁捜査一課の理事官。魁皇高校立て篭もり事件の捜査チームの現場捜査本部長に就任する。
事件2日目、柊が警察に対して30人分の食料を持ってくるよう要求した際に、その役割を引き受ける。
その日の夜、指示通り30人分の食料を持参して単身魁皇高校に出向き、校舎に入ると柊と対面し、盗聴器を隠し持っていたことを見抜かれ彼から銃口を向けられる。
そして…
「なんだよいきなり、言わなくてもわかるだろ?そのためにお前に手貸してんだから」
一颯の立て篭もり計画の協力者の1人。
無論一颯が彼に危害を加えるはずはなく、上記で向けた銃も偽物であった。
動機はSNSのバッシングによって精神を病んだ文香の存在が関係している。
実は五十嵐は彼女の実の父親であった。
しかし本人は当時警察の職務を優先するあまり家庭を疎かにしてしまっていたことから、妻の反感を買い離婚。
計画に協力したのは、そんな自身が父親としてのせめてもの務めを果たしたいがためであった。
立て篭もり8日目、郡司が捜査の末一颯に協力していたことを突き止め、捜査本部長の座を降ろされる。
連行される際、側にいた郡司に向けて「何が真実か、自分の目で確かめろ」と言い残し、その場から去った。
- 宮城遼一
演:細田善彦
「あ、宮城です。郡司さん始末書を書くのが嫌みたいで…」
瀬ヶ山署所属の刑事で、郡司直属の部下。
劇中では常に郡司と共に行動しており、捜査のサポートはしつつも破天荒な行動の多い彼に頭を抱えている。
立てこもり10日には、柊の協力者の一人だった"とある人物"の要求に応え、文香を事件現場の魁皇高校の校庭に車で送迎した。
その他
- 喜志正臣
演:栄信
「すみません…雇われの身なんで何も知らなくて…」
繁華街で違法ガールズバーの経営に携わったとして郡司に逮捕された男。
本人はただのいち従業員と主張しガールズバーの経営に関しては何も知らないと容疑を否認する。
しかし郡司からは半グレ組織「ベルムズ」との関連を疑われており、そのことを追及されても無関係とシラを切る。
その正体は…
「もしフェイク動画の出所がうちだってバレたら、お前の家族がどんな目に遭うかわかってるよな?」
彼こそがベルムズのリーダー格。
ベルムズの主要なシノギの一つにフェイク動画の作成があり、澪奈のフェイク動画を作成したのも喜志率いるベルムズであった。
立て篭もり4日目に、澪奈のフェイク動画のネタを入手するよう脅した3-Aのメンバーの一人である甲斐が、彼がベルムズのリーダーであると告白したことで正体が露呈し、本格的に取り調べを受けることになる。
実は同じく3-Aのメンバーの一人である唯月と交際しており、彼女がモデルのオーディションを受ける際は自身の圧力で強引に合格させ唯月が志望する事務所に所属させていた。
しかし必ずしも単なるビジネスライクな関係ではなく、唯月を澪奈のフェイク動画の作成には関与させていなかったことから、彼女に対する温情はあった模様。
そして立てこもり8日目、取り調べ室で唯月から感謝と別れの電話を貰うとそれに心動かされたのか、せめてもの善行として澪奈のフェイク動画の依頼者が武智であると自供した。
- 相楽孝彦
演:矢島健一
「あの男は、恐ろしい人間ですよ」
大手制作会社の社長で、文香の父。
一颯が特撮アクターとして活動していた頃の恩人の一人であり、彼に対しては一定の信頼を置いていた。
しかし文香が精神を病んでからは彼と距離を置いてるようで、一颯が立て篭もり事件を起こした際に郡司が事情聴取で自身の元を訪ねた際には、彼を上記のような危険人物と証言していた。
文香にはなるべく事件に関わってほしくないようで、彼女が自責から郡司の元に訪れた際にはすぐさま家へ連れ戻した。
しかし…
「後悔はしていないさ、娘のためだ」
一颯の立て篭もり計画の協力者の1人。
協力の動機は、無論文香を立ち直らせるためであった。
上記の一颯に対する不振感を抱いている素振りも演技で、実際は文香が精神を病んで自身も辛い状況下であっても、病に蝕まれた一颯の身を案じていた。
また実は文香は10年前に他界した妻の連れ子であり、故に彼は彼女の実の父親ではなかった。
立て篭もり9日目、一颯の指示通り彼が澪奈と思われる女子生徒とビルに入っていく動画をSNSに投稿すると、
文香に「暫く出張で家を空ける」と伝え、既に事件の協力者であると掴んでいた警察の車に乗り込む。
そして永い別れになると察し追いかけようとする彼女を横目に、そのまま連行されていった。
- 相楽文香
演:土村芳
「なんで一颯が…?」
孝彦の一人娘で、一颯の恋人。
以前は教師を志しており、とある事情から特撮アクターの道を断念した一颯に教師を道を示した。即ち彼が教師を志すきっかけとなった人物である。
しかしとある事件をきっかけに精神を病んだことで教師を辞め、現在は自宅で療養生活を送っている。
一颯が事件を起こした際は、その原因が自分にあると思い込んで責任を感じるようになる。
彼女の身に起きた悲劇とは…
「私はこんなことしていない…」
以前勤めていた高校で武智が自身の請け負っていたクラスの男子生徒を何が何でも豪翔大学へ推薦入学させようとしているのを不審に思い調査した結果、彼と豪翔大学の良からぬ関係を知ることになる。
その結果、武智の計略で「自身が男子生徒を連れて一緒にラブホテルに入っていく」という内容のフェイク動画をSNSに流出され、多数のユーザーから在らぬ誹謗中傷を受けることになった。
これが文香が精神を病んだ真実であり、このことから彼女もまた澪奈と同様、武智の悪事とSNSの誹謗中傷の被害者であり、一颯が立て篭もり事件を起こしたのは、それを通じて文香に立ち直ってほしかったためでもあった。
事件9日目、孝彦が「出張」で家を後にするのを涙ながらに見送ると、翌10日目の朝、五十嵐の計らいにより郡司の部下である宮城に連れられ魁皇高校の校庭に訪れ、一颯の最後の勇姿を見届ける。
その身を挺した姿を見て立ち直る勇気が芽生え、直後改心した武智から自身に対して仕出かした仕打ちを謝罪されると、彼が心から己の罪を悔い改めたことを悟り、それを許した。
- ファイター田中
演:前川泰之
「おっつー!テレビ観てるよ!大変そうだな」
『ガルムフェニックス』など、数多くの特撮ヒーローを演じたスーツアクター。
業界ではレジェンドと呼べる存在で、3-Aメンバーの一人である堀部瑠奈など、ファンも多い。
一颯の美大在籍時代、とある特撮番組の美術スタッフにアルバイトとして参加していた彼に可能性を見出し、自身の後継者に育てるべく一颯を特撮アクターにスカウトする。
結局彼は志半ばで特撮アクターを断念することになってしまうも、その後も何かと一颯を気にかけていた。
彼が立てこもり事件を起こした意図も察しているようで、事件8日目には上記のように一颯に対して応援の電話をフランクな口調で寄越した。
その日の夜…
「世界を敵に回してでも正義のために闘うのが『ガルムフェニックス』だから」
単身魁皇高校に侵入した郡司と一颯が戦闘になった際、ガルムフェニックスのスーツを着て一颯の助太刀に現れ、敗北寸前に陥っていた彼に代わって郡司を圧倒し彼を捕縛する。
翌朝、去り際に見送りに来た瑠奈と西崎にファンサービスで握手に応えた後、「なぜ助けに来たのか」という問いに対して、上記の回答を示し、最後に2人に一颯に今度焼肉を奢るよう伝えると、その場から立ち去った。
後に一颯は警察に逮捕され、1年後には病で他界してしまったため、その約束が果たされたかどうか疑問なのが悲しいが……。
- マインドボイスのユーザー達
「魁皇高校で事件発生らしいよ」
「教師が立てこもりって草生える」
「魁皇って自殺した水泳選手のか」
文字通り、劇中のSNSである「マインドボイス」のユーザー達。所謂「名も無きモブ」の立ち位置であり、要するに俺ら。
柊の立てこもり事件が発生した際には、一目散にその話題に食い入り、事件に関して様々な声を上げる。
と言っても、全員がそうというわけではないのだが*9、大半のユーザーの関心は人質となった生徒たちの安否の心配よりも、事の動向そのものと言え、事件をある種のエンターテイメントショーのように楽しんでいる節がある。
当初は柊を悪者呼ばわりしたかと思えば、ある人物の悪事を彼が暴くと今度は柊をヒーロー視し逆にその人物を悪者扱いして叩くなど、状況が二転三転する度に自分たちの意見や主張をコロコロと都合よく変える。
中には、生徒の中から死者が出たと思われた際には「今日も誰か死ぬか賭けない?www」などと再び死者が出ることを期待する声が上がるなど、完全に倫理観もクソもない発言をする輩さえもいる。
兎にも角にも自分らが部外者であることを良いことにネットを通して好き放題言う連中と言える完全に俺らじゃねえか。
劇中ではただの傍観者と思われていたが…
「なんだよコイツ、ムカつく」
「マジ殺してぇ」
「自由に言えるのがネットの良さでしょ」
[[彼らこそがストーリー全編に於ける諸悪の根源。>グラキエス(ULTRASEVEN X)]]
柊が立てこもり事件を起こした真の目的は、根も葉もない情報に躍らされ軽率に悪意を他者に向けてしまうSNSユーザーたちの浅ましさと愚かさを世に知らしめるためであった。
澪奈や文香が精神を病んでしまった最大の原因は、多数のSNSユーザーたちによる自身に対する誹謗中傷だったのである。
無論武智やベルムズ、宇佐美、里見、甲斐らがフェイク動画を作成し流出させなければ、そもそも悲劇が起こること自体がなかったため、彼らにもそれ相応の責任があることは間違いない。
しかしそれを見た者の中で誰か一人がそのフェイク動画を解き明かして真実を公にしていれば、最悪の事態は未然に防がれていたのは言うまでもないだろう。
にもかかわらず、澪奈や文香のフェイク動画が話題となった当時は本気で事を見極めようとする者は誰一人おらず、全てのユーザーが自身の快楽を優先して動画を拡散し遊び感覚で彼女らに罵詈雑言を浴びせていた。
即ち、澪奈を死に追いやったのは紛れもなく彼らの悪意ある数多の言葉であり、彼らこそが彼女を殺害したと言っても過言ではなかったのである。
立てこもり最終日、柊から真の標的が自分たちであったことが告げられ叱責を受けるも*10、
当の本人達はというと期待した展開にならず逆に自分たちが責められていることが気に入らず逆ギレし、彼に対して口汚い言葉を浴びせて開き直り、更には「自分たちには関係ない」「ネットの意見を間に受けた景山が悪い」などと知らん顔して責任転嫁する有様。
悲しいことに、このような心無い書き込みはLIVE配信が終わるまで続いた。
たった一つの真偽も分からぬ情報を根拠に一人の少女に謂れのない罪を被せた挙句罵倒し死に追いやりながら、その大罪を理解せずに、それに対して真っ当な指摘をした人物さえも罵倒するその醜態と愚かさ、そして悪辣さは、これぞ正に[[「自分が悪だと気づいていない最もドス黒い悪」>プッチ神父(ジョジョの奇妙な冒険)]]と言えよう。
更に胸糞悪いことに、柊が最後の配信の最中に述べていた「俺の言葉がどれだけ届いているか、きっと殆どの人間には痛くも痒くもないんだろう」という発言の通り、事件収束後しばらくしても相変わず誹謗中傷などといったインターネットの諸問題は大して改善を帯びていないことがさくらの口から示唆されていた*11。
本人たちにはシビアな話だが、そもそもどんなに命を賭けた所で悪く言ってしまえば他人事な訳であり、寧ろ「柊の行動一つで世間が大きく動いた」なんて言う方がどうかしてる、と言えるのかもしれない。
しかし最終話のラストで一人の名も無き青年が「死ねばいいのに」という書き込みをしようとしたところ、ふと事件のことを思い出してその書き込みを止める描写があり、柊の命を賭けた行動は決して無駄では無かったことが証明された場面で物語は終幕している。
用語
- 魁皇高校
本作の主要舞台となる私立高校。水泳部の強豪校。
制服は生徒によって着こなしは千差万別だが、グレーのブレザーがトレードマークであることは大体共通している。ロケ地は埼玉県にある「旧小川町立上野台中学校」で撮影された。
また学校指定のやたら軽快なリズムの朝礼体操があり、本作の放送時はそらジローなど、日本テレビ系列番組の出演者やキャラクターが実際に踊ったりしていた。現在も公式YouTubeチャンネルで見られるので、みんなも時間があったら是非やってみよう!
- ベルムズ
劇中の東京都で暗躍している半グレグループ。拉致や殺人など、様々な悪事を働いていると人々から噂され、恐れられているが、リーダーの正体など、その実態は謎に包まれている。
主要なシノギの一つにフェイク動画の作成があり、澪奈のドーピングのフェイク動画を作成したのもベルムズであった。
最終的に…
リーダー格の喜志を含む主要構成員が警察に逮捕されたことで、組織は事実上壊滅したと見られる。
フェイク動画の作成や澪奈の拉致未遂など、実際に様々な悪事を働いていた紛れもない悪党集団ではあったが、
一方で喜志は恋人の唯月の身を案じベルムズの悪事には一切加担させていなかったりと、何処か人間味のある一面もあったことから、それに基づくと人々が噂する悪事が何処まで本当かわからないところもある。
本作の作風を察するに、実は単に人々の噂が一人歩きしただけで、実際は世間で囁かれているような凶悪な集団ではなかったのかもしれない。
- ガルムフェニックス
劇中の特撮ドラマにして、同作のヒーロー名。ファイター田中の代表作の一つであり、実は彼が引退宣言を撤回して撮影に望んだ意欲作でもある。尚、もし柊が特撮アクターを断念していなければ、主演は彼になる予定であった。
ガルムフェニックスには「たとえ世界を敵に回してでも正義のために闘う」という信条があり、奇しくもその勇姿は、劇中の柊と重なっていると言える。
また同作の決め台詞は、後述の柊が課題を提示した後に発する一言でもあり、同時に本作の重要なテーマの一つでもある。
- マインドボイス
劇中の主要SNSで、ユーザー数は日本国内で約5千万人。略称は「マイボイ」。
情報発信や軽いつぶやき、画像や動画の投稿やライブ配信など様々なサービスが充実しており、要は我々の世界でいう『Twitter』のようなものと思って頂ければ分かりやすい。
澪奈のフェイク動画の拡散や柊の立て篭もりの実況中継など、劇中では様々な事柄で必ずと言っていいほどこのマイボイが関わっており、良くも悪くも本作のキーアイテムというべき存在である。
また後述の本作と世界線を共有する『ニッポンノワール』では、ラストで劇中の日本社会で暗躍していた闇組織の存在を公にするために利用されたが、結果的にそれは本作の最大の敵の力が皮肉にもプラスの方面で活かされたことを意味し、正にSNSは諸刃の剣であることを表していると言える。
- Let's think
柊が立てこもりの最中、生徒たちなどに課題を出す際に最後に発する台詞。意味はその通り「考えてみよう」。
その言葉の通り、生徒たちは日が経つに連れて、物事を起こす際には必ず一歩踏みとどまって「考える」ことの重要性を学んでいく。
実は上記のガルムフェニックスの決め台詞である。
その真の意図は…
澪奈や文香が思慮の足らないSNSユーザーたちによって誹謗中傷されたことで精神を病んだことから、大して考えもせずに行動することが取り返しのつかぬ過ちを生んでしまうことを伝えたい、柊なりのメッセージであった。
劇中で再三示される「考える」、「想像力を働かす」といった教訓を端的に、且つわかりやすく表したフレーズであると言える。
- グッ、クルッ、パッ
立てこもりを8日目に柊が生徒たちに示したキーワード。
「大事な決断をする時は『グッ』と踏み留まって『クルッ』と頭を一周させれば『パッ』と正しい答えが浮かぶ」と同日の朝のHRに彼は生徒たちに説明した。
無論さくらを除いた生徒たちはそれを深く受け止めず、柊から与えられた自由時間を謳歌する。
しかしその日の夜には…
武智が澪奈を殺害したとされる動画が実は柊が作成したフェイクだったことを、西崎と瑠奈が動画を解析して突き止める。
西崎は澪奈のドーピング動画がフェイクだったと知りつつ見て見ぬふりをしてしまった後悔から、その動画をSNSにアップしようとするも、
瑠奈が身を挺してそれを阻止し、戸惑う彼に対して「グッ、クルッ、パッ」と説いて本当に動画をアップして良いか否か、しっかりと「考えよう」と説得した。
柊が連日生徒たちに説いてきた「考える」重要性を表したフレーズの一つであり、
同時に大して「考える」ことなく安易に仕入れた情報を鵜呑みにし他者を罵ってしまうSNSユーザーたちと、彼の授業によって「考える」大切さを思い知り行動に移す前に踏み留まって「考える」ことにした3-Aメンバーが上手く対比されたシーンであると言える。
関連作品
- ニッポンノワール-刑事Yの反乱-
2019年10月〜12月に放映されたTVドラマ。主演は賀来賢人。脚本は武藤将吾が『3年A組』から続投。
刑事・遊佐清春が劇中の日本警察の大きな闇に挑むストーリー。
本作と同一の世界線であり、時系列は約半年後。故に劇中でも度々本作の出来事を登場人物が言及している他、当作からの登場人物も一部同作に再登場している。
余談だが、賀来氏は本作の前番組である『今日から俺は!!』でも主役の三橋貴志を演じており、同作の主人公である遊佐との演じ分けは必見。
- 最高の教師-私は生徒に■された-
2023年7月~9月に放映された同局の土曜ドラマ。主演は松岡茉優と芦田愛菜。
主人公の女性教師・九条里奈が勤める高校の卒業式当日に何者かに殺害されたところ、自身が受け持つ3年D組の始業式当日の教室へループしたことで、卒業式の日に自分を殺すのは誰かを探るストーリー。
本作の制作スタッフが続投したオリジナルドラマであり(なお、脚本は「ツバキマサタカ」なる人物が担当)、『3年A組』のTwitterアカウントも同作のものへと一新されている。
余談だが、武藤氏が全話執筆した『ビルド』主演の犬飼貴丈氏と3号ライダー役の武田航平氏が共演している。
追記・修正は生徒たちを教室に閉じ込めてからお願いします。
Let's think!
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- 反対意見がなかったためコメントをリセットしました。 -- 名無しさん (2022-05-07 18:20:43)
- しろがね「ポケットにナイフを入れていると・・・人は必ずそれを使いたくなる。子供だってナイフひとつで人を殺せる。私に刃を向けた者は、子供であっても容赦はしない。ナイフを人に向ける者は、深く考えていなくても_向けられた者は、それを絶対に忘れないのだから。叩かれた程度でそれくらい痛い・・・刺されたらさらに痛い、そして死ぬ・・・。殺されたくないだろう、子供達。そして、人を殺したくもないだろう・・・それからのおまえの人生は、殺されたと同じだから。心して聞きなさい、子供達よ。『自分の命と明日』その重みを・・・ナイフはそのちっぽけな刃にのせているのです。」 -- 名無しさん (2022-07-30 22:07:05)
- 誹謗中傷に限らずネットで問題行動をする人はネットの世界を無自覚に自分の自宅の一部と勘違いしているんだと思う。それはもう柊が言ってる「想像力」や「言葉による暴力」以前に本人の常識の問題だと思うな。 -- 名無しさん (2022-10-24 00:22:30)
- 放送されて1年後に見苦しい言い掛かりだらけで誹謗中傷で自殺した人がマジで現れた時はグサッと来たわ... -- 名無しさん (2023-02-05 01:50:49)
- 永野芽衣、福原遥が朝ドラヒロイン確定で今田美桜が来年秋からのヒロインほぼ確定という後から見るとどんだけ出世した人がここにいるんだよという -- 名無しさん (2024-02-08 19:50:23)
- 昨今色々ドラマに関して言われている日テレだけど、このドラマは本当に良作だと思ってる。批判かなり受けそうだけどそれでも社会的にデリケートなテーマを扱ったのは結構挑戦的だっただろうし、主人公たちには酷だけど安易なパッピーエンドにしなかったところも良かった。語彙力乏しい自分に言えるのはこのくらいだけど、日本のドラマには良作もあったことは忘れないで欲しいな。 -- 名無しさん (2024-03-10 23:47:36)
- この項目にある「誹謗中傷による被害」を見ると、やっぱり…りゅうちぇるが誹謗中傷を苦に自殺したのは本当なのではと思う -- 名無しさん (2024-04-29 19:44:48)
#comment(striction)
*2 流石に彼女が振ってくるプロレスネタは理解できなかったようだが。
*3 と言っても、事件から数年後もモデルでそれなりに活躍を見せていたことから、決して才能がないわけではないと思われる。
*4 とはいえそんな彼女はというと他の生徒たちと同じく課題の答えすら出そうとしなかったため、さくらにそれを言う資格はないと言える。
*5 このことから、坪井が課していたハードな練習に耐えられる程丈夫な体質ではなかったと推測される。
*6 彼女も瀬尾と同じく部活の成績が伸び悩んでいたことでスポーツ推薦が貰える見込みがなくなりつつあり、内定以前は実家の米屋を継ごうかとも考えていた。
*7 最初の告白が魁皇高校の体育館裏で2人が制服を着ていたことを察するに、華の猛アタックは事件直後から始まったと推測される。
*8 その動画は実際には柊の顔に武智の顔を上書きしたフェイク動画であり、更にはその制服を着た女性が抱えていたバッグは魁皇高校の物ではなかったり、そもそも撮影のポイントとなった場所には防犯カメラが設置されていなかったりと、よくよく調べれば偽物とわかる代物であった。
*9 例えば武智のフェイク動画がネットに公開された際には、「証拠もないのに武智に烙印押したら可哀想」や「靴も似てるのあるよ。これで殺人扱いは酷いよ」など、動画の内容に疑問を呈するユーザーも一定数見られた。
*10 ついでに述べると、彼はただユーザーたちの愚かさを非難するだけではなく、「お前のストレス発散で他人の心を抉るなよ、分かるだろ俺の言いたいこと?お前らそこまで馬鹿じゃないだろ!」、「他人に同調するより、他人を貶すより、まずは自分を律して、磨いて、創っていくことが大切なんじゃないのか?てかそっちの方が楽しいだろ?」、「その目も、口も手も、誰かを傷つけるためにあるわけじゃない!誰かと喜びを分かち合うために、誰かと幸せを噛み締めるために有るんじゃないのか?そうだろ?もっと人に優しくなろうぜ!もっと自分を大事にしようぜ!」などと、ユーザーたちの良心を促し同時に訴えかける発言もしていた。これを踏まえてLIVE配信の視聴ユーザーたちの反応を見てみよう。
*11 事件から数年後に開かれた同窓会で彼女が柊の遺影に一人話しかけた際「あの事件で世の中が大きく変わったなんてことは全然なくて…」と最初に述べていた。
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