マトウダイ

ページ名:マトウダイ

登録日:2020/11/13 Fri 17:52:32
更新日:2024/05/23 Thu 12:47:59NEW!
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マトウダイ(Zeus feber)とは、海水魚の一種である。
漢字では「馬頭鯛」



【概要】

分類

マトウダイ目マトウダイ科マトウダイ属に属する。
名前はタイとついているが、マダイ等が属するタイ科の魚ではない。
というか、マダイとは目のレベルで違うので相当に縁遠い。見た目も似ていない。
タイがめでたい魚であることからあやかって名付けられたいわゆる「あやかりダイ」の一種である。*1


分布

太平洋の西部(日本沿岸など)、大西洋の東部(ヨーロッパの沿岸など)、インド洋(東南アジアやオーストラリアの沿岸など)に広く分布する。
水深30~400mくらいの岩礁域に生息する。



形態

横から見ると楕円形に近い形をしている。
一方で、前や上から見ると、左右から押しつぶしたように薄い(これを側扁そくへんという)。


体色は銀灰色で、不明瞭な褐色の縦縞がある*2
体の中心に大きな黒色の斑紋がある。
第一背びれの鰭条きじょうは長く伸びる。


口には歯がほとんどない。顎を前方に突き出すことができる。



食性

肉食性で、主に他の魚を食べる。
体型が側扁しているため、正面から見たマトウダイの輪郭は小さく、気付かれにくいようだ。
そうして獲物に忍び寄り、顎を突き出して丸のみにする。
自分の体長と同じくらいの大きさの魚を飲み込むこともできる。




【釣り人とマトウダイ】

マトウダイを専門に狙うことはあまりない。
生きたイワシやアジを餌に使う泳がせ釣りでかかることがある*3




【食用魚としてのマトウダイ】

漁法

マトウダイ単独で統計がとられているわけではないが、市場に出回るマトウダイの多くは定置網で漁獲されているようだ。



さばき方

調理のために解体する場合、一般的な三枚おろしでよいのだが、


  • 全身の骨が硬い
  • 第二背びれや臀びれの付け根に、短く硬い棘が並んでいる*4

という特徴があるため、初心者だったり出刃包丁がなかったりするとつらい。
魚屋さんで購入したものならお店でおろしてもらえばよいが、釣ってしまった場合は自力でがんばろう。
あと内臓はできるだけ傷つけないようにね!


三枚におろして腹骨をすき取った半身には、頭部から尾部に向かって溝のように走る筋肉の節目が2つある。
刺身にするなら、この節目に沿って3つのさくに切り分けるとよい形になる。



内臓の取り扱い

肝臓や胃袋や卵巣、精巣も食べられるため、解体するときに取り分けておきたい。


尾頭付きの焼き魚にするからどうしても隠し包丁*5が必要なんだ!!
…というのでもなければ、出刃包丁やキッチンばさみで肛門から鰓蓋まで開き、鰓の付け根や腸の先端を切り離して取り出すとよい。
さばくとき最初に頭を落とすのは、肝臓や胃袋が分断されてしまうためオススメできない。


うまく内臓を取り出せたら部位別に切り分けて、表面の汚れや血液を水で洗い落とす。
胃袋はこれに加えて、裏返すか切り開くかして内部の汚れや血液や粘液も水で洗い落とす。


ところで胃袋の中には、マトウダイが丸のみにした魚が入っていることがある。
小さなアジやイワシだったり、場合によってはタイやイトヨリダイといったちょっと高級な魚が出てくることもある。
中の魚は、状態がよければ別途調理して食べることも可能である。
魚屋さんで腹が膨れているマトウダイを見かけたら、オマケを期待して買ってみるのもいいだろう。



食べ方

マトウダイの身は淡白な白身である。
和風で上品にいただくなら刺身や吸い物や蒸し物、洋風で油を補って食べるならカルパッチョやムニエルやフライがオススメだ。
鍋物にするなら、ちり鍋でもブイヤベースでもおいしい。


あらの部分は骨が硬いため手ごろな大きさに切るのが大変だが、いいダシがとれる。
味噌汁や鍋のスープにどうぞ。


肝臓はカワハギのそれと同じように大きく、濃厚な風味がある。
きも醤油にして刺身にあえたり、あん肝のように酒蒸しやワイン蒸しにしてもよい。
煮物や揚げ物でもおいしい。
胃袋や卵巣、精巣は煮たり焼いたりして食べられる。




【観賞魚としてのマトウダイ】

家庭のアクアリウムで飼育する魚としては全くもって一般的ではない。
ダイビングでは、岩礁のある海域で見られることがある。


水族館ではときどき展示されている。深海魚のコーナーにいたり、沿岸のコーナーにいたりする。
マトウダイを海から水族館に運ぶ際、うきぶくろが膨らんでいたら注射器で中のガスを除去する処置を施したりする*6




【海外でのマトウダイ】

名前

英語では"John dory"または"Peter's Fish"といった名前で呼ばれる。
フランス語では"Saint pierre"、またはSaintを略した"St. pierre"という名前がついている。イタリア語やドイツ語でもそれぞれ同じ意味の名前がついている。



聖書との関わり

上述した外国語名の"Peter"や"Pierre"は、聖書に登場する聖ペテロのことである。
これは、ペテロが漁師をしていたとき


ペテロ「貧乏で税金が払えないンゴ…」
イエス「それなら次にとれた魚から銀貨が見つかるからそれで払うとええで」
ペテロ「おかのした」


というやりとりを経てマトウダイの口から銀貨が見つかり、無事に税金を払うことができた、という言い伝えによるもの。
そして、ペテロが魚をつかんだときの指の跡がマトウダイの斑紋になった、と言われている。
なお、実際にはペテロは海ではなく湖で漁をしていたようだ。



食文化

フランスのマルセイユでは、ブイヤベースの材料や供し方について規定した「ブイヤベース憲章」というものがある。
憲章では、ブイヤベースにはマトウダイを含む10種類弱の地魚のうち4種類以上を使うべし、と定められている。




【近縁種】

  • カガミダイ(Zenopsis nebulosa)

マトウダイ目マトウダイ科カガミダイ属の魚。
見た目はマトウダイと似るが、頭部が凹んだような形をしていること、体色が光沢のある銀色で縞模様がないこと等の違いがある。
食用魚としての利用法はマトウダイと同様。
ダライアス外伝の巨大戦艦、デッドリークレッセントのモチーフになっている。


  • オオメマトウダイ(Allocyttus folletti)

マトウダイ目オオメマトウダイ科の代表種。
深海に生息し、名前の通り目が大きい。
干物に加工されて流通することもあるが、ヒトには消化できないワックスエステルを油脂分に含んでいる。
このため食べるときはよく焼いて脂を落とすことが推奨される。さもなくば……




【その他・余談】

属名のZeusは、ギリシャ神話の最高神ゼウスと同じ綴りである。


マトウダイの名前は、斑紋を的になぞらえているとも、頭部がのように見えることからきているとも言われる。


地方名でカガミダイ、クルマダイと呼ばれることがある。
ただしこれらの名前が標準和名についている別種の魚がいるため、話がこんがらがることがある。






追記・修正は、ブイヤベース憲章を顕彰してからおねがいします。


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  • 確かに旨いしフレンチには欠かせない魚なんだが、なぜアニオタwikiに記事が… -- 名無しさん (2020-11-13 23:34:45)
  • キノコ、昆虫に続いて新たなガチ項目が…  -- 名無しさん (2020-11-14 14:55:59)

#comment(striction)

*1 キンメダイやイボダイ、イシダイなんかがこの口。
*2 魚の場合頭から尾に向かう方向が縦縞で、背びれと腹びれや臀びれを結ぶ方向が横縞。
*3 メインターゲットはたいていの場合ヒラメ
*4 棘に毒はない
*5 ここでは、内臓を除去した痕跡が盛り付けたときに見えないようにする切り方のこと
*6 アクアマリンふくしまの解説パネルに記載あり。2020年10月確認。

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