登録日:2017/12/25 Mon 17:01:47
更新日:2024/02/16 Fri 13:10:55NEW!
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魔王 ラスボス 宗教 悪魔 魔族 王 政治家 敵 伊坂幸太郎 第六天魔王 ファンタジー rpg 古坂大魔王 ハクション大魔王 ハイグレ魔王 仮面ライダーブレイブ タドルファンタジー 神崎蘭子 常磐ソウゴ 仮面ライダージオウ オーマジオウ ピッコロ大魔王 ゲーム コメント欄ログ化項目 シューベルト 勇者vs魔王 我が魔王 把握
魔王とは……一言で説明するのはとてつもなく難しい。
代表的なイメージは「魔族の王」なのだが、単にそれだけとも言えない、複雑怪奇な概念であると共にアニヲタ的には大変重要な概念の一つとも言える。
その「語り切れなさ」はある意味では魔王というキャラクターの持つ大変深い魅力を表していると言えるかもしれない。
以下、主にフィクションにおける歴史に沿って「魔王」という概念がどのように変遷していったか、を解説してみたい。
発生初期・宗教的概念としての魔王
日本では仏教において悟りを妨げる魔界外道の上位階級として魔王の概念があり、その中でも最上位とされたのが「他化天の大魔王」こと第六天魔王である。
日本に伝来したキリスト教ではこれにあてはまるのがルシファー=サタンである。
簡潔に言えば「神に仇為すもの」をまとめて「魔王」としたイメージである。
この頃の魔王は一言で言うとみみっちい。
たとえば菩提樹の下で修行中のブッダに様々な誘惑を仕掛けたマーラが有名だが、そもそも魔という字自体がマーラを指すものである、つまり魔王=巨根。
あるいはイエス・キリストが40日の断食を行っている際現れた魔王でもいい。
あの魔王は言葉でキリストを惑わせようとしているが、キリストが強い意思でそれを拒絶しただけで去っている*1。
基本的にこの頃の彼らは「宗教的堕落を誘う存在」というイメージであり、物理的な実体に関してはかなり貧弱な存在であるかのように描写されている。
「甘い言葉と誘惑で正しき人々を魔道に誘う」のが魔王……「エデンの園の蛇」の役割だったのだ。
もちろん「善なる神」と戦う際は神話の中ではそれなりに強大な存在として描かれていることもあり、「沙石集」や「太平記」などでは日本には仏教が浸透しそうと感づいた第六天魔王が国土を滅ぼそうとして天照大神が土下座外交で許してもらったり、
聖書では負けはするものの天使の軍団とガチバトルしてたりするのだが、なぜか人間と絡むと弱体化する傾向がある。
まぁ同時に宗教者からは大変恐れられる存在でもあったのだが。
仏門の増上慢と武装化を危険視し、駆逐に乗り出した信長が第六天魔王を自ら称していたのも、その辺りの事情が絡んでいると思われる。
そもそも、信長以前にも大和朝廷に抵抗した豪族のリーダーや反旗を翻した者が第六天魔王=仏敵、神敵と名付けられたり、自称していた歴史がある。
他にも崇徳上皇は自称で「日本国第一の魔王」を名乗っている。
焼酎の銘柄の「魔王」は、白ワインや赤ワインなど熟成中に減る酒を「天使の取り分」と言うことにちなんで、「天使を誘惑する」という意味で名付けられたのでこの意味での魔王が由来。
また「災厄の神」というイメージで語られる魔王は打って変わってかなり危険。
水滸伝の百八星や西遊記の牛魔王なんかがここに当てはまり、物理的にもかなりの強者。
宗教的観点から外れたオカルティズムでの魔王はこちらのイメージに近く、あくまでも神の影の部分としてマッチポンプを担う存在等ではなく、暗黒に由来する神の世界の破壊者としての信仰を受けていた。
ファンタジーでいう魔王(特に、現代のゲームなんかでのイメージ)は此方に近い。
なお、シューベルトの「魔王」という楽曲をご存じだろうか?
中で魔王はたかだか子供一人をさらうのに木の影からこっそり機会をうかがうという情けなさを見せている。
とは言え、曲の内容的にかなりホラーな雰囲気は出ているが。
この曲はデンマーク伝承の「妖精の王」を「ハンノキの王」に誤ドイツ語訳した物語「ハンノキの王の娘」に基いて書かれたゲーテの詩を元にしており、これらの事情や内容を鑑みて明治時代の翻訳時に直訳せず「妖魔王」と当初は訳され、後に少し変えて「魔王」にしたという経緯。子供「マイファーザ、マイファーザ」。
過渡期・物理的実体を持った魔王
大きくイメージが変化するのは、サブカルチャー文化が定着し始めた頃だと思われる。
「大魔王シャザーン('68)」「ハクション大魔王('69)」と言ったアニメでは「魔王=強力な魔法使いの王」や中東で言うジン・ジニーの和訳というイメージであり、この辺りから言葉の印象の転換が始まったと思われる。
「悪党のボス」「なんか悪そうなやつ」というようなイメージもあり「チキチキマシン猛レース('70)」のブラック魔王は、とても悪そうなやつという意味合いのネーミング。
70年代では、
- 全宇宙の支配を企む宇宙人の親玉である「サンダーマスク('72) 」の魔王デカンダ、大魔王ベムキング
- 戦国時代の日本においてインドで身に付けた妖術の力で日本征服を企む忍者の親玉である「怪傑ライオン('73)」の大魔王ゴースン
80年代前半では、
- 「太陽の使者 鉄人28号('80)」の宇宙魔王
- 「電子戦隊デンジマン('80)」のバンリキ魔王
- 「宇宙刑事シャリバン('81)」の魔王サイコ
など、敵が地球侵略を企む悪い宇宙人な作品が多かったため、「魔王=悪い宇宙人の親玉」というケースが多い。ジュラルの魔王(「チャージマン研!('74)」)?何だろうねあれは……。
一方、「デビルマン('72)」「ポールのミラクル大作戦('76)」など、70年代のアニメからは「魔王=悪魔の王」というイメージも定着し始める。
魔王のイメージが変化した正確な時期こそ不明だが、絶対悪の存在としてRPGなどのファンタジー(剣と魔法の世界など)ものなどが影響を及ぼしている。
ゲームだと『スーパーマリオブラザーズ('85)』のクッパは「城に住み、魔法を使い、配下の軍勢を率いて姫をさらう悪の親玉」であり、「ドラゴンクエストⅠ('86)」のりゅうおうは魔王の肩書ではないものの「魔物の軍勢を率いる悪の統率者」というイメージが挙げられる。
「敵の親玉=魔王」というファンタジーテンプレは非常に受け入れやすくわかりやすい長所があり、多くのフォロワーを生み出していった。
「勇者VS魔王」という構図もこの時代に確立していき、魔王はラスボスのわかりやすい象徴、記号として多用されるようになる。
この時期の魔王の特徴はとにかく強い、そして残酷。
「物語上倒さなければならない強大な敵」としてのポジションであるため、「主人公に倒されなければならないだけの理由」と「倒すことが困難な強さ」を両立している。
同時に「キャラクターとしての魔王」が確立していったのもこの時代である。
物語を能動的に動かしていく役割を持ち、その強いキャラクター性から時として主人公サイドの登場人物よりも人気の高い魔王も登場するようになっていく。
- DQ4のピサロのように「魔王にならざるを得ない事情があった」
- クロノトリガーの魔王のように「自分なりの正義を持ち、ルート次第では主人公に協力する」
- 神と魔王は同じ存在の良心と邪心
- 勇者と魔王は神の(ry
などダークヒーローめいたキャラクターも多くなってくる。
発展期・政治家としての魔王
「軍勢を率いる悪の総大将」という魔王のイメージはさらなる発展を遂げることになる。
- 軍勢がいるなら国家があるのではないか?
- 国家があるなら経済があるのではないか?
- 教育もあるのではないか?
……このような連想が起きるのはごく自然な流れだったと言えるだろう。
「単なる邪悪の象徴」から「人類に相対する一国家の首脳」という魔王が生まれてくるのに時間はかからなかった。
ただしキリスト教の悪魔には、地獄の皇帝あるいは大王を筆頭に、「王」「君主(Prince)」「公爵」「侯爵」「伯爵」「長官」「騎士」などと悪魔の世界に領地と軍団をどれだけ持っててどの悪魔と主従関係といった現実になぞらえた爵位や階級付けが近世頃に結構行われてたりはする。
この時代まで来ると魔王を扱う物語は恐ろしく多様化してくる。
「魔王が主人公」というストーリーも珍しいものではなくなり、「魔王と勇者が手を取り合い別の敵と戦う」という今まででは考えられないシナリオも登場するようになった。
人類と敵対しているにしても「理不尽に人類を虐げるだけ」の存在から、LIVE A LIVEの魔王オディオのように
- やむを得ない事情を抱えている
- むしろ人類側に非がある
- むしろ人類の中に魔王が生まれる
- そもそも魔王と言うものはあくまでも人類側からの呼称
悪魔だけに
などの「正義に敵対するのは別の正義」の構図が好まれるようになってきた。
純粋な強者に対して種族を問わず「魔人」と表現する作品が複数あるのに対して「魔王」と表現する作品は滅多に無いことからも、王という役職イメージがより重要視されているのがわかるだろう。
価値観の多様化に伴い、
- 善とは何か?
- 悪とは何か?
- 魔王とはそれだけで倒されなければならない存在なのか?
を問いかけるようなストーリーが増えてきたのだ。
この時代の魔王のイメージは……一言で語れるようなものではない。
創作者の数だけ魔王像はあり、今まで通り悪の軍勢の親玉としての魔王も健在であるし、より「概念的」「抽象的」な宗教めいた存在へと回帰した魔王も登場している。
魔王としての強さも
- それこそ天皇やローマ法王のような単なる象徴としての魔王
- 政治的能力の高い官僚的魔王
- 戦闘能力も普通に最強クラス
などブレがある。
ただ一つ言えるのは「魔王=敵対者」というだけでは語り切れないほどに魔王にまつわる物語が増えている、ということである。あまりに多様化しすぎてただの気のいい子煩悩なおじさんも普通にいる昨今、魔王の明日はどっちだ。
魔王一覧
全部並べるとあまりに多くなるので、詳しくはタグ検索:魔王辺りも参照。
仏教的魔王
キリスト教的魔王
ルシファー
サタン
ベルゼブブ
アスタロト
ベルフェゴール
レヴィアタン
マモン
バアル
パイモン
バルベリト
プルソン
アスモデウス
ヴィネ
バラム
ザガン
ベリアル
etc・・・
創作の魔王
ピッコロ大魔王(ドラゴンボール)
大魔王ゾーマ・魔王バラモス(ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ…)
クッパ大魔王(マリオシリーズ)
魔王ガノン・大魔王ガノンドロフ(ゼルダの伝説シリーズ)
大魔王バーン・魔王ハドラー(ドラゴンクエスト ダイの大冒険)
大魔王ケストラー(ハーメルンのバイオリン弾き)
遠呂智(無双OROCHI)
魔王サイコ(宇宙刑事シャリバン)
大魔王ゴースン(怪傑ライオン丸)
大魔王ベムキング(サンダーマスク)
宇宙魔王(太陽の使者 鉄人28号)
暗黒魔王ゴクアーク、魔王レツアーク、魔王サイアーク(元気爆発ガンバルガー)
ブラック魔王(チキチキマシン猛レース)
オーマジオウ(仮面ライダージオウ)
バンリキ魔王(電子戦隊デンジマン)
魔王デカンダ(サンダーマスク)
冥王サウロン・冥王モルゴス・アングマールの魔王※魔法使いの王的な意味(指輪物語)
第六天波旬(神咒神威神楽)
田中魔王(地獄戦士魔王)
渋谷有利(今日からマ王!)
真奥貞夫(はたらく魔王さま!)
魔王ダンテ(魔王ダンテ)
魔王(まおゆう)
ジロウ・スズキ(魔法少女プリティ☆ベル)(魔法少女プリティ☆ベル)
魔王タソガレ(魔王城でおやすみ) -魔界の統治者であり、地下世界に押し込まれた魔族の生存権を確保するためにカイミーン国のスヤリス姫を拉致したものの、肝心の姫がアグレッシブ過ぎて頭を悩ませる苦労人でもある
混世魔王・樊瑞
カンピオーネ(カンピオーネ!) -「神にすら挑み倒してしまう無謀なる神殺し」にして「魔王の如く強大かつ傍若無人」な連中。かつては「魔術師の王」とも誤認されていた
杉田かおる
青木志貴
ガミガミ魔王
氷室舞生
古坂大魔王
常磐ソウゴ/仮面ライダージオウ
スタン(ボクと魔王)
まおう(ぼくときどきぶた) - 元は主人公たちがクラス発表会のために創作した紙芝居のキャラクターだが、発表会当日紙芝居から飛び出してあらゆるものの顔を豚に変えようとする
余談
読みは同じだが“麻黄”は関係ない。
こちらは、漢方・生薬の一種で、かの有名な“葛根湯”などにも含まれている。
追記・修正は魔王の方々にお願いします。
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