登録日:2015/05/21 (木) 22:45:00
更新日:2024/01/15 Mon 10:29:09NEW!
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ロイヤルネイビー 軍事 兵器 軍艦 空母 航空母艦 改装空母 秘密兵器 英国面 巡洋戦艦 自重しろフィッシャー卿 ハッシュ・ハッシュ・クルーザー フューリアス
フューリアス(HMS Furious)とは、英国海軍が建造した世界初の航空母艦であり、世界初ゆえの試行錯誤が生み出した偉大なる英国面である。
なお、“フューリアス”は「怒り狂う」とか「猛烈な」のような意味合い。
性能諸元(初期値)
排水量(基準/満載):22,450/28,500t
全長:240m(水線長230m)
全幅:27m
吃水:7.6m
機関:ヤーロー式重油専焼小型水管缶18基+ブラウン・カーチス式ギヤードタービン4基4軸推進
最大出力:90,000馬力
最大速力:32.5ノット
航続距離:6,000海里/20ノット
乗員:880~1,218名
兵装:45.7cm40口径単装砲2基
14cm50口径単装速射砲11基
7.6cm40口径単装高角砲5基
53.3cm水中魚雷発射管単装2基
船体装甲:51~76mm(舷側水線部)、25mm(水雷隔壁)、76mm(甲板最厚部)、254mm(司令塔最厚部)、
279mm(前盾)、103~178mm(主砲バーベット)
搭載機 固定脚機5~6機、水上機3機
お前これのどこが空母やねん装甲以外巡洋戦艦やないかい、詐欺かオウ詐欺なんか?
という突っ込みはごもっともだが、とりあえず読み進めていってほしい。
突っ込みどころの多すぎる建造経緯
どこぞのバカが火薬庫に火の着いたタバコを投げ込み、同時期に周りのバカがやってたチキンランも相まって勃発した第一次大戦勃発に際し、
英国政府は第一海軍卿(帝国海軍で言うところの軍令部総長のようなもん、と覚えておけばよい)の後任として、
引退していたジョン・アーバスノット・フィッシャーを引っ張り出した。
この名前にピンときたアニヲタ諸氏は正しい。この男、ドレッドノートの建艦計画推進者筆頭である。
まあ、要するに歩く英国面のようなもんで、英国面としてのジャンルは違うがジャック・チャーチルの同類だ。
そしてこの男、何をトチ狂ったか、会議の席上で文字通りにマジキチな作戦案を披露した。
要約すると、
ひとつ!究極無敵世界最強たるロイヤルネイビーの全力をもってバルト海に吶喊!!
ふたつ!陸海軍の総力を上げてドイツ北海岸に強襲上陸!!
みっつ!そのまま一気にベルリンを叩く!!
☆ 大 英 帝 国 大 勝 利 ☆
……馬鹿じゃねーの?何で現実で火葬戦記真っ青な作戦案開陳してんの?
今から考えればトチ狂ったとしか思えない作戦案がなぜ真剣に討議され、この作戦にしか使えないようなオモシロ戦艦が次々建造されたのか?
そこには第一次世界大戦の、それまでとは次元の違う泥臭く、血なまぐさい戦場惨禍が背景に横たわっている。
有名な「西部戦線異常なし」でも知られるラビリンスの如く入り組んだ塹壕と、1メートル進むのにも数百の命を吸い取ると言われた吸血鬼さながらの消耗戦。
「異常なし」の異常とは、前線が動かないという意味で、その背景には数百、数千の死体が並んでいるという地獄の戦場。
そう、国境線がそのまま要塞線と化した西部戦線は、ただただ毎日膨大な鉄と血を消耗するだけでまったく進展が伺えない膠着状態と化してしまったのだ。
ならば防備が整っていない北から攻めようという、ある意味では自然な発想から生まれたのがバルト海作戦なのである。
さて、フィッシャー卿のお脳の茹だり具合はともかくとして、仮に本作戦案を実行したとしよう。
その間、必死こいてパリ防衛中のフランスは捨て駒となる。これは英国的には「ざまぁwwww」だが、戦略的にはヤバい。
さらにイギリスを支える商船団はもれなくUボートの餌食となる。護衛艦隊もバルト海上陸支援に全振りするからね。
ついでに失敗すれば大英帝国軍はめでたく消滅、打ち切り最終話「☆ 連 合 軍 瓦 解 ☆」である。
どうあがいても実行できないししたくないしする気も起こりません、本当にありがとうございました。
今までの業績で自信過剰に陥ったか、そろそろボケ始めたか、はたまたニューロン一片に至るまで英国面に汚染されたか。
まあ全部、最善でも最後のは確定だろうが、ともかく総突っ込みを受けて本案はめでたく大却下された。
だがこれでめでたしめでたし……で済めば本項は要らん。
何とフィッシャー卿、職権濫用して作戦用秘密兵器を勝手に造りやがったのだ。
そんなこんなで建造されたのが、
バルト海上陸作戦支援用対地砲撃特化超大型軽巡洋艦
たるカレイジャス級(グローリアス級とも)と、その改良強化型たるフューリアスだったのである。
ちなみにフィッシャー卿曰く、こいつらのカテゴリーは「ハッシュ・ハッシュ・クルーザー」。
“ハッシュ・ハッシュ”というのは「人差し指を口に当ててシーッとやる行為」のことを指す。
まさに秘密(にしておきたかったしそもそも造る必要自体なかった)兵器。
なお、フィッシャー卿は本艦までの艦艇では満足しておらず、ハッシュ・ハッシュ・クルーザーや従来型の巡洋戦艦のコンセプトを極限まで突き詰めた、巡洋戦艦「インコンパラブル」の設計を進めさせていた。
このインコンパラブルのスペックは全長304m、排水量46,738t、速力35ノット、50.8cm連装砲3基を予定しており、完成していればアイオワ級の速力と超大和型の火力を併せ持つ化け物戦艦になる筈であった。もっとも、装甲は相変わらずペラペラなので完成したとしても実用性はお察しなのだが。
めでたく完成?そして第一次改装――使えるものは何でも使え
とまあ、マジキチ作戦案とそれで使うマジキチ超兵器ども(ただし防御はティッシュ)を造らんとしたフィッシャー卿だったが、
なんやかんやあってガリポリ上陸作戦(詳細はGoogle先生に相談だ)失敗の責任をとって辞職。
バルト海侵攻作戦案は完璧に葬り去られることとなった。めでたしめでたし。ついでにインコンパラブルも没になった。
……で済むわきゃないのが戦争である。それが1916年のユトランド沖海戦。
英独の主力艦隊が真っ正面から全力全壊で殴りあった結果、英国側の最新鋭巡洋戦艦が揃って汚ねぇ花火になってしまい、
ここに英国式(ひいてはフィッシャー式)の装甲軽視・超高速特化主義の弱点が露呈する。
そりゃそうだ、いくら速かろうが所詮艦、当たるときゃ当たる。本来はそのための右手、もとい装甲のはずなのだが。
カレイジャス級はしゃーないので惰性で完成させた(本艦未だ建造中)が、まあ、何だ。使い道がない。
そりゃそうだ、火力はともかく装甲は紙どころか濡れティッシュだし、喫水が低すぎるので外洋航海なんぞ不可能。
そんなもんをどうせいと?ということで誰かがひらめいたのが、
飛行機の海上運用プラットフォームにするのはどうよ?
というものだった。
当時の英国海軍はドイツのツェッペリン飛行船による北海の定時哨戒やドイツ海軍大海艦隊とツェッペリンの海空連携戦闘をとられるのを危険視しており、
何とかして洋上でツェッペリンを捕捉・撃墜すべく海上航空プラットフォームを用意していたのだった。
先だって英仏海峡鉄道連絡船や高速商船を改造した水上機母艦や、陸上機滑走台を持つ水上機母艦「ミックスドキャリアー」が複数隻就役していたわけだが、
より大型で本格的な航空機運用プラットフォームとして目を付けられたのがフューリアスだったのだ。
と言う訳で、建造途中で扱いに困ってたフューリアスを設計変更しよう、となったわけである。
結果、前部主砲を撤去して飛行甲板としつつ、45.7cm砲での支援能力も多少維持した航空機海上運用試験艦として、本艦は就役した。
見た目はアレだ、前後の備品を逆転した伊勢型戦艦みたいなイメージでひとつ。
さて、なんとか完成したフューリアスだったが、艦橋が艦中央に鎮座しているため、後の空母のような着艦は不可能。
ではどうやって着艦するかというと……
艦の隣を失速ギリギリで追い越し、艦橋を過ぎたところですかさず横滑り!
甲板上に着艦(という名の落下)したところをすかさず乗組員が人力で押さえ込んで確保!
というアクロバティック&ダイナミック着艦であった。お前ら曲芸飛行団か。
当然のように死者が出まくったため、「自衛能力なんぞ知るか!」とまともに着艦できそうなように、
後部主砲塔も撤去して着艦用飛行甲板を設置した。これが第一次改装である。
これならどうよ、と改修にあたったドック工員や改設計者の皆さんも思っただろうが、そうは問屋が卸さない。
よく思い返してほしい、艦橋と煙突はそのまんまである。さて、これがどういうことかというと……
飛行場で例えるなら滑走路のど真ん中に管制塔が突っ立ってるようなもんだ。
排煙と艦橋のせいで艦周辺の気流は乱れに乱れ、とてもじゃないが着艦なんぞできるわけがない。
しかし転んでもただでは起きないのがジョンブル魂、この扱いの難しすぎる艦でもって見事にドイツ軍への攻撃を成功させているのだがそれは後述するとしよう。
このフューリアスの実戦投入で得られたデータは後のイギリス空母、ひいては世界中の航空母艦の検討と運用に対する大きな手助けとなる。
第二次改装――本格的♂空母爆誕
さて、フューリアスの改装大失敗から得られた「航空機の離着艦に甲板上構造物は不要」という教訓により、
第二試作型空母の「アーガス」と「イーグル」は全通甲板を採用した空母として完成する。
全通甲板というのは、要は船体上面に何も乗せておらず、軍用機の離着艦に特化したものだ。おにゃのこで言うところのつるぺたであるな。
なぜか空母艦娘たちは、和装の上から膨らみが見える=おっぱいおっぱいなスタイルの持ち主が多いけど。
それはそれとして、この2隻の妹の運用実績に基づいてフューリアスは再改装され、格納庫の大型化や全通甲板採用を行い、
その分の浮力補填としてバルジを増設した結果、艦幅が拡大して安定性が若干向上している。
また、本艦で特徴的なのが二段式飛行甲板を備えていることだ。
上段は着艦及び攻撃機発進用、下段は戦闘機発進用となっており、複数機/複数種同時発艦が可能になっている。
下段甲板はちと短いが、当時の主力機は複葉機だったので問題はなかった。
なお、航空機の単葉化と大型化が進みつつある時期に三段式空母として改装された、赤城&加賀の一航戦コンビはというと……(目そらし)
まあ本艦でも結局、下段甲板は対空火器増設スペースになるんだけどな!
こうして2度の大改装を経て、フューリアスは空母として生まれ変わったのであった。
なお、小型艦迎撃用の単装速射砲2種はこの時点では残されていたが、39年の改修で対空兵装に換装されている。
性能諸元(最終型)――生まれ変わったフューリアスの性能がこれだ!
排水量(基準/満載):22,000/27,500t
全長:240m(水線長230m)
全幅:27.4m
吃水:7.6m
飛行甲板長:175.6m×27.9m(上段)/61m×27.9m(下段)
機関:ヤーロー式重油専焼小型水管缶18基+パーソンズ式ギアードタービンタービン4基4軸推進
最大出力:91,195馬力
最大速力:31ノット
航続距離:4,310海里/16ノット
燃料(重油/航空燃料):4,310/95t
乗員:1,230名中航空要員370名
兵装:Mark XVI 10.2cm45口径連装高角砲6基12門
ヴィッカーズ QF 4cm39口径ポンポン八連装砲6基48門
20mm連装機銃8基16門+同単装6基計22門
装甲(舷側/甲板):76/51mm
搭載機:最大40機
戦歴
時は1918年、世界初の空母として就役したフューリアスは第一次世界大戦に実戦投入される事となる。言わずもがな、これが世界初の空母の実戦投入となる。
第一次改装を終えたわずか4カ月後、フューリアスはその艦首に7機の爆装したソッピース・キャメルを搭載し、ドイツのトンデルン飛行船基地へと爆撃を加えたのだ。
この時代にはまだ珍兵器でしかなかった航空母艦からの攻撃はしかし、ソッピース・キャメルを駆る7人の勇士の手によって成功を収めた。
彼らは行く手を阻む対空砲火を潜り抜け、ドイツ海軍が擁する飛行船格納庫を急襲。
基地を炎上させて、「ハイトクライマー」と呼ばれた高性能ツェッペリン飛行船2隻を破壊する戦果を挙げた。
世界初の空母は世界初の空母作戦をも成し遂げたのである。
結果的に戦車に続く英国の珍兵器にしてやられたドイツ軍は各地の飛行船基地の対空装備を大急ぎで増強するハメになった。
一方この戦果に気を良くした英国海軍は空母活用の次の段階として雷撃機による艦隊攻撃を画策し
これが第二次大戦における空母による初の戦艦撃沈=タラント夜襲へと繋がっていくことになる。
空母として迎えた第二次世界大戦では、序盤はH部隊に所属しており、主に船団護衛や戦闘機の輸送、哨戒任務に従事している。
43年2月以降は本国艦隊に編入され、8月から翌年2月までは修理と訓練に費やしている。
その後はノルウェー沿岸のドイツ船舶攻撃やティルピッツ撃滅作戦に参加したが、航空機の大型化や船体の老朽化には抗えず、
44年9月15日付で予備役に編入され、45年4月に退役。航空攻撃の構造的ダメージ調査に使用された。
最終的に48年にスクラップとして民間へ放出され、54年までには解体を終えたという。
余談
さて、フューリアス&カレイジャス級改装の際に撤去された巨砲であるが、これらがどうなったかについても一応述べておこう。
カレイジャス級の38.1cm連装砲4基8門はそのまま保管され、戦時急造戦艦「ヴァンガード」の建造にリサイクルされた。
戦時急造と馬鹿にするなかれ、現場の改良要求をフル採用した結果、性能バランスに優れたなかなかの逸品に仕上がっている。
しかし結局終戦には間に合わず、最良最後と呼ばれた英国戦艦は、練習戦艦兼王室専用超巨大クルーザーとして生涯を過ごした。
一方フューリアスに搭載されていた45.7cm単装砲塔はというと、砲塔部が解体され、発射システムと砲身が再利用された。
沿岸での対艦/対地砲撃に特化した小型艦種であるモニター艦の「ロード・クライブ級」に増設されたのだ。
もともと前弩級戦艦の30.5cm連装砲塔積んでるところにさらなる無茶だが、何故かうまくいってしまった。
まあ、艦砲で一番重量食うのは砲塔構造で、発射システム(と砲身と防盾)だけなら結構軽く済むからだったりする。
そのせいで艦そのものを旋回させないと照準もろくにつけられず(そもそも右舷に向けて固定されてる)、もう完全に対地砲撃特化砲である。
なお、改修されたのはネームシップ「ロード・クライブ」(予備砲身)、3番艦「サー・トーマス・ピクトン」(艦尾主砲)、8番艦「ジェネラル・ウルフ」(艦首主砲)の3隻。
追記・修正は改装前のフューリアスに着艦してからお願いします。
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▷ コメント欄
- また君かwww素晴らしい。英国愛に溢れる見事な項目だwwwいいぞもっとやれ! -- 名無しさん (2015-05-21 23:22:42)
- なんでこんな案が真剣に討議され、こんな作戦にしか投入できなそうな艦が次々建造されたかというと・・・結局西部戦線の塹壕戦が恐ろしいほどの血を吸いまくったからだぬ。それくらいなら投機的でも短期にカタがつくバルト海作戦も賭けてみる価値があるのでは? と思われたわけだぬ -- 名無しさん (2015-05-22 12:55:31)
- 砲を流用したモニター艦は、無理やり積んだ巨砲の補強で全艦立錐の余地もない程に補強されまくった。当然この砲の砲弾装薬類は艦内に収められないので、水で覆った筒に小分けして露天搭載という空恐ろしい事になった。なお、元々この船が装備していた砲はバラスト代わりに引き続き搭載されているが、一応発砲は可能な状態を維持された。 -- 名無しさん (2015-05-23 00:27:49)
- 「西部戦線異状なし」なので異常とはちょっと違うかも -- 名無しさん (2017-11-12 21:36:59)
- シュリーフェンプランやら漸減作戦に比べればずっと現実的でしょバルト海作戦 -- 名無しさん (2017-12-22 21:46:29)
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