登録日:2012/09/28(金) 12:24:44
更新日:2023/10/30 Mon 12:13:48NEW!
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鉄道 廃線 宮崎県 電池 私鉄 宮崎交通 宮崎交通鉄道線
宮崎交通とは、現在宮崎県を中心に広範囲にわたって路線網を築いているバス会社である。
一方、かつては宮崎県内に鉄道路線を有していた事でも知られている。今回はそちらを取り上げたい。
◎概要
1911年、宮崎軽便鉄道によって路線が開業した。
名前は軽便鉄道だが線路の幅は1067mm、国鉄の在来線と同じ幅である。
当時軽便鉄道法という簡単に鉄道が敷ける法律があったため、線路の幅を問わず各地に「○○軽便鉄道」という名前の路線があった。
その後社名を宮崎鉄道に変更後、戦時中に国の命令により各地のバス会社と経営統合され、宮崎交通の鉄道線となる。
南宮崎駅から分岐していたこの路線だが、国鉄が新たに建設する路線と場所が被ってしまう事となった。
土砂崩れで運休していた路線を皮切りに、1962年までに全線廃止。
その翌年、一部区間の路盤を使用した国鉄(現JR九州)日南線が開通し、現在に至るのである。
◎車両
…と、ここまでなら、日本各地で良く見られる典型的なローカル私鉄である。
だが、この鉄道にはある特徴があった。しかも日本唯一。
それは、車両の動力源である。
終戦後の混乱の中で、これまで多くの鉄道が使用してきた石炭や石油が不足、価格も上昇を始めてしまった。
大弱りなのはそれらを燃料として使用していた各地の地方私鉄。そのため、多くの路線が架線を用いた電化工事を行い、電気鉄道として生まれ変わった。
この宮崎交通の鉄道線も例外ではなく、新たに「電車」や「電気機関車」を投入する事になった。
…だが、ただの電車や機関車では無かった。
なんとパンタグラフどころか、集電装置っぽいものも一切分からない外見。
というか電車に至っては改造元の気動車と全然見分けがつかない。
勿論、東京や大阪の地下鉄のような三線軌条(線路の傍に敷いた集電用の線路から電気を得る)でもない。
どういう事なのかと言うと…
蓄 電 池
…そう、なんと電池で動く電車だったのである。
当時のガソリン不足からバス部門などで運用されていた電気自動車の技術を応用したのだとか。
鉱山鉄道のような工業用鉄道では今もありふれている動力源なのだが、日本の地方私鉄でこんな方法を取り入れたのは珍しく、特に電車となると宮崎交通が唯一の例であった。
(蓄電池機関車は国鉄のAB10形(後の電気機関車EB10形)、軽便鉄道時代の西武山口線の機関車などいくつか例がある。)
…ただ、蓄電池動力には弱点がある。あくまで電池と言う事で、電気の容量に限りがあるのだ。
某エボルタ君のように長持ちすればいいのだが、残念ながらそうはいかなかった。
蓄電池が途中駅までしか持たなかったのである。
しかも1往復ごとに充電をする必要があり、結局蒸気機関車も最後まで現役でい続ける羽目になった。
…日本唯一になったのも仕方ないかもしれない。
だが、それから時が経ち、新たな形で蓄電池が見直されている。
JR東日本においてディーゼルエンジンと蓄電池を両用するハイブリッド気動車が世界で初めて投入され、観光地をはじめとする各地で少しづつ導入が始まっている。また、その試験に用いられた気動車は新たに燃料電池を動力源に用いる電車として生まれ変わり、その成果を活かした「EV-E301系」が2014年春から烏山線にデビューした。電化区間はパンタグラフを使って充電し、非電化区間は電池に充電した電力で動く。まさに蓄電池式電車の復権である。
そして、交流区間であるJR九州でも2016年に蓄電池電車BEC819系の「DENCHA」がデビュー。この車両は秋田地区の男鹿線にもEV-E801系として導入された。
また、機関車でもJR貨物が構内入換用機関車としてHD300形を導入している。
環境対策という観点や技術の向上で、再び脚光を浴び始めた「蓄電池」。
宮崎交通鉄道線は「日本でただ一つ」ではなく、「日本で初めて」蓄電池電車が走った鉄道路線という名誉ある称号を得たのである。
追記・修正はたっぷりと充電をしてからお願いします。
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