シオヤアブ

ページ名:シオヤアブ

登録日:2026/07/16 Thu 20:10:12
更新日:2026/07/17 Thu 08:52:26NEW!
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シオヤアブとは、ハエ目ムシヒキアブ科に属する昆虫である。
そして何より、最強議論ではオオスズメバチオオカマキリオニヤンマ等と並ぶ日本最強の肉食昆虫の一角と名高い、とんでもないアブである。



◆もくじ



概要

大きさは25〜30mmほどと本州に生息するムシヒキアブ科の中では最大種。どれくらいのスケールかと言えば小さめのオオスズメバチくらいの長さはあると言えば分かりやすいだろうか?
一般的に想像されるハエやアブの太く短いフォルムとは反対に細長いスラっとしたシルエットが特徴。(これはシオヤアブに限らず、ムシヒキアブ科の多くに共通する。)
それ故長さは同じくらいでもスズメバチなんかと比べると小さい印象を受ける。色は茶褐色で、体表には多くの毛が生えておりモフモフな見た目でアブのくせに割と可愛い…可愛くない?


また、オスの腹部の先端にはフワフワとした白い毛の塊が付いており、これが塩屋で売られる塩の塊の様に見られることが名前の由来。恐らくはメスへのアピールに使われると考えられている。


日本各地の草原、森林、庭の草木に至るまで結構色んな場所で見られる。まぁあまり人気のある昆虫では無いので意識していない人が大半だろうが、画像を調べてみれば既視感を覚える人も多いのではないだろうか?


基本何処にでもいるため、田んぼや畑の害虫を減らしてくれる益虫としての側面も持つ。アブの中にはウシアブの様に人間や家畜を吸血し時に病気をばら撒く厄介な種もいるがムシヒキアブ科はそんなものとは無縁。せいぜい捕まえた時に自衛目的で噛んでくる可能性があるくらいだろう。


生態

昼行性で、普段は葉に引っ付いて休んでいたり、餌を求めてブンブン跳んで移動したりしている。


食性はもちろん肉食。だが彼らの摂食方法はカマキリのように丸かじりというわけではない。デカい口吻を獲物の体に突き刺し消化液を体内に注入、それによってドロドロに溶けた相手の肉や臓物を啜るという恐ろしい食べ方なのだ。同じ様な食べ方の昆虫ならタガメ等も有名か。
だが、この食べ方は欠点もある。シオヤアブの武器は口吻と消化液のみであり、それ単体では大顎のような直接的かつ即効性の高い殺害手段たり得ないのだ。スズメバチも獲物を狩る時は毒針よりも強力な大顎を主に使用するし、あまり大きな顎を持たないカマキリ、シオヤアブと同じ摂食方法をとるタガメなんかは相手を掴んで死ぬまで抵抗させないための強力な鎌や腕を持つことで瞬間的な殺傷力の無さをカバーしている。
しかし、シオヤアブにそんな便利な物はない。かと言って無策で突撃すれば相手に抵抗され、逃げられたり最悪の場合こちらが返り討ちにされてしまうだろう。ならばどうするか?


そんな問題を解決するためにシオヤアブ、いやムシヒキアブ科はユニークな狩りの仕方を開発した。


①まず、高い場所で止まり、獲物が近づくのをじっと待つ。自分より下の位置に獲物がやってくるのが望ましい。


②獲物が近づいてきたのを視認すると、高性能な複眼で相手の次の動きを予測し、その位置めがけてアブの仲間特有の優れた飛翔能力と加速力を活かして速攻をかける。狙いは獲物の無防備な背中側。


③獲物に飛びつくと同時、口吻を対象の体に突き刺す。この際闇雲に刺すのでは無く、頸部の神経節を狙う。ここを刺されるとどうなるかって?


答えは簡単、対象は即死する。


仮に即死を免れたとしても獲物にまともな抵抗をする力など無いだろう。何故なら神経を切断されたせいで動くことなど不可能なのだから。


④後は食べやすい場所に口吻を刺し直すなりして消化液を流し込み、ゆっくりと肉を啜るのみ。


ね?簡単でしょ?


このやり方によって相手の逃げ足が速かろうが力が強かろうが大抵の相手は一切の抵抗を許さず一瞬で殺害することを可能としており、カメムシ、チョウ、ハエ、アブ、ガガンボ、バッタ、果てには自分より大きく力の強いセミ、オオスズメバチにオニヤンマ、オオカマキリすらも獲物としてしまう。
またこの方法は甲虫の高い防御力も無視して殺害できる*1ため、普通の肉食昆虫なら無視するコガネムシやカミキリムシ等も容赦なく捕食する。


反面、あくまで奇襲を前提としている戦法であるため正面からの闘いではただの羽虫。スズメバチに返り討ちにされ、オニヤンマの早業の前に捕獲され、カマキリに奇襲をやり返されることも多い。


結局のところ、彼ら日本肉食昆虫四天王は拮抗したパワーバランスであり、どちらが先に相手に気付くかが勝負を分けると言えるだろう。

生涯

いかに最強クラスの昆虫といえど、最初から強いわけでないのは当たり前。夏や秋の内に草木の葉に産卵され、そこから生まれてきた幼虫(いわゆるウジ虫)は落下した後周囲を掘り進め、他の昆虫の幼虫などを食べてすくすく育つ。この頃は奇襲戦法なぞ使わず(というか使えず)、苦労して獲物を捕らえているし、ムカデやアリの様な地中性の捕食者に会えば抵抗できるわけも無く普通に蹂躙されてしまうだろうし、途中で厳しい寒さの冬もやってくる。


そんな過酷な幼少期を生き延びたものだけが春から初夏頃に蛹となれるのだ。これはおおよそ3週間ほどで羽化するとされている。


そして夏に羽化した成虫が満を持して活動開始、付近をブラブラしたり獲物を食べたり逆に食べられそうになったりと波乱万丈な人生を送りながら、その過程で繁殖のパートナーを見つけることとなる。
お尻を付け合わせて交尾すれば後は御仕舞。メスは産卵を終えた後、オスなら交尾を終えた後にその短い生涯を終えるのだ。



最強の暗殺者。その仲間達


ここでは、シオヤアブに代表されるいくつかのムシヒキアブ科を紹介していこう。


メスアカオオムシヒキ

主に南西諸島に生息する体長40mmほどの、日本生息のムシヒキアブ科の中では最大の種。
メスの個体はその名の通り赤褐色であり、黒褐色のオスとは見分けがつきやすい。シオヤアブと同様強力な相手にも果敢に立ち向かい餌としてしまう。


ヒラタムシヒキ

体長14mmほどの小型の仲間。自然度の高い砂丘や砂浜にしか生息しないという特異な性質を持ち、それ故環境変化には弱く数を減らしている。


アシナガムシヒキ

種によって大きく異なるが、概ね15〜27mmほど。長さだけ見れば中〜大型のムシヒキアブなのだが、名前の通り足が長い…だけでなく、全体的な体型がマジで細長い。その細長さたるやフォルムはアブというよりガガンボに近いほど。
何故か止まっている時に片足を上げるという習性があるが、理由は良く分かっていない。一説では単に落ち着くポーズだからやっているとも。可愛い。

ホソムシヒキ

そんなアシナガムシヒキを上回る細身の持ち主。もうここまで来ると普通にガガンボにしか見えないが、これでも立派なハンターである。
この細さが有利に働くのかは分からないが、クモの巣に突撃し家主のクモのみを捕らえ、下手に動けばそのままくっついて御臨終となるクモの巣の上で食事をしていたという報告がある。


メガネムシヒキ

10mm前後の小型種。複眼が他の種と比べて非常に大きく、前から見た様子がサングラスをかけている様に見えるというのが名前の由来。


オオイシアブ

20mmを超える大型の種。細長い形態の種が多いムシヒキアブ科の中では珍しく太短いプロポーションを持ち、おまけにめっちゃフワフワ。それらのおかげでハナバチやクマバチに近い見た目である。もしかしたら防御的擬態の一つなのかも?もちろん滅茶苦茶可愛い。


アオメアブ

29mm近くに達するかなりの大型種。明るい黄色の体色に名前の由来となった鮮やかな青緑色の複眼が美しい種。一生を通して自然豊かな草原に住むため『環境指標生物』としての性質を持つ。




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  • 建て乙 スズメバチの天敵の項目にある中ではマイナー目な昆虫だったから助かる -- 名無しさん (2026-07-17 06:07:11)

#comment

*1 甲虫も頭と胸の間の様な急所は甲殻で覆っていないことが多い。

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