1999年第16回フェブラリーステークス

ページ名:1999年第16回フェブラリーステークス

登録日:2020/04/23 (木) 18:00:00
更新日:2024/05/17 Fri 11:23:08NEW!
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東京競馬場 レース 東京都 競馬 地方馬 g1 フェブラリーステークス メイセイオペラ その時歴史が動いた



メイセイオペラがやりました!

歴史に名を刻んだのはメイセイオペラ!


1999年1月31日に東京競馬場で行われた第16回フェブラリーステークスは、メイセイオペラが勝ったレースである。


●出走馬・鞍上


1999年東京1回2日11R 第16回フェブラリーステークス
中山ダ左1600m 四歳以上オープン 定量(58kg、牝馬2kg減)


馬名
騎手
11マコトライデン牡6福永祐一
2ストーンステッパー牡7橋本広喜
23バトルライン牡7藤田伸二
4メイショウモトナリ牡6安田康彦
35ミスタートウジン牡14中舘英二
6マチカネワラウカド牡6高橋亮
47キョウエイマーチ牝6秋山真一郎
8ビッグサンデー牡6蛯名正義
59メイセイオペラ牡6菅原勲(※)
10タイキシャーロック牡8横山典弘
611ワシントンカラー牡6柴田善臣
12エムアイブラン牡8武豊
713オースミジェット牡6四位洋文
14テセウスフリーゼ牡8的場均
815シャドウクリークセ7岡部幸雄
16ドージマムテキ牡10セバスチャン・サンダース(英)

(※)人馬共に岩手県競馬組合・水沢競馬場所属


1番人気は前走のガーネットステークスを圧勝したワシントンカラー。
2番人気は昨年のマイルチャンピオンシップ南部杯を勝ち、前走の東京大賞典で2着だったメイセイオペラ。
3番人気は前走の平成ステークスで勝利したオースミジェット。
4番人気は前走の浦和記念を勝ち、過去の南部杯勝利馬であるタイキシャーロック。
5番人気は97年桜花賞馬であるキョウエイマーチ。



●レースの背景

本来は2月中旬~下旬にかけて行われる中央GⅠのダートレース。
しかしこの年は開催が2週間早まったことでフェブラリー(2月)なのに1月に行われるという奇妙な感じとなった。


注目は本レース唯一の地方馬である岩手のメイセイオペラ。
日本競馬史上初の、地方馬が中央GⅠを制する可能性が高い馬として話題を集めていた。
ここまでのダートGⅠでも砂の王者アブクマポーロに次ぐ存在であることは明白であり、実力は申し分なし。
マイル戦も5戦5勝と得意としている距離であり、不安要素といえるのは初めての中央GⅠ、初めての東京競馬場でのレースという点くらいなものだった。


地方競馬と中央競馬の交流が行われてはや数年、地方馬は中央の壁を前にし、辛酸を嘗めさせられる日々が続いていた。
だが、交流元年に頭角を現した笠松のライデンリーダーをはじめ、中央馬に立ち向かえる力を持った地方馬たちがいなかったわけではない。
この時期のダート戦線では、船橋のアブクマポーロが王者として中央馬を蹴散らしており、メイセイオペラはそのライバルとして鎬を削っていた。
そして数々の名勝負が行われたこの1年において、古馬ダート交流GⅠの冠をアブクマ&メイセイの地方馬2頭が全て勝ち取っていたのである。
まさに「地方競馬の黄金期」。それだけにメイセイオペラにかかる期待というものは大きかった。


無論、中央馬にも意地がある。
地方の雄に立ち向かうべく、GⅠ経験豊富なダート巧者が集った。
中央本命に選ばれたワシントンカラー、上り調子のオースミジェット、交流GⅠ馬のタイキシャーロック、超良血馬のバトルライン、末脚鋭いマチカネワラウカド、重賞経験豊富なエムアイブラン。誰が勝ってもおかしくないメンバー揃いである。中には桜花賞馬であるキョウエイマーチや、御年14歳(現在における13歳)の大ベテラン・ミスタートウジンの姿もあった。
交流GⅠのタイトルを軒並み掻っ攫われている今、中央GⅠの栄光まで地方馬に奪われるわけにはいかない。
彼らのホームグラウンドで行われるGⅠに単身乗り込んだ地方馬に、超えられない「壁」というものを見せつける。
1番人気の単勝オッズ4.5倍という高さは、地方の夢と中央のプライドのせめぎ合いの結果といえよう。
そして地方の雄は解説者に若干ぞんざいな扱いを受けながらも中央の壁に挑むことになる。


●レース展開


緑の向こうに広がる東京砂漠

マイルの果てに栄光は、オアシスか蜃気楼か



塩原恒夫氏による毎度恒例のポエム名実況から始まるレースは、快足馬キョウエイマーチがハナに立つ展開に。
東京競馬場特有の芝から始まるダートコースを、ビッグサンデーを引き連れて軽やかに走っていく。
ダートコースに入る頃には内からマコトライデンとメイショウモトナリも先陣に切り込む。
メイセイオペラは前から5、6番手。先行型のメイセイにとってはいつもよりやや後方だが絶好の位置に入る。
その地方の雄に負けじと、人気馬のワシントンカラーとオースミジェットもすぐ後ろに付いていた。


先頭のキョウエイマーチがマイペースに引っ張っていくままに3コーナーへ。
競走開始前まで、彼女の快足によって全体的にハイペースなレース展開になると予想されていた。
しかし実際には1000m通過が60秒3、とりたてて速くもない平均ペースの流れであった。
この展開は先行組にとっては僥倖。一方で後方待機策を取っていた馬も前へと出始める。


4コーナー。最終カーブを曲がり切り、最後に待ち構えるは東京競馬場の長い直線。
ひとかたまりとなった馬群が横に広がって、それぞれが追い出しにかかる。
人気馬たちが前へと進んでいく中、キョウエイマーチも持ち前の粘り強さでハナを譲らない。


懸命に坂を登っていく各馬の中で、外目から一際力強い脚を見せる馬がいた。
好位に付けていたメイセイオペラが馬群を抜け出し、じわりと上がってきたのだ。


メイセイオペラが上がってくる!

メイセイオペラが先頭か!


残り200m。最後のハロン棒を通過する瞬間、ついに菅原騎手がゴーサインを出した。
粘るキョウエイマーチを抜き去り、メイセイオペラが先頭に躍り出る。
坂を登り切った後もその脚は衰えるどころか力強く伸びていき、馬群を一気に突き放していく。
完全に抜け出したメイセイオペラに、後続たちが必死に追いすがるが、その差は縮まらない。
そして、ゴールと同時に、菅原騎手が力強くガッツポーズを決めた。
日本競馬の歴史に一つの「伝説」が生まれた瞬間であった。


初めて地方所属の馬が、中央のGⅠを制しました!

菅原勲が決めました!



結果


1着 メイセイオペラ
2着 エムアイブラン
3着 タイキシャーロック
4着 オースミジェット
5着 キョウエイマーチ
6着 ワシントンカラー
7着 マチカネワラウカド
8着 バトルライン
9着 ビッグサンデー
10着 テセウスフリーゼ
11着 メイショウモトナリ
12着 シャドウクリーク
13着 マコトライデン
14着 ストーンステッパー
15着 ミスタートウジン
16着 ドージマムテキ


払い戻し

単勝9470円2番人気
複勝9220円2番人気
12310円6番人気
10230円4番人気
枠連5-6500円1番人気
馬連9-123,720円18番人気

勝ち時計、1分36秒3。


1着のメイセイオペラ。
外めを通って好位から抜け出し、力の差を見せつけるような走りで2馬身差の完勝だった。
最後の直線の走りはまさに横綱相撲と言っていいだろう。


2着以下は混戦模様となったがそんな中で2着に食い込んだのは7番人気のエムアイブラン。
流石は名手武豊騎手。直線でぐんと伸びた脚を見せてくれた。


そして3着はタイキシャーロック。
ダート巧者として、南部杯優勝馬の意地を見せた。


このレース結果により、メイセイオペラは日本競馬史上初の「地方所属のまま中央GⅠを勝利した馬」となった。
ハイセイコーやオグリキャップも成し遂げなかった偉業に、ついに到達する名馬が誕生したのである。


そしてメイセイオペラの勝利に、彼を支え続けてきた岩手競馬の人たちも歓喜に沸いた。
馬主の小野寺明子オーナーは、亡き夫である小野寺良正氏の遺影を掲げて愛馬メイセイオペラの雄姿を伝えた。
調教師の佐々木氏は終盤まで冷静にレースを見守っていたものの最後の直線メイセイが先頭に立つと興奮のあまり我を忘れ前にいた知人の肩を持っていた新聞紙で叩きまくっていたという。
そして東京競馬場に集った岩手のファンが彼らの快挙を称えるため「イサオ・コール」を叫んだ。
地元応援団から始まったコールは次第に10万人を超える競馬ファンによる大合唱となり、府中の空に響き渡った。


また、実況を担当した塩原アナは発走前の実況でやたらメイセイオペラを推していたことでも有名。
塩原アナは福島から上京して有名アナウンサーにまで成り上がった人物であり、メイセイオペラに何か通じるものを感じたのかもしれない。買ってただけだろとか言わない!


●その後

このあともアジュディミツオーやフリオーソなど、中央勢と互角に渡り合う地方馬はちょいちょい出てくるのだが、このレースから20年以上が経った2024年現在においてもなお、この偉業に手が届いた馬はメイセイオペラ以外に存在していない。
中央のダートレースも整備され、中央馬がダート路線へ進んでいくケースが増加したことで強い馬も相応に増えている。
そのため、生粋の地方馬が中央GⅠを勝ち取ることはもっとずっと難しくなったと言わざるを得ないのが実情である。


それでも地方競馬ファンはあの栄光の夢を見る。
彼の雄姿に思いをはせつつ、第二のメイセイオペラ誕生を待ち望んでいる。


●余談

5番人気に押されたキョウエイマーチは逃げの一手で踏ん張り人気通りの5着。
パワーの差からダートは牡馬に比べて牝馬が不利なレースと言われているがそれでも粘って掲示板に入るところに桜花賞馬の底力が感じられる。
この後もダートをちょくちょく走り南部杯2着などそれなりの実績を残していることからダート適性も悪くなかったとみえ、事実その後彼女の孫からアメリカのBCカップディスタフを制するマルシュロレーヌも誕生している。


15着に終わったミスタートウジンは、当時14歳(現馬齢表記13歳)の中央競馬史上最年長現役競走馬であり、GⅡ時代のフェブラリーS・及びその前身「フェブラリーハンデキャップ」にも出走した経験があった。
なお本レースの翌年100戦目にフェブラリーSを選び有終の美を飾ろうとしたが除外され、その後も重賞に申し込むも外れ続けた後故障により惜しくも99戦で引退した。


最下位のドージマムテキも戦績こそ平凡ながら現役は長く、かつて2回帯同馬となり香港へ行った経験がある事から1999年10月アグネスワールドの帯同馬としてフランスGⅠレースにも参加。翌年のラストランもフランスという豪華な事になった。
ちなみに漫画『馬なり1ハロン劇場』でこのレースが題材となった際は、このドージマとトウジンのおっさんコンビが主役に抜擢されていた(メイセイオペラはラストのみの登場)。


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