登録日:2011/03/10(木) 00:19:45
更新日:2023/11/20 Mon 10:57:14NEW!
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歴史 軍事 近代史 世界史 戦争 冷戦 中東 中東戦争 エジプト イスラエル オイルショック シリア パレスチナ問題
第四次中東戦争
通称 十月戦争
1973年10月6日〜10月26日
主要交戦国家
- エジプト
- シリア
&アラブの国々の連合軍
対
- イスラエル
アラブ側の呼称は「十月戦争」だが、イスラエル側では「ヨム・キプル(贖罪日)戦争」。
米ソ最新戦車の交戦やイスラエルの劣勢、中東情勢の変化等々色々話題に尽きない戦争。
※概要
- 開戦前夜(エジプト)
『中東のヒトラー』ことナセル大統領亡き後、エジプトの大統領に就任したサダートは長年に渡る戦火に疲弊した国力の回復を考えた。
目下の課題は
- 交戦相手イスラエルとの講和
- 先の戦争で奪われた『シナイ半島』の奪還
- 同『スエズ運河』の奪還
である。
サダートはソ連の軍事顧問を追い返す等、親米路線をアピールしてアメリカの仲介を期待するも、中東最大だった反米国家の転身を信じる訳もなく、さらに『ベトナム戦争』等諸問題に大わらわで空振り。
大国は何処も「中東でイスラエルに勝てる国は無い」
と考えていた。
ここでサダートは賭けに出た。
「開戦早々全力でぶっ叩いて領土を奪還し、戦況有利の内に和平を結ぼう」
と考えたのである。
まず、先だって追い返したソ連の軍事顧問を再度呼び、最新兵器を買い付ける。
ついで中東諸国と再度結託し、イスラエルへの同時進行を計画。
決行は『ユダヤ教』の贖罪日である10月6日。
第四次中東戦争の幕開けである。
- 開戦前夜(イスラエル)
イスラエルは、先の『第三次中東戦争』での奇襲作戦で莫大な領土を得た。
しかしその明らかな侵略行為により、国際社会から孤立。
大国からの援助(特にイギリスからチーフテン戦車を配備する予定だった)を打ち切られ、さらに建国以来の連戦連勝で軍の士気も緩みきっていた。
そんな中、情報機関『モサド』より、エジプト再軍備の報告を受けるも「ワロスw」程度にしか聞いていなかった。
何処が攻めてきても片手で払えるさ、と完全に舐めていたのである。
それよりイスラエルにとっては、前年1972年のミュンヘンオリンピックでのイスラエル選手団の殺害テロを起こした『黒い九月』への復讐が先決だった。
そんな中、10月6日ヨム・キプルの日が明けた。
- 開戦
10月6日、エジプトとシリアは奇襲を開始。
エジプト軍はスエズ運河より攻撃。
イスラエルは対岸に『バーレブライン』と呼ばれる、高さ3mからなる土塁の陣地を築いており、突破には三週間は掛かるものと見ていた。
しかしエジプト軍はこれを運河の水を利用して放水車で攻撃し、僅か三時間程度で突破。
この速攻にイスラエル軍は防備が間に合わず大混乱。
自慢の機甲師団は新兵器RPG-7ロケットランチャー等の対戦車兵器で大打撃を被り、常勝だった国防空軍はZSU-23-4シルカ対空戦車等の対空兵器の餌食となった。
勢いに乗ったエジプト軍は快進撃を続け、シナイ半島を奪還。
一方シリア軍はゴラン高原にて早々に膠着状態に陥っていた。
- 反撃(イスラエル)
エジプトとシリアの奇襲作戦で大打撃を受けたイスラエルは、秘密兵器『内緒のミサイル』の照準をカイロに定めて、ベトナムから撤退したばかりのアメリカに支援を要求。
この「私だけが、死ぬわけが無い…中東の油も一緒に連れていく」と言わんばかりの行動に、アメリカは最新のM60スーパーパットン戦車(後のマガフ6/7)や有線式対戦車ミサイルを授与。
戦力を整えたイスラエル軍は、シナイ半島で動きを止めたエジプト軍は後回しにしてシリア軍を攻撃。
シリア軍はエジプトに「さっさとイスラエルへ攻め込め」と要請するも、「うちらの目的は此処までだし」とあっさり拒否。
他の中東諸国に援軍を要請するも、基本的に「イスラエルとつぶし合え」以外頭にない中東諸国は形だけの援軍しか出さない。
瞬く間に巻き返されて首都ダマスカス目前まで追いまくられる。
が、ここでソ連の「それ以上はいけない(キリッ」の一声に進軍を停止。
シナイ半島でも攻勢に出て国際連合が停戦決議を行うも、「停戦決議なんか無視無視」とイスラエルは軍事行動を辞めなかった。
ソ連は「これ以上は私が相手をする事になる(キリッ」と、介入も視野に入れた軍事支援をアラブ側に始め、同じくアメリカもイスラエルの軍事支援を強化した事から「第三次世界大戦」の勃発も騒がれ始めた。
しかしアラブ側にはある意味でイスラエルの『内緒のミサイル』より強い武器を持っていた。
アラブ諸国「イスラエルを支援する者には石油は売らず」
「石油」である。
当時石油利権を欧米のオイルメジャーから奪い返し、自国で管理するようになったアラブ諸国はイスラエルから手を引かせる為に、最大の支援を行っていたアメリカとオランダに石油禁輸措置を取り、その他の支援国に対し、原油価格の大幅引き上げ及び石油供給削減を開始する。
これにより原油価格が高騰し、即ち「オイルショック」が発生した。
日本はアラブ側にもイスラエル側にも立たない中立的な外交を展開していたが、アメリカと「日米同盟」を結んでいた為に、支援国とみなされる可能性が高かった為、急遽アラブ諸国に日本の立場を説明し、支援国家リストから外すように交渉した。
しかしオイルショックによる原油高騰によって高度経済成長期が終焉を迎え、石油製品を始めとする値上げが発生。
「紙製品がなくなる」というデマによってトイレットペーパー等の買い占めが発生する等、一般の生活にも大きな影響が響いた。
オイルショックや必死の抵抗によってアラブ側は対等な立場を得る事ができ、双方睨み合いが続いたが、米ソの仲介によって停戦となり、その後エジプト・イスラエル間で和平が成立し、両国間の約30年に渡る長い戦争に終止符が打たれた。
- 終戦
戦争終了後、二国間で『中東和平条約』が結ばれる。
- シナイ半島返還
- スエズ運河返還
- 互いに攻撃しない
- イスラエルを承認する
これにより、エジプトは当初の目的を達成。
中東で初のイスラエル承認国となった。
さらにソ連との縁を完全に絶ち、親米路線を明確に提示した。
- 余談
当然エジプトは他の中東諸国から総すかんを喰らい絶縁される。
特にカダフィ大佐は直前まで「貴方と…合体したい…」と国家統一を目指し国旗まで同じにしていたが、エジプトとイスラエルの国交樹立に「エジプトのバカ!もう知らない!」と激怒して一晩で国旗を緑一色にした。
が、元々何の益も無いのでエジプト的には全然問題なかったそうな。
もっともこの裏切りや国内のゴタゴタの影響で、サダートはこの後イスラム過激派に暗殺されたんだけどな!
- 蛇足
上の書き方だとイスラエル空軍が一方的にフルボッコにされたように見えるが、実際にはアラブ側が330機以上の機体を失ったのに対し、イスラエル空軍が失った機体は6機から多くとも10数機と僅かなものであった。
エアパワーで圧倒された結果、エジプト・シリアの制空権はイスラエルに確保され、本土上空をイスラエル空軍が我が物顔で飛び回る状況だったという。
…がこれはあくまで空中戦での話。
前述されたエジプト軍スエズ運河前線の対空網によって、開戦から僅か48時間でイスラエル空軍は100機以上も機体を失い、前線において制空権の確保に失敗。
そして、その僅かな地域の制空権を確保出来なかった事がこの戦争の趨勢に多大な影響を与えたのである。
- パレスチナとイスラエルの対立、その後は
その後25年間で4回も戦争で負け続けたアラブ側とパレスチナ側は、このままでは耐えられないと「インティファーダ」と呼ばれる住民の抵抗運動が広がっていき、住民がイスラエル軍に石を投げて抵抗を開始。
一方でパレスチナの外ではアラファト議長率いるPLO=パレスチナ解放機構という組織が、各地でイスラエルに対する武装闘争を展開していく事になる。
そんな中、転機が訪れる。
1991年、湾岸戦争が勃発したのだ。
その際に当時のイラクのサダム・フセイン大統領は、旗色が悪くなる中で「アラブの正義の為にパレスチナを解放する」と言い出して、はるか遠くのイスラエルにミサイルを数十発も発射する事態になったのだ。
これをきっかけに「パレスチナ問題を解決しないと大変だ!」と国際社会が大慌てとなり、事態打開を求める声が高まったのである。
そこで1993年、アメリカとノルウェーの仲介で、イスラエル・パレスチナ双方のトップに交わされたのが、パレスチナ暫定自治合意、いわゆるオスロ合意である。
パレスチナに暫定自治区を設置して、いずれはイスラエルとパレスチナの双方が共存することを目指す、という内容であり、和平交渉の期限とされていた2000年までは楽観論が広がっていた……。
だが、そう簡単にはいかなかった。
後にイスラエルの首相となる和平反対派である右派のシャロン氏が、エルサレムのイスラム教の聖地に勝手に足を踏み入れてしまい、礼拝中だったイスラム教徒が激怒して暴徒化し、それをイスラエルの警察が力ずくで排除した為、各地で抗議の運動が勃発し、激しい衝突が相次ぐ暴力の応酬となっていってしまった。
もう、オスロ合意は暗礁に乗り上げてしまったのである。
衝突が長期化していく中、イスラエルの世論が右傾化し、選挙であのシャロン氏が首相となり、「イスラエルにテロリスト来ないように壁を作ってしまえ」として、ヨルダン川西岸の境界に食い込むように分離壁を設置。
この壁ができて、テロが減った事をきっかけに、危害がないなら交渉はもういいじゃないか、という考え方がイスラエル側で広がっていき、続的な国を作る為には和平しか手段がない、という考え方が次第に失われていく事態となったのである。
その後シャロン首相から同じく右派のネタニヤフ氏に変わり、パレスチナ側はオスロ合意後、暫定自治政府のトップとしてパレスチナをまとめていたアラファト議長の死後、アラファトと同じく穏健派の政治勢力「ファタハ」に属していたアッバス議長が付くが、過激派である「ハマス」の力を抑えきれず、選挙で敗北してしまう事態となり、自治区である「ガザ」を支配する。
しかしヨルダン川西岸は、イスラエルと和平交渉を続けるという立場をとっている「ファタハ」が統治を続けており、パレスチナは事実上一体ではなくなってしまっている状況となった。
next第五次中東戦争
…は幸いに起こっていない。
起これば…賢明な諸兄ならもう解るはずだろう。確かになかなか簡単に解決出来る問題ではない。
だが、それを放置し続ける限り、将来にわたって混乱や対立の火種が残り続ける事には変わりはない。
国際社会は今、その現実と改めて向き合わなければならず、もちろん我々もこの問題を正しくきちんと知る事が大事である。
アラブ人とユダヤ人は兄弟だ。
いずれもアブラハムの子孫で
共通の起源による類似性は非常に大きい。
アラブ人とユダヤ人は兄弟のように暮らさねばならないのだ。
──エドムンド・ド・ロスチャイルド
両国の人々が憎みあう事がない未来を望む方は、追記・修正をお願いします。
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▷ コメント欄
- んで 今二人は… -- 松永さん (2013-08-28 15:35:22)
- ↑エジプト=選挙についてで混乱中 シリア=「ふ、ふん、アメリカが攻めてきたって怖くないんだからなっ」(コワイヨーコワイヨー、ロシアタスケテー)ですね、わかりますw -- 名無しさん (2013-09-11 12:50:48)
- イスラエル木星帰り説 -- 名無しさん (2014-06-15 20:50:41)
- 結論:イギリスが悪い -- 名無しさん (2014-06-15 21:03:56)
- 第五次もネタでなくなってきたな -- 名無しさん (2014-06-30 18:17:25)
- イスラエルつーか、ユダヤ人ってナチスに徹底的にやられたけど、今は宗教の名の元にそれ以上の被害を広げようとしてんのはどうなのよ? -- 名無しさん (2014-08-02 15:36:01)
- 今はホロコーストやアンネの日記みてもまったく同情できない -- 名無しさん (2014-08-02 15:42:29)
- ↑だよなぁ。イスラエル建国にしても、神様の「エルサレムは君たちのものだよー」と、欧米の、「俺たちに協力してあげたら、パレスチナにイスラエルを建国させてあげるよー」という裏取引で、パレスチナ人から奪い取ったようなものだからなぁ。 宗教上の理由によるものという一点をのぞけば、やったことは日本からどさまぎで北方領土を奪ったロシアと大差ない(北方領土問題もアメリカとの「日本に宣戦布告してくれたら~」という裏取引だし)。 さらにいうなら、似た経緯でパレスチナを奪ったイスラエルを表立って非難しない点において、日本にロシアを北方領土問題で非難する資格はないと想う。(ロシアにしては、「お前らイスラエルのことについては黙殺しとるだろ」と返される可能性ありあり) 皮肉なことにヒトラーの「ユダヤ人滅ぼすべし」はある意味では当たっていたわけだ -- 名無しさん (2014-08-02 15:43:31)
- しかし、建国から60年イスラエルで生まれた人間が中核になり、さらには他から逃げてきたアラブ系イスラエル人やイスラエル国民となったパレスチナ人もいる以上もはや戦い続けるしか… -- 名無しさん (2014-08-02 17:14:19)
- ↑だけどこのままいけば、第5次中東戦争→ハルマゲドンの戦いの最悪絶望コンボもありえるぞ。 ガザの被害が出続ければ、中東諸国が「ハマスを助けろー」と立ちあがるかもしれないし、そうなれば逆に窮地に陥ったイスラエルが、「アメリカたん助けてー」となきついて、アメリカ軍出馬となる可能性もある。(アメリカとしても国内にユダヤ人抱えてる関係、その要請を黙殺するわけにもいかんだろうし)、そうなればアメリカと対立しているロシア・中国が中東側につく可能性も否定できない。そうなればまさに、第三次世界大戦→人類滅亡だ; -- 名無しさん (2014-08-02 17:58:34)
- ハマスもイスラエルも本当はイギリスに攻撃するべきなのに -- 名無しさん (2014-08-02 18:03:13)
- ハマスもイスラエルも使っている兵器はアメリカ製である←ここ重要。 -- 名無しさん (2014-08-02 21:52:26)
- 緒戦の快進撃を続けていれば勝てたかもしれなかったのに戦後の皮算用で仲間同士いがみ合って進撃が止まっている間にイスラエル軍の猛反撃で各個撃破される中東連合ェ・・・ -- 名無しさん (2014-09-25 12:59:31)
- オイルショックの話は? -- 名無しさん (2014-09-25 15:58:07)
- いつも烏合の衆なんだよなあ中東連合 -- 名無しさん (2015-02-16 21:15:06)
- こないだ塩野七生の十字軍物語読んだんだが、結局今も昔もやってることは同じだな -- 名無しさん (2015-03-01 10:12:55)
- 今度はイスラエルではなくて、シリアのほうが火種になってきたなぁ……。お願いだから支援は兵器供与までにして、軍までは出さないでくれよ米ロ(汗 -- 名無しさん (2016-10-05 15:34:08)
- 安倍さんが、イスラエルとパレスチナの和平への働きかけも兼ねて中東に行ったけど、アメリカ(完全ユダヤ派)にべったりの日本が何言ったところで……(溜息 -- 名無しさん (2018-04-30 16:10:31)
- ついに第5次中東戦争が始まってしまったなあ -- 名無しさん (2023-10-09 22:36:34)
- もうあの辺吹き飛ばして聖地も消してしまうしかないんじゃないか -- 名無しさん (2023-10-12 07:27:54)
- ↑×2その前哨戦かもしれない、あるいはね…。 -- 名無しさん (2023-10-24 16:07:01)
- 「アラブ人とユダヤ人は兄弟のように暮らさねばならないのだ」とは言うが、この世で最初の兄弟は殺しあってるんだよなあ聖書的に -- 名無しさん (2023-11-19 19:59:17)
- 最初の兄弟殺しはアダムとイブの息子のカインとアスベル。その子孫のアブラハムが妾に産ませた異母兄がアラブ人の始祖イシュマエルで正妻との間に産まれたのが異母弟のイサク。で、将来的に家督争いが起こらないようイシュマエルが一族から追放され以後アラブ人は砂漠の民となったってのが聖書におけるアラブ人の起源 -- 名無しさん (2023-11-19 20:36:01)
- ↑ごめん。アスベルじゃなくアベル。アスベルは風の谷のナウシカの登場人物 -- 名無しさん (2023-11-19 20:42:09)
- 中東諸国の連携の無さはマジで十字軍以来変わんないのね… -- 名無しさん (2023-11-19 20:51:36)
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