登録日:2018/03/26 Mon 20:47:00
更新日:2024/02/19 Mon 13:45:46NEW!
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漫画 週刊少年ジャンプ るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 集英社 るろうに剣心 幕末 和月伸宏 スタジオディーン 追憶編 アニメ ova 鬱展開 前日譚
病んでいる。
時代も、 人の心も。
和月伸宏原作の漫画作品『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』より、『人誅編』での過去回想(コミックス19~21巻収録)を主として映像化した全四話のOVA。1999年に発売され、後に場面を追加して一話に纏めた特別編が発売されている。
主人公・緋村剣心がどのようにして「人斬り抜刀斎」となり、不殺の誓いを立てるようになったのかが語られている他、抜刀斎時代の剣心を描いているため、物語は最初から最後まで明治ではなく幕末を舞台としている。
制作はTVアニメ版後半(通称TVオリジナル編*1)を手掛けたスタジオディーン。スタッフはほとんどTV版とは異なっていると思われがちだが、主要スタッフは音楽を除き皆TV版に携わってきたメンバーである。
解説
ストーリーの流れは概ね原作通りであるものの、原作やTV版とは全く異なる劇画調の絵柄となっている他、原作にあった派手な必殺技や技の名前を叫ぶといった演出、コミカルな描写が徹底的に排され*2、さらにテレビ放送を考慮していないOVAという媒体故か人を斬るたびにおびただしい量の血飛沫が跳ぶなど残虐描写がTV版とは比較にならない程色濃く・生々しく・鮮烈に描かれており、挙句の果てには濡れ場も描写されている。
原作の追憶編も相当シリアスだったが、数少ないながらもコミカルな描写などはあった。だが本作はそれらすら完全に撤廃し、最初の1秒から最後の1秒まで完全にシリアスかつ重厚な作風となっており、各キャラの台詞も大幅に変更されている。
つまり、本作は少年漫画だった原作の一部分を、単体の大人向け純時代劇アニメへと魔改造を施したといったところである。*3
海外ではこれに加えタイトルも「Samurai X」となっているため、原作がるろうに剣心であることを知らない海外ファンもいる。
物語の所々で丁寧に描写されてゆく日本の四季の風景や岩崎琢による高クオリティな音楽、抜刀斎と巴の物語の裏で繰り広げられる時代考証に即した幕末の出来事なども見所の一つとなっている。
徹底的に一貫して描き切った幕末の世界観、サブキャラに至るまでわずかなセリフや仕草でしっかりと描写した心情など、一作品としての完成度が極めて高く、現在では日本国内・海外共に高い評価がされており「原作をうまく補完した」「原作を超えた」という意見が多く見られている。
登場人物
本項目では原作との違いを主に記載する。
- 緋村抜刀斎 声:涼風真世
「行くか、大津へ。夫婦(めおと)ものとして」
主人公。本名は緋村剣心
本作の始まりは心太と呼ばれていた幼少期から始まり、比古清十郎の弟子時代、抜刀斎時代と順に描かれていく。
原作でも年齢不相応な雰囲気を持っていたが、本作では絵柄も相まってか輪をかけて大人びた雰囲気となっている。
原作と比べ口数が大幅に減っており、清里殺害時も欠片の情けも見せないなど表面上は極めて冷徹。
一方で原作にあった聡明さが無く「人斬りに学問はいらん」と言うなど、内面は純粋で無知な子供という印象が強くなっている。
原作ではダイジェスト気味に描かれた暗殺シーンが鮮明に映像化されており、暗殺対象に悲鳴すらあげさせずに頭を割る、受けた刀ごと首筋を断つ、相手が鎖帷子を着ているとみれば即座に急所狙いの刺突に徹するなど、もはや恐ろしいを通り越して出会ったら死ぬレベルの凄みを見せる。
大津に身を隠している時には添える野菜が無いと聞けば農作を始め、薬を売れば評判になるなどこの頃は生活能力はしっかり備わっていた。
ちなみに原作追憶編でも「剣心」という名前はモノローグと潜伏中の偽名(「検心」)でしか使われないが、
OVAでは回想シーンの中でしか使われず、劇中ではもっぱら「緋村」と呼ばれる。
「知っていますか、刀には鞘が必要なのだと…。あなたがいつまで人を斬り続けるのか…私は見届けたい。この目で確かに!」
TVアニメ版では1/3の純情な感情でしか出番がなかったヒロイン。抜刀斎の前に現れた白梅香の香りをまとった女性。
抜刀斎が人を斬る場面に居合わせた後は「迷い猫」と評されつつも抜刀斎の元に身を寄せるようになり、やがて相思相愛となるが…。
本作でも儚げな雰囲気は醸し出しているものの割と表情が豊か。抜刀斎を人斬りとして務めさせてると言う桂に対し「子供に刃物を持たせてですか?」と非難したり、祇園祭の時に抜刀斎を夕食に誘ったりするなど意志の強い一面も。
原作では頬の横傷は抜刀斎に斬られた際に離れた短刀が頬を偶然かすめていたが、本作では巴が今際の際に意図的に傷を付けている。
さらに最期の台詞は受け手によって複数の解釈ができることから、この作品を語る上でよく議論に上がる。
なお、原作と巴の墓の場所が違うため、「巴の日記」の所在が不明になってしまっている。
作画の変化によりモチーフである綾波レイっぽさはかなり薄れている。たまに恵っぽくなってしまっている場面があるけど
- 桂小五郎 声:関智一
「高杉。あの少年…きょう(京/狂)に欲しい!」
長州藩士であり、抜刀斎の理解者。
飛天御剣流の剣術を「旧時代を壊すため」に”狂”たる正義の急先鋒として振るって欲しいと願う一方で、抜刀斎を人斬りにした結果彼の運命を狂っていく事を徐々に後悔するようになっていく。
原作で抜刀斎と巴に偽装結婚を勧めたが、本作ではそれ以前の時点で巴に抜刀斎の心の支えになってほしいと頼んでいる。
なお、原作では名前のみだった恋人の幾松が本作では映像化された(声は薛宏美)。
- 高杉晋作 声:高木渉
「それでこそ、お前は幕末祭りの長州の御輿となれるってもんだ。雅楽は俺に任せろ。」
長州藩士であり桂の盟友。奇兵隊を結成した。
原作では投獄されてから持病である結核が発覚するが、本作では抜刀斎を引き渡す前の時点で患っており、物語の終盤にて結核が悪化した様子を見せる。
- 飯塚 声:中尾隆聖
「長居は無用、さっさとずらかるぜ」
長州藩士。原作以上に無愛想な抜刀斎に世情話を持ち掛けたり上役への無礼のフォローに回るなどよく気に掛けてる。抜刀斎が京から落ち延びた後も連絡役として支える。
本作では抜刀斎の初仕事の時から専属で検分役を任されている。いわばお目付け役のようなものであり抜刀斎にとっては桂と共に数少ない話し相手。
会合では新撰組に対して強硬姿勢を取るべきといきり立つ他の藩士たちを、裏切者がいる状況で下手に動けば新撰組の思う壺だから今は待つしかないと諫めるなど、藩内での発言力はそれなりにあった様子。
(これについては後に強硬派によって勃発した「禁門の変」の顛末とその後長州藩が朝敵扱いされたことを考えると正しい意見だったと言える。)
巴が小萩屋に雇われてからは巴にも気にかけているが、巴からは苦手意識を持たれている。
原作同様の間者だが、原作と異なり辰巳の命を受けて彼自身の口から抜刀斎へ向けて巴が間者である事を明かしている。
その一方で隠遁中の抜刀斎に「くれぐれも剣の腕だけは鈍らせるなよ」とわざわざ忠告したり、騙した後もどこか名残惜しそうに去るなど多少なりともの情はあった模様。
他、「浮世のことは所詮博打」といった台詞などから、原作においての「志々雄のかませとなる小物」というよりは「すさんだ時代を生きようとした一人」として描写されている。
皮肉にも自分が殺された際に検分したのは、当初暗殺対象にしていた桂であった。
- 小萩屋の女将 声:尾小平志津香
「長州藩は忙しおすなぁ。人斬りの後は女子(おなご)しですか」
長州藩が滞在している料亭「小萩屋」を切り盛りする女将。原作よりもかなり若くなっている。
素性の知らない『迷い猫』である巴を雇うのかと渋る抜刀斎に「長州藩にはひいきにしてもらって有り難いけど、おかげで今は『猫』の手も借りたいほどに大忙しだから」と啖呵を切る。
その一方で抜刀斎のことを陰ながら気にかけており、巴を雇った理由は抜刀斎のことも考えてのことだった。
池田屋事件の際は2人の身を案じ料亭の裏から逃がしている。
- 斎藤一 声:鈴置洋孝
「梅の花の香りがした。狂い咲きかもしれんな…」
新撰組三番隊組長。老けすぎな21歳。後に抜刀斎とは斬っても斬れない関係となる牙突使いの剣士。
池田屋事件からの帰還で初めて抜刀斎とすれ違った原作とは異なり、事件より前の時点で街中でニアミスしており、「血の匂いを嗅いだような気がした」と漏らす。なお同じく居合わせていた沖田に「最近ちょっと斬り過ぎなんじゃないですか」と突っ込まれた。
池田屋事件では史実通り近藤隊に続く増援として、戦線離脱した沖田を助ける形で参戦している。
終盤、遊撃剣士となった抜刀斎と交戦する。徹底的にリアリティ志向の本作でも牙突の構えをキッチリ見せるなどある意味ブレない人。
- 沖田総司 声:小粥よう子(現:日比野朱里)
「その名の通り、あるがまま。出たとこ勝負というやつですよ。無外流*4はどうです?」
新撰組一番隊組長。若作りしすぎな23歳。原作ではほぼモブと大差のない扱いだったが、人気の高さを受けてか出番が増えた。
常に笑顔を絶やさず斎藤にも冗談を言うなど朗らかな性格だが、抜刀斎との対峙を望んでいる節が見受けられ、池田屋に突入した際も護衛を瞬殺し「こいつじゃない!*5」と独りごちるなど『人斬り』らしい一面も。
池田屋事件では近藤勇などと共に先陣を切った他、遊撃剣士となった後の抜刀斎との戦いなどの活躍も描かれた。この時に肺結核が悪化し吐血する様子も見られる。
- 清里明良 声:岩永哲哉
「死ねない!今、死ぬわけにはいかない!死にたくない、死んでたまるか!!」
原作とほぼ同様だが、もうすぐ祝儀を挙げる身である事で護衛していたはずの重倉十兵衛から身を庇われた。
また原作では一斬りで倒れ伏したが、本作では脇腹と左肩をまともに斬られてなお立ち上がる"執念"を見せる。
- 重倉十兵衛 声:志賀慎吾
「たかが剣の一振りで、世が動くと思うのか!」
京都所司代で清里の護衛対象。こちらも原作とほぼ同様。
原作でも清里の祝言を心から祝福する優しい人だったが、本作においては上記の通り自らがターゲットであるにも関わらず祝言を控えた清里を「お前は今、死んではいかん!」と言いながら庇うなどさらに株が上がった。ぶっちゃけ抜刀斎が完全に悪役にしか見えない
「あいつさえ!あいつさえ居なくなれば…!」
巴の弟。絵柄の変化もあってか原作よりも人相が悪いが、即座に噛みつくような事はしなくなった。
巴の最期を見たのがOVAにおける最後の出番となった。
その後どうなったのかは原作人誅編か星霜編を参照。
- 辰巳 声:内田稔
「分かるか?我らは皆、業深き者の集まりなのだ。その宿業の中で生き、そして死んでゆく。これが人というものの定めなのだ」
闇乃武の首領。恐らく最も原作との改変がなされたキャラ。
原作では単に抜刀斎を亡き者にせんとする敵役としての印象が強かったが、本作では300年続く徳川の世を守るための暗部である一面が強調され、新時代を斬り開こうとする倒幕派の暗部である抜刀斎とは対をなす存在として描かれている。
粗暴な性格である原作とは異なり終始落ち着いた物腰である他、自害を試みる巴を諫めたり、巴へ清里の想いや人間は業が深い者と説いたり抜刀斎との一騎打ちには犠牲になった者への弔いも含めるなど、どこか達観した武人とした印象を受ける。
その一方で飯塚を通して巴がアジトへ帰るタイミングで抜刀斎に巴が間者であること、更に巴の嫁ぎ先だった相手が自身が殺した清里であることを暴露させ、精神的な大ダメージを負わせた上で巴の始末に向かわせるなど手口のえげつなさも原作を上回っており、まさに清濁併せ持った老獪な人物と言える。白目でもないし、服装も普通の胴着である
「俺の馬鹿弟子は、馬鹿なりに自分の生き方を選んだという事だな。純粋なるが故に…これもまた、避けては通れぬ道」
剣心の師匠。原作追憶編では回想場面の数コマでしか登場していない。
喧嘩別れだった原作やTV版とは異なり、御剣流による世直しを望む剣心を一度は論破しており、それでも聞かない剣心の心情を汲み取り「馬鹿は馬鹿なりに生き方を選んだ」と剣心を認めた上で袂を別れている。
「剣を少々やる」というセリフに代表されるように原作・TVアニメ版と比較して物凄く性格が丸くなっており、さらに剣心に対してデレデレ。
回想場面で爽やかに剣心に「お前もいつか酒の味がわかるようになる。その時は美味い酒を酌み交わそう」と約束したりもする。
飛天御剣流の理の事を考えると、叶わないことを悟った上での発言だったのかもしれないが。
そして最終話ラストシーンでは剣心の身に起きた悲劇を察して、物凄く切なそうな様子を見せる。
リアリティ重視の作風の中で例外的に現実離れした強さを見せており、ある意味斎藤と並んでブレない人。
最終話に少しだけ登場。
雪降る山道で登場した原作とは異なり、桂の命の元、内通者の始末のために正月の街の路地裏で登場する。
焔霊などの必殺技も放っておらず台詞も一言も無いため、原作を読んでいないとまず志々雄とは解らない、まさにファンサービス。キャラデザもさすがに牙神幻十郎そのままにするわけにもいかなかったのか変えられている。
実写版
「可能な限り技名を言わず、動きのみで表現する」「剣心が極端にコミカルにはならない」「何度斬られても立ち上がる清里」など、シリーズを通して本作の影響を受けたと思わしき箇所がみられる。
また実写映画第一作では冒頭にて本作の終盤をオマージュしたようなシーンが出てくるほか、序盤の清里を襲撃する場面が描写されている。
原作とは異なり、清里暗殺後から一夜明けた後、清里の亡骸にすがり巴が涙を流す場面が描写された。
その後、役者や原作者の件などがあったが無事、人誅編と追憶編を原作とした最終章の製作が決まり、2018年から2019年にかけて撮影が行われ6月にクランクアップを迎え、
2021年6月4日に『るろうに剣心 最終章 The Beginning』が公開。
制作協力に本作品がクレジットされており、それもあってか全体的なストーリーの流れも原作漫画よりも本OVA寄りとなっている。
このため、結果的に原作に対する本作よろしく『The Beginning』のみが他の4作品と明らかに毛色の違う作品となっている。
キネマ版
特にこのエピソードの存在は語られていないが、十字傷の存在や剣心が幕末時代を「一番大切な人を失ってまで戦い続けた」と語っている事から、
少なくとも清里との対決や巴との結婚と死別は起きていると思われる。
一方で、闇乃武の面々が明治11年の時系列で登場している事や「大切な人を失ってまで」と殺したとは言っていない事から、
巴との死別の原因が大きく異なっている可能性も考えられる。
巴・・・
じゃあ、行ってくるよ・・・
追記・修正は十字傷に想いを込めてからお願いします。
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▷ コメント欄
- この話は大学の講義をさぼってまで見たけど面白かったわ。アニメは原作を超えている気がする -- 名無しさん (2018-03-26 21:24:17)
- 確かに技自体は使わないんだけど人間縦に真っ二つにしてたり師匠が一瞬で人間血霧にしたりと原作やTV以上に凄い技術披露してたりするという -- 名無しさん (2018-03-27 01:42:15)
- 実写版とキネマ版の項って要ります? -- 名無しさん (2018-03-27 10:33:06)
- ↑確かにちょっと気になったけど備考扱いということで何とか… -- 名無しさん (2018-03-27 13:33:55)
- 実写でもやりそうな雰囲気だったけど作者の警察沙汰やら武井咲の結婚やらでなくなりそうだなぁ -- 名無しさん (2018-03-28 07:54:33)
- 外国人からのるろうに剣心のイメージは圧倒的にこのOVA。それくらい支持者が多い -- 名無しさん (2019-07-24 23:29:27)
- The beginning公開。思いの外、追憶編ほぼまんまな作りだったけど制作協力になってるのを見て納得した。 -- 名無しさん (2021-06-08 01:33:31)
- 実写追憶編観たんだけど、最期巴さんを荼毘+二人で暮らした家に別れシーンは火を放ってそのまま出立の流れだったの……?(前作で縁が巴の焦げた懐刀持ってたし -- 名無しさん (2021-06-20 18:51:58)
- ↑時系列は不明だがThe beginningでは出立した後巴の骨をきちんと回収しに行ったのが確定してるんだよな…。 -- 名無しさん (2021-11-27 12:55:42)
- 登場期間こそ少ないけど所司代の重倉さんと闇乃武の辰巳爺さんかるろ剣でトップクラスに好きなキャラだったりする。 -- 名無しさん (2022-02-23 21:10:35)
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*2 ただし辰巳のラリアットや斎藤の牙突など、技名を言わないだけで原作の技を下敷きにしたアクションはそれなりに見受けられる
*3 実際に時代劇映画のオマージュと思わしき部分も見受けられる。
*4 斎藤の剣術の流派
*5 基本的に汚れ仕事を任せられるものは談合の席からは外され見廻りにつくことが多い。つまり仮に抜刀斎と合い見えるならば部屋の外であるということを踏まえた上での発言
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