登録日:2011/05/13(金) 20:19:40
更新日:2023/08/07 Mon 15:29:47NEW!
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アニヲタ神様シリーズ ギリシャ神話 神 実はいい人 真面目 遊戯王 ヘラクレス コメント欄ログ化項目 死の神 神の不在証明 冥王 プルトーン 死者の国の王 末弟 プルートー 石ころ帽子 冥界の神 富める者 風評被害 (´・ω・) ラスボス扱いが多い 聖闘士星矢 冥王神話 苦労神 パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 長男にして三男 ディズニー許すまじ 保健室の死神 冥界 ペルセポネー ハデス 半熟英雄 ハーデス ケルベロス エッグモンスター ディス・パテル
【概要】
ハデス(Hades)とはギリシャ神話における冥界の神。
本名は縁起が悪いということ“富める者”を意味するプルトーン(Pluton)とも呼ばれる。
何しろオリュンポスのトップ3の1人にして、死を統べる最恐の神だと考えられていたからである。
実際の神話内での主な役割は生前の行いから死者の死後の運命を決定すること。早い話が閻魔様と同じ役割。
この呼び名は本人ごとローマ神話に取り入れられ、プルートー(Pluto)の語源となった。
後に冥界が地下にあるとされるようになった事から鉱物の支配者にもなった。
“富める者”とは、そうした所から付けられた御名である。
親はクロノスとレア。
ゼウス等の長兄*1で妻はペルセポネ。ペットは冥府の番犬ケルベロス。
従者は三途の川の渡し守のカロンや死の神タナトス、あと侍女兼実務担当兼攻撃隊長の魔術の女神ヘカテー。
死を忌避する神話から威厳ある支配者として顕されるゼウスらに対して暗い表情の青年として顕されたり、絵画では恐ろしい怪物の様な印象が付けられたりしている。*2
神格的にもオリュンポス十二神から外れる様な神では無いのだが、後に冥界を畏れる信仰が一般化した為か外されてしまったらしい。
……姿といい、後のキリスト教世界の影響による魔王的な扱いといい、風評被害が甚だしい。
【神話・伝承】
■ティタノマキア ~神々の戦い~
生まれた直後にガイアおばあちゃんとウラノスおじいちゃんの「産まれた子に権力を奪われる」という予言を恐れた父クロノスに、
姉弟共々飲み込まれてしまう。*3
しかし、唯一飲み込まれなかった*4末っ子のゼウスによって助けられる。なお、この際に『産み直し』の扱いをされ、長兄から末弟にされてしまった。この頃から随分と偉そうな弟(兄)である。
クロノスらティターン神族との戦いでオリュンポス軍が苦戦する中、ゼウスは大いなる大地の予言に従い、
冥府タルタロスに幽閉されていた一つ眼巨人キュプロクス(サイクロプス)と百腕巨人ヘカトンケイルを解放した。
ハデスはこの時解放されたキュプロクスから二股槍バイデントと姿隠しの兜*5を貰った。
(`・ω・´)「よし、ステルス装備でクロノスたちの武器を奪ってやる」
てな感じでハデスの活躍でクロノスたちは武器を失い、ティタン神族は大幅に戦力低下し、オリュンポス軍が勝利した。
とまあ、いろいろあって戦いに勝利したオリュンポス軍だったが、何よりハデスがクロノスの武器を奪った事が大きく、
故にハデスこそが実質的なMVPとも言えるのだが、その功績の褒美は思わぬ形で帰ってきた。
■くじ引きでの転落 ~ハデススパイラル~
ティターン神族との戦いの後、天界、海、冥界の三界の支配権を選ぶ際に何故か知らんがくじ引きで決め、冥界を引き当ててしまい、
地下の世界に押し込められ、神々からも敬遠されて誰も遊びに来ず、仕事が忙しすぎて宴会すら行けない逆VIP待遇。
ティタノマキアじゃかなりの功績を挙げたのにあんまりではないだろうか?
なお、冥界の支配権は誰もやりたがらないために、仕方なくハデスが引き受けてやったというバージョンもある。
■ハデス恋の季節
冥界でケルベロスと共に寂しく支配するハデス。ある日、大地の裂け目から地上を見ていたら花を摘んでいたペルセポネに一目惚れする。
しかし、内気な性格なハデスはどう告ったらいいか分からず、よりにもよって弟でペルセポネの父親のゼウスに相談した。
後々このことが大騒動に繋がるのだが、そんなこと分かる由もないハデスは、ゼウスとの相談で、
ゼウス(`・ω・)「女は多少強引な男に惚れるもんだぜ兄者☆」
ハデス(´・ω・)「そっか、分かったやってみる!あと、一応結婚の許可出してほしいんだけど」
ゼウス(`^ω^)b「(デメテルに聞いてないけど、別にいいよな)どーぞどーぞ」
みたいなやり取りを経て、このゼウスのアドバイスを真に受けたハデスは水仙の花を使ってペルセポネを誘い込み、地下へとさらってしまった。
が、母親のデメテルと地上を恋しがって泣くペルセポネに対し、ハデスはそれ以上強引な行動を取れなくなってしまい事態は膠着状態になった。
ここで強引に行かないのがゼウスやポセイドンとハデスの違いである。
一方地上では、デメテルがハデスの誘拐劇を知り、誘拐教唆犯…もとい、首謀者であるゼウスの元に怒鳴りこんだ。
ゼウス(`;・ω・)「俺じゃねーよハデスがやったんだよ」
と兄を売って責任逃れしようとするゼウスであったが、
デメテルJ(# 'ー`)し「真面目なハデスがそんなことをするわけない。どうせアンタが唆したんでしょ!」
と、デメテルは真相を一発で見抜いた。さすが信頼と実績のゼウスである。
(#・Д・)「あいつ王だし別にいいじゃん! 夫として不足はないだろ!」と開き直るゼウスに、デメテルはぶちギレて豊穣神としての役割をストライキ。
地上は大飢饉に見舞われた。
あと、この裏で起きたとある事件(後述)でゼウスは孫を失うハメに。
さすがのゼウスも…これには猛省っ!
ゼウスは自分の提案である事を棚に上げて「娘さん帰してやってよ」と相談し、ハデスも「仕方ないね」と承諾した。
だが、ハデスも一目惚れしたペルセポネを手放したくなかったのか、
お迎えとしてヘルメスがやって来た際に喜ぶペルセポネは、冥界の果実ザクロを食べてしまっていた。
冥界の食物を食べた者は地上に還れないという規則があり、ペルセポネも晴れて冥界ファミリーの仲間入り! やったねハデス家族が増えたよ!
という訳にもハデスの性格上いかず…
遂にゼウスは母神のレアーに泣きつき、その仲裁で「1年の3分の1だけ冥界に住む事」*6となった。
まぁ、ハデスは元々強引な性格では無くゼウスに騙さr…もとい唆されただけなので、それを快諾して事は片付いた。
このため、デメテルは愛娘が嫁ぎ先に行っている間は仕事をする気にならず、地上は1年の3分の1は作物が実らない季節になってしまったという。
これが冬の始まりとされる。
つまり冬に作物があまり取れないのはゼウスのせいってことで…
なお、ペルセポネが地上に戻ってくるとデメテルが仕事をし始める(=冬が終わって春になる)ため、ペルセポネに春の女神という属性がついた。
ちなみに、話によってはハデスの誠実な人柄に惚れたペルセポネが自分から冥界のザクロを食べたというケースもある。
■他のハデスの物語
- 蛇使い座アスクレピオス
アポロンの息子で賢者ケイロンの弟子である医学の神・蛇使い座アスクレピオスの腕が死者さえも生き返らせる程に上がってしまい、
ハデス(´・ω・)「最近、冥界に人(魂)が来ないんだけど…ヤバくね?」
ゼウス(`・ω・)「仕事来ないのはつらいよね、お兄ちゃんに任せなさい!」
とゼウスに相談、ゼウスは雷霆でアスクレピオスを撃ち殺した。しかし、医学者としての偉業を讃え、星座にした。
尤も、最後の引き金になったヒッポリュトス(後述のテセウスの息子)の蘇生はアスクレピオスの叔母のアルテミスの依頼によるもの。
この2人、以前にもアルテミスの彼氏のオリオンを蘇生させようとして、ハデスに叱責された前科がある。
ヒッポリュトスは「義母からの不倫の誘惑を拒絶した逆恨みで殺された」と言う同情に値する死に方であったが、
アスクレピオスとアルテミスに関しては普通に叱責しても効く耳を持たないと判断されても仕方のない状況であった。
- タンタロスとペロプス
ペルセポネ神話の裏話。
リュディア王タンタロスはゼウスの息子*7であり、人間社会に生きる半神ながら神々の飲食物を振舞われる程父から寵愛されていた。
娘誘拐の怒りでストライキを続けているデメテルの機嫌を取るため、ゼウスはタンタロスの主催する宴会に他の神々と共にデメテルを連れて出席したのだが、
なんとタンタロスは息子のペロプスをシチューに調理して父や伯母に振舞うという凶行を実行。*8
ゼウス達は口にしたシチューにペロプスの肉が使われている事に一口で気づき仰天してシチューを吐き出すも、
ペルセポネの騒動で心労が溜まっていたデメテルはペロプスの左肩部分が盛られていた自身の取り分を完食してしまった。
さしものゼウスも息子の凶行に激怒して、ハデスに「食べ物も飲み物も得られない」地獄にタンタロスを生きながら流罪にする*9ことと、
哀れにも父親の凶行によって理不尽に命を奪われた孫の蘇生を依頼。そもそもこのパーティ開くことになったのはお前が原因だろと言いたいが、まさか自分の大ポカが息子のサイコパス発覚と孫の死に繋がるとか普通思わねーよな……
ハデスも(ゼウスに唆された結果とはいえ)自身に間接的な責任がある為、特別に「母神レアーが生命を吹き込み直す役を担当する」と言う条件でペロプスを蘇生する事にしたのだが、
デメテルが食べてしまった左肩部分は、遺体の回収と組み立て直しを担当したヘルメスと運命の女神クロートーをもってしても元に戻す事が出来なかった。
結局、デメテルが象牙を材料にペロプスの左肩を作り直し、ポセイドンがペロプスの後見を行う事で何とかこの騒動は収まった。
タンタロスは上記の流罪により沼の上に枝を広げる果樹に吊るされて沼の水を飲もうとすると水が引き、枝の果実に手を伸ばそうとすると風が吹いて枝が揺れて手に取れないという目にあったが、まぁこれは残念でもないし当然。
- オルフェウスの悲劇
毒蛇に噛まれて死んだ妻・エウリュディケーを連れ戻すべく冥界を訪れた吟遊詩人オルフェウス。
彼の奏でる演奏は冥界の人々やケルベロスをも魅了し、それは王座で演奏を聴いたハデスとペルセポネも同様だった。
ハデス(´;ω;)「感動した!! 連れ出しを許可する!」
ハデスは『冥界から抜け出すまで決して後ろを振り返ってはならない』という条件を付けた上で、オルフェウスの後ろにエウリュディケーを従わせた。
しかし、冥界からもう少しで抜け出せるところまで来て、不安に駆られたオルフェウスは後ろを振り向いてしまい、それが妻との永遠の別れとなってしまうのだった。
あれ? なんか日本で似たような話聞いたことあるような……。
「[[見るなよ!見るなよ!絶対見るなよ!」のタブー>見るなのタブー]]は古今東西共通なのであろう。
日本神話と違い当事者はただの人間だったので、「毎日ギリシャ人殺してやるからな〜!」というほどの大喧嘩にはならなかったようだが。
- ペルセウスのゴルゴン退治
ペルセウスに自身の神器である隠れ兜を貸している。
- ヘラクレスの十二の功業
最後の冒険でケルベロスをミュケナイ王エウリュステウスに見せることとなったヘラクレスがハデスに謁見した。
ヘラクレスがこれまでの経緯を話すと、
ハデス(´・ω・)「ケルベロスを連れて行かれるのは困るけど、神託だったらしょうがないね、でも苦しませないでやってね」
と傷つけないことを条件に快諾したという。
- ハルモニアの悲劇
ハルモニアは戦神アレスと美神アフロディーテの娘で「調和」を司る女神である。
アレスがテーバイ建国王カドモスと国の守護神になる契約を交わした際に、カドモスの王妃としてハルモニアが降嫁したのだが、その時に伯父であり母の元夫であるヘパイストスから婚礼祝いとして強烈な呪いが込められた首飾りを贈られた。
テーバイの国自体はカドモスとハルモニアの善政で平和と繁栄を享受するのだが、子供達が直接の落ち度が無いにも拘らず不幸な死に方をする事態が続出する*10。
子供達の相次ぐ悲惨な死に憔悴したハルモニアは自身が直接呪われていると勘違いした挙句、自ら不死性を捨てて、カドモスと共に国を出た後、蛇に変身して生涯を終えた。
娘の悲惨な末路を悲しんだアレスはハデスとゼウスに頼み込んで、ハルモニアとカドモスを善人が穏やかに暮らせるエリュシオン送りにして貰った。
カドモスもハルモニアも国民に優しい善良な君主だったので、普通にエリュシオン送りになっていた可能性は高いが、神が自ら不死性を捨ててハデスの下に行くという稀な事態だったのでアレスが心配になったのも当然である。
この話ではハデスは脇役では有るが、他の神からの評判が悪いアレスであっても我が子を愛する親心をしっかり受け止めて穏便な解決に持って行く良い仕事をしている。
- メンテとミント
数少ないハデスの浮気話。
ハデスは地上のメンテというニンフ(妖精的な存在)に惚れ、淡い恋をしました。が、それに気付いたペルセポネが嫉妬から踏み潰して雑草にしたと言われる。
また、一説ではまたハデスが誘拐劇をするかもと危惧したペルセポネがメンテをミントに変えてハデスの目から隠してあげた、とも言われている。
ハデスが極悪に描かれている作品では、後者の理由。
またメンテのほうが先にハデスの愛人であり、後から来たペルセポネの不興を買って雑草にされたという説もある。
- ディオニュソスとギンバイカ
ディオニュソスはゼウスとアレス&アフロディーテの孫娘セメレーの息子で、3/4が神、1/4が人間と言うクォーターである。ゼウスの自身の曽孫との浮気はヘラクレス誕生の時にもやっている。
セメレーはゼウスに「ヘラ様と夫婦の営みをする時の様に真の姿を見せて下さい♡」とゼウスに願い、「冥府の川ステュクスに誓ってなんでも一つ願いを叶える」と豪語したゼウスも其れを断れず、人間への変身を解除するが、ゼウスが身に纏う稲妻の威力には強靭な半人半神の肉体も耐えられずにセメレーは即死し、その魂は極悪人が堕とされるタルタロス送りとなった。電撃プレイがキツすぎた
ハデス(´ ‐ ω ‐ )「ゼウスの浮気相手は何人も見て来たけど、ゼウスとヘラの曾孫の癖にお曾祖母ちゃんを故意に傷つける不倫は流石に性質が悪いよね。」
胎児であるディオニュソスはヘルメスの咄嗟の機転で救い出され、長じてタルタロスで無限の責め苦を受けている母を助け出そうと、ハデスとペルセポネの下に向かい、渾身の力作であるギンバイカをペルセポネに献上した。
オルフェウスの時と同様に
ハデス(´;ω;)「感動した!! 連れ出しを許可する!」
となり、他の死者への示しを付ける為にセメレーは「テュオーネー」と改名することを条件にタルタロスから解放され、息子から分け与えられた神性と自前の神性で何とか神として認められるレベルに達した事でオリュンポスに迎えられた。
この時、献上されたギンバイカはペルセポネの母・デメテルに贈られてその聖花となり、後にアフロディーテにも贈られて聖花とされた。
- レウケー
水のニンフであったレウケーはハデスに見初められて冥界に連れて行かれたが、不完全な不死の神だった為、死んでしまった。
それを悲しんだハデスはレウケーを白ポプラに変えた。それ以来、エリュシオン(善良な死者が穏やかに暮らす庭みたいな場所)には白ポプラが咲き誇っているという。
後に冥界へケルベロスを捕まえに来たヘラクレスによって冠にされるという悲劇に見舞われる。
恋人への想いが宿る木を傷つけられたハデスの心中はいかばかりか…。
- ペイリトオス
珍しくハデスが怒った話。
テッサリアの王にして英雄のペイリトオスという男がいた。
彼は親友であるミノタウロス退治で有名な英雄テセウスとともに、数々の冒険に挑戦してきた…
と言えば聞こえがいいが、実のところは殺戮に略奪を繰り返しギリシャ全土を荒らし回っていたようなものであったとも言われる。
そんな二人が互いの妻を亡くしたとき、彼らは相談を行った。
テセウス「俺たち英雄の妻っていったら、やっぱゼウスの娘っしょ」
ペイリトオス「それもあの子。 ほら、スパルタ王女の、めっちゃイケてる娘」
彼らが白羽の矢を立てたのはスパルタの王女ヘレネー。
しかしこのとき彼女はまだ12歳であり、当時から非難されるような年齢だったのだが、
そんなこと気にしないふたりは「勝ったほうがヘレネーを妻とするかわりに、負けたほうの妻探しに協力する」という条件でくじを引く。
そして勝利したテセウスがヘレネーを略奪し我が物とした(後に奪還されたため未遂に終わったが)。
そしてペイリトオスは自分にふさわしい妻を探すため、何を思ったかゼウス本人の神託を仰ぐ。
ペイリトオス「テセウスにあんたんとこのヘレネーたん取られちったから、
この俺っちにヘレネーたんに負けない嫁をあんたの娘んなかから世話してもらえる?」
ゼウス(`・ω・)「ならばなぜわが娘の中で最も高貴なペルセポネを選ばんのかね」*11
ペイリトオス「という神託をもらったぜ!」
テセウス「いや、冥府に行って帰ってきたヤツなんて殆どいないじゃん…こんな見え見えな罠に引っかかるヤツがいるわけ」
ペイリトオス「愛しのペルセポネたんが俺を呼んでいる!行こうぜ冥府!」
テセウス「いたよここにorz」
ペイリトオスはさすがというかこの神託を真に受けて、むしろ不安しか感じないテセウスを「おめー、俺の嫁探す約束じゃん?」と連れてはるばる冥府までやってくる。
しかも堂々とハデスの前に現れ謁見する。
ペイリトオス「おう、ハデス様。 ゼウス様がそうしろって言ったから、あんたんとこの嫁俺におくれ」
ハデス(´・ω・)(ほんとに来やがったよこいつら)
ハデス(´・ω・)「はるばる冥府までようこそ。長旅で疲れたでしょ。とりあえずこの椅子にでも座って座って」
二人「「あ、はい」」
これを事前に知っていたハデスはやってきた二人を応対し、椅子に座らせる。
もちろんこれは罠で、二人が座った椅子は、座った者が全てを忘れてしまう「忘却の椅子」であった。
ハデス(´ ‐ ω ‐ )「馬鹿は死ななきゃ治らないけど、死んでも治らないならこうするしかないよね」
それから4年後、やってきたのは先述のヘラクレス。
ヘラクレス「それじゃ、ケルベロスお借りします…………ところで、そこの二人は?」
テセウス「」
ペイリトオス「」
ハデス(´・ω・)「うちの嫁さんに手ぇ出そうとしたからお仕置きしてる」
ペルセポネ誘拐未遂の共犯者であるテセウスだけはヘラクレスによって救い出されたものの、
主犯のペイリトオスは苦しみすら忘れて永遠に椅子に座り続けることになる(助けられたパターンもある)。
…あれ、ぬるくね?
尤も、テセウスは助けられた後、帰還したらヘレネーが冥府に行く前に預けてた母親ごと奪還されているわ、国は追われるわ、
逃げ延びた先の王に「コイツ王位奪い取りに来るんじゃね?」と疑われて殺されたりと散々な目に遭うので、ずっと椅子に座らされていた方がマシだったかもしれないが。
逸話や神話から分かるように仕事に関しては真面目だが、普段はやや内向的な性格。
死者に対しても生前の功業や悪行を公正に評価する仕事熱心な一方でオルフェウスの竪琴に感動し、チャンスを与えたり、
死者を生き返らせるアスクレピオスとアルテミスも一旦は叱責と訓戒で改心させようと試み、
不死の運命を返上した娘の善処を懇願するアレスの頼みに応じてエリュシオンに迎え入れ、
自分のせいで理不尽過ぎる死を遂げたペロプスは蘇生させ、同じく自分のせいで死んだレウケーは花に変えたりなど、基本的には優しく善良な人。
また、弟のポセイドンやゼウスが浮気や強姦しまくっているのに対し、ハデスにはその手の話がない。
3兄弟の中でも一番マシなのに冥界の王という肩書きだけでいろいろ苦労してらっしゃる不遇な神様。
【近代~現代のハデス】
■価値観の変遷
とここまで閲覧してきて思うことがあるだろう…
「あれ? 俺の知っているハデスじゃなくね?」
「一番マトモじゃねぇか!!」
と。
現代においてハデスが魔王のように扱われるのは、なによりキリスト教の影響が大きい。
ギリシャ神話の「冥府」とキリスト教の「地獄」が混同された結果なのである。
またキリスト教においては死とは「罰」であり、最後の審判の日にその罰から人々を救うのが救世主イエスである。
なので死にかかわるものを神聖視するのはキリスト教にそぐわない価値観なのだ。
ちなみにキリスト教で「ハデス」という言葉は「地獄」そのものを指す。
加えて[[某アニメーション映画>ヘラクレス(ディズニー映画)]]にヴィランとして登場したのが決定打となった。
まぁ、ラスボスの地位を与えられているだけマシかもしれない。
あと日本では人気漫画『聖闘士星矢』で悪役として登場したのも割と決定打になってる感じである。
最近では世界中で人気のようなので更に風評被害は拡大することであろう…。
ハデス(´;ω;`)「どうせ俺なんか…」
ハデス…貴方は泣いていい…
……皆さんもこの機会にハデスさんを再評価していただきたい。
少なくとも、三兄弟の中で一番の常識神である事だけは疑いようがない。
まあ、単純に人気が無くて神話が少なかっただけかもしれないが。……悪役とはいえ現代で活躍や名前が知れ渡っているのを喜んでいる可能性も……?
■登場作品ほか
「死後の世界の王」としてはおそらく世界で最もメジャーな神だけあって、現代でもあちこちでその名を見ることが出来る。
ただどちらかと言えば概要で挙げた理由からか、ハデスよりもプルートーの名のほうが広く使われている。
最も有名なのは近年小惑星に格落ちした冥王星(Pluto)だろう。
そして恐らく次点を争うのは、その惑星から名前を取ったミッキーマウスの飼い犬プルートと
天王から生まれる、莫大な富と膨大な死を同時にもたらす冥王の宝プルトニウム(plutonium)。
また上記のディズニーアニメでもヴィランを務めている。
日本では鉄腕アトム「地上最大のロボット」に登場するアトム最大のライバルのひとりプルートゥ、
「美少女戦士セーラームーン」のセーラープルートこと冥王せつな、「聖闘士星矢」に登場する冥王ハーデスあたりが有名だろうか。
あとはギリシャ神話をモチーフにしたゲームにも多数参戦している。
有名なところでは「半熟英雄」最強エッグモンスターとしての出演
(ハデデスというパチモンもいる)の他に、
「ヘラクレスの栄光」シリーズ、「新・光神話 パルテナの鏡」、遊戯王シリーズの冥界の魔王 ハ・デス、
「パズル&ドラゴンズ」「モンスターストライク」などが有名。
ただいずれの作品でも基本的に傲慢にして野卑な冥界の暴君として描かれてしまっているが…
多種多様の神々やモンスターが登場するダークファンタジー「LORD of VERMILION」シリーズにもプルートーとして登場。
不死種族の切り札的存在であるが、死を司る邪悪な獣であり一息で何人殺せるかを楽しむ最低すぎる趣味も持っている。
シリーズ皆勤賞でありLORD of VERMILIONⅢでは何と主人公の1人イージアの相棒となった。とはいえ正義や人情に目覚めたわけではなく互いに利用するような役割である。
Ⅳではそんなイージアが転生した警察官の「マリエ」の銃に宿り、周りの人間の命を奪う切り札のような役割となった。
その一方Ⅲでは「ハデス」名義としても登場。要するに分裂した。
ギリシャ神話における人柄の良さやペルセポネとの恋愛劇などの要素はこちらが持っており、プルートーと違いコミカルなキャラクターとなっている。
なお名義が違っても設定上同一人物であれば同時に出撃できないシステムもあったが、この二人は組ませても特に問題はない。最も2人とも高コストの為一緒のデッキにする事はないと思われるが。
妻のペルセポネも喧嘩番長乙女として、ハデスに見つからないように脱走を繰り返すが門限までには帰るというツンデレキャラとして登場。こちらも使いやすい特殊能力を持っていた為かなり活躍した。
それ以外だと新・光神話パルテナの鏡のハデスさんが有名。
本家のハデスとは180°逆のおちゃらけたキャラクターとして一躍人気キャラとなっている。もちろんシリアスなシーンはあるにはあるが…
2020年にリリースされ世界中で高評価を得たインディーメーカーの2Dアクションゲーム「HADES」ではゲームタイトル通りの中核神物で、
「全方面に頑固で厳しいが、公正に物事を仕切る冥府の王様」という神話のそれに近いキャラクターになっている。
もっとも、ザグレウス王子(プレイヤーキャラクター)がやりたい放題で家出(冥府から地上へ脱出)しようと暴れるので頭痛が絶えないという気の毒なお父上でもある。
ザグレウスが脱出に失敗するとボロクソに煽って下さるのでプレイヤーのヘイトは常に最大値。この煽りスキルは息子のザグレウスにも感染しており、ザグレウスも会話シーンで中ボスその他をボロクソに煽る。殺伐。
(´;ω;`)「そんなのやだ! 神話に出てたかっこいいハデス様が見たい!」
…そういう人は素直にギリシャ神話を読むことをお勧めする。
読めば読むほど、恐るべき力を持ちながらけして軽挙妄動に走らず、
死の掟を粛々と執行する厳格さと深い思慮・情愛を兼ね備え、
さらには妻に甘く純情でお茶目な一面もある魅力的な冥府の王の姿が浮き彫りになってくるはずだ。
次点でギリシャ神話をそのまま漫画・映像化したもの、あるい神話ではなく古代ギリシャの人々を題材にした作品を読むのもいい。
『「世界の神々」がよくわかる本』のギリシャ神話編を漫画化したティタノマキア戦記では神々一の剣士として登場し
ヒューベリオンを圧倒する活躍を見せている。
またソフォクレスの悲劇『アンティゴネ』では主人公アンティゴネが内乱の末に刺し違えた兄ふたりのうち一方は国葬をもって葬られたのに対し、
内乱を起こしたもう一方の兄は国の法に基づき見せしめのため野ざらしにとされたことにこう抗議する。
「死者はハデスの物であり、生前の行いのために辱めることは神々の掟に反する」
彼女はこう訴えて野ざらしにされた兄の遺体に砂をかけ、法を犯したとして処罰される。
国の法よりも古くより存在した神の掟の執行者として、ハデスは人心の上に君臨していたのだろう。
余談
- 生前の行いが良く、優秀であればハデスの部下としてスカウトされることがある。生前は高潔なる王でありゼウスに愛されたアイアコス、
クレタ島の王にして優れた立法家であるミーノス、厳格かつ公平な裁定を下す裁判官ラダマンティスらが彼に仕えている。
- またハデスをオリュンポスの神々に含まないとする事もあるが、
これはゼウスの誘いを「オリュンポスに行けば冥界の運営に支障が出るから」と断ったためと言う説がある。
これに限らず冥王になってからのハデスは無闇に冥府を離れないようになり、助言を行ったり道具や部下を貸したりすることが多くなる。
ティタノマキアに続く神々の戦であるギガントマキアでは、自らは参戦せず配下のヘカテーを指し向け、また姿隠しの兜をヘルメスに貸し出している。
ただこのヘカテーは戦力では主をもしのぐと言われるゼウスも一目置く大地母神で、かなりえげつない活躍をしているのであるが…(ヘカテーの項目参照)
- 何にせよ、冥府の王が分別のある神であったのはすべての生命にとって幸福なことであったろう。
海王ポセイドンの怒りは大地を揺るがし海をあふれさせ、豊穣神デメテルの怒りは飢饉となって降りかかる。
ならば冥王がもしほんとうに我を忘れるほど怒り狂ったとしたら何が起こるのだろうか…
(´・ω・)「ペルセポネた~ん追記・修正ぃ~」
ペルセポネ「もう、ダーリンたら仕方ないわね♪」
追記修正は自らの命で冥界を賑やかにしてからお願いします。
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*2 ※当時は英雄色を好むなオジサマが理想の男性像だった。後のゼウスの下半神化もこの価値観の影響が大きい。
*3 こうなったのはサイクロプスとヘカトンケイルを「キモい」と言っちゃったウラノスおじいちゃんに「お腹を痛めて産んだ子をキモいだなんて!」とキレたガイアがクロノスに下剋上を唆し、クロノスがウラノスおじいちゃんのチ○ポを切り落としたため。つまり予言とは言いつつも実際のところは負け犬の遠吠えというか呪詛。ちなみに、この時切り落とされたチ○ポは後に愛と美の女神アフロディーテの触媒となる。
*4 兄弟姉妹が飲み込まれた後に産まれたとも
*5 ハデスの兜 Aidos Kuneen アイドスキューネ(ギリシャ語:Ἄϊδος κυνέην) かぶると姿が見えなくなる。ギガントマキアのときにはヘルメスに、ペルセウスにもメデューサ退治の際に貸し出された。
*6 食べたザクロが12粒のうちの4粒だったことから。「3粒食べたので4分の1」や「6粒食べたので半分」というパターンもある。
*7 息子ではなく親友だったとする場合もある。
*8 父の機嫌を取るためとも、父達神々の洞察力を試そうとしたとも伝わる
*9 タンタロスは元々半神の上に神々の食べ物を食べていたので普通の手段では殺されない体質になっていた
*10 曾祖父のゼウスと浮気した挙句に曾祖母のヘラを激怒させたセメレーは自業自得だが
*11 意訳:ゼウス(#^ω^)ビキビキ「冥府にでも行って死んどけ馬鹿」
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