登録日:2023/05/23(火) 20:23:00
更新日:2023/06/14 Wed 02:07:04
所要時間:約 8 分で読めます
目玉焼きは料理の中でも一番簡単なものであります。
しかし、単純だからこそ奥が深く難しい。
本日は目玉焼きに関する諸問題を議論し尽くしたいと思います。
"世界の平和は美味しい目玉焼きから"を合言葉に、さあ始めましょう!
概要
黄身と白身とは、漫画『美味しんぼ』の第7巻に収録されたエピソード。
タイトルの通り目玉焼きを題材にした作品。
あらすじ
快楽亭ブラックが東西新聞社の文化部にやってきた。
目的は「目玉焼きのひっくり返して焼く方法を何と呼ぶか」について調べること。
そこから目玉焼きについて喧々諤々の話し合いが始まる。
主な登場人物
快楽亭ブラック
本名はヘンリー・ジェームス・ブラックで、豆腐の研究のために来日したアメリカ人。
2話前の『豆腐とにがり』で知り合った快楽亭八笑に弟子入りし、落語家となった。
明治時代の横浜出身のエゲレス人*1にあやかって修行に励んでいる。
IFECの会員で、彼が文化部に目玉焼きの焼き方について尋ねてきた所から話が始まる。
山岡士郎
本作品の主人公。
今回は大勢が一つの料理について話し合う内容だからか、大人しめで出番が少ない。
「サニーサイドアップ」と「ターンオーバー」について説明するなど、知識は流石といったところ。
IFECの会場で新たな焼き方を提案する。
谷村部長、富井副部長
栗田ゆう子、花村典子、田畑絹江
その他文化部の面々
文化部のメンバーたち。目玉焼きの食べ方について各々意見を出し合う。
IFECについて教えられると、文化部として興味深い題材としてノリノリで出席した。
流石に全員で出席するほど暇ではなかったようだ。
谷村部長はブラックのお江戸口調がうっかり感染ってしまうというおちゃめな一面も見せる。
大原社主、板山社長、唐山陶人、領子
せっかくなら周りの人の意見も聞いてみようということで尋ねて回った人たち。
それぞれ目玉焼きについて一家言持っている。
三谷直吉
煎餅屋の店主で、花村の婚約者。
目玉焼きでは熱烈なターンオーバー派。
相川料理長
東西新聞社の社員食堂の料理長。この頃はまだ名前がなかった。
本作の最後に登場し、とばっちりを食らう。
国際目玉焼き会議(International Fried Egg Conference)
略称はIFEC。
目玉焼きについて焼き方、食べ方、調味料などを大真面目に話し合う国際会議。
世界75か国から300人以上が参加する大規模な会議。
田畑いわく「あっきれた! 何てヒマ人が多いの!」
あらすじ以降のお話の流れ(ネタバレ注意!!)
ブラックが来社した目的は「サニーサイドアップとターンオーバーを日本語で何と呼ぶか」について尋ねるため。
誰に聞いてもそれがわからなかったという。
前者は片面だけ焼く焼き方、後者は両面焼くことを言うのだが
栗田は「目玉焼きを両面焼くなんてあまり聞かない」と答え、花村も同意する。
日本人で両面焼きが当たり前と思っているのはこのキャラくらいなものだろうか。
ともあれ、日本語で焼き方を指す名前はない。一種類しかないなら、区別するための言葉がないのも道理だろう。
彼がそんなことを知りたがるのは、IFEC(国際目玉焼き会議)に調査結果を報告するため。
そんなことを真面目に話し合う会議があることに呆れながらも、面白そうだと興味を持つ。
この話を聞いていた社員の一人が、「名前はないが、自分も両面焼きで食べている」と述べると
別の社員が「目玉焼きは真ん中に黄身があるからいいのであって、両面とも白くなったらダサイ」と返す。
彼がひっくり返すのは白身がグチャグチャしてるのが嫌だからだそうだが、別の社員は「十分火を通せばいい」と答える。
花村は「そんなに火を通したら黄身が固まってしまう」と難色を示すと、彼は「固いのが美味い」と譲らない。
田畑は「白身が固く、黄身は半熟が鉄則」と断言。
富井副部長がそれに同意し「そして醤油をかけるのが一番美味い」と主張すると
田畑が「田舎くさい」と一蹴。副部長は当然怒った。
谷村部長は塩コショウ派、別の社員はとんかつソース、黄身を固く焼く人はケチャップ。
このケチャップに対して花村が「きゃあ変態!」と指さし驚く。いくら何でもひどい
こんな感じで文化部の面々が議論を交わしているのを見たブラックは笑いながらIFECに勧誘した。
文化部として放っておく手はないと、谷村部長もこれに応じた。
どうせなら周りにも意見を聞こうということで山岡と栗田は知人をたどる。
大原社主「私はごく普通の目玉焼きだ。七味唐辛子をかける」
板山社長「丸いだけの目玉焼きが気に入らない」
と金型を作った。ハート型や星型など、お弁当に入っていそうな目玉焼きである。
唐山陶人「わしの手製の目玉焼き用の土鍋じゃ」
ちょうど玉子1個が入る大きさ。領子のために作ったもので、ここぞとばかりにノロケる。
彼らに加え、当日は三谷も参加することとなる。
IFECの当日、会場は大盛況。
まずは会長のレジュー氏が項目冒頭のような言葉で開会の挨拶、
フランスの最初に議題として『目玉焼きの食べ方』について中間発表を行った。
目玉焼きの永遠の課題は、どの時点で黄身を食べるかということであります。
ここからビデオ上映。
最後に黄身だけ残るのも、好きなものをとっておいたみたいでみっともないし…
といって、黄身の中身だけ先に吸ってしまうのも下品です。
犬食いみたいに顔を伏せて黄身を吸う姿に、会場は爆笑。
これはあるアメリカ人の例です。縦横に細かく刻んでから……パンに一口ずつ乗せるやり方もあります。
これには会場からブーイング。
ビデオが終わって議論に移ると、まず最初に出た意見は
「今の最後の食べ方は許せない!」
まあ、これを目玉焼きと呼べるかどうかは疑問ではある。
「黄身を突っついて破って、パンに黄身をまぶして食べる。その後に白身を食べ、最後に黄身を食べる」
→「私たち米食民族には不可能だ。目玉焼きはパン食民族だけの物ではないことをお忘れなく」
「黄身を固く焼けば、皿が汚れるとか心配しなくていい」
→「黄身の焼き加減は別の問題だ!」
「目玉焼きを皿ではなくパンに乗せる。皿に熱が奪われないのが良いところ」*2
と、多種多様な意見が出る。
各人楽しんでいるが、馬鹿馬鹿しいことを大真面目にやっているからこそ面白い。
司会者がここで議論を止めて、次は焼き方について話したいと進行する。結論は出さない。
「だって結論を出してしまったら、次に大会を開く口実がなくなってしまうでしょ。」
ブラックが焼き方について調査結果を報告する。
日本ではサニーサイドアップがほとんどで、ターンオーバーはほとんど普及していない。
また、欧米では卵を2個使うのが普通だが、日本では1個が普通だ。
「黄身の周りが柔らかく、コショウや塩の乗りが良くて、その分美味しいわ」
「日本人が片目のサニーサイドアップを好むのは、それが日の丸に似ているからであります」
「黄身の焼き具合を調節できるのがターンオーバーの良さだ!」
「しかしターンオーバーは焼くのが難しい。ひっくり返すときに黄身を破いてしまって……」
「私もそうなんです! 誰かターンオーバーを失敗なく焼くコツを教えてください!」
花村が思わず興奮してしまう。
周囲の会員は「フライパンを油になじませておくこと」「ひっくり返した後の方が焼く時間が長くなるように」とコツを教えた。
山岡は「表面が白く固まりさえすればいいなら」と、別な焼き方を提案する。
フライパンにバターを入れて、溶けてから卵を入れて、1分ほど蒸し焼きにするのだ。
蒸し焼きを新たな調理法の一つとして議論の対象に加えたい、とブラックが提案すると、周囲も賛同した。
このように時には和気藹々と、ときには喧々諤々と話し合いが進んでゆく。
ひとまずは休憩ということで目玉焼きを食べることになった。
「楽しい会議ねえ」
「全然結論を出さないところが気が抜けるけど……」
「結論は、めいめいが自分で焼いた目玉焼きで出せばいいんじゃないの」
山岡の言うとおり、参加者たちは各々の目玉焼きを楽しんだ。
エピローグ。谷村部長は相川料理長から抗議を受けていた。
「私は社員食堂のシェフを十年やってますが、こんなことは初めてです!
お宅の文化部の方は、どうしてハンバーグ定食の付け合わせの目玉焼きに、いちいちうるさいことを言うんですか!!」
とんだとばっちりだが、谷村部長が「いや申し訳ない、実はIFECのおかげで……」と説明すると
相川料理長は熱心にその話に聞き入った。
IFECの会員がもう一人、増えることになりそうだ。*3
余談
もちろんIFECは架空の団体である。しかし、ネット上で目玉焼きについて話し合う場があれば
十人十色の焼き方食べ方があり、結論が一つに纏まることなどありえないくらいに話が盛り上がるのは間違いない。
なお、卵かけご飯について扱った『日本たまごかけごはんシンポジウム』ならば存在する。
このタイトルと内容から目玉焼きの黄身いつつぶす?を連想した人も多いだろう。
『同じ料理でも食べ方にいかに拘るか』を題材にした漫画が12巻も続いたという事実からも、
食べ方に拘る人がいかに多いかがわかる。
美味しんぼにもそのようなエピソードは多くあり、美味しんぼといえば
料理や食べ方の好みを巡って人格否定も辞さない勢いで争う漫画というイメージを持っている人も多い。
しかし、実際はどちらの漫画も最終的には自分の好み以外のものも受け入れることで終わるものが多いことを覚えていてもらいたい。
結論は、めいめいが自分の追記・修正で出せばいいんじゃないかな。
次の大会を開くため、あえて結論を出さないとは。クール! -- 名無しさん (2023-05-23 20:44:09)
IFECの皆さんは他人の意見を否定はせず「自分ならこう」みたいな感じで提案を出していくのが好き。 -- 名無しさん (2023-05-23 20:46:46)
アニメだと快楽亭ブラック初登場回の大豆とにがりが欠番になってる。なので初見だといきなりこの話から登場するブラックに「誰だ?この変なガイジン」とびっくりする -- 名無しさん (2023-05-23 22:09:44)
俺の好みは富井副部長と同じ。別の回で出てきた目玉焼き丼にしても美味い。 -- 名無しさん (2023-05-23 22:25:11)
雄山がいたらどうなってたことか… -- 名無しさん (2023-05-23 22:51:06)
そういや実家は蒸し焼きだったな...主食がご飯なら醤油、パンなら塩コショウ派です -- 名無しさん (2023-05-23 23:23:13)
この話見てから暫く蒸し焼きやってたわ -- 名無しさん (2023-05-23 23:29:46)
ケチャップ派の男のテキトーなキャラデザがツボる。あとオムレツにケチャップかけるの考えたら別におかしくはないよな -- 名無しさん (2023-05-23 23:49:26)
サニーサイドアップとターンオーバーを日本語で何と呼ぶか」のところNHK教育のえいごであそぼのハッピーランドで言っていた お日様と…何だったか -- 名無しさん (2023-05-24 06:40:29)
みんなからブーイング受けてた「細かく切り刻んでパンに乗せるアメリカ人」が実際にいるのか知りたい -- 名無しさん (2023-05-24 09:33:25)
子供の頃よく食べてた美味いお好み焼き屋さんの卵の焼き方が黄身が潰れて全体に拡がるでもなく焼けた白身に覆われて形を保っていて、今思えばあれがターンオーバーだったのか -- 名無しさん (2023-05-24 13:01:26)
黄身を半生くらいで焼く→頭をつついて穴をあけて黄身にしょうゆを混ぜる→黄身の切り開いて白身にかけて食べる という食べ方を友達に披露したらドン引きされた。何故だ -- 名無しさん (2023-05-24 17:48:01)
↑つついたり混ぜたりかけたりするってのがぐちゃぐちゃにしてるみたいで受け入れられなかったのかもしれないね -- 名無しさん (2023-05-24 18:22:18)
↑4あのVTRは明らかに会員の議論意欲を沸き立てる意図があるし、他者を否定しないIFECの人達がブーイングしてるから、作成者がわざと作った食べ方で、会員もそれ知ってて全否定したんじゃないかね -- 名無しさん (2023-05-24 19:52:17)
この会議多様性の在り方として素晴らしいものなのでは -- 名無しさん (2023-05-24 19:53:07)
半熟の目玉焼きの黄身を割ってその中にソース入れてかき混ぜてカリオストロ伯爵のように食うのって変かな? -- 名無しさん (2023-05-24 22:23:32)
うちはどうだったかと考えたら蒸し焼き式のターンオーバーに塩コショウだったな…尚家族全員割と雑なので焼き加減はまちまち -- 名無しさん (2023-05-25 16:25:26)
お好み焼き・焼きそばの付き物である以上濃厚ソースも、オムレツ(ライス)があるからには固めの黄身ににケチャップもアリなはずなのだが目玉焼き単体で考えるとゲテ扱い、これもまた単純だからこそ奥深いの一面て事かな -- 名無しさん (2023-06-14 02:07:04)
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