SCP-CN-2801/尛熋-CN⚠2801

ページ名:SCP-CN-2801_尛熋-CN_2801

登録日:2022/09/30 Fri 03:58:32
更新日:2024/06/27 Thu 10:36:54NEW!
所要時間:約 23 分で読めます



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scp foundation scp-cn keter 中国支部 小熊 ホラー



アニヲタwikiを眺めていると、あなたは奇妙なタイトルの記事を目にした。
記事の名前は「SCP-CN-2801/尛熋-CN⚠2801」。
なんだこの漢字は?文字化けしているのか?
あなたは好奇心に駆られ、恐る恐るURLをクリックする。


(・(ェ)・)


!あなたは小熊に遭遇した!



SCP-CN-2801とは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクトである。
オブジェクトクラスはKeterで、項目名は『尛熋』。管轄は中国支部なので、識別記号として「CN」が付いている。
記事中ではSCP-CN-2801だが、SCP一覧ページでは「尛熋-CN⚠2801」と表記されているため、便宜上併記しておく。


概要

投稿後、めちゃくちゃ怖い記事として中国でも日本でも話題になったSCPである。
どれぐらい怖いかというと、Twitter上では「怖すぎて読むのを断念した」「1ページ目で速攻撤退を決意」等といった報告が大量に観測されたほど。
不穏な文章・画像・SE・構文がこれでもかと詰め込まれているので、読む時はある程度心の準備をしておこう。
恐怖を最大限味わいたい場合はイヤホン/ヘッドホンを着けての閲覧を推奨する。閉め切った部屋で一人で読むとなお良いだろう。


雰囲気やギミック要素が強いので、深く考えなくても十分楽しめるが、読み込んでみると謎が多く、考察しがいのある記事といえる。
とりわけ、後述のある解釈に立って読んだ場合、オブジェクトに抱くイメージが全くの別物になる可能性がある。


以下、読み切れなかった者やいまいち分からなかった者のために、記事の各部を要約しながら解説していきたい。


+ 目次-

冒頭

好奇心に負け、息子に付き合ってまた何話か見てしまった。けどこのアニメ、本当に『Boonie Bears』か……?


ある男性のブログから引用したらしき文章。
中国の国民的アニメ『Boonie Bears』への論評と、ブログ主の息子についての話が中心なのだが、昼間と夜間で表示される内容が180度様変わりする。
昼間は不登校の息子がアニメにハマり、前向きになっていく……という旨の明るい話である一方、
夜間ではアニメに起こった異変と、次第におかしくなっていく親子の日常が記されている。


SCP記事で冒頭からいきなりブログの引用が出ること自体、かなりの異常であり、この時点で何か恐ろしい事態が進行していることを示唆するものとなっている。


認知性安全検査-2801-“SUNBEATDOWN”


山を降りる太陽


ほら、手を伸ばしてごらん
明かりはみんな消えちゃった。部屋に戻ってお休みなさい


報告書を読む前に受けることになる、画像を用いた対抗ミーム的なもの。
001提言を見る前のミーム殺害エージェントの一種、といえば分かりやすいだろうか。


SUNBEATDOWN(照りつける太陽)と銘打たれているものの、表示される画像では曇りががったが山の向こうに沈もうとしており、言行不一致のような違和感を覚える。
また、画像2枚目に写るクマの彫刻だが、よく見ると多数の人間を取り込んだデザインになっており、大変気味が悪い。


報告書本体

ようやく現れた報告書の本体部分。要約すると、次のようになる。


  • CN-2801は情報災害/精神災害性を持った異常現象。日没から日出までの間、光の乏しい密閉/半密閉空間に現れる。
  • CN-2801は初め、物陰に出現する。その姿は「巨大かつ普通ではない影」と表現され、見た者に強烈かつ非合理的な不安や恐怖を抱かせる。
  • はっきり見ようと近づいたり、光で照らすなどして、影を物陰の外に延伸させると、その人はCN-2801の影響下に置かれてしまう。影響からは二度と抜け出せない。

(なかなか難しいが、延伸とは"外部と繋がりを持たせる"というような意味か)


これに対し、財団の定めた収容プロトコルは次の通り。


  • 収容チームのメンバーはCN-2801に出くわした場合、論理的に分析したり、記憶を無意識の中に封じ込めたりして、オブジェクトの心理的危害に抗うこと。
  • 小熊が見えなかった場合、メンバーは自害しなければならない。特に頸動脈切断がベスト
  • チーム外の職員がCN-2801に出くわした場合は、安全区域に連れていき、早いうちに記憶処理を施すこと。
  • 遭遇現場や移動中に見える小熊はすべて不自然なものだ。可能な限り無視しろ

唐突に現れた「小熊」というワード。
CN-2801のことを指すようにも見えるが、説明部分では一言もクマについて触れておらず、オブジェクトとの関係性はハッキリしていない。
また、「見える小熊は無視しろ」「小熊が見えなければ自害しろ」と、プロトコル同士でガッツリ矛盾が生じており、その信憑性に疑問を抱かせるものとなっている。
なお、説明部分の末尾にはこのような一文が記されている。


さらなる情報はSCP-CN-2801の出現を招く可能性があるため、あなたのアクセスは継続されるべきです。


CRVアセスメントプロセス


BeA鐔2-Foundからの忠涓嶈鐪告 !


これ以上の閲覧は実体への不要な曝露を招く恐れがあります。
ガイドに従い、以下のCRVアセスメントプロセスを遂行し、追加の閲覧権限を取得してください。


盛大に文字化けした警告に従い、読者が行うことになるテスト。内容は心理テストのようなもので、質問に対し2択~4択で答えていく。
詳しくは元記事を参照して頂きたいが、倫理的に際どい選択肢が出たり、質問側に詰められたりするなど、総じて読み手を揺さぶるギミックとなっている。
一応補足すると、CRVとは認知抵抗値(Cognitive Resistance Value)の略であり、SCP-2316等に出てくる財団用語である。


付録.CN-2801.1: [CN2801-3578-SCPF]が遺したメモ


君たちの脳内には、意図的に封じ込めたモノが無いだろうか。


君たちの記憶には、意図的に忘却した、思い出の断片が無いだろうか。心の最奥、奥底に埋もれている断片が。


子供時代トラウマになった曰く付きの路地と、それにまつわる恐ろしげな童謡についての紹介。CN-2801を担当する研究員が記したもの。
道路脇の家から小熊の人形が投げ捨てられるのを目にしたらしく、それが大人になっても心にひっかかっているという。


路地は既に取り壊されているが、CN-2801と何らかの関係があるようで、研究員は20年ぶりに現場へ足を運ぶことになった。
今では幅の広い大通りになっており、幽霊や怪物が出る気配は無かったものの、そこで彼は小熊の人形を発見する。
次の瞬間、人形は跡形もなく消え去っていた。彼はそれが実体ではなく、心のトラウマが生み出したものであると推察した。


付録.CN-2801.2: 発見以降の顕現記録(抜粋)

ここではCN-2801が発生した際の記録がまとめられている。
比較的短いのでそのまま引用する。


記録 # 038


関与者: [CN2801-1374]


概要: 2010年██月██日夜、[CN2801-1374]は外出し、近隣の街を散歩していた。
監視カメラの記録から、対象が家を出て6分後、唐突に街角の小道へと立ち入ったことが分かっている。意図は不明。進入した小道は日差しが欠乏していた。
対象は進入後、その場で3分ほどためらう素振りを見せ、それから小道のより深い、暗い場所へと進んでいった。
対象の緊張反応はSCP-CN-2801の発生と[データ削除]を招いた。
現地時間の午前1時、対象は監視から完全に消失。小道出口の監視カメラは対象の行方を捉えることがなかった。


CN-2801の影響を受けた人間は失踪するかもしれないことが判明する。


記録 # 172


関与者: [CN2801-2101]


概要: 2013年██月██日、[CN2801-2101]が████████株式会社にてエレベーターのメンテナンスを行っていたところ、
オフィスビル全体が突如停電し、[データ削除]を引き起こした。対象はエレベーターシャフトの底部に落下した。
監視カメラの記録から、エレベーターの天井灯は停電後も2分間発光を続けていたものの、徐々に薄暗く、灰色がかっていったことが分かっている。


[データ削除]およびその他の痕跡からは、[CN2801-2101]がエレベーターシャフトで少なくとも38時間生存していたことが示された。
延伸は落下時にはすでに発生しており、シャフト内の狭小空間も小熊の出現を促すものではなかった。
対象が発見された時、シャフト内を光源で照らすことは不可能となっていた。


こちらの事例では、対象が消えなかった一方、発生場所を照らせないという新たな異常性が明らかになっている。
「シャフト内の狭小空間も小熊の出現を促すものではなかった。」という謎の一文が気にかかる。


記録 # ###


関与者: [CN2801-3578-SCPF]


概要: [CN2801-3578-SCPF]はSCP-CN-2801の顕現に初めて居合わせたオブジェクト収容チームのメンバーであり、[データ破損、編集済]


収容チームが顕現イベントに気付いた時、[CN2801-3578-SCPF]の寮室にある家具と照明器具はすべて消失しており、窓は完全に光を通さなくなっていた。
寮室内で対象は発見されなかった。埋込式の追跡チップは対象が[編集済]の座標上にいることを示した。


対象の部屋からは以下の物品が回収された。


  • 懐中電灯。電池は入っていない。
  • [CN2801-3578-SCPF]の携帯電話。検査の結果、録音機能のみが利用可能であることが分かった。1件の録音ファイルが保存されており、[データ破損、編集済]。
  • 原稿用紙。黒色のカーボンインクで3回「連れ戻せ」と書かれている。
  • インクの尽きた万年筆。
  • 超常心理部門が出版した精神分析学の書籍。多数の折込みが見られる。
  • 登山杖。
  • 焦げ茶色のプラスチック製ボール。表面が激しく摩耗している。

顕現イベントの発生したサイト-███は現在、完全な封鎖下にある。イベント-CN2801-JUNGの後、関与者の行方をさらに調査することは禁じられている。


[CN2801-3578-SCPF]は「付録.CN-2801.1」のメモを遺した人物。CN-2801への曝露後、どこか別の場所に転移したらしい。
「連れ戻せ」とは一体何を指しているのだろうか。


付録.CN-2801.3: 最初の遭遇

CN-2801が最初に現れた事件の監視記録。現場はロンドンのS██████ T█████孤児院で、2010年のクリスマスイブに発生した。
当時、孤児院には教員のロザリンド女史と86人の児童がクリスマスを祝っており、
Youtubeのライブ配信では『Doll dances with Teddy bear』を歌ったり、寄付された小熊の人形を撫で回したりしている様子が収められていた。


配信開始から30分後、食堂が暗くなっていることにロザリンドが気付く。
電力部門に問い合わせたものの、先方からは「なんら問題はない」との返事。にもかかわらず、その後も次第に暗くなっていき、子どもたちは不安で苛立ち始める。


20時18分、大部分の子どもがパニック状態に陥る。クリスマス会をやってる場合ではなくなり、ロザリンドは皆を寝室に帰そうと決める。
しかし、食堂を出るための通路がすべて、光を通さない暗闇にあることが判明。窓の外についても同じであり、驚いたロザリンドは警察に通報する。


20時33分、付近の警官が孤児院に到着。彼は建物内の異常な重苦しさを報告し、立ち入りを断固拒否してしまう。
その後、警察の特殊部隊が現場を引き継ぐも、耐え難い心的ストレスから、最終的には食堂に辿り着くことなく撤退している。
この間、孤児院では停電が発生。ロザリンドはTwitterで窮状を訴えることに。
動画内で、彼女は繰り返し強く「ドアの向こうからじっと見られている」と主張していた。


21時04分、ロザリンドが警察と再びやりとりしている中、オペレーターは電話口後方からのノック音を耳にする。
続けて女性の悲鳴が聞こえ、通話が切断される。以降、ロザリンド女史と児童86名の消息は分からなくなった。


21時05分、孤児院の敷地が3分以上にわたり震動し、ロビーには血の匂いが充満する。
揺れが収まった後、遠くから足音が聞こえ、次いでドアを開く音が聞こえる。足音はドアの外へ移動しているようにも聞こえ、まもなく消失した。



事件後、食堂にいなかった17名の職員が救い出されるも、全員が精神崩壊を起こしており、リハビリを受けることになった。
不明者の所持品はほとんど床に散乱していたが、配信中に映った小熊の人形だけは見つからず、埃を被った綿のみが残されていた。


1年後のクリスマスイブ。ロンドンの住宅で火災が発生し、事件当時孤児院にいなかった職員・マクアダム氏が遺体となって発見された。
マクアダム氏による放火が原因だったものの、彼に精神疾患の病歴はなく、火を付けた動機は明らかとなっていない。
現場では行方知らずとなっていた小熊の人形が見つかっており、発見した警官は神経衰弱を患い、暗闇や毛髪に似た物を酷く恐れるようになった。


付録.CN-2801.4: 録画映像、ニコロデオン・インターナショナル・チルドレンズチャンネル、2010.12.25


アメリカのキッズチャンネルで放送された異常なアニメ番組の記録。時系列としては孤児院で顕現事件が起きた翌日にあたる。
アニメはかの有名な「くまのプーさん」で、プーさんとピグレットがケーキ作りをするというお話だったが、
調理の途中、プーさんが唐突に「月の暗所」について語り出し、ピグレットに月の黒斑を観察するよう要求する。
ピグレットは初め、困惑して拒んだものの、最終的には押し負けたのか、用意された望遠鏡に目を当てた。


次の瞬間、大きな爆発音が鳴り、放送が終了する。
続いて、チェンソーの切断音に似たノイズと、信号ロストを示す警告が7秒間にわたって流される。
その後、画面は正常に戻ったものの、カラーからモノクロに減色しており、月のみが元のオレンジ色を保っていた。
それからの展開もかなり奇妙で、


  • 月の話題に一切触れず、元のケーキ作りに打ち込む2人
  • 望遠鏡が倒れ、レンズが太ももに突き刺さっても無反応のピグレット
  • 画面から1分半にわたってプーさんが消失。この間、ピグレットは無人の椅子に語りかける
  • ドアを開け、家を出ていくプーさん。以降、プーさんは放送終了まで登場せず

等々、不可解な点が絶えなかった。


付録.CN-2801.5: 相互試験記録

CN-2801の情報を収集した財団は、オブジェクトの特性に基づいた試験場を作り上げ、様々な実験を行った。
試験場の具体的な描写は無いものの、実験の記録から、CN-2801が発生しやすい、または意図的に発生させる空間だったと推測される。
Dクラスが死ぬわ小熊が見つかるわ、[データ破損、編集済]になったりしているが、これらの実験は現在、無意味であると結論付けられている。


付録.CN-2801.6: 録音ファイル、由来不明

密閉空間で録音されたものとみられる音声ファイル。「暗闇」について語る男と、それに反応する女の声が記録されている。
頻繁にノイズが走る上、話自体も抽象的という、非常に難解なパートだが、後々考察の手掛かりになりそうな文があるので一部引用しておく。


男声: 私たちはこれまで、闇というものが常日頃から、人心に隠れた無意識の部分をかき立てていることを目の当たりにしてきました。
暗闇の中の物事に対する疑心と恐怖は、人類史の初めからずっと、私たちの心に根を張っていたのです。


男声: その後、彼らは火を用いて暖を取り、調理や探索のための道具として活用しました。
火というものは、人類の暗闇における初めての導き手でした。…こうした[判別不能]で初めて、人間は闇の奥へ進むことができたのです。
しかし、時には(突然別の箇所に切り替わる。声は伸ばされ、歪んでいる)人間は導き手が何者であるか知りません


男声: 唐突に幻覚が見えたとします。暗闇において、直感的に物の形を感じ取り、自力だけで道を見いだせる幻覚です。
断っておきたいのは、これが暗視能力というわけではないことです。そこに光はまるっきり存在しないのですから。
あなたの心はもはや、導き手をすっ飛ばし、完全に闇へと開き放たれ── (多数の鋭いノイズと風の反響音にかき消される)


女声: 私は踏み入った。入るまで、暗闇には何も見えるものはなかった。
何も聞こえないし、何も触れられない。五感が止まったかのように、体の感覚がなかった。
小熊の顔が宙に浮かんでいる。片方の手で触れてみるも、生気はまったく感じられない。
私の指は布をすり抜け、月を指していた。私は布団の中で身を縮める。周りは本当の闇となった。
…布団から手を出し、月を手のひらで覆っても、それ以上暗くなることはない。
目を閉じ、早く眠りに就こうとする。私の目は体の中へ縮こまり、暗闇に向かって少しずつ、少しずつ泳いでいく。
直後、私は何も感じ取れなくなった。今もなお、私は歩き続けている。


付録.CN-2801.7: 事件-CN2801-JUNG

[CN2801-3578-SCPF](メモを遺して消えた研究員)の転移座標に派遣された、4名の機動部隊による映像ログ。



部隊は付近の山中にて謎のトンネルを発見し、バンに乗り込んで探索を始める。トンネル内の視界は悪く、5メートルまでしか照らすことができない。
しばらくして、バンに何かがぶつかり、停車する。メドウズとカムリィが降りて調べると、車体の方は大して問題ないことが分かった。
しばしの静寂の後、2人の身に異変が発生する。


メドウズ: カムリィ、お前震えてるのか?


カムリィ: 何にも見つからない。自分の周りが虚無で、この世界には私以外、暗闇しか残っていないように感じるの。


メドウズ: 何だよいきなり……タイヤが大丈夫かどうか、早いとこ調べて車に戻ろうぜ。


カムリィ: あなたの声も震えてるわよ、メドウズ。暗闇に包まれている感じ、あなたにも分かるでしょう……
一面毛むくじゃらで、支えになるものは無く、ブラックホールに落ちていくようだわ。


荒い呼吸音。


カムリィ: 報告。車が見当たりません。


隊長のジョンは落ち着いてバンを探すよう指示する。乱れた足音が続くが、次第に小さくなっていく。カムリィとメドウズが車に戻ることはなかった。
2分後、バンが発進する。車内の2人はカムリィとメドウズの失踪に気付いていないように見える。


その後、バンがトンネルを脱し、画面がにわかに明るくなる。
前方には果てのない細道が現れ、両脇には高さ数十メートルに及ぶ未知の樹木が立ち並んでいる。
区域全体が真緑の霧に覆われており、太陽は視認できない。


トンネルを抜けて喜ぶ隊長を尻目に、もう一人の隊員・ウッドストックはヒューム値の異常を心配する。
再びの静寂。


ウッドストック: 何か、足りなくないですか?


ジョン: (震え声)いいや。


ウッドストック: ジョン……


ジョン: いいや、足りてるとも。


2人は車内で口論を始める。何の前触れもなく、巨大な倒木が視界に現れる。車は倒木に衝突し、横転する。
2人は何とか車を脱し、森の中を彷徨う。北西に昇る満月が見えるも、通常の方位より大幅なずれが生じている。
ウッドストックが転ぶ。彼は必死に立ち上がると、ポケットから何かを取り出す。球状の物体が落ち、弾む音が聞こえる。


ウッドストックは歩みを早め、走り出す。積み上がった落ち葉を踏みしめる。
上空には本来見えるはずの満月ではなく、新月が映っていた。


ウッドストック: (小声で)気付かなかった……そうだったのか。


ウッドストックは[データ削除]を踏みつける。球状の物体が音を立てて転がり、彼の元に近づいてくる。


ジョン: めぼしい物は無さそうだ、ウッドストック。


ウッドストック: まったく光が無いのに、(音声が途切れる)


ウッドストック: 確かに、めぼしい物は何もありませんね。


カメラが地面に落下する。画面内に2人の姿は見られない。新月が段々と小さくなり、遠ざかっていくように見える。
数ピクセルまでに縮小した新月は瞬きを繰り返したのち、二度と光らなくなった。


30分にわたり、無音のブラックスクリーンが続く。


本当にすまない。



「付録.CN-2801.2」の遺留品リストを見ると、「登山杖」が「山」に、「焦げ茶色のプラスチック製ボール」が「球状の物体」に対応していることが何となく分かる。
ただ、球状の物体が何を意味しているかはハッキリしていない。丸い物というと、記事中では「月」への言及が頻繁になされているが……。


テストシナリオ

警告??: あなたはすでに、阀口期に突入しています。現状においては容易に灏卞搰鍝堢殑が発生し得るため、身辺保護に注力してください。


小熊に遭遇しても五体満足でいられる確率を高めるために、我々は特別なテストシナリオを構築しました。
シナリオの完遂は必須です。なぜならすでに"顕現"イベントは発生しているからです。


長いこと読み進めてきたが、当記事はここからが本番と言っても良いだろう。
ここでは簡単なゲームが用意されており、読者はゲーム内の"あなた"となり、選択肢を選んで迷宮の探索をすることになる。
いくつかの選択肢はとなっており、不穏なの画像とともに、「!あなたは小熊に遭遇した!」という一文が表示される。*1
どうにか熊を避けつつ進んでいくと、"あなた"は見事迷宮を抜け出すことに成功する。
この際、「小熊の幻惑を断ち切ることができたのだ。もう二度と出会うことはないだろう。」と言われるが、実際はもう少しだけ出会うことになる。


夜が更ける。あなたは冷たい夜風に吹かれながら、記憶の中の道に戻ってきた。幼い頃の恐怖がすべて詰まった、あの小道だ。
…寂れた家の門前に、ベージュ色をした小熊の抱き人形が横たわっている。あなたの記憶と同じように、それはそこに横たわっていた。


男の子はオモチャの小熊を抱いており、小熊は頭をもたげ、先生を見つめている。
潮のような笑い声が押し寄せる。それらはたちまち、恐怖の絶叫へと変わっていった。


深緑の空の下、森の中に入っていく。…あなたは咆哮と、地面に落ちるビー玉の音を耳にした。


迷路を脱した後、"あなた"は裏路地、孤児院、トンネルの先の森と、報告書に出てきた場所を訪れることになる。
"あなた"は行く先々において、熊らしき存在を再確認し、それがもたらす恐怖を噛みしめていく。


そして、"あなた"は熊そのものがいる場所、プーさんの小屋に辿り着いた。そこにいたのは……


(■(ェ)■)


!あなたは小熊に遭遇した!


それはあなたに向かってきた、腐敗してぐらつきながら、それは笑ってやってきた。


(■(■)■)


!あなたは尐熊に遭遇した!


私はそれの体温を感じた。それは私を呼び、誘い、私の髄を吸い尽くそうとしている。


脳内の甲高い鳴き声とともに、私には聞こえたのだ。それはやって来た。


■■■■■


!あなああたは尛熋に遭遹した!


あなたは暗く光の無い劇場に足を踏み入れる。
誰もいない場内に足音が響く。あなたは二度と立ち去れない。初めからあなたは、この場所の一員だったのだから。
スポットライトが灯り、舞台中央に光の束が注ぎ込む。世界は一瞬にして、白黒2色に変わっていく──
小熊はそこにいた。けれど、今はいない。今は、それではない。


あなたは!!に遭遇した。


まるで熊のようには見えない何かに遭遇したところで、記事は終了する。
ここでは顔文字で再現しているが、元記事では不穏な画像が立て続けに表示されるので、心臓の弱い人は注意が必要である。


ホラー熊の正体

ここまで読んだ読者の9割はこう思うだろう。SCP-CN-2801は「暗闇に潜む、人に敵対的な怖い熊」であると。
しかし、日本語版のディスカッションでは著者の一人・Diamond_Apple氏による意外な解釈が明かされている。
なんとこの熊、作中の読み手=職員にとってはハチャメチャに良いヤツだったというのだ。


小熊は致死的なアノマリーというわけではありません。それは人の潜在意識に存在する、ある種の「守護神」なのです。
小熊の出現は、2801がすでに現れていることを意味します。
この時、小熊は2801に一時的に「覆いかぶさって」おり、私たちに2801の致死的影響が伝わるのを遅らせているのです。


(記録 # 172を例に取って)
ここでは環境的要因により、小熊は顕現できず、2801を遮ることができませんした。そのため、被害者は直に2801を見てしまったのです。


実際のところ、記事は全体が2801の影響を受けています。
こうした影響の最終目的は、読者に小熊への恐怖を抱かせ、心の中の「守護神」を排除させることで、2801の致死的汚染に直接曝させることにあります。


つまるところ、小熊は本来、潜在意識が生み出した防衛システムの一種であり、以下のような働きを果たしていた。




CN-2801<見たら大変なことになります



(・(ェ)・)<お嬢さん お逃げなさい



閲覧者(何か熊が見える…)




小熊がフィルターの役割を果たして、毒となるCN-2801の影響を緩和していたのだ。
狭いエレベーターシャフトで熊が現れなかったのは、CN-2801が目と鼻の先に現れたため、熊の割り込む余地が無かったからではないだろうか。


優秀な防衛システムだが、流石に相手はKeterクラスの怪物。報告書を改ざんされ、厄介極まりない対策を打たれてしまう。





CN-2801<このクマ邪魔だな…



(・(ェ)・)<お嬢さん おn... 見て見て!!クマってめっちゃ怖いよね!!!CN-2801



閲覧者(クマ怖っ!頭から取り払わなきゃ…あっ)




猛烈なネガティブキャンペーンを展開することで、読み手に熊への疑心を募らせ、防衛システムを自ら取り除かせてしまったのだ。
終盤、小熊が尐熊→尛熋→!!へと代わり、画像も小熊とは思えないものになっていくのは、小熊というフィルターが取れ、代わりにCN-2801が出張ってきたためではないだろうか。


……よくよく考えるとこの場合、読み手は報告書の閲覧をトリガーにして、CN-2801に暴露していることになるが、
元記事を見ると夜間verの背景が真っ黒になっており、報告書自体がCN-2801化している可能性がある。
そもそも報告書はオブジェクトに都合良く改ざんされているため、発生場所が物陰のみとは言い切れないのだ。


その他の謎

文中の月の役割

熊ほどではないが、記事では頻繁に「月」への描写が登場する。「SUNBEATDOWN」でも何故か月の画像が使われていた。
これはもしかすると、CN-2801の天敵・熊へのメタファーかもしれない。


  • CN-2801が活性化する夜間に太陽はない→代わりに明るい月を嫌っている?
  • 「月の暗所」に執着するプーさん→熊に関心を持てとのメッセージ?
  • モノクロ化したアニメで月のみが色を保つ→熊が踏ん張ってる暗喩
  • 「小熊の顔が宙に浮かんでいる。~私の指は布をすり抜け、月を指していた。」→熊と月を同一視?
  • 「満月が見えるも、通常の方位より127度のずれ」→熊がやばい
  • 「本来見えるはずの満月ではなく、新月が映っている」→体力の限界

また、探索ゲーパートで迷宮を抜けた後に訪れた森では、以下のような記述がなされている。


道路の果てから、月が昇ってくる。黒いブロックノイズの下で、彼女は煌きを放っている。それは空に浮かぶ第2の月、月の片割れである。
月光は血しぶきのように流れ落ち、ひっそりとそびえる梢を風が吹き抜ける。あなたは弱々しいエンジン音を耳にした。あなたは咆哮と、地面に落ちるビー玉の音を耳にした。


本来の月ではなく、第2の月が昇っている。これはつまり、熊からCN-2801へ形勢がシフトしたことを暗に示しているのではないだろうか。
この場合、落ちるビー玉は弱り果てた熊を指しているものと思われる。
ついでに、CN-2801に性別があるという説も浮上する。月はよく女性名詞で語られるので、それに準じただけかもしれないが……。


「本当にすまない。」の真意

「付録.CN-2801.7」の探索ログでは、文末に無記名で「本当にすまない。」と記されている。
真面目な報告書らしくないし、CN-2801の仕業にしては熊へのネガキャン要素が無いので、弱った熊側が見せた幻覚の可能性がある。
熊側が介入したらしき形跡は他にもあり、「! BeA鐔2-Foundからの涓嶈鐪 !」もその一つであると推測される。


どうして熊なのか

精神的フィルターのイメージとして、なぜ熊が選ばれたのか、という疑問だが、著者の一人・H-Storm Z氏が次のようなコメントを残している。


見慣れたモノが二度と信じられなくなった時、私たちはどうすれば良いのか?
「小熊」という表象を取っ掛かりに、中国ナイズされたコンテンツと欧米文化の融合を図ってみました。


テディベアにプーさん、『Boonie Bears』にくまモン等、熊のキャラクターは世界中で多くの子どもに親しまれている。
見慣れた存在であるために、身を守ってくれる仕組みのアバターとして、熊がチョイスされたものと思われる。
少なくとも、作中の読み手の中では熊が適任だったのだろう。



追記・修正は記事中のクマさんが怖くなくなってからお願いします。



SCP-CN-2801 - 尛熋
by CaroyalKKaia, Diamond_Apple, H-Storm Z, sciencekiller, Dr Hormress
https://scp-wiki-cn.wikidot.com/scp-cn-2801
http://scp-jp.wikidot.com/scp-cn-2801


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  • ヘッドホン付きで閲覧することを推奨. -- 名無しさん (2022-09-30 07:09:33)
  • SCP界のクマの恐ろしさ(一部除く)のせいで子熊が恐ろしい存在なのかと… -- 名無しさん (2022-09-30 08:08:11)
  • 先に本家記事から読みに行きたいんだけど、ビックリ系の演出ってあったりする?それだけはどうにも苦手で… -- 名無しさん (2022-09-30 08:25:21)
  • ↑「ヘッドホン付けての閲覧を推奨」で察しろ -- 名無しさん (2022-09-30 08:46:53)
  • ↑3ビルダーの存在も逆手に取ってるよね。本家見て泣きそうになったけど、熊が味方だったと知ってちょっとメンタル回復したわ。 -- 名無しさん (2022-09-30 11:08:06)
  • 環境依存文字とか絵文字・中国語はなるべく避けてくださいっていう項目作成時のルールはあるけど……んー、この項目はそれが持ち味のようだし、大目に見ても良いのだろうか 自分は大目に見ても良い派 -- 名無しさん (2022-09-30 12:59:31)
  • ↑望ましくないなら、避けたほうが良いと思います -- 名無しさん (2022-09-30 13:11:15)
  • ↑3先に見たけど昼間明るい部屋で窓開けて読めば平気。夜は止めたほうが良い。 -- 名無しさん (2022-09-30 14:36:47)
  • ↑2 あんまりこの項目を特別扱いして悪例作っちゃってもなんですしね……少なくとも、項目内で不必要に絵文字を使っていると思われる箇所は、避けてくださいというルールにのっとり削除させていただこうかなと思います。文脈変えない程度に ご了承ください -- 名無しさん (2022-09-30 15:06:47)
  • という事は正体はヴィックなんだろうか?木は人間? -- 名無しさん (2022-09-30 15:10:39)
  • ↑2の続き とりあえず、装飾として絵文字を使っているところだけはルールにのっとり差し替えました。タイトルとクマの顔文字に使われてる環境依存文字、中国語に関しては、内容を尊重して手をつけませんでしたが、話し合いが必要であれば改めてかと。絵文字を無暗に使わないっていうのは、こればっかりは自由にやる中でも原則としてみんなが守ってきたルールなのでひとつ。 -- 名無しさん (2022-09-30 15:16:27)
  • 中国でクマのネタ・・・いやまさか某赤いプーさんの事じゃないよな? -- 名無しさん (2022-09-30 17:53:13)
  • この場合、恐怖に屈して撤退するのが正しい判断ということになるのか -- 名無しさん (2022-09-30 21:33:14)
  • 熊の顔文字については環境依存文字使わないタイプのものがあるのでそちらに差し替えました。 -- 編集 (2022-10-01 00:14:02)
  • 熊は味方だったんだな。終盤の展開に違和感はあったんだよね。子熊に遭遇しても、何かされるわけでもなく普通に逃げられたから。こっちを守ろうとしてくれてたんだな。 -- 名無しさん (2022-10-01 13:02:20)
  • 中国 プーさん 情報を隠す......あっ別の意味でヤバいなこれ -- 名無しさん (2022-10-02 06:23:31)
  • 熊本が大好きで良かった…(ガチ安堵) -- 名無しさん (2022-10-02 20:11:51)
  • クマー側に疲労の概念があるって事は、CN-2801が将来的に勝利を収める未来がかなり高いんじゃなかろうか。おい財団がんばれ -- 名無しさん (2022-10-10 21:02:11)
  • 小熊自体はパッチワークのクマと同じ部類なんだな。他のヤバい熊シリーズを知ってるとクマというだけで警戒しがちだからCN-2801側に有利だよね。共謀だったらどうしよう -- 名無しさん (2022-10-11 22:11:18)
  • これマジで凝った作品だよね -- 名無しさん (2023-02-17 14:46:25)
  • 自分、最後まで熊の意味が分からなかったけど、プロトコルと説明の矛盾で色々と察した。 -- 名無しさん (2023-02-17 14:50:59)
  • ここまで来るとSCPの報告書って言うより少し前の凝った個人サイトっぽさがあってホラゲ的な面白さだなぁ -- 名無しさん (2023-02-17 15:18:11)
  • ここではビビってブラウザバックが正しい選択となるわけか -- 名無しさん (2023-03-04 00:35:49)
  • 見せられないよ!してるクマ -- 名無しさん (2023-04-12 19:30:26)
  • 孤児院の下りが「子供達を虐殺する邪悪なクマ」女史 -- 名無しさん (2023-05-04 03:42:47)
  • プーさんが必死にその存在を遮断しようとしている野獣先輩がSCP-CN-2801の本体である可能性が微粒子レベルで存在している…? -- 名無しさん (2024-03-29 14:26:14)
  • 冒頭のブログがどういうものが解説で説明されないのが不気味なSCP。この記事でも何故か他に比べて冒頭の親子の日常にほぼ解説されてないのが気になる。 -- 名無しさん (2024-04-25 07:29:21)

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*1 本家では、!の部分は絵文字のハザード記号である警告マークが表示される

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