秋元きつね

ページ名:秋元きつね

登録日:2021/08/23 (月) 23:12:14
更新日:2024/06/03 Mon 13:44:02NEW!
所要時間:約 9 分で読めます



タグ一覧
秋元きつね せがれいじり 矢印 3dcg アーティスト 故人 くだん




Laugh & Peace




概要で→ブルブルする「GO!」

『秋元きつね(1968~2014)』は、アーティスト・3DCGクリエイターである。有限会社 件(くだん)の代表取締役。本名:秋元一秀(かずひで)。
CG黎明期から活動を開始し、3DCGの普及に貢献した人物の一人。
代表作はプレイステーション用ゲーム「せがれいじり」シリーズ。
他にも、「平成教育委員会」や「ウゴウゴルーガ」など、沢山のTV番組のアニメーション制作にも携わっている。
後年は、子ども向けの映像作品を中心に制作している。


子どもの空想を直接具現化したようなグラフィックデザインや作中の簡単な語彙量から、一見完全な子ども向けかと思えるが、
作中で繰り広げられるネタはとてつもなくシュールで、派手な色調や絶妙にリアルな3DCGからも、
形容しがたいサイケデリックな、不思議な感覚を覚えるものとなっている。
さらに哲学的な思想が組み込まれることもあり、支離滅裂とも思える中に深いコンセプトが敷かれている場合もあるなど、
単なる子ども向けとは言い切れない独特な世界観が展開されている。


効果音には「でたー!」を始めとする特徴的なもの(主にボイス)が多く用いられ、「OK!」「GO!」「ブワッ!」など秋元氏自身のボイスによる効果音も多い。
なお、氏のシンプルな画風の通常のイラストは純粋にかわいらしい。


平沢進氏の元弟子の一人としても知られ、秋元氏の制作する作品、特に楽曲は平沢氏の影響を強く受けている。歌声もとても似ている。
一言で言うと平沢氏の作品が少し明るくなった感じ。
とは言っても、平沢氏のものとは似ても似つかない作風となっているので、また違った魅力がある。



楽曲→だまらん「GO!」

3DCGを用いた映像制作で有名な秋元氏だが、数々の楽曲も制作している。
基本的に作詞・作曲・歌は全て秋元氏本人によるもの。
インディーズバンド「Hz(ヘルツ)」や田中正一氏との2ピースバンド「ジラファント7」などの音楽グループとして、晩年は「Spiky Spoon」としてソロ活動していた。
昔からバンド活動を続け、CG制作が生業となってもしばしばライブ・楽曲制作を行っていたことから、どんな時も音楽活動に注力していたことがうかがえる。
「秋元氏の作品では楽曲が一番好き」というファンも多い。


各楽曲は映像作品とはまた違った印象を受ける。ざっくり言うと、氏の映像作品から子ども向け要素を抜いた感じ。
音楽には主にドラムや笛くらいしか楽器が使われておらず、主旋律はコンピュータのサウンドエフェクトで奏でられることがほとんど。
小刻みにハイペースで音が切り替わるため、聴覚が刺激される。ハマれば中毒性が強いので、服用はほどほどに。
パーカッションには上述のようなオリジナルのボイス効果音も多用され、異質な演出に一役買っている。


歌詞は、大方が意味を持たない言葉や前後で全く脈絡のない熟語の羅列で構成されており、正直何を言っているか理解出来ない、となることだろう。
曲は派手なものでも、その歌詞からあまり明るいイメージは感じ取りにくい。
逆に、その難解さや言葉の響きがどこか神々しく感じられることもあり、カッコよく受け取れる側面がある(Amphibianやセケンチューナーはその代表例)。


また、楽曲によってはPVもある。もちろんこれも秋元氏によるもの。
PVは歌詞の内容を文字通り表現したものや雄大な印象を抱かせる映像が流れるものまで多種多様。
楽曲のリズムに合わせて画面がカラフルに、目まぐるしく変わる演出が多く、見ていて飽きが来ない。
しかし、一部パカパカやサブリミナル効果のような演出もあるので、苦手な方は注意(初期のPVに顕著)。


総じて見ながらその意味を考えるというよりは、直感的に体で感じるものと言った方が相応しいものとなっている。
ただ、解釈は人それぞれで、これは一種の見解に過ぎない。
頭を空っぽにして言葉の語感を楽しみながら歌うも良し、歌詞をじっくり噛み締めて考察するも良し、と様々な楽しみ方が出来るのが魅力。


一度発表された楽曲が頻繁にアレンジされるのも特徴。
1999年辺りにMIDIで配布されていたほど過去の楽曲でも手が加えられ、曲だけだったものに歌詞が付いたり、PVが追加されたりしたものも。
曲調のみならず歌詞や映像の演出も若干異なっており、視聴し比べてみるのも一つの楽しみ方である。
Youtubeチャンネルやvimeoでも彼の楽曲の一部がPV付きで視聴できるので、是非確認されたし。


楽曲の中からいくつかを紹介する。歌詞の内容は推測でしかないことに注意。
※曲に対する主観も少なからず含まれているので、自分の感性だけで楽しみたい方はスキップ推奨

  • セケンチューナー(英題:Tuning of social)

様々なサウンド、テンポ、歌詞の全てに圧倒されるような迫力がある。
PVでは、先端に人間の指がハサミのように2本付いている一輪車のようなものが4つ方形に並んで光る球を受け渡しし合う箇所が特徴的。
人気のある名曲の一つ。


  • Amphibian

題名は、直訳すると「両生類」。歌詞中には「海」「浜辺」「島」など水陸の両方を想起させる単語が多い。
「セケンチューナー」と並んで雄大さを帯びた曲の一つ。波の音など、こちらはより超自然的な要素が強い。
他の楽曲に比べて押韻が多い。


  • insect's Life

昆虫であることの無力さ、無味乾燥な一生を昆虫目線で歌う。その様子にはどこか人間に重なるところも感じられる。
元はせがれいじりの作文制作時のBGMであり、マリンバの軽快なテンポが耳に残る。
サビでは昆虫の画像が目まぐるしい速度で切り替わる背景をバックに、三匹の「なんでもアリ」が踊る。パカパカが苦手な方は視聴に注意。


  • ペンギン(英題:Penguin)

ペンギン目線で、空を飛べるようになることへの願望を歌う。初期のものは間奏でペンギン同士による会話パートが入り、最後に「バ~カ」で締める。
氏の楽曲の中では親しみやすいリズムとなっており、口ずさみやすい。
せがれいじり内では、人物の顔がペンギンになっている写真が流れるシュールなPVだった。


  • 土器(英題:Earthenware)

原始時代の様子、文化の発展を歌う。曲の途中で氏の別の楽曲「GERONIMO」の導入が流れる。
PVでは、ヤジリを持った頭が矢印の「せがれ」が真っ赤な荒野でマンモスを追っている場面がメイン。
色調がシンプルなのは、初めてこの曲のPVを作る際に使用したコンピュータ「Amiga」では限られた色数しか使えなかったため。当時の氏の努力が垣間見える。


  • 思考の猛獣(英題:Fierce Animal Of Logic)

夜になると陥るやるせない気持ちやネガティブな感情を「思考の猛獣」と例えてそれとの葛藤を歌っている。
PVでは「ヒト」と「思考の猛獣」との対抗を歌詞の内容そのままに表現する。
イントロで横一列に並んだ四人のヒトが順番に「どぉ」「ぐっ」「なっ」「なぁ~」と発した後、カメラが逆さまになり、全員で飛び跳ねて「あぁ~~」と発するシーンが印象的。


  • Ufo 確認したくない飛行物体

歌詞のない曲だけの音楽作品。
木琴や笛、鼓や拍子木などのパーカッションがとても賑やかで、どこかひょうきんなイメージを覚えさせる曲。
PVでは、はなこさんの顔がいくつもくっついている塔を囲ってキャラクターが思い思いに踊っているところに、Ufoに乗ったたろうくんがやってくる。


でんせつの→経歴「GO!」

1968年9月12日に生まれ、千葉の松戸、そして会津若松で年少時代を過ごす。
写真を見る限り当時はどうやらゴリラだったようで、本人もあまり覚えていないらしい。


1980年代からは、コピーバンドとして音楽活動を開始する。
1980年代後半からは、P-MODELの平沢氏の下で丁稚奉公という形で仕事の手伝いを始める。
その際に「Amiga」という当時日本ではほぼ知られていなかったコンピュータに出会う。
仕事の傍らに平沢氏に使い方を指導してもらいながら、少しずつ3DCGについて学んでいく。これが後の彼の作品に大きな影響を与えることとなる。
ただ、秋元氏は元々アニメが特別好きだったわけではなく、「音楽のついでにもっと面白いことができる!」ということで、CG製作を始めたという。
自身のライブに制作した3DCGを用いるなどして、着実に活用の幅を広げていった。


1990年代は、秋元氏の全盛期と言える年代。
1991年に知り合いが「アインシュタイン」という番組でスタッフを募っていたことがきっかけで、仕事として3DCG制作を開始する。
1992年に放送開始したフジテレビの子ども向け番組「ウゴウゴルーガ」でアニメーションを第一に制作に関わった。
その他にも様々なテレビ番組や書籍など各種メディアで用いられるロゴイラストや3DCGを制作。ウルトラマンティガのオープニングロゴも秋元氏によるもの。
アーティストとしても盛んに活動し、バンドHzを結成して積極的にビデオ制作やライブを行った。
1996年に彼独自の思想が強く反映された映像作品「BeforeAmphibianせがれ」、
1997年に「ヒト飼うしかない人面牛 遙か西へGoGo!」発売。
1998年に有限会社 件(くだん)設立。


1999年6月3日に秋元氏が原作・アニメーション・音楽とほぼ全ての面で大きく制作に関わったプレイステーション用ゲーム「せがれいじり」が発売。
「おはスタ」では本作の前日譚とも言えるショートムービー「ハコいりせがれ」が連動して放送された。
いわゆる「おバカゲー」としての一ジャンルを確立し、この手のジャンルとしては異例の売上17万本以上を誇るヒット作となった。
30歳を迎えた秋元氏のここまでの集大成と呼べる作品となっており、楽曲を始め、秋元きつねワールドがぎっしり詰め込まれている。


2002年に続編「続せがれいじり 変珍たませがれ」が発売。
「SmaSTATION!!」でオリジナルアニメ「ムダベラベラ」などを制作。
現代美術センターCCA北九州で小学生対象のアニメーション制作のワークショップにも参加した。
2005年以降、同じくアニメーターである井上雪子氏とのコンビ「nolabit!」として様々な子ども向けの作品を制作。
キャラクターデザインは井上氏の関与もあってかなり温かみのある愛らしいものになっているが、秋元氏特有の小気味良い音やテンポの演出は健在。
nolabit!名義だけでなく、単独でも「いないいないばあっ!」や「おかあさんといっしょ」関連のアニメーションやイラストを担当した。
秋元氏が今まで制作した楽曲をまとめたCD「セケンのヨウス」も発売された。
2010年に秋元氏がシネマトグラファーとして関わった作品「ヤンス!ガンス!(MEAT OR DIE)」が海外の賞にノミネート。
同年から歌舞伎役者の七代目市川染五郎氏のイベント「妄想歌舞伎」の際に発表する動画を年に1回制作。
2011年から「ドジったーズ」展開開始。


2014年10月20日に、46歳の若さでこの世を去る。
最期まで新しい音楽のあり方や「ヘンテコ」という概念を追究し続けた人物であったと言えよう。



うるとら→すーぱー→キャラクター「GO!」

秋元氏の作品に登場する主なキャラクターを紹介する。


  • せがれ

CV.秋元きつね/松野美由紀(Hz ビデオ)
Tシャツに短パン姿で、頭が黄色い矢印になっている少年(?)。目や口などの顔のパーツはない。
黄色い矢印という一見ふざけたデザインのようだが……?
昔々の遠い未来の5分前、流れ星として降ってきた鰯売りのホッシーの残骸を変田珍太郎が埋めて成長し、一皮剥けたことにより生まれた。
まだサナギであり不完全なようで、おおきくなるために所構わずセケンのあちこちを駆け巡り、興味を引くものを探す。
せがれいじり」で初登場したと思われがちだが、初出は秋元氏の楽曲「土器」のPV。


  • ヒト

CV.秋元きつね
モヒカンでしゃがみ込んだ姿勢をしている人間のような見た目をした存在。恐らく人間ではない。
顔は和田アキ子氏や北斗晶氏に似ている。
全裸に見えるが、実は肌の色と同じ色の全身レオタードを着ている。大体は集団で行動し、飛び跳ねながら移動する。
好きなものはロンリで、嫌いなものはフシギ。
亜種として、虎の皮のような一枚着をまとって正座した女性のような「コギャル」も存在する。


  • くだん

CV.秋元きつね
人の顔をした牛。妖怪「(くだん)」が元ネタで、秋元氏の有限会社件の社名の由来でもある。
他のキャラよりも顔の造詣がリアルで、やけに顔がアップされた状態で現れることもあるのでギョッとすることも多い。
星型(☆)に手足が生えたようなキャラクター、ホッシーとは完全に同じ顔。


  • たろうくん

CV.秋元きつね
やけに細長い顔の内股な男性。
好きなものははなこさんで、嫌いなものはヒト。


  • はなこさん

CV.秋元きつね
オジサンのような外見をした女性。
くだんと同じくやけに顔がアップされた状態で現れることもある、ホラー要員?
好きなものはたろうくんで、嫌いなものはひょうたん。誰にも需要のない両思い設定


余談をかいて→てんてんつけて→できあがり「GO!」

フェレットを大変かわいがっており、フェレットのミロやニャホ助を育てていた。


せがれいじりに登場したキャラクターの版権は秋元氏にある。
しかし氏の没後は、氏が代表を務めていた「有限会社 件」の所在も不明である為、現在の権利関係は定かではない。


氏のキャラクターであるくだんの顔グラフィックは、
アンシャントロマン ~Power of Dark Side~のOPで理不尽にも木っ端微塵にされた男性に酷似している。
恐らく素材にした3Dモデルが被ったと考えられている。



追記かつ修正はヒトたる一方向の群れに明日を目指してから御願いします。


[#include(name=テンプレ2)]

この項目が面白かったなら……\ポチッと/
#vote3(time=600,5)

[#include(name=テンプレ3)]


  • せがれいじりで存在を知ってから、かなりの年月を経てスゴイアーティストだったんだと知った。だが既にその時には亡くなられていたのが口惜しい。今更ながら、合掌。 -- 名無しさん (2021-08-24 02:24:31)
  • 『電光超人グリッドマン』のスタッフロールで知ったわ。 -- 名無しさん (2021-08-25 12:00:55)

#comment(striction)

シェアボタン: このページをSNSに投稿するのに便利です。

コメント

返信元返信をやめる

※ 悪質なユーザーの書き込みは制限します。

最新を表示する

NG表示方式

NGID一覧