ロストフの悲劇

ページ名:ロストフの悲劇

登録日:2021/02/21 (日) 21:00:06
更新日:2024/05/24 Fri 13:50:49NEW!
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ロストフの悲劇とは、2018年FIFAワールドカップロシア大会において、日本が2対3でベルギーに惜敗した試合である。
「悲劇」というのは日本側に立った呼称なので、中立的な表現としてロストフの14秒とも。



ここまでの歩み


W杯開幕前の日本代表は、新戦力を積極的に起用していたハリルホジッチ監督が、あまりにも戦績が振るわなかったためになんと本番2ヶ月前で解任。就任したのはアトランタオリンピックでUー23日本代表を率い、ブラジルに勝利するというマイアミの奇跡を起こした時の監督である西野朗監督であり、彼が選んだメンバーは結果的に8年前からの主力であり急拵えでも連携に不安のない、しかし30代に差し掛かり全盛期の過ぎた本田圭佑世代中心に逆戻りした通称「おっさんJAPAN」であり、正直言って期待感は乏しかった。ちなみに選抜メンバーの平均年齢は28.3歳と今までのW杯日本代表の中で最高齢である。
ところが蓋を開けてみると、前回のW杯で惨敗したコロンビアに2対1で勝利、セネガルとは2対2の引き分け。
ポーランドには0対1で敗れるもファウル数などでセネガルを下回り、グループHを2位で通過した。
ポーランド戦ではセネガルの結果次第では負けても決勝トーナメントに進出できたため、1点リードされているにもかかわらず、パスを回して時間を稼ぐという手段を取り、このやり方にはブーイングも多かった。
一方でこの戦略は非常に覚悟のいるものであり、これを実行した選手及び監督を褒めるファンやサッカー解説者もおり、意見は分かれている。
日本対ポーランドの試合が先に終わったため、ファンや選手はもう1試合の結果を待つ状態であったが、コロンビアがセネガルに勝利した結果、コロンビアの1位通過並びに日本の2位通過も決まった。


一方ベルギー代表は圧倒的な攻撃力でパナマ、チュニジア、イングランドに全勝しグループGを1位で通過した。
本大会のベルギーは長身の守護神ティボー・クルトワや、不動の中盤デ・ブライネ、ドリブラーで代表主将のエデン・アザール、スピードと半端ないフィジカルを備え持ったFWロメル・ルカク、さらには重鎮コンパニを中心とした歴戦のディフェンス陣を擁し、メンバーの大半が欧州ビッグクラブに在籍する優勝候補クラスの陣容であり、日本の勝利を予想するものは世界で見ても少なかった。



そして試合当日を迎える。



スタメン

日本ベルギー
ポジション名前ポジション名前
GK川島永嗣 GKT・クルトワ
DF長友佑都 DFV・フェルトンゲン
DF吉田麻也 DFV・コンパニ
DF昌子源 DFT・アルデルヴァイレルト
DF酒井宏樹 MFY・カラスコ
MF長谷部誠 MFA・ヴィツェル
MF柴崎岳 MFK・デ・ブライネ
MF香川真司 MFT・ムニエ
FW乾貴士 FWD・メルテンス
FW大迫勇也 FWE・アザール
FW原口元気 FWR・ルカク




前半


ベルギーボールでキックオフ。


1' ベルギーのキャプテンはエデン・アザール、日本は長谷部が務める。


1' 日本、キックオフ直後に右スローインからボールをつなぎ、左右に振ってから香川がシュート。これはゴール右に切れていった。


3' 序盤はお互いに様子見。日本はあまり高い位置からプレッシャーをかけていないが、中盤にボールが入ると複数で囲む。


5' ベルギー、ボールを回しながら縦に入れるタイミングを狙っているが、ボールの出しどころがなく最終ラインまで下げさせられる。


9' ベルギー、右サイドのムニエを使ってチャンスをつくりかけたが、ゴール前にこぼれたボールは吉田にクリアされる。


10' 日本、再び左サイドで細かくパスをつなぎ、乾がインスイングのクロス。
大迫が飛び込んだがわずかに合わない。二次攻撃から昌子が思い切って狙ったロングシュートは大きく枠を外れた。


11’今度はベルギーにチャンス。デ・ブライネから前線に浮き球を入れたが、メルテンスにはわずかに合わなかった。


20' ここまでのボール支配率は、ほぼ互角。
15分が経過し、ベルギーにもシュートが生まれて、ここまで3本。日本は立ち上がりに2本を記録している。


27' ベルギーの攻撃が続き、エデン・アザールがペナルティーエリア端付近から狙った強烈なシュートは川島がパンチングでクリア。


30' 久々に日本がボールを回し、左サイドで香川、長友とつないで最後は乾がヘディングシュート。これは惜しくもクルトワの正面だった。


34' ベルギーがボール支配率を徐々に上げ、30分を過ぎた段階で61%を記録。
パス総数も日本の159本を上回る212本。シュートはベルギーが7本、日本は2本のままとなっている。


40' イエローカード(日本):エデン・アザールに後ろからスライディングにいった柴崎がこの試合最初のイエローカードをもらう。累積1枚。


43' ボールを奪った日本、ベルギーのプレッシャーをかいくぐって右に展開し、今度は左でフリーになっていた長友へ。ゴール前に鋭いボールを入れたが、大迫はこれをうまく当てきれず。クルトワは一旦これをファンブルしたがすぐにキャッチした。


45' + 1' 前半アディショナルタイムは1分。
前半終了。0ー0で折り返す。


ベルギーは前半、最終的に10本のシュートを記録。しかしそのうち2本しか枠内に飛ばせなかった。
日本のペナルティーエリア内でのタッチ数は、今大会前半の記録としては最多の26回に上ったものの、ゴールには結び付けられず。日本はシュート4本(枠内1本)。
いかに日本が前半苦しんだか分かる。だがディフェンスリーダー吉田を中心にベルギー攻撃陣をシャットアウトした。


後半


日本ボールで試合開始。両者とも交代はなし。


48' 自陣深い位置でボールを奪った日本はカウンターを開始。乾が柴崎に預け,柴崎が前線へパス。フェルトンゲンが足に当てたものの、右サイドの原口に通る。エリア内右から原口が右足を振り抜き、シュートをゴール左に突き刺した!クルトワは止められなかった。日本1点リード。


49' ベルギーにチャンス。右から攻め込み、折り返しを中央で受けたエデン・アザールがシュート!しかしこれはポストに嫌われてしまう。


52' まずドリブルで持ち込んだ乾がエリア内の大迫に合わせようとするが、これはベルギーの選手にはね返される。こぼれ球を香川がキープし、乾へ渡す。エリア手前から乾が右足で思い切って狙うと、無回転のミドルがゴール右端に突き刺さった。日本2点リード。川島は日本サッカーの将来が見えた瞬間だと語った。
しかしこの後、本気のベルギーが日本に襲いかかることになる。


57' 早くも焦りが見え始めているベルギー、カラスコがペナルティーエリア手前から強引に右足を振り抜いたがゴール上に外れる。


62' ベルギーに決定的チャンス。右サイドを崩し、ムニエのクロスにルカクが完璧に合わせたものの、このヘディングシュートはゴール左へ流れていった。


64' 日本にチャンス。最終ラインの昌子から右サイドを駆け上がった酒井宏樹に展開、ダイレクトで香川につなぎ、裏を取った酒井宏樹が低いクロスを入れるも、これはゴールに結びつかず。


65' 交代(ベルギー):ドリース・メルテンスOUT、マルアン・フェライニIN。ベルギーが一気に2枚替え。まずはメルテンスを下げ、長身のフェライニを投入。



65' 交代(ベルギー):ヤニック・フェレイラ・カラスコOUT、ナセル・シャドリIN。さらにマルティネス監督はウイングタイプのシャドリも送り込んだ。



69' 最終ラインからフェライニへ縦パスが入り、右サイドのムニエからルカクに低いボールが入るも、吉田が体を寄せてシュートをブロック。



69' ベルギーのCK。右のCKから最初のシャドリのシュートはGK川島がパンチングで弾いたものの、乾が大きくクリアしたボールがゴール左に飛び、これにフェルトンゲンが頭で合わせると、山なりのボールはなんとそのままネット右端に吸い込まれた。予想外の一撃にGK川島はどうすることもできなかった。



74' ベルギー、CKからの二次攻撃。エデン・アザールがエリア左端で大迫をかわしてクロス。これに中央で競り勝ったフェライニが力強く頭でネット右端に収めた。
日本は5分も経たないうちに同点に追い付かれてしまった。ベルギーが攻勢を強める。


80' ベルギー、デ・ブライネが粘って左CKを獲得。ファーサイドへのボールをコンパニが折り返すも、日本はCKへ逃れる。


81' 交代(日本):柴崎岳OUT、山口蛍IN。日本も2枚替え。まずは先制点をアシストした柴崎と山口を交代。


81' 交代(日本):原口元気OUT、本田圭佑IN。さらにその日本の1点目を決めたを決めた原口を下げ、ここで本田も投入する。


84' 日本、ペナルティーエリア内で細かくつないでから本田がシュートを放つも、これはサイドネットの外側へ。


87' ベルギーが日本のゴールに迫り、フェルトンゲンがペナルティーエリア手前左から強烈なミドルシュートを放つも、再び川島がビッグセーブ。


90' + 1' 後半アディショナルタイムは4分。


90' + 2' 日本、縦パスを受けた大迫がコンパニに倒され、ゴール正面約35mの位置でFKを獲得。


90' + 3' 本田が直接狙った無回転のシュートはクルトワが右に飛んでCKへ逃れた。


90' + 4' 本田のCKをキャッチしたクルトワが素早く前にフィード。
これをデ・ブライネがドリブルで持ち込み、右のムニエへ。
ムニエがエリア手前から入れた低いクロスをルカクがスルー。
ファーサイドでシャドリが左足で合わせた。クルトワのフィードからゴールが決まるまで約14秒の超高速カウンターだった。


90' + 6' 試合終了。ベルギー 3-2 日本



日本は逆転負け。2点を先行したが、牙を剥いたベルギーが3点を取りベスト8に駒を進めた。ベスト8を目標にしていた日本は2010年大会と同様ベスト16で大会を去ることになってしまった。
試合後立ち上がれない日本の選手にベルギー選手が歩み寄り、健闘を称える姿は感動を呼んだ。
シャドリを追いかけたもののギリギリ足が届かなかった昌子はあまりの悔しさでしばらく立ち上がれなかった。また、乾に関しては右足の手術が必要と言われながらも手術をせずに試合に出られるまで回復し、その右足で2ゴール決めている。


西野監督は試合後こう語っている。


ワールドカップの怖いところでしょうか。追い詰めましたけど、何が足りないんでしょうね…
(2失点した後は)そのままオフェンシブには戦えていたので、メンバーの切り方もディフェンシブなこともできたけど、
3点目を取れるチャンスもありましたし、ボールを持てたので、そのままでいきました。
本気になったベルギーの怖さですね。
(足りないことは)まあ全てだと思いますけど、わずかだとは思います。
激変させたいと思っていましたし、選手もそういう中で一日1試合ずつワールドカップのために勝負をするためにいい準備ができた。
まだその壁は厚いのかもしれない。


西野監督が語るように、日本は勝ってもおかしくない試合を繰り広げていた。
強いチームが揃うヨーロッパの中で勝ち進む強豪だけに、最後の最後はルカクがスルーするというような、誰もが想像できないクレバーさがこの試合を決めたと言える。
なお2点目、3点目は途中交代の選手が決めたためベルギーのロベルト・マルティネス監督の手腕が光った試合だったと言えよう。


アザールは次のように日本代表を称賛するコメントを残している。


トーナメントはまだ始まったばかりだ。
いずれにせよ、今日は難しい試合だったが、僕たちは決して諦めなかった。
0-2ビハインドの時でさえも、チームメイトの気持ちは素晴らしかったね。
今日僕はベルギー代表の選手であることを誇りに思うよ。
「日本代表は信じられないほど素晴らしいチームだった。
彼らは今日のようにプレーすればどこにでも勝つことができると思う。
今回は僕たちが気持ちで勝ったけどね。僕たちは一歩一歩ちゃんと踏みしめて、成長し続けたい。


この試合を受けて


「誰がこうなると考えただろうか。日本は素晴らしかった!脱帽した!」


  • リオ・ファーディナンド(元イングランド代表DF)

「日本のボールプレーの良さにベルギーは驚いているように見えるね。香川は10番の役割としてボールを受けて、チームを指令している」


  • マーティン・キーオン(元イングランド代表DF)

「日本には驚かされた。彼らは適切な戦術でプレーしている。
(1点目は)ヴェルトンゲンがボールをカットするべきだった。だが、原口の一撃はワンダフルだ。
日本は本当に最高の試合をしている。 日本によるなんてクリーンなサッカーなんだ。
(乾の2点目は)矢のようで、トップGKがあの距離から撃ち抜かれた。パワーと精度があり、ワンダフルな一撃だ。
日本はどの場所でもよく、戦術的も非常にいい。彼らはピッチ上を精力的に駆け回っており、全員が自らの役割を理解しているよ。ベルギーはずたずたにされている。
(試合後)日本を気の毒に思わなければならない。だが、フットボールが勝者だ」


  • アラン・シアラー(元イングランド代表FW)

「45分間の完全なるエンターテインメントだった。ベルギーに立ち向かった日本のやり方は素晴らしいものだったし、彼らはそのシステムを信じていた。だが、ベルギーのカムバックぶりに賞賛を送るよ」


  • ユルゲン・クリンスマン(元ドイツ代表FW・元ドイツ代表監督)

「日本の後半の出方はとても印象的。1点目はトップクラスのカウンターだ」



また、試合後のロッカールームを清掃し、使用前かと思うほどの綺麗な状態で去った代表や、スタンドのゴミ拾いをする日本代表のファンの精神は称賛された。



その後


この大会をもって長谷部誠と本田圭佑、酒井高徳は代表を引退、次期キャプテンは吉田麻也に認定され、長谷部の引退を聞いた吉田はインタビュー途中で涙を見せた。
本田のきよきよしいはナイショ!
また、西野監督はこの大会までが自分の役目とし監督を退任、森保一監督がオリンピック日本代表と兼任する形で代表監督に就任し、いったん逆戻りした日本代表は急速な世代交代を迎えることとなる。
現在西野監督はタイ代表監督を務めている。



ベルギーはブラジルに2対1で勝利しベスト4に進出。
フランスには1対0で敗れ,3位決定戦に回り、グループステージで対戦したイングランドと再び対戦。2対0で勝利しW杯過去最高3位で終わった。
アザールにとってやはり厳しかったのは日本戦だったそうで、他の選手も日本戦が一番心に残っているという。




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  • とりあえずテンプレは張り直したのでよろしく -- 名無しさん (2021-02-21 21:13:50)
  • もう少し見やすく構成したいけど、いかがでしょう? -- 名無しさん (2021-02-21 22:03:52)
  • ぜひ見やすく構成して欲しいです。初めてだったのでわからないことも多くありました。 -- 名無しさん (2021-02-21 22:18:11)
  • メウニエルだけ誰かわからなかったけどムニエか 彼がフランス戦累積出場停止じゃなきゃわからなかっただろうな -- 名無しさん (2021-02-22 13:12:00)
  • 荒らしコメントを削除しました。 -- 名無しさん (2021-03-16 20:20:53)
  • カイザースラウテルンの悲劇に比べると、そこまで悲惨な印象はなかったかなぁ -- 名無しさん (2022-11-26 07:33:11)
  • この試合は日本敗退への悲観よりはベルギーの底力に対する感嘆のほうが強いかな -- 名無しさん (2022-12-03 20:16:34)

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