登録日:2020/06/13 Sat 23:49:44
更新日:2024/03/23 Sat 20:30:29NEW!
所要時間:約 3 分で読めます
▽タグ一覧
オウム真理教 テロリスト バイオテロ 伝染病 危険生物 感染症 生物兵器 病気 細菌 細菌兵器 炭疽 炭疽症 炭疽菌
炭疽菌(たんそきん)とは、細菌の一種。
概要
炭疽症(たんそしょう)という非常に危険な感染症の病原体。
元々はウシ、ウマ、ヒツジなどの動物の病気だが、炭疽菌に感染した動物や、その死体に触れることで人間(ヒト)にも感染する。
家畜やその死体を取り扱う職業の人が感染しやすいと言われる。
ヒトからヒトへ伝染することはないとされる(感染症ではあるが伝染病ではない。)。
炭疽菌は生育環境が悪化すると、芽胞(がほう)と呼ばれる強力なバリアを作って適応する。このバリアは規格外の防御力&耐久性を持ち、沸騰した熱湯や高濃度のオキシドールなどに漬けようがどんなに乾燥させようが紫外線を浴びせまくろうが全くビクともしない、事実上の 無敵状態 である。
寿命も長く、何十年も生き続ける(40年以上残存した例もある)。そのため、一度炭疽菌に高濃度に汚染されてしまうと、除去するのはきわめて困難となり、立ち入り禁止となることもある。
ただし、弱点が全くないわけでもなく、空気がないところでは生きられない。また、ほとんどの抗生物質でやっつけることが可能(薬剤耐性が低い)。
炭疽菌は莢膜(きょうまく)と呼ばれる特殊なバリアのおかげで、マクロファージなどの免疫細胞に存在を認識されにくく、簡単に細胞に侵入できるという特徴がある。
そのため、ヒトや動物に感染すると強力な毒素を出して、粘膜の壊死や出血を引き起こす。
炭疽菌は世界中の土壌に生息、あるいは芽胞の形で生存しており、危険な細菌でありながら意外にも身近に存在する細菌である。ヒツジなどの動物の体毛にも炭疽菌が付着していることがある。
ちなみに特に炭疽菌が多く生息している地域が2つある。一つは中東地域(トルコ、サウジアラビア、イラン、パキスタンなど)、もう一つはサハラ砂漠以南のアフリカである。
日本では炭疽症の発生はきわめて稀だが、炭疽菌が全く存在しないわけではないので油断しないこと。
炭疽症
炭疽症は炭疽菌が引き起こす病気。ヒト、動物ともに致死率が高い。
感染経路によって3種類ある。いずれの場合も致死率が高い。特に肺炭疽は早急に治療しなければ致死率は100%に近い。
皮膚炭疽症
経皮感染といって、炭疽症にかかった動物やその血液、体毛などに触れることで感染し発症する。傷口から感染することが多く、健康な皮膚からは感染しにくい。
虫刺されのような発疹、水ぶくれ、かゆみを引き起こす。
やがて瘡蓋(かさぶた)ができ、リンパ節が腫れて高熱が出るようになる。ちなみに炭疽の病名は、この黒いかさぶたに由来する。
進行すると敗血症を起こして死亡することもある。
致死率は10~20%ほどで、炭疽症の中ではまだマシなほう。しかしそれでも十分高い。
腸炭疽症
経口感染。炭疽症で死亡した動物の肉を食べて感染する(食中毒)。
小腸や大腸に出血や壊死を伴う激しい炎症を起こす。
症状は高熱、激しい腹痛、酷い下痢(血便)、嘔吐(吐血)など。のどのリンパ節が腫れることもある。
早急に治療しなければ致死率は50%と非常に高い。
予防のためには原因不明の病気にかかった動物の肉を食べないことが重要である。
ちなみに炭疽菌の芽胞はきわめて高い耐熱性があるため、食材加熱による予防は不可能。
肺炭疽症
きわめて稀だが、非常に危険なタイプ。炭疽菌の芽胞を吸い込むことで感染し発症する。
ほとんどの場合、研究所での流出事故や、後述するバイオテロに巻き込まれた場合に感染する。
重症のインフルエンザのような症状の後、重い肺炎を起こし、激しい咳や胸の痛みなどを訴える。肺に水がたまって呼吸困難になったり、肺から出血することにより大量の血液を吐く(喀血)こともある。
早急に治療しなければ致死率は100%近い。
生物兵器としての炭疽菌
炭疽菌はバイオテロに使われる危険性が高い細菌(生物兵器)として有名である。
生物兵器は化学兵器や核兵器に比べて開発のコストが圧倒的に安いため、テロリストや弱小国家にとっては絶好の兵器なのである。
中でも炭疽菌は、
- 世界中のどこにでも存在するため入手しやすい。
- 培養しやすく、増殖させやすい。
- 芽胞を形成するため耐久力が非常に高い。また、長期間生き続ける。
- 短期間に致死的な感染症を起こす。
- 有効なワクチンまたは治療薬が存在する。(テロリスト側の安全性の確保の観点)
などといった、生物兵器として特に使いやすい細菌と言われることが多い。
なお生物兵器として使用される可能性の高い病原体としては炭疽菌の他に、ペスト菌やボツリヌス菌、赤痢菌、天然痘ウイルスなどがあげられる。
※ちなみにエボラウイルスは炭疽菌などと同様に致死的な感染症を引き起こすが、予防のためのワクチンや治療薬が存在しない(テロリスト側にとってもダメージが大きい)ため、意外にも生物兵器としては不向きと言われる。
ただし、炭疽菌も完璧なわけではない。
例えば、非常に致死率の高い肺炭疽症を引き起こしやすくする*1ためには芽胞をエアロゾル化して空中からばら撒く必要があり、高度な科学技術が必要と言われる。
また、炭疽症はヒトからヒトへは伝染しない(ペスト、赤痢、天然痘、エボラはヒトからヒトへ伝染する。)。ただし、これに関してはテロリスト側にも感染しにくいため、必ずしもデメリットとも言い切れない。
炭疽菌はアメリカやソビエト連邦(のちのロシア)、イラクなどで生物兵器としての研究が行われた。
日本でもオウム真理教が炭疽菌を用いたテロを実行しようとしたが、未遂に終わった。*2
追記、修正お願いします。
[#include(name=テンプレ2)]
この項目が面白かったなら……\ポチッと/
#vote3(time=600,9)
[#include(name=テンプレ3)]
▷ コメント欄
- (・∀・)ターンソキーン -- 名無しさん (2020-06-13 23:55:25)
- 探偵学園Qでこいつの変異種を封じ込めた村を掘り起こしたシーンで『お前ら何してんねん』って突っ込んだのはいい思い出 -- 名無しさん (2020-06-14 00:08:34)
- ボーンズとかいう犯罪捜査もの海外刑事ドラマで、主人公たちが古い遺骨を解体中に炭疽菌が発生、仲間の1人が作業中にマスク外して酒飲み挙句吐いてしまったため主人公たちは施設ごと閉じ込められ、クリスマスを孤独に過ごすことになるという最低最悪なエピソードがあった -- 名無しさん (2020-06-14 00:18:59)
- アンフェアの映画で知ったなぁ -- 名無しさん (2020-06-14 00:28:54)
- 炭疽菌と連鎖球菌の混成体は火星人にも効く -- 名無しさん (2020-06-14 01:35:35)
- 炭そ菌に見せかけた粉を送ってくるといういたずら(じゃ済まされないが)が一時期あったな -- 名無しさん (2020-06-14 01:54:08)
- 刑務所のドラマのオチが炭疽菌ばらまかれて刑務所閉鎖で受刑者全員移送だったな -- 名無しさん (2020-06-14 07:09:01)
- ハゲワシは数少ないこの菌に対する免疫力があるらしいね -- 名無しさん (2020-06-14 07:11:49)
- 兵器にするには低コスト低リスクでそこそこのリターンで、変な話だがある程度安全、となかなか優秀なんだな -- 名無しさん (2020-06-14 21:03:48)
- 最近、医学やウィルス系の投稿が多いな。 -- 名無しさん (2020-06-14 21:38:32)
- 某ゲームでは主人公が武器として使える(ヤバい話だが、もともとゲーム自体がヤバいのでそこまでインパクトはない) -- 名無しさん (2020-07-21 11:40:18)
#comment
*2 入手した炭疽菌が毒性の弱い株だったため。そもそも培養自体にも失敗していた。成功したとしても噴霧器が高圧過ぎて菌が死滅してしまうという問題もあった。
コメント
最新を表示する
NG表示方式
NGID一覧