カン十郎(ONE PIECE)

ページ名:カン十郎_ONE PIECE_

登録日:2020/03/23 Mon 00:21:30
更新日:2024/05/17 Fri 11:07:09NEW!
所要時間:約 13 分で読めます



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ONE PIECE ONE PIECE登場人物項目 カナヅチ カン十郎 フデフデの実 ワノ国夕立ちカン十郎妖怪 山崎たくみ希美の妖怪忍者海賊ミンク侍同盟悪魔の実描いた絵を実物にする能力画伯獅子頭能力者雨の日は無能赤鞘九人男武装色の覇気見聞色の覇気コメント欄ログ化項目34歳初登場がドレスローザ編全世界人気投票192位






カッカッカ!!信じておったゆえ
ヘチマの皮とも思うておらぬわ水くさい!!




ONE PIECE』の登場人物。



【プロフィール】


通称:夕立ちカン十郎
年齢:34歳(生まれは54年前)
身長:347cm
所属:光月家家臣
肩書:赤鞘九人男
悪魔の実:フデフデの実(超人系パラミシア
覇気武装色見聞色
出身地:偉大なる航路・新世界・ワノ国・九里
誕生日:7月21日(夏の医者)
星座:蟹座
血液型:X型(現実だとA型)
初登場:単行本76巻・第754話・『お見知り置きを』
好きな食べ物:刺身のレタス巻き、ロールキャベツ
趣味:水墨画
CV:山崎たくみ



【概要】


ワノ国の侍で、九里の大名である光月おでん直属の家臣「赤鞘九人男」の一人。


外見は歌舞伎役者のような風貌と衣装の大柄の男。
髪型は歌舞伎の獅子頭のような赤い長髪、肌は白塗り(地肌かは不明)、服装は派手な色で彩られた裃姿で巨大な毛筆を背負っている。


『ONE PIECE Magazine』やビブルカード「恐怖の支配者!ドンキホーテファミリー!!」掲載の初期案では全く違う姿で、異名も「濡ガラス」というものだった。
連載途中で変更されたのか、登場前のシルエットは雑誌掲載時は初期案のものだったのだが、コミックスでは編み笠を被った姿に差し替えられている。


【人物像】

性格は割と常識人で朗らか。
カイドウとの因縁から龍を嫌っている錦えもんと比べ、「目には目をと申す」とその姿を能力で実体化させるのを気にしない柔軟な面も持つ。


付き合いの長い錦えもんとは特に仲が良く、ゾウへの登象途中では目隠し遊びをするなど、茶目っ気を見せている。
計画がバレた動揺からローを責めるしのぶを諫めたり、その性格から喧嘩の仲裁役になる事もある。


【能力】

超人系悪魔の実「フデフデの実」の能力者。
筆で描いた絵を実体化させる能力を持ち、描き上げた動物は自らの意思を獲得し役目を終えると絵に戻る。
食べ物を描けば実際に食べられるので、ククククの実ビスビスの実のように味方を養うことも可能。
ポテンシャルの高さは数ある悪魔の実の中でも随一。それを実力者揃いの「赤鞘九人男」、その一角が使ってるのだから強さは計り知れない。


・・・と言いたいところだが、実際は本人の画力があまりに低いためあまり活かせておらず、
食べ物は食べれば腹を下し、描いた生物は物凄く動き辛そうで、見ているとそこはかとなく気の毒な気分になる。
せめてもの評価をするなら、描いた動物をロビンが気に入る当たり絵心はあるようだが。
猫に小判とはまさにこのこと。


また、応用の一環として自分を絵にして壁の中に隠れるなどの使用方法もある様子。
弱点は水で、濡れると絵が溶けてしまうらしい。


なお、能力を使用する際に使っている巨大な筆は「辻死梅つじしばい」という位列なしのでもある。



◆能力で実体化させたもの一覧

  • 萵苣ちしゃ

レタス……のようななにか。ドレスローザで身を隠している間、食べて飢えをしのいでいた。
錦えもんにも勧めたが「腹に障るからいらぬ」と断られた。


  • 抜け雀

ドレスローザの地下から脱出する際に描いた大きな
しかしカン十郎の画力が低すぎてうまく飛べず、ゼェゼェと息を切らしながらも懸命に飛ぶ。
元ネタは落語の演目「抜け雀」から。


  • はしご

地下に落とされていたリク王軍の兵士たちを脱出させるために描いた歪なはしご。当然のように線が歪んでいて上りにくいと不評。
他にもドレスローザ市民を王の台地に登らせるために描いてしまったため、ウソップにボコボコにされたりもした。


  • ウソップ人形

ウソップに頼まれて描いたウソップの顔芸人形。これだけ元のウソップの顔が滅茶苦茶だからかなぜか微妙に上手い。
ウソップがこれをシュガーに向けて狙撃することでトラウマを再発させ、ルフィトラファルガー・ロー最大の危機を救った。


  • 昇り龍

ゾウの足を登るために出した龍。
「りゅー」と鳴き、ルフィ達からは「りゅーのすけ」と名付けられた。
しかしカン十郎の画力が低すぎて飛べないため、抜け雀と同様「ゼェ…ゼェ…ハー…ハー…ウゥ…」と息を切らしながら地道によじ登った。
あまりにもしんどそうで気の毒になるため、途中で落ちた錦えもんとカン十郎を拾いに引き返してくれとは誰も言えなかった。
ちなみにロビンからは「かわいい」と好評。
地道によじ登って到着した後は笑顔を流しながら絵に戻り、ローとゾロ以外はその頑張りに感動した。


  • ねこざえもん

ゾウの足を登るために出した
猫は木登り名人との事だが、やっぱりカン十郎の画力が低くてしんどそう。
噴火雨で流れて消えてしまった。


  • 虎三郎

ゾウの足を登るために出した
三度目にしてようやく錦えもんとカン十郎は登り切ったが、虎三郎は凄まじく息切れしていた。


魚屋に扮して都に潜伏していたカン十郎が売っていた魚。
本人によれば「タイ」なのだが、生気がなくでろーんと垂れ下がってしまっている。
目立たないためにやっているはずなのに、変な生き物になっているせいで子供が寄ってきて逆に目立っていた。
おまけにこの魚を普通に売っていたが、買った主婦は大丈夫だったのだろうか。



【来歴】

◆過去

元々は、希美で日銭稼ぎのために生きている者・死体を問わずに人の髪を切り奪って筆を作っていたため「希美の妖怪」と呼ばれていた。
しかしある時、死体と間違えて光月おでんの髪を切ろうとして返り討ちに遭い、それ以降はおでんの家臣となった。
それ以前の経歴は詳細不明だが、迫害を受けていたらしい。


20年前のカイドウとの戦いに敗れ、釜茹でで処刑されるところをおでんに救われ、錦えもん達と共にトキの能力によって20年後の未来に渡った。


◆新世界編

ドレスローザ編・ゾウ編

そしてミンク族を頼るために錦えもん達と共にゾウへと船を出したが、航海術がなかったため船は大破し、命からがら流れ着いたドレスローザではカイドウと手を結んでいたドフラミンゴに追われ、錦えもんを庇って捕らわれの身となってしまう。


その後はドレスローザの地下のスクラップ場に落とされ、壁に能力で隠れていたが、麦わらの一味の助けを得てドレスローザに戻ってきた錦えもんと再会。ウソップの絶叫顔の人形を実体化させる等して戦いに協力した。


ドレスローザの戦いが終結した後はルフィ達と共にゾウに向かい、雷ぞうと合流。
忍者海賊ミンク侍同盟を締結し、ワノ国へと帰還した。


ワノ国

ワノ国に戻った後は魚屋に扮して都に潜伏。
その中でトの康ことかつての恩人康イエに再会したが、風貌が変わり過ぎていたため気付けず、みすみす死なせてしまった事を嘆いていた。
そして康イエの遺体を預かり、丁重に供養する事をえびす町の住人に約束した。


その後遂に決戦の日を迎えたが、黒炭オロチに計画が漏れていた事で同志たちが集まるはずの常影港には誰の姿もなく、無謀を承知で赤鞘九人男たちは小舟で鬼ヶ島に向かおうとするのだが……




















以下974話の重大なネタバレ






















おかしいですよ…こんなの!!

作戦が漏れてるって事でしょう!? また!!


それがしも……いや、皆同じ事を考えていた筈!!


考えたくなかったが……!!

───この中におそらく、敵の“内通者”がいる…!!!

正直今更知りたくない…!!


錦様!! あなたらしくないですよ!!

内通者を見つけ!! 斬り捨てて前へ進むあなたじゃなければ!!

拙者達も前に進めません!!!


──だが当人は自首などすまい!!


菊の言うとおりだ!! 錦!! はっきりさせようぞ!!





おれが そう・・だって事を!!!






黒炭カン十郎



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本当の名は黒炭カン十郎
黒炭家の末裔であり、オロチの命令で光月家に潜り込んでいた内通者の正体である。



●目次




【プロフィール(真)】





本名:黒炭カン十郎
通称:夕立ちカン十郎・希美の妖怪
年齢:34歳 (生まれは54年前)
身長:347cm
所属:黒炭家スパイ
悪魔の実:フデフデの実(超人系パラミシア
覇気武装色見聞色
出身地:偉大なる航路・新世界・ワノ国・九里
誕生日:7月21日(夏の医者)
星座:蟹座
血液型:X型(現実だとA型)
初登場:単行本76巻・第754話・『お見知り置きを』
趣味:水墨画
好きな食べ物:刺身のレタス巻き、ロールキャベツ
嫌いな食べ物:桃
CV:山崎たくみ










【人物像(真)】

一言で言えば正真正銘の狂人。
オロチに絶対の忠誠を誓っているだけでなく、過去のトラウマから心が壊れており「与えられた役を演じること」だけが生きる悦びという人格破綻者。
役を演じる過程で自分がオロチの手に掛かって殺されることに何の躊躇いも後悔もない最恐の諜報員
その演技力はもはや人格の入れ替わりとすら形容できる域に達している。




“役”を終えれば知らぬガキに候



「夕立ちカン十郎」の時はひょうきんに振る舞っていたが、
本性…というか「オロチの部下」を“演じる”時は冷酷な性格。
「オロチの部下」としての一人称は「おれ」
他者に対し侮蔑的な呼称を用いたり、康イエの死を「犬死に」と嘯くなど黒炭家の面々らしく冷酷な言動が目立ち、乱雑な口調を用いる。
また、縄を解いて抵抗したとはいえ幼子であるモモの助を血塗れで腫れ上がるほど殴るなどかなり粗暴な面がある。アニメではこの時、「この程度の暴行 黒炭家の受けた迫害に比べればどうということない」と言ってる。
しかし心が壊れているため、これらもあくまで“役作り”であり、「嫌われ役」を演じているとも言える。“黒炭”カン十郎にとっては自分を嫌い怒ってくれるならばそれは「自分の演技を賞賛してくれる最高の観客」なのかもしれない。
その一方で、錦えもんが誤読していた暗号を鵜呑みにしてオロチに報告していたり、モモの助を連行の際に猿轡と胴体は縛ったが手首を縛り忘れる*1など若干間抜けな面もある。


なお補足するならば、本編でのおでんへの忠誠心やおでんが処刑された事への嘆きの涙、そして赤鞘の侍達への信頼、仲間意識は演者:“夕立ちカン十郎”としてはまごう事なく本物。
カン十郎自身は黒炭家への迫害に対して強い憎しみは持っておらず*2、光月家の面々や仲間の赤鞘の侍達を恨むことも傷つけるつもりも毛頭なかった。


ただそれはそれとして、命じられたに従い淡々と忠実に、オロチに赤鞘の侍達や反抗勢力に関する機密情報を送り続けただけに過ぎない。
その忠誠心と機械じみた行動ゆえにオロチから絶大な信頼を得る一方で、賞賛混じりに「気味が悪いほど忠実」と語られている。
これらのことから、カン十郎のスパイとしての技量、何よりも役への没頭の恐ろしさが見て取れる。
ちなみにこの冷酷な性格の時でさえ、おでんのことはモモの助を罵倒する際に「ただのクソガキ…!!継いだ名前があまりに偉大なだけの…」と評価してもいる。


錦えもん達への友情も「夕立ちカン十郎」としてのものであり、「黒炭カン十郎」としては何とも思っていないのだと思われたが…。



【能力(真)】

そもそも「絵が下手」という大前提が真っ赤な嘘
実際は自分の精巧な分身を描き出す程の腕を持つ。
食事をしている時等は右手を使っているが、演じている際の絵を描いている時だけは左手を使っていたため、利き手ではない左手で描くことで絵が下手なふりをしていたものと思われる。


そういうわけで諜報員としての能力は打って変わって破格。
演技力とフデフデの実の能力によって隠密行動を容易くこなし、単独で未知の領域に放り込まれようと大抵の物資は自力で具現化し生存できる他、鳥を具現化してしまえば情報の送信を容易く行うことが可能。本編のように分身を描いて具現化し身代わりを務めさせることさえできる。
しのぶが行動しかかる前に蛇を描きあげたり、河松と交戦する前に鶴を描き終えたりと高速で描いてしまう上に、兵隊を描いて兵力をある程度増やすことも可能。
また筆だけでなく、長い髪の毛を筆に見立てて操り能力を使う術も持つ。
まさしく鬼に金棒。


しかも大雨の中だろうと具現化した絵が自由に動けていた事から、本気で描いた場合絵は水分に対する耐性がある程度付与されている(もしくは海水のみに弱い)と推察される。


ただし、能力で生み出した絵を遠隔で操作する場合はひどく体力を消耗するという弱点があり、無限に絵を描いて戦力を増やすという使い方はできない様子。
劇中でも絵に描いた兵隊を生み出しはしたが、わずか2体であった。



◆本気の絵

  • 分身

素性を明らかにした際に描いていた自身の分身。
外見は全く同一であり、本体と同じ人格と自我を持つため昔から連れ添っていた赤鞘の侍達ですら偽物と見破る事はできなかった。
あくまで絵なので首を斬り落とされるなど致命傷を負った場合は自動的に消滅する。
ドフラミンゴはこれに先んじて「影騎糸ブラックナイト」という技を披露していたため見覚えがある読者も多いはず。


しのぶの拘束に使用。
無数に描くことでロープ代わりとし、動きを封じ込めるのに用いた。


カン十郎を載せて飛行できるだけの大きさを持つ巨大な鶴。
移動用に作成。


  • 馬に乗った兵隊

モモの助の公開処刑までの数分間、時間を稼ぐために2体ほど生み出したもの。首無しという悪趣味な姿。




ネタバレ注意

+ -
  • 光月おでん

カイドウに敗北し、何者かの手によって治療を施された赤鞘の前に突如現れた。
当然錦えもんたちは主君の生存を喜んだが、アシュラの手によって斬られても血が出ないことから偽物と判明した。
カン十郎は遠隔操作で絵を操っており、錦えもんたちを足止めする。
最後は爆弾で全員を吹き飛ばそうとするも、アシュラのとっさの行動により彼一人を巻き込んで爆発した。
「もしかしたら主君が生きているかもしれない」というささやかな希望につけ込んだカン十郎の描いた絵の中で恐らく最も悪質な作品
外見や振る舞いはまさにおでん本人で、閻魔と天羽々斬をおでんが所持していない事を知っていたため刀も異なるという徹底ぶり。
それゆえにおでんが死んでることを知っていた筈の赤鞘の侍達も一時は信じかけてしまった。


  • 「光月おでん」を本体が纏う

描いたものを身にまとい、当人そっくりの姿で活動するというマネマネの実のような芸当。
その性質上、カン十郎より小さい人間にはなれないものと思われる。





◆技

  • 浮世夕立ち絵図うきよゆうだちえず

髪の毛を振り回して「墨雲」と呼ぶ雲を描き、墨雲から鋭利な墨の矢を雨のように降り注がせ広範囲を攻撃する。
木箱程度なら粉砕可能なようで、単発は致命傷にはならずともまさに雨として降るのだから無事では済まないだろう。



  • 「黒炭心中」“急” 火前坊かぜんぼう

根深き黒炭家の怒りは…この城を練り歩き最後には
奈落…奈落へと進み…!!行きづまる底が我らの「墓塚」よ
わしらの魂を…!!鎮めてくれカン十郎!!


御意


虫の息だったカン十郎がオロチのアンコールに応えた最後の舞。
巨大な炎の中に二つの目が浮かんでいる妖怪を具現化し、辺り一面に火をつけ大火災を引き起こす。
体が炎そのものであるため触れたもの全てを見境なく燃やし、壁や天井といった障害物まですり抜けてしまう。
オロチの言葉を借りれば「黒炭家の燃える怨念」「根深き黒炭家の怒り」をカン十郎が死力を尽くして描き上げた代物。



【来歴(真)】

元々は大衆演劇の一座に生まれたが、子供の頃に黒炭家への迫害によって両親を舞台上で殺された過去を持つ。
舞台での生き方しか知らなかった事に加えてこの件で心が壊れたカン十郎は、身に付いた役者としての生き方で何者かを演じて生き永らえていた。



しかしある時、黒炭本家の末裔であるオロチに見出される。
カン十郎の両親を殺害した民衆を抹殺したオロチに、その役者としての才能と破綻した人格を買われて「本物の「光月」として生き、誰にも気が付かれる事なく光月として死ぬ」というスパイとしての役割と悪魔の実を与えられる事となった。



死に場所を探してた………


光栄です



そしておでんの元に入り込んだカン十郎は、忠実な侍としておでんに仕えながら、金と情報をオロチに流していた。
カイドウへの討ち入りの際も「役」を忠実に演じて全力で戦い、おでんと共に釜茹での刑に処されたが、元より死に場所を求め、光月の侍という「役」を完遂する事のみを目的としていたカン十郎にとっては、死すらも「役」の内であった



◆現代の討ち入りにて


なぜおれたちを疑わなかった……!?


こうなるまで!! なぜ身内を疑わなかった!!?


おかしかった筈だ! ずっと!!! 何もかも!!!



おでんに命を救われ、20年後に飛んだ後もその行動は何も変わらず、オロチに情報を送り続けていた。
本編での

  • ドレスローザにてドンキホーテ海賊団に赤鞘の侍達の素性がバレていた事
  • 20年前におでんの討ち入りが万全の準備で迎え撃たれた事
  • ワノ国を出国しようとしたモモの助達が発見されてしまった事
  • ビブルカードがなければ辿り着けないゾウにジャックが現れ、確信を持って雷ぞうを捜索した事
  • 今回の討ち入りの計画がバレていた事

これらは全てカン十郎が裏でオロチに報告していたためである。
ジャック自身も実は周到に立ち回っており、ジャックが「雷ぞうを差し出せ」とばかり言うためにイヌアラシとネコマムシも彼がゾウへのビブルカードを持っていることには気づいたが、内通者の存在まではその時深く思い至らなかった。


この事からオロチからは情報源として信頼されているようで、20年の時を越えてきたという一見荒唐無稽な内容もオロチはすぐに信じた。


討ち入りの決起と集合場所を記載した判じ絵がオロチにばれ、康イエが命がけで書き換えた判じ絵を元に錦えもんが集合場所を刃武港はぶみなとから常影港とかげみなとへと変えた事もカン十郎がオロチに伝えたことで、常影港へのルートは全て潰され赤鞘九人男は孤立してしまった。



小舟で鬼ヶ島に向かう中、カン十郎はオロチから光月の侍の「役」の終幕を告げられた事で本性を現し、
後は呼び寄せた百獣海賊団の船に小舟を沈めさせ、自身はオロチの命令通りモモの助を鬼ヶ島へ連れ去るつもりだったが、ここで計算外の事態が発生していたことが発覚する。


実は、康イエの判じ絵は「刃武港の波止」を現していたのだが、これを見た錦えもんは素で「常影港」と読み間違えていた。*3
このため、赤鞘の侍たちは錦えもんに従い常影港に向かったのだが、判じ絵を正しく読み取った反乱軍の本隊は刃武港から鬼ヶ島に向けてとっくに出撃した後だった。
カン十郎はこの「錦えもんが言う(読み間違えた)港」をそのままオロチに伝達したため、結果としてその情報を疑わなかったオロチは常影港へのルートを潰したものの、初動が遅れたことに加えてそもそも場所が間違っていたため、反乱軍の封殺に失敗していた。


さらに、麦わらの一味の船・サウザンドサニー号の強度を知らなかったのも誤算となり、帆を修復したサニー号と共に麦わらの一味が、さらにローキッドがそれぞれの海賊団と共に助っ人に登場、とどめに狂死郎こと傳ジローが手勢を率いて赤鞘の救援に現れたことで戦局がひっくり返る。


カン十郎はこの事態を前に大いに焦って慌てていた。
もっとも、先述の流れの通りカン十郎が正体を明かしたのは錦えもんが無念の大号泣の後ようやく内通者の存在を疑い始めたからであり、実際それが事実である。
だが、カン十郎視点で見れば、錦えもんは初めから内通者を炙り出す策を仕組んでいたにも関わらず内通者に気付いていないフリをして凄まじい号泣をしてみせた=自分の領分であるはずの演技力で出し抜かれたも同然という状態であり、あそこまで焦ってしまうのも無理はないと言える。


その後は落ち着きを戻し、与えられた役は全うしたと鶴を地面に描いて鬼ヶ島への逃亡を図る。
その最中荒れ狂う海を泳いで戻ってきた河松と対峙。何度か切り結んだ後、鶴を具現化させて鬼ヶ島へと飛んで行った。



日和も探し出し必ず殺すぞ!!



生きてる事が分かったからな!!



そして鬼ヶ島に着いたがカン十郎の予想以上に入り組んでおり、オロチの元へ中々辿り着けずにいた。
道中モモの助が逃げ出すというトラブルにも見舞われたが何とかオロチの元へ辿り着き、ボコボコに痛めつけたモモの助の身柄を引き渡すと同時に作戦の阻止が失敗した事を伝えた。


そしてオロチがモモの助の処刑を始めようとする中、カン十郎は錦えもん達が軍艦3隻程度で死ぬ筈が無いと、百獣海賊団の面々と自らが生み出した首なしの騎馬兵士を率いて裏門へと向かった。
カン十郎の読み通り、そこにはハートの海賊団の潜水艇で上陸した赤鞘達+マルコの手によって到着したネコマムシ、イゾウの姿があった。
そして赤鞘達も武器を抜いてカン十郎達に対峙。自身は菊の丞とぶつかった。




お前らのしぶとさはおれが誰よりも知ってる!!!



来い菊!!!




……その後菊の丞との対決は描かれる事無く、錦えもんと傅ジローが辿り着いた時には既に決着が付いており、菊の丞の手によって斬り伏せられたカン十郎はその場に倒れていた。
錦えもんはカン十郎と戦った皆に労いの言葉をかけ、倒れたカン十郎に自身が被っていた傘を被せて先へと進んだ。



そのまま死亡したかに思われていたが、なんと重傷を負いながらも生存しており、とある人物の絵を描いて再び赤鞘たちに襲い掛かり、爆弾を用いてアシュラ童子を戦闘不能に。




光月になりすまし……!!光月を滅ぼし…死ぬ!!




最高の終幕だ おれの人生は美しい舞台!!!



カン十郎本人は遠隔で絵を操作しひどく体力を使ったたことと菊の丞から受けた致命傷により死の間近だったが、「舞台」の終幕に「黒炭・・カン十郎」としてモモの助を最期に抹殺しようとする。
1階の天井裏にいるモモの助・しのぶ・錦えもん・お菊のもとに姿を現し、元仲間に対して非情になり切れなかったお菊を貫いて行動不能にしたが、黒炭カン十郎も、お菊らを手にかけられたことに怒った錦えもんに斬られた。



カカ……カカカ…そうだ!!

おれの舞台の幕を引くなら……!!


お前がいい…!!舞台上じゃあ……

親友だったも゛ん…な゛…!!!


黒炭カン十郎として生き、そして死ぬはずの彼は、最期に「錦えもんに斬られたい」という黒炭の道具としてはふさわしくないこだわりを見せ、錦えもんとの親友だった過去を思い出し涙を浮かべつつ舞台から退場した。
「心を壊しただただ黒炭のための道具となった」はずの彼が最期に見せたこだわりと涙は、役に徹しきれず心を取り戻していた「大根役者」だったということであろうか。




Donnez-moi un tréteau minable et sans chaleur Je vais me surpasser
おれにボロボロの舞台をおくれ 素晴らしい演技をしてやろう

Vibrant d’un feu qui brûle en moi Je parle je pleure et je ris Et vis mon rôle chaque foi
自分を奮い立たせて、語り、泣き、笑い、常に自分の役を演じる

Ne me condamnez pas sans comprendre mon cœur Je suis d’une autre race
おれの心を知らずに非難しないで おれは血筋が違うのさ

Je suis un cabotin dans toute sa splendeur La scène est mon espace
おれは素晴らしき大根役者 舞台こそがおれの居場所

Selon la pièce et puis l'emploi Je souffre je vis ou je meurs Et mens jusqu'à ce que j'y croie
演劇の役に応じて おれは苦しんだり生きたり死んだり 嘘を信じさせるまでやるのさ

Je suis un cabotin dans toute sa splendeur Je reste fier de l'être
おれは素晴らしき大根役者 おれはそれに誇りを持っているのさ



シャルル・アズナヴール(1924〜2018)「Le cabotin(大根役者)」より一部引用


最大最後のネタバレ注意!

+ -

決着は付いたかに思えたがギリギリの所で生きており、そんな中でオロチからの最後の「アンコール」に答えるべく自身の奥の手である「火前坊」を発動し、今度こそ倒れ伏した。
残った火前坊はオロチのアンコールに従い、火薬庫の爆破に向かうも失敗に終わる。
そうしてこれまでとは見るも無残に小さくなった体となって、今度は瓦礫に押し潰され絶体絶命のオロチと、それを睨み付ける日和の元に現れ、オロチに任務の失敗を伝達した。


貴様カン十郎か!?


モハヤ…これまデ…


よい所に来た!! あ…新しい舞台を与える!!
あの女を焼き殺せ!!! 飛びかかれぐふははは“20年耐えた女の復讐の失敗”!!!
なんたる悲喜劇!! 見たか「光月」の残党日和!! これが強者の“運”というものだァ!!!


オロチ様……


ふぁー!?おい!!こっちじゃねェ!!!


ギャアアアア~~~~!!!


バカめカン十郎ォ 日和助けろォ!!! 熱ィアアアア!!!


これ幸いとばかりに日和を焼き殺せと命じるオロチだったが、それを無視するかのように火前坊はオロチに寄り縋り、瓦礫もろとも炎に包んで消えていった。
皮肉な事に黒炭の復讐劇は、同じ黒炭の者の手で今度こそ「終幕」を迎えたのである。


◆アニメ版

原作だと不明瞭だった菊との戦闘シーンが補完として追加。
若い頃の自分の分身を作り出して、攻撃してくる菊に「仲間なのに…何故、刀を向けるんだ菊!」と責めたり、一度攻撃を喰らったら改心をしたふりをしたりと精神攻撃や命乞いによる不意討ちによる悪質な攻撃をしてくる。
しかし、菊はかつての夕立ちカン十郎は居ないとその不意討ちを見抜いて斬り伏せた。



【余談】

  • 伏線・布石
    • 食事や武器の使用時は右手を使っているのに絵を描くときのみ左手を使う
    • 本来仇であるはずの龍を躊躇いなく描く
    • 20年後の未来に飛んだコマの段階で鳥がこっそり飛んでいる
    • 錦えもんが語る理想の戦力の面々の中で、カン十郎だけ顔が意図的に隠れている
    • “夕立ち”とは、“月”を隠す雷雨が発生するもの

など、カン十郎の異名や行動にある種の伏線が張られており、カン十郎を怪しむ読者も少なからず存在していた。


またこちらについては読者の推測だが

  • 好物がロールキャベツ=おでんの具(=赤鞘九人男)の中で一人だけ洋物。また、人畜無害な仮面で凶暴な正体を覆い隠していることの暗示。
  • 初登場時に食べていたレタス=レタスの花言葉は「冷たい人」

と、カン十郎の本性を表していたのではという説もある。


アニメでは、929話ではロビンやブルックたちからの諜報の報告を聞いて感謝の言葉を述べつつ頭を下げたまま顔を上げない場面が入れられたり、952話にて康イエの遺体を運ぶ際に険しい表情になっていたり、972話のおでんvsカイドウとの戦いでも彼だけ明確に敵を倒した描写が無いといった感じで、若干彼が裏切り者であることを匂わせる部分がある。


  • 辻死梅

愛刀である巨大筆の「辻死梅つじしばい」の由来は、おそらく歌舞伎用語の辻芝居つじしばい
道端などで簡易的な劇場設備を設けて公演する芝居を意味する。
死梅しばいの部分はただの当て字と思われるが、梅は古くから縁起物とされている植物であり、奇しくもそれが死すという当て字は不吉感や呪いじみた強さを連想させなくもない。


  • 声優

カン十郎役の山崎たくみ氏は、過去にアラバスタ王国アニメオリジナルエピソードにてカミュも演じている。奇しくもカン十郎と同じく周囲を欺く役回りのキャラクターであったが、中の人はもちろん真っ当な常識人である。





追記・修正は、人生という大舞台で大立ち回りを演じつつお願いします。


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*1 その為に、ナイフ入手&ロープ切りをしやすくする原因となった
*2 というより、後述の境遇から「心が壊れて憎悪もほとんど湧いてこない無関心の状態」と言った方が正しいのだろう
*3 絵の内容は「二本線が書き足されたハブ」。錦えもんはこれを「ハブに足を足してトカゲ=最初は刃武港だったが、常影港に集合場所を変えた」と読み取ったが、実は「ハブの腹を切るように線を引く→『はぶみなと』の文字抜きで『はと』=波止、つまり「刃武港の波止場で時を待て」という意味であった。

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