この世界の片隅に

ページ名:この世界の片隅に

登録日:2016/11/21 Mon 07:38:00
更新日:2024/01/29 Mon 13:47:15NEW!
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この世界の片隅に うちを見つけてくれてありがとう




『この世界の片隅に』は、こうの史代による漫画作品である。
『漫画アクション』(双葉社)にて2007年1月23日号 - 2009年1月20日号まで連載。
単行本は同社より上・中・下巻が発売。2022年5月には版元をコアミックスに移し新装版が上下巻で刊行された。
2011年に実写ドラマが日テレで2時間単発ドラマの形で放送、2016年11月からはアニメ映画が公開された。2018年7月に再びTBSで連続実写ドラマ化。
2019年12月には原作から尺の都合でカットされた・原作でも描かれなかった新たなシーンを追加したアニメ映画が公開された。



【概要】

昭和9年1月。広島市の漁師町、江波ののり養殖業者の娘で8歳になる浦野すずは、絵心のある、すこしぼぉ~っとした女の子だった。
中島本町(今の平和記念公園)の繁華街で人攫いのばけもんにさらわれ、名も知らぬ12歳の少年と共に逃げ出したり、
夏に親戚の家を訪れた時には、屋根裏から現れたざしきわらしにスイカを勧めたり。


10年の月日が流れた昭和19年。初恋、小学校卒業も経験したすずは、絵を描くことと海苔漉きだけがとりえの夢見がちな18歳の娘に成長していた。
そんなある日、すずに広島県呉市の北條家から突如縁談話が舞い込む。
周囲に言われるがまま、北條家の長男である周作の妻となり、20kmはなれた軍港の町、広島県呉市に嫁いだすず。
見知らぬ家、見知らぬ人々、見知らぬ街。裕福でいられない時勢の中、それでもしなやかに明るく生活していく彼女。


静かにすずと仲を深めていく周作、すずの気性に呆れ、口うるさく彼女を見守る義姉・径子、
キツイは母と対照的にすずになつく径子の娘・晴美、かつて想いを寄せた人・水原哲、運命的な親友・白木リン、広島に残してきた最愛の妹・すみ。
さまざまな人々の運命は、昭和20年8月に向けて加速していくのであった……。



という内容の日常系ほんわかギャグ漫画。


嘘ではない。 物語前半部分に関しては。
『戦時中』を舞台にした日常漫画なので時折ヘビーな描写も存在している(すずが海の絵を描いていたら憲兵に疑われ事情聴取される等。リアルでも福岡で長谷川町子が似た様な事をやらかしていたという)。
しかし序盤から中盤にかけては、ほぼすずさんのかわいいドジっぷり天然ぶりをめでる漫画である。


作者・こうの史代は『さんさん録』などのゆるゆるとしたコメディを得意としている作家であり、
同作同様ゆるい日常の上に成り立つくすっと笑えるギャグがそこここにちりばめられている。


かわいらしい絵柄でありながら、当時の生活や時代背景に関しては徹底的に調べつくされており、当時の風俗、文化に関してある程度の知識がないとわかりづらい描写もある。
そしてちょっぴりエロい場面も。


さらに、この作品を語る上で欠かせないのが、作者の神業的な伏線回収能力と挑戦的な画風である。
コマのすみに描かれている小さなものや小道具が後に伏線として回収され、あるいは暗示的な意味を持って立ち上がってくる。
さらに、場面や描写によって画材を変える(たとえばすずが羽ペンで描いた絵は実際に羽ペンで描かれている)などの試みを行っており、これが終盤で非常に大きな意味を持ってくる。
二度三度読み返すうちに気づく仕掛けも多い。



【登場人物】

キャスティングはアニメ版CV/2011年日テレドラマ版/2018年TBSドラマ版の順



●北條 すず(のん/北川景子/松本穂香)
漁村江波でそだった少女。家は比較的貧しく、のり作りの手伝いをしながら絵を描くのを趣味にして育った。
やや丸顔で、口元に目立つほくろがある。旧姓は浦野。
のんびりおっとりした性格。高等小学校*1を卒業後は進学せず実家が海苔を廃業したため、母実家の森田家の手伝いをしていた。
18歳で呉に嫁いでからは相変わらずのんびりと家事をこなしながら生活していく。
かなりのドジで天然であり、着物のリメイクに失敗して原形をとどめない残骸に変えたり、こけた兄を上から踏んづけて殴られたりしている。
周作やリンとは幼少期に会っているのだが、まったく覚えていない。
ひょんなことでリンと友人になる。

リンと周作の過去を知り、また周作の方も哲との関係で迷うあまり妙な気をまわしたことで一時は夫婦がギクシャクすることに。
そして戦況が悪化する中、晴美を連れて円太郎の見舞いから帰る最中、空襲に遭遇し防空壕で助かったものの、その後に道端にぶっ刺さっていた時限爆弾の炸裂に巻き込まれ利き腕の右手を無くして絵が描けなくなっただけではなく、晴美も死亡してしまう。
晴美の死亡と自分の傷のショックに加え、径子とも気まずくなりその前から引きずっていたリンへの嫉妬、市街地中心から離れた所に立つ北條家にも余波が及ぶ程頻度を増す呉市・呉軍港への空襲により一時は病みかけてしまう。
見舞いに来たすみの勧めもあり一時は広島市の実家に帰ることを決めたものの、病院の予約が取れず帰る日が8月6日の昼前以降になった。
そして当日径子と和解したこともあり広島に帰ることをやめて北條家での生活を続けることを決意。
このことで結果的に原爆の被害を免れ、怪我も癒えていなかったことからその後の広島市への救助活動参加も断られたため入市被曝*2を免れており、「塞翁が馬」という言葉を地でいくような波乱を送る。
その後周作と2人で広島市内に赴いた際に出会った浮浪児の少女を連れ帰り養女とする。
本編時点では栄養不良のため実子には恵まれていないが、その後のことは原作では不明。
アニメ版では「2016年時点で91歳であり存命、カープを応援している」という裏設定が監督のトークで明かされている。
TBSドラマ版でもカープ女子設定がラストで盛り込まれており、90歳を過ぎてなお黒田ユニを着て球場に通い詰めている。


●北條 周作(細谷佳正/小出恵介/松坂桃李)
すずの夫。
海軍の軍法会議所の録事(書記。定時が6時なのでロクジと呼ばれている……わけではない)。
12歳のときに出会ったすずを10年後に探し出し娶った愛妻家のイケメン。
とにかく嫁愛がすごく、哲がらみでは結構嫉妬深い面も。
色の指定が間違っています。
まじめな性格だが陰気だといわれるのと、運動神経が鈍いのがコンプレックスのようだ。

リンとの結婚を望んでいた時期もあったが、さすがに小学校もまともに通えていない娼婦の身請けというのは穏健な北條家の親族をもってしても受け入れられず断念する。
その後幼少期に遭遇していたすずの名前を出したことで親族がすずを探してきて見合いの話がまとまった。
リンを嫁に迎えた時のためにと買った茶碗はしまいこまれ、すずによってリンに渡される。
水原哲とすずの関係についても嫉妬や悩みを抱えることもあったが、すずと歩んでいくことを改めて決めた。
終戦後は海軍が解散したため、冬ごろに広島市で職を得て通勤することになった模様。


●北條 円太郎(牛山茂/篠田三郎/田口トモロヲ)
●北條 サン(新谷真弓/市毛良枝/伊藤蘭)
周作の両親。すずと同居している。
円太郎は広工廠で兵器製造に取り組んでる。
アニメ版では紫電改の製造にかかわっている設定らしく、空襲の最中に紫電改のドッグファイトを見物しながらエンジン音を聞いてうっとりしていたりする。
この設定は2019年公開版で後述のように大幅な補強がされている。
筋金入りの理系オタクであり、一般人には理解できない話がとにかく長い。
サンは足が悪く、寝たきりのことが多い。
すずの失敗の埋め合わせになけなしのヘソクリを出してくれた。
夫婦そろって温和であり、すずがドジをふんでものんびりやり過ごしている。


●黒村 径子(尾身美詞/りょう/尾野真千子)
周作の姉。アニメ映画版ではある意味もう一人のヒロイン。
黒村時計店に嫁いで久夫、晴美の二児をもうけるが夫は若くして病死。
久夫を舅姑に連れて行かれてしまい、建物疎開で店も失い、晴美とともに北條家に出戻ってくる。
元モガで華やかな美貌の持ち主であるが、性格は厳しいためどんくさいすずに嫌味を言うことが多く、とにかく説教が長い。
(漫画ではクドクドという手書きレタリング文字、アニメでは高速早回しで長い説教が描かれる)
しかし天然のすずには通じず、いびりが空回ることも多い。
空襲で焼け出された一家に娘のために買った学用品をあげてしまうなど、本質的にはお人よしのツンデレである。実は結構周作に顔がよく似ている。
というか、終盤でとる行動の数々を見る限り、ある意味作中屈指のぐう聖と呼べなくもない。

当時としては先進的な「何でも自分で決める」女性で結婚前には自ら仕事に出ており夫とも恋愛で結婚したほど。しかし義両親とは夫の存命中から関係が芳しくなく、兵役も免除されるほど病弱だった夫が他界して以降は店の運営を巡ってさらに関係が悪化して離縁に至った。その際久夫は黒村家の跡取りということで、義両親の転居先である下関に連れて行かれてしまった。
戦況の悪化に伴い円太郎の勧めもあり晴美を下関に預ける算段をしていた最中に娘を喪ってしまう。
すずと一緒にいた際に晴美が死亡した時は、すずの責任ではないと内心理解していたがやり場のない気持ちからすずを責め立ててしまう。
その後すずにも詫び、不自由になったすずの身の回りもしてくれるようになり、晴美の残した服を養女になった孤児の少女に与えており、アニメEDでは養女手製のワンピースを着て喜んでいる。
TBS版では姑と特に折り合わなかったことが強調されており、久夫にも一緒にいてはいけない仲と評されている。しかし内心では姑を認めている部分もある。


●黒村 晴美(稲葉菜月/小西舞優/稲垣来泉)
径子の娘。5歳。
顔にそばかすのあるかわいい女の子。
「晴美ね……」とおっとりしたしゃべり方をする。
母親よりもすずとペースがあうらしく、すずの横にくっついていることが多い。
そしてすずのドジの被害にあったり、いっしょになってやらかすことも多い。
久夫の影響でミリオタ気味であり、船影を見ただけで軍艦の名前を判別できる特技がある。

円太郎からの勧めで、下関に引っ越した黒村家に疎開する準備を勧められた矢先、すずと一緒に歩いている時道端の時限爆弾で死亡した。


なお、この時限爆弾のシーンは原作や日テレ・TBSドラマ版ではわかりやすさ重視のためか砲弾の後ろが地上に飛び出ているが、
アニメ版では片渕監督のガチすぎる考証により、2人へのダメージ範囲も考慮して完全に土に潜り込んで描かれている。
そのため分かりやすいように爆発寸前にすずが敵の爆弾に関する講習を受けていた描写がある。


●黒村 久夫(大山蓮斗:2018年ドラマ版のみ)
径子の息子。径子が離縁した際に、黒村家に跡取りとして引き取られていった。
原作では晴美の小学校入学祝いとして自分が使っていた教科書を送った。
しかし落書きだらけで北條家の面々から成績を心配されていた。
劇場版のエンドロールでも模型を浮かべて遊んでいる姿が描かれている。
年齢の割に突き抜けた軍艦属性のミリヲタ・船舶ヲタであり妹にかなり影響を与えた。
TBS版では母親と父方祖母の不和をそばで見ていたせいか年齢の割に大人びており、自ら北條家を訪問して黒村家に残ると申し出ている。


●小林夫妻
円太郎の姉夫妻で周作とすずの結婚の際仲人となる。
空襲で焼け出され、北條家の居候になる。
ドラマ版には日テレ、TBS版とも登場しない。


●白木 リン(岩井七世/優香/二階堂ふみ)
すずが闇市の帰りに迷子になったところを助けた妓楼勤めの美女。
学校もまともに通えなかったため漢字はまともに読めず、かながやっと読める程度。
すずの描くお菓子の絵を気に入り、以後はすずの秘密のともだちとしてこっそり会っておしゃべりに興じるように。
もの馴れないすずに姉のように接し、愚痴を聞いてあげることも多い。

かつて上司によって遊郭に連れてこられた周作と出会い浅からぬ関係に。
周作はリンとの結婚を望んでいたが周囲から反対されて諦めることになる。
実は元々は広島市の出身。奉公先から逃げ出して放浪した挙句呉に流れ着き遊女となった身でありすずが子供の頃に出会った「座敷童」こそが彼女である。
すずは周作が彼女のために当時買っていた茶碗を見つけ、リンに渡す。
リンも彼女が周作の妻であることを察しつつも達観した穏やかな態度ですずに接した。
昭和20年の花見を最後に戦況の悪化もあり、すずと半年ほど会うことはなかったが彼女のいた遊郭は終戦後すでに跡形もなくなり、リンも跡の瓦礫の中に割れた茶碗だけを残し行方不明になっていた。おそらく昭和20年初夏〜夏頃の空襲*3で死亡したと思われる。

2016年公開版では登場シーンがかなりカットされている。エンドロールか、2019年公開版を見よう。


●テル(花澤香菜/木下あゆ美/平山咲彩/唐田えりか)
リンの同僚。2016年公開版では未登場だったが2019年公開版では登場。
リンの留守中に尋ねてきたすずと友達になり彼女に茶碗を託す。

風邪を拗らせて肺炎となり春を迎える前に亡くなる。
すずが雪に描いた南国の絵を気に入っていたことがリンの口から語られている。
テルの遺品の口紅はすずに託され、その後大きな役割を果たす。


●知多 堂本 刈谷
すずの隣組の仲間。2011年実写版には未登場。
知多と刈谷は中年の、堂本は年配の女性。知多は元看護師。
長身で神経質な知多と小太りで大雑把な刈谷は天敵同士。
しかしすずが起こしたある間抜けな事件以降は親友へと変わる。
3人ともすずを娘のように可愛がってくれ、刈谷は料理のレシピを教えてくれる。

刈谷の夫はすでに戦死、17歳になる息子は徴兵され広島市内に駐屯していた。刈谷の息子は原爆投下直後広島市内から逃れて来た被爆者たちに混じり実家近くの隣保館横までたどり着き事切れたが、あまりに火傷がひどく身元が判別不能で一時期無縁仏扱いされ、刈谷は後で自分の息子だったことに気づいて後悔することになる。
知多、堂本、刈谷は原爆投下直後広島市内への救援活動に参加するが、知多は高い放射線に晒され白内障にかかってしまう。
TBSドラマ版ではそれぞれの家族のオリキャラが幾人か追加されており、知多さんの方が太っている(演:竹内都)。刈谷さんは娘が後に周作の同僚である成瀬を婿として迎える。


●浦野一家
すずの実家の家族。広島市の江波地区在住。
のり養殖業を営んでおり、北條家より若干荒っぽい家風である。
両親(十郎・キセノ)は江波の開発で職を失い、工場で働くようになる。
兄の要一は哲が避けて通るレベルの乱暴者らしく、浦野家の『鬼いちゃん』として近所で知られている。すずも度々ゲンコツをくらっている。
すず作の劇中内ギャグ漫画、『鬼いちゃん』ではかなり人間離れして描かれている。
1つ下の妹すみは、姉とは反対にしっかり者の美少女であり、姉とは大の仲良し。
陸軍の将校といい仲らしい。空襲の激しい呉に住む姉を心配し、連れ戻そうとするが……。

要一は出征してニューギニアで戦死、遺骨も帰らず代わりに石が届けられただけであった。浦野家は彼が死んだ実感が持てないままで、のちにすずが「南の島でワニを嫁にもらった」彼の空想設定話をすみに語っている。
原爆投下の日、江波地区の被害状況は爆心地よりややマシ*4だったと思われるが、買い出しで市中に出ていたキセノはそのまま行方がわからなくなる。
十郎とすみはキセノを探して放射線量の高い時期の市中を歩いたことで原爆症(放射線障害による病気)にかかり、十郎はその年の10月に倒れ亡くなった。
すみも原爆症で内出血や目眩を起こし寝込みがちになり、被害が軽微だったキセノ実家の森田家で療養の身となる。通信事情の悪さからそのことを北條家に伝達するすべがなく、年明けにすずが見舞いに来てやっと再会できた。
日テレドラマ版では十郎、キセノ、すみは全員原爆で即死したことが示唆されている。
TBSドラマ版の要一は多少妹思いの描写も追加されており、戦後空き家になった江波の家には見知らぬ戦災孤児が勝手に住み着いていた。


●森田一家
すずの母、キセノの実家で広島市の草津地区に居を構え海苔養殖業を手がける。キセノの弟に当たる叔父さんが跡を継いでおり、キセノの実母であるイトと嫁のマリナ、小学生頃の娘の千鶴子がいる。
浦野一家の子達が幼少期ごろから遊びに来たり仕事の手伝いをしており、浦野家が海苔をやめた後もすず、すみが手伝いに行っている。
イトは裁縫の指導など孫に厳しく指導することもあるが根は優しいおばあちゃん。すずの縁談が来た時は仕立てておいた着物を渡し、初夜の問答を教える。

草津地区は爆心地から4km以上の距離があったため森田家の原爆被害はほぼないも同然で、海苔製造を戦後も続行している。浦野家がすみ一人になり働けなくなったため、彼女を引き取り看病している。


●水原 哲(小野大輔/速水もこみち/村上虹郎)
すずの小学校時代の同級生で、乱暴者のガキ大将。
すずの鉛筆をとりあげるなど粗暴な行動が目立ったが、あるときを境にすずと心を通わすように。
海軍兵学校に通っていた兄が海難事故でなくなり、荒れた家庭に居場所を見出せずにいるらしい。
すずが18歳の時には水兵になっており、重巡洋艦青葉に搭乗している。
すずの嫁入り先である北條家にある日突然訪問してくるが……。

周作が自身の複雑な心境からすずと彼を一時二人きりにするが、すずが周作を愛するようになって来ていることを知りそのまま早朝去る。
アニメ及び原作版では終戦後の姿が描かれる。
終戦後すずは彼を港で見かけたが、あえて声をかけずそのまま二人は別の人生を歩むことになった。
日テレドラマ版では破壊された青葉から逃れて船の破片に一旦は登るも力つき、すずの名を呼びながら沈んでいった。江波の実家には戦死公報が届けられている。
TBSドラマ版ではすずの近辺にいることはなく、そのまま江波に帰っている。


●ばけもん(CV:三宅健太)
遠眼鏡を手にした毛むくじゃらの巨人。
8歳のすずをだましてさらい、食べようとする。
かなり間抜けな弱点がある。その正体は……?
2011年実写版では登場しない。

化け物は人さらいであり、すずを背中のかごに入れていく。そのかごに同じくさらわれていたのが周作だった。すずの主観ではこの出来事が現実だったのか曖昧で、作中でも答えは出ていない。しかし周作がこの当時すずと初対面で名前と顔を覚えており、それが縁で彼女との結婚を希望するに至ったことだけは少なくとも現実の模様。


●広島の少女
最終章にて不思議な右手が描き出した物語の登場人物。
父は物心つかぬうちに戦死、昭和20年8月の惨劇に見舞われる。
右手が吹っ飛びガラスの破片にまみれた母に手を引かれて避難するも、母はやがて事切れ、朽ちていく母にしばらく寄り添ったのち1人になってしまう。なお、このシーンは2016年公開版ではさらっとしているがTBS版では結構グロ風味画面もあるため気弱な人は閲覧注意。
飢えに苦しみながら広島の街を半年に渡って彷徨ったのち、冬の日の広島駅ですずと周作に出会う。右手のないすずの姿に母を懐かしんだのか彼女になつき、そのまま夫妻に呉に連れ帰られて養女となった。
アニメ版の終盤は汚れてシラミまみれだった彼女を洗う準備に北條家があたふたする場面で本編は終わり、EDでは晴美の服をもらいこざっぱりして、すずの指導で径子のワンピースを縫い上げて喜ばれている。
原作では名無しのままだがアニメ版のノベライズではヨーコという名前がある。
日テレドラマ版では千鶴という名前で、尺の都合上か出会った場所が若干原作等とは違う。こちらでは非常にハキハキした性格。
TBSドラマ版では節子という名前で、現代パートでは70歳過ぎとなっていてオリキャラとのつなぎ役にもなっている。こちらでは新聞記者の夫を婿取りして北條姓を継いでもらっており、すずのカープヲタ仲間には「せっちゃん」と呼ばれている。



ちなみに登場人物の名前は全員元素名のもじりである。
読むときは周期表を片手にどうぞ。



■実写版

2011年8月5日に日本テレビ系列で終戦記念2時間ドラマとして放送された。
こちらは尺の都合もあり、サブキャラの生死の状況などが原作とかなり異なる部分もある。


2018年7月15日から今度はTBS系列で連続ドラマとしての放送が行われた。
こちらでは現代パートのオリキャラが登場。



■アニメ版

『名犬ラッシー』『BLACK LAGOON』『マイマイ新子と千年の魔法』の片淵須直監督によりアニメ映画化されている。
音響監督と脚本も片渕が兼任。
アニメーション制作は『牙狼-GARO- 炎の刻印』『神撃のバハムート GENESIS』『うしおととら』『てーきゅう』などのMAPPA、2016年11月12日より公開。
原作に惚れ込んだ片渕監督が作者自身に手紙を出して映画化の直談判をした。
監督の作品である『名犬ラッシー』のファンであった作者は歓喜して、その手紙を枕の下に敷いて寝たというエピソードがある。
製作スポンサーを募るためのパイロット版作成資金はクラウドファンディングで募集されたが、国内のファンディングでは最高額クラスの支援額が集まった。
この反響を受け、日本テアトルが配給元に名乗りを上げている。


尺の関係で、リン絡みのエピソードが大幅にカットされているが、基本的に原作に忠実。
原作の時点で相当な考証がされているが、監督の趣味で映画は更に史実と近づいたものとなっている。
冒頭の中島本町のシーンは、存命の方への聞き取りで建物やモブの商店主にいたるまでが史実どおりに再現されており、
オープニングの数分間だけでも見る価値があるほどのこだわりっぷりである。


君の名は。』『聲の形』など一般層向けの劇場アニメが注目を集めたこともあって、公開後は普段アニメを見ない中年層や高齢層を含む幅広い層に支持を集め、批評家やSNSを中心に高い評価を獲得。
初回公開は全国で70館足らずの小規模公開であったが、都心部のミニシアターでは満席立ち見が続出。1月からは公開劇場を約2倍に増やすことになった。日本テアトルの直営館である東京テアトルに至っては同館開館以来の最高収益を記録している。
そして、第90回キネマ旬報ベスト・テンでは邦画第1位と監督賞をダブル受賞するという快挙を成し遂げる。
アニメ映画で一位に選出されるのは『となりのトトロ』以来28年ぶり、監督賞に至ってはアニメ監督としては初である。


興行成績は、初週で興行通信社の動員ランキング10位に入ったのを皮切りに、最終的に15週連続10位以内を記録(なお、興行収入数十億~100億クラスの大ヒット作でさえ15週連続10位以内は稀)。動員190万人、興行収入25億円を突破し、東京テアトル配給映画では歴代最高。
2017年4月以降もロングラン上映は続く見込み。
「最低1年以上の上映を目指す」という話も出ているとか。


2019年12月20日に、尺の都合でカットされた原作の展開を40分足したロングバージョン『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が公開。
興行収入が10億円に達すればロング版の制作が決定することがプロデューサーから伝えられており無事達成し2017年8月から開始された。
当初は2018年末予定だったが作業量が多過ぎて制作が間に合わなかったとのこと。
2016年公開版では尺の都合でカットされたリンやテルとの交流を中心に大幅に増えており作品自体のコンセプトも変更されている。



【余談】

本作で一躍時の人として世間にその名が知られるようになった片渕監督であるが、実はかなりコアなミリオタであることでも有名である。
片渕氏は零戦の残骸を収集しておりその残骸を元にして零戦の塗装に関する研究本を出すほどである。
中に本作の舞台である呉市民がお金を出して海軍に納入された零戦の残骸も含まれている奇妙な縁も。
その知識はミリオタとして有名な宮崎駿も認めるほどで片渕氏がスタジオジブリから離れる際には宮崎氏から引き留められたほど。
…もっとも技術を惜しまれたわけではなく話し相手欲しさでの引き留めだったために逆に気持ちよく出て行かれてしまっている。


それゆえ映画全体で占める時間の割には軍事考証にも異様に力が入っており、紫電改がドッグファイトを繰り広げたり、
機銃掃射や爆弾投下のシーンなどの動きや音がリアルに再現されている。特に音響は生活音から爆撃音まで再現への執着ぶりが半端ではない。
2016年公開版は劇場版とソフト版ではこれら兵器も大和など艦艇も修正されており紫電改も書き直され空戦フラップ展開が分かるようになっている。


2019年公開版では兵器関係の追加シーンも増えており夜間の空襲訓練で月光が一瞬登場するのも実際にあった訓練や部隊を元にしている。
円太郎が工廠内で誉エンジンの試運転を行う僅かな新規シーンでもエンジンの設計図や実験室の資料を取り寄せ、携わった技術者への取材も行っている。
その次のシーンで尾翼しか登場しない晴空も実際にあった機体番号が描かれている。
と片渕氏のオタクぶりにも拍車がかかっている。製作が遅れたのもこれらの考証のためと考えれば納得である



追記修正せい! 今すぐ!(クドクド)


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  • 先日映画を見て感動して、原作も読んだ。素晴らしい原作から生まれた素晴らしいアニメ映画だったんだな。控え目に言って名作だと思う -- 名無しさん (2016-11-21 14:26:41)
  • 広島もいくらか出てくるとなって、戦時中となれば、原爆の話は避けられないと思うんだけど、そこはどうなんだろう? -- 名無しさん (2016-11-21 15:11:11)
  • 無駄に戦争の悲惨さとかを強調しないで、当時の人々がどんなふうに日々を生きてたかをありのまま描き出そうとしてるのが良かった。 -- 名無しさん (2016-11-22 00:10:01)
  • ↑2 せっかく記事がうまいこと避けてくれてるのにコメント欄でネタバレするなよ -- 名無しさん (2016-11-22 01:27:29)
  • ↑ごめんなさい、消します。 -- 名無しさん (2016-11-22 09:41:22)
  • 男33歳。映画館で男泣き。   寸前までいった。 -- 名無しさん (2017-01-14 22:03:36)
  • ↑照れ隠しに付け加えなくてもいいのよ。 「感動できる映画」ではないんだが「心の奥に何かが残る映画」だった。控えめに言って傑作。何かが違った2016年の邦画界の〆に相応しい作品だった。えぇ映画館出た後に原作本も買いましたとも。 -- 名無しさん (2017-01-14 22:32:33)
  • >広島もいくらか出てくるとなって~  いくらかどころか全編広島の話、しかも昭和20年の話なんですがそれは… この条件で原爆の話を避けられるわけが無かろう。つべこべ言わずに観るか読むんだ -- 名無しさん (2017-01-14 22:37:41)
  • 原作のUMA~のシーンで楠公が馬に乗ってる…w -- 名無しさん (2017-01-14 22:58:20)
  • あの空襲警報音をいつ聴いてもゾッとする -- 名無しさん (2017-01-14 23:43:39)
  • 直接的な描写はないけどお茶の間フリーズな場面もいくつかあるから家族で鑑賞するときは注意が必要 -- 名無しさん (2017-03-25 15:14:03)
  • ネタバレ表示を直しました。 -- 名無しさん (2017-03-28 20:12:30)
  • リアルの呉がえらい事になっているタイミングで連ドラ放送とは…。 -- 名無しさん (2018-07-25 09:59:00)
  • なんかアニメ映画と実写ドラマで揉めてるっぽい?まだ揉めては居ないのか -- 名無しさん (2018-07-25 10:11:41)
  • ↑ドラマがスペシャルサンクスで映画の製作委員会を書いたら、映画側が「全くかかわっていない」と言った。ドラマ側も「先に映像化した物に敬意を払った」とかで、関係がないことは認めている。 -- 名無しさん (2018-07-26 21:51:57)
  • 原作にはないアニメ映画独自の設定を実写ドラマが勝手に使ってるみたいね。 -- 名無しさん (2018-07-26 22:44:42)
  • すずが生きておれば今年で94歳か…… -- 名無しさん (2020-02-03 16:39:41)
  • ぐわあ〜っと泣くわけじゃないんだけど、終盤の少女のシーン辺りからずっとじわじわ涙が出て止まらなかった覚えがある -- 名無しさん (2021-05-06 03:39:14)
  • 晴美さんのところからもうダメだった(いい意味で) -- 名無しさん (2023-02-19 23:34:42)

#comment

*1 現在の中学校相当
*2 原爆投下から数日以内は爆心地近くの放射線量が高く、市外から救援活動に入って被曝した人が現実でも多い。作中でも近所の主婦「知多さん」がこれで白内障を発症
*3 遊郭を含めた呉中心部の平地は、史実でも戦略爆撃が行われほぼ丸焼けになっている
*4 江波は爆心地から3〜4km離れており倒壊を免れた建物も少なくなかった

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