登録日:2010/02/14(日) 23:25:58
更新日:2023/08/10 Thu 17:31:11
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我地に平和を与えんために来ると思うか。我汝らに告ぐ、しからず、かえって分争なり。
今よりのち、一家に五人あらば三人は二人に、二人は三人に分かれ争わん。
父は子に、子は父に、母は娘に、娘は母に
ルカによる福音書、第十二章五十一節から五十三節*1
本作は1993年公開の『機動警察パトレイバー』シリーズの劇場版第二作。
【概要】
2002年を舞台に、テロ事件から始まった架空戦争危機を描いた作品。
現在のところ初代特車二課のエピソードで映像化されたものでは時系列的に一番最後のものであり、
首都東京を舞台に「戦争」を再現するテロリストと闘う彼らの最後の活躍が描かれている。
『The Movie 2』ではなく『2 The Movie』であり、一応、TV版⇒新OVA⇒本作という時間軸になる。
ただし、旧OVA⇒劇場版1作目を意識した描写も見られる。小説版では特に顕著。
娯楽性を重視した1作目から一転して、旧OVA版(アーリーデイズ)の「二課の一番長い日」を更に推し進めたような内容。
押井節全開の非常にドライな社会派サスペンスドラマに重点を置いているためエンタメは控え目で淡々と場面が進む。
映像は美麗であるがレイバー戦はほとんどなく、主人公機であるイングラムなんてラスト数分しか戦わない。
ロボットアニメとして見ると多分損する。
しかしカミソリ後藤の切れっぷりを手軽に味わえる作品でもある。
また、しのぶさんの啖呵もカッコいい。
押井守による小説版もあり、主に尺の都合でカットされたシーンも再現されている。
【あらすじ】
1999年、東南アジア某国にPKO(国連平和維持活動)として派遣された陸上自衛隊の1個レイバー小隊が、反政府軍部隊の襲撃に遭遇。司令部からの武器使用許可が下りず、反撃も出来ぬまま壊滅した。
そして一人の男が生き残った。
2002年冬、自衛隊の関与を疑わせるベイブリッジへのミサイル攻撃、BADGEシステム*2へのハッキングによる架空の東京爆撃事件が発生。
この事件に乗じて権力拡大を図る警察と、自衛隊が各自独走、遂には首都圏は事実上の戒厳令下に陥る。
そして雪が降り積もったある日の朝、三機の攻撃ヘリからミサイルが発射された。
虚構の街に放たれた実弾が、人々に真実の戦争を見せ付ける。
【主な登場人物】
- 後藤喜一(大林隆之介)
今作の主人公。
特車二課第二小隊隊長。
ヘラヘラしながら警察内のしがらみに辟易しながらも、荒川から依頼されて事件を独自に調査、推理する。
二課壊滅後も独自のパイプを駆使して立て直し事態の収拾に向かう上司にしたい男ナンバーワン。
- 南雲しのぶ(榊原良子)
今作のヒロイン。
特車二課課長代理並びに第一小隊隊長。
出世コースにいながら柘植学校の生徒の時に柘植ととある関係にあったため、それが元で特車二課に島流しされた過去を持つ。
柘植の出現とその行動に心を揺らしつつも責務を果たそうとするが…
- 柘植行人(根津甚八)
今回の事件の黒幕。元陸上自衛隊二等陸佐。
レイバーの運用などを研究する多目的歩行機械運用研究準備会(通称柘植学校)の創設者兼リーダーとして数々の成果を上げたが、レイバーにとって無謀とも知っているはずの熱帯湿地帯を主な活動地域とするPKOへの派遣に志願。
PKOでは陸自レイバー小隊の指揮官として行動していたが反政府軍の襲撃に遭い小隊は壊滅、ただ一人生き残る。
帰国後は行方不明になっていたが、実際はある目的のために一派を率いて極秘裏に活動しており、自衛隊関連事件において暗躍する。
風貌のイメージは「ロバート・ショー」
- 荒川茂樹(竹中直人)
陸幕調査部別室を名乗る謎の男。常に笑っている様な口元と視線の定まらない目が印象的。
事件の詳細や裏を後藤にリークし、戦争観を語り合う。
風貌のイメージは「五分刈りの中年営業マン」
- 泉野明(富永み〜な)
装備開発課に転属し篠原重工八王子工場にテストパイロットとして出向中。
レイバー好きっ娘だったころはなりを潜め、かなり落ち着いた性格になっている。
押井監督曰く「今まで女性キャラの気持ちがわからなかったが、本作で初めて『女性の変化』を意識的に描けた」と振り返っている。
- 篠原遊馬(古川登志夫)
野明と同じく装備開発課に転属し、八王子工場に開発者として出向中。
- 太田功(池水通洋)
特車隊員養成学校の教官として怒鳴りまくり機材をぶち壊す日々。さすが日本警察の奇跡。
小説版では香貫花と微笑ましい関係にある様子。
- 進士幹泰(二又一成)
子どもが出来ました。やったね進士さん。
本庁総務部総務課長に栄転し、養成学校の視察に来て太田を叱っていた。
後藤の召集に本来応える義理は無かったものの、自分でもわからない使命感にかられて後藤の元に向かった。
小説版ではかつての同僚達との飲み会にて自分達の「特車二課」時代に一種のピリオドを打つ抒情的な発言があり、
その後の招集もあって感傷的な雰囲気が増している。
- 山崎ひろみ(郷里大輔)
唯一第二小隊に残っている。
終盤ではその体躯を生かし対戦車ライフルを撃つ。やっぱかっこいい…
- 榊清太郎(阪脩)
我らがおやっさん。
すでに引退した身だが、二課壊滅の報を聞き、自ら整備班を率いてイングラムの換装の陣頭指揮を取る。
- シバシゲオ(千葉繁)
引退したおやっさんに代わり、整備班長についている。
- 松井孝弘(西村知道)
腐れ縁故、相変わらず後藤さんの無茶な頼みでこき使われる。
【レイバー】
◆AV-98 イングラム
現役を引退し八王子工場に下取され試験機となっていたが、不測の事態用に後藤が手配しており、出撃する。
今回はリアクティブアーマーを装備しており、特殊部隊を思わせるデザインになり印象がかなり異なる。
- 1号機
野明が搭乗。
頭部に特に大きな変化はない。
- 2号機
太田が搭乗。
度重なる損傷のせいか、後頭部の装甲がヘルダイバーのものになっている。
作中でも戦闘と自損事故で更に壊れる。
- 3号機
南雲が搭乗。
頭部が大きく変わっており、強力なECM装備を使用できる。
◆AV-2 ヴァリアント
イングラム引退後に特車二課の装備となったレイバー。
立ちんぼで警備するシーンくらいで全然活躍しないままぶっ壊された。
◆TRT-66 イクストル
アメリカ陸軍の軍用レイバーで柘植一派が使用する。
正確にはレイバーもどきと呼ぶべきロボットであり、作中では無人の移動砲台として使用されている。
宮崎駿曰く「散水機」、河森正治曰く「歩くファランクス」
◆AL-97B改 ハンニバル
陸上自衛隊の軍用レイバー。
冒頭のゲリラ戦と首都への治安出動シーンに登場。
◆ラーダー
柘植が冒頭で搭乗する陸上自衛隊の指揮用の6脚式レイバー。
なお、MGでイングラム全機のアーマー装備、EXモデルでイクストルが立体化されている。
後年コトブキヤからはハンニバル2種とヘルハウンド(戦闘ヘリ)がキット化されたが、1/72スケールであり残念ながらMGシリーズ(1/35)とも旧キット(1/60)とも一致しない。
また公開当時にはイングラムスペシャルとして6in1キット(1商品で1~3号機のそれぞれ通常版、劇場版で6種を選択して組み立てられるコンパチモデル)が発売された。
【レイバー以外の登場メカ】
- AH-88 ヘルハウンド
アメリカ陸軍・陸上自衛隊に配備されている架空の攻撃ヘリコプター。前作にも登場している。
折り畳み可能な巨大スタブウィングが特徴的な、テールローターを持たない「ノーター」方式の大型ヘリコプター。
長砲身20mm四銃身ガトリング砲を固定武装に、対戦車ミサイルやロケット弾ポッドを装備している。
柘植の決起シーンで登場。移動用コンテナに格納しており、スタブウィングとメインローターを展開して離陸している。
事実上中盤の主役で3機で東京の重要な橋や通信施設を爆撃する。
なおアニメでは自衛隊機であるが小説では米軍機を自衛隊機に偽装した機体になっている。
- 01-6RB-II
陸上自衛隊に配備されている架空の観測用ヘリコプター。
ヘルハウンドと同じくテールローターを持たないノーター機で、機体下部の可動式アームに複合センサーポッドを搭載している他、ローター上部にもマスト・マウンテッドサイド・レーダーを装備している。
- F-16J
航空自衛隊の支援戦闘機で、現実で言うF-2に相当する機体。
1998年より配備されているという設定で、劇中では登場するのは第3航空団第8飛行隊所属機:コールサイン「ワイバーン」のSIFと
映像加工された下記の米軍機を自衛隊機と偽装したものだけで実機は登場していない。
- F-16改 ナイトファルコン
アメリカ空軍のF-16架空改修機。
カナード翼や推力偏向ノズルを装備する他、ステルス性の向上が図られている。
ベイブリッジを攻撃した機体は当該機であったが本来は発射する意図はなくその後行方不明になっている。
- F-15改 イーグルプラス
航空自衛隊の要撃戦闘機で、F-15Jの架空改修機。
カナード翼を持つ3サーフィス機で、3次元推力偏向ノズルを装備する他、主翼をステルス形状に改修し兵装ステーションを半没式にするなど、ステルス性の向上も図られている。
劇中では百里基地の第7航空団第204飛行隊所属機「ウィザード03」と、小松基地の第6航空団第303飛行隊所属機「プリースト21」が登場。
実在する陸上自衛隊の主力戦車。
劇中中盤の首都への治安出動シーンに登場する。
- 74式戦車改
実在する陸上自衛隊の主力戦車「74式戦車」の架空の改修型。高コスト故に配備が遅れている90式戦車を量的な面から補うべく改修された。
砲塔前半部と車体正面に爆発反応装甲を、車体側面にサイドスカートを装着している他、IR(赤外線)サイトの装備と射撃管制装置の換装が行われている。
劇中中盤の首都への治安出動シーンに登場する。
- 1式装甲車
陸上自衛隊に配備されている架空の装軌式歩兵戦闘車。2001年に制式化された。
89式装甲戦闘車よりも大型の重装甲車で、90式戦車から車体の基本コンポーネンツを流用した上でフロントエンジン化している。
武装は89式同様35mm機関砲を搭載しているが、近接戦闘を重視しているため89式とは違い対戦車ミサイルは搭載していない。
劇中中盤の首都への治安出動シーンに登場する。
- 99式指揮通信車
陸上自衛隊に配備されている架空の指揮通信用装甲車。
8輪駆動の指揮統制車両で、82式指揮通信車*3とは違い本格的な前線指令部機能を有する。
劇中中盤の首都への治安出動シーンに登場する。
- 2式装甲車
陸上自衛隊に配備されている架空の偵察警戒用装輪装甲車。
87式偵察警戒車(実在する陸上自衛隊の偵察警戒用装輪装甲車。82式をベースに開発された)の後継として、上記99式をベースに開発された。
99式同様8輪駆動で、プロペラ推進による浮航能力を有する。砲塔には35mm機関砲と対人警戒用レーダーを搭載しており、車体後部に6名まで搭乗が可能。
劇中中盤の首都への治安出動シーンに登場する。
後藤隊長語録
隊員「あのう、定刻を過ぎましたので第1小隊に待機を引き継いで帰宅しても…」
後藤「そりゃいいけどぉ、南雲さんがまだ戻らんしなあ」
隊員「やっぱまずいっすよねえ」
後藤「でも、ま、いいか。いいんじゃないの。俺も残ってることだしさあ、あははははは」
隊員「第2小隊、待機任務終了。明一二○○より準待機に入ります」
後藤「はい、ご苦労さん」
隊員「じゃ、失礼しまーす」
後藤「まったねえ〜、へへへ・・」
後藤「…いいわけないじゃないの」
南雲「また松井さんと組んで何を始めたか知らないけど、動く時は一言言って頂戴。裏でこっそりってのは無しにして」
後藤「それって課長代理としての命令?」
南雲「命令なんてしたくないわ同僚としてのお願い」
後藤「お願いじゃあ聞かない訳にはいかないかぁ」
南雲「このテープでいいんですか」
荒川「いいんです。これで」
後藤「この曲、俺歌えるわ」
荒川「まあこの辺はどうでもいいんですが。歌いますか?」
後藤「マイク、ないんだよね」
荒川「じゃ飛ばします」
荒川「しかし派手だな、あんたたちの制服は」
後藤「中年には酷な服さ。私服のあんたが羨ましいよ」
後藤「やっぱり明日の出動やめようよ」
南雲「私だって行きたくないわ。でも警備部長の正式な出動命令なのよ」
後藤「うちの小隊、動かないよ」
南雲「課長代理として命令することもできるのよ」
後藤「してみれば? 命令」
南雲「結構! では第1小隊もこれより独自に行動します。私もたった今から課長室の方へ移りますから」
後藤「いや? あのしかし、しのぶさん?」
南雲「私物は後で取りに参ります。失礼」
後藤「そんな。ねえ、んなことしたって俺絶対に行かないんだからあ」
後藤「あ、しのぶさん? 気、変わった。今変わった」
後藤「戦線から遠退くと楽観主義が現実に取ってかわる。そして最高意志決定の段階では、現実なるものはしばしば存在しない。戦争に負けている時は特にそうだ」
上層部「何の話だ。少なくともまだ戦争など始まってはおらん」
後藤「始まってますよ、とっくに・・・ 気付くのが遅過ぎた。柘植がこの国へ帰って来る前、いやその遥か以前から戦争は始まっていたんだ。
突然ですが、あなた方には愛想が尽き果てました。自分も南雲警部と行動を共に致します」
上層部「後藤君。君はもう少し利口な男だと思っていたがな。二人とも連れて行け」
事務官「たった今自衛隊機の爆撃により、東京湾横断橋が!」
後藤「だから!遅過ぎたと言ってるんだ!!!」
後藤「よく来てくれたな。篠原。泉。進士。太田。それに山崎。お前達の使命は、南雲隊長と共に18号埋立地に潜伏する今回の事件の首謀者を逮捕することだ。これ以降は全て南雲隊長の指示に従え。あらゆる妨害は、実力でこれを排除しろ。特車二課第二小隊最後の出撃だ。存分にやれ」
南雲「直ちに出発する。全員乗車」
後藤「しのぶさん。刺し違えてもなんてのは御免だよ。彼を逮捕して、必ず戻るんだ。俺、待ってるからさ」
荒川「何故だ。どうしてあんたが行かない」
後藤「俺にはやらなきゃならんことが色々あってね。さんざっぱら世話になっといてなんだけど、あんた逮捕するよ」
「結局俺には、連中だけか」
プロトタイプ・「二課の一番長い日」について
休暇を取ったはずの後藤隊長が出勤してきており当初ははぐらかすが、数日前から後藤は何者かに監視されている
ことに気づいており、それが何者かを調べるためであった。
その最中に東北道で検問を突破したトレーラーが搭載していたレイバーを起動させ警察に発砲する事件が発生、
不穏な気配を感じた後藤は整備中でオーバーホール予定であった1号機のみを八王子に輸送を決定。
その後自衛隊が国会議事堂などを占拠するクーデターが発生、次々に重要施設が制圧される中警視庁は事前に
こうなることを予想していた後藤の話を聞いていた南雲が籠城しており徹底抗戦の構えでいた。
しかし運よく本庁にいなかった警視総監から、クーデターの首謀者と後藤がかつて同志であったことが発覚し後藤からこう
なることを聞いていた南雲は疑惑をかけられこれに反発したことで後藤共々逮捕状を出されてしまう。
これを聞いた二課の面々は休暇を切り上げ東京に帰京しクーデター首謀者逮捕のために各々で奮戦していくことになる。
クーデター部隊は制圧後何の要求もしなかったが実は切り札準備のための時間稼ぎであった…
というのが大まかな流れであり話の流れこそパト2と似ているが違う点として
- クーデター首謀者の関係者が後藤。
- 事件を起こしたのは自衛隊の正規部隊。
- 二課隊員の多くは不在だが休暇をとっており全国にばらけている。
- クーデター部隊が国会議事堂などの施設を占拠し展開している。
- 国会解散・憲法無期限停止などの明確な要求がある。
- 切り札はブラフではなく本気で使おうとした。*4
などが挙げられる。なおレイバーが活躍するのは終盤だけというのは同じである
与太話(大人の事情を大いに含んでいます。閲覧にはご注意下さい)
「ロボットアニメでは一番の目玉であるはずの巨大人型ロボットが活躍しない、寧ろ厄介者」という根幹の設定がネックになったのか、「映像ソフトは売上は上々、しかし玩具が売れない」というアンバランスな状況だったため、「打ち上げ花火として映画を作って一旦シリーズを畳もう」というスポンサーとヘッドギアの合意の上で制作された。俗に言う「敗戦処理」である。
「1」に引き続き、世界観を固めるためにロケハンを行ったが、東京の湾岸の埋立地だけは大怪我の可能性が高く「映画の素材の撮影」では許可が下りなかった。そこで押井はスタッフに頼み込み、ロケハンのコーディネーターが「雑誌記者主導による東京のゴミ問題の取材」という名目で企画書を都庁に出して写真撮影の許可を取った。ちなみにその模様が掲載されたのは「アニメージュ」1992年12月号である。…うん、嘘はついてない。
脚本は伊藤の単独クレジットになっているが、実際には押井が詳細なプロットも交えた大まかな縦軸の起承転結の構成・全てのキャラクターの台詞、伊藤が横軸の泉・篠原・進士を中心にした初代特車二課のその後の成長エピソードのプロットを担当した。そうして出来上がった脚本は自他共に認める「映画向けの脚本かどうかすら怪しい」「研究論文すれすれのパズルめいた小説」と称した程のお堅い構成であり、それは膨大な学術書・小説・聖書等の資料からの引用で成り立っている。伊藤はそれらの難解な要素を中和するために、長台詞を話すシーンはどの場所にするかを選び、わかりやすくなるように清書していった。
絵コンテ作業の段階では元の脚本は大筋以外はあまり重視せず、「前後と噛みあわない・魅力的だけど尺が足りない・これはやり過ぎ」と判断したら、プロット・登場人物はもちろん台詞の微妙なニュアンスの違いまで即断即決で削除・修正していった。その模様を見ていた伊藤は「脚本は所詮は『素材』に過ぎないのね…」と呆然としたという。但し、その後削られた部分はやり過ぎな部分も含めて小説版で補完された*5。
作画作業に入る前に、以前から宮崎駿監督により浸透していた「如何にアニメチックな動画として魅力的に動かすか」を突き詰めたレイアウト作業とは一味違った、「天使のたまご」から研究し始めていた「出来上がる画面を綿密にイメージしながら、画面に映るパース・カメラワーク・建物・キャラクター・小道具を決めていき、フレームに一切映らない素材・設定は絶対に作らない」「実写作品制作のノウハウをアニメ上で再現する」ことをテーマにしたレイアウト作業に実制作作業の7割を費やした。この方針は限られた予算とスケジュールの中で効率よく情報量の多い画面を作る際に無駄な作業が大幅に削減されたが、もしカットの変更があったら0から作り直さなければいけないというデメリットもあった。それらのレイアウトをまとめて演出意図を大いに語った「Methods 押井守『パトレイバー2』演出ノート」が発売された。押井監督曰く「プロを志す方はどんどん真似して、コピペして欲しい」とのこと。
メインアニメーター・黄瀬和哉氏による「1」の写実的な絵柄を本作で「アニメ」としてではなく「映画」として完成させるために、高田明美女史の書いた設定表をわざと原画スタッフに配らないという所業をしてまで推し進めた結果、その余りに華のない風貌は高田女史から「こんなの私のキャラじゃない」と長く根に持たれた。それでも尚、押井監督は黄瀬氏の「書き直せと言うなら降りる」と言い切る程の作画センスを信じ続けた。反面野明の精神的成長の証としてピアスを付けさせた高田女史のセンスを押井監督はいたく気に入った。
ヘッドギア結成当初より、メカに対する造詣の根本的な違い・出渕のスケジュール管理の散漫さが原因で度々出渕氏と押井監督との諍いは少なからず起こっていたが、この期に及んで「他の仕事を優先するために設定表の提出が遅れる」と言われてしまい不満が溜まりに溜まった押井監督が大激怒、そのまま電話上での口論に発展。それ以来「仕事仲間としての付き合いはもうごめんだ」と押井監督が言わしめ、後の押井監督のエッセイ集で公然とメカの考察の際のモデルに勝手にする程の遺恨を残した。2015年に実写版でのトークショーで10年ぶりに公の場で再会、「たまに会うにはいい」とお互い色々言ったものの、一応軟化はした。
追記・修正は既に編集されているかもしれない画面ではなく、現場の状況を自分の目と耳と知恵を使って解釈した上で判断してからお願いします。
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▷ コメント欄
- 後藤隊長のキレっぷりがたまらない。竹中直人が演じる荒川は後のS.A.C.の合田を思わせる不気味な魅力を持つキャラクター。 -- 名無しさん (2013-09-11 16:42:26)
- 榊原さん「しのぶさんはこんな人じゃない」って押井監督に文句言ったんだよな。
後藤さんとくっついて欲しかったらしい(パラレルって手はあるが)。 -- 名無しさん (2013-09-11 16:55:48) - ヴァリアントは全国配備された初のパトレイバーで、ピースメーカー以上の高性能機。これの配備で、性能的にまだ現役のピースメーカーが現役引退する羽目に -- 名無しさん (2013-09-11 19:44:26)
- ジェームス・キャメロンが横浜に来た時ベイブリッジを見て「爆破されたあの橋だ!」と興奮していたというのは割と有名な話。 -- 名無しさん (2014-01-25 13:19:07)
- Ⅳとかあるといいね。 -- 名無しさん (2014-01-25 13:24:45)
- まさかダークナイトに後追いされるとは…当時の押井は鬼才だったんだなぁ…… -- 名無しさん (2014-02-11 18:48:43)
- 劇場版1作のラスト直前と言い、今作ラストの鳥の群れ……押井監督好きなのかね? -- 名無しさん (2014-09-02 10:02:19)
- 進士さんかっこいい!!って思ったけど、結局進士さんらしいと言うかw -- 名無しさん (2015-01-15 16:31:54)
- 新田原航空祭で救難隊の飛行展示でスクランブルシーンの曲流れた時はワロタw撃墜されてねーだろw -- 名無しさん (2015-12-07 16:05:17)
- 隊長に念を押された直後、おやっさんが正反対のことを言って人員招集するのは何度見ても笑う。たまのギャグのタイミングも内容も絶妙なんだよなぁ -- 名無しさん (2016-02-18 22:22:54)
- 現実でもミサイル騒動起きるといつもこれ思い出すわ -- 名無しさん (2017-08-29 07:06:58)
- ↑特に、「楽観主義が現実に~」ってところね。現実の場合はむしろ政府より国民のほうが当てはまるけど。自分含めて。 -- 名無しさん (2017-08-29 09:15:13)
- 押井守作品として見るのはいいがパトレイバーとしては気に入らん -- 名無しさん (2017-12-21 20:36:17)
- 作風的には納得できるんだけど柘植としのぶさんの関係を盛り込むのはどうにかならんかったのか…あれでしのぶさん大好きな友人がブチ切れてHOSで暴走したグリフォンみたいになってたよ… -- 名無しさん (2018-03-20 19:56:53)
- ↑中の人にも文句言われた位だからねぇ……。娯楽作品として楽しまれてたアニメでいきなりこの内容をやられたら、映画としての質はともかくファンには拒絶反応示す人も出るよねっていう。 -- 名無しさん (2018-03-20 20:17:54)
- 当時の雑誌記事では、この数年後イングラムは東欧で消防レイバーになっているという話(見開きイラスト)があった -- 名無しさん (2019-06-02 23:09:29)
- エレベーター待つ時は3号機みたいにボタンに手をかけながらドアには背を向けて待つクセしちゃう -- 名無しさん (2020-08-24 14:10:29)
- 「二課の一番長い日」はプレイベントで関連作品として上映された。という小ネタ -- 名無しさん (2020-08-24 18:09:32)
- カンボジアPKOが元ネタになってるがゴラン、アフガン、イラク、シブチを経験する今では「有事」がもっと身近になってる。もっと言えば自衛隊が政治の道具になってたり、都合のいい戦争を演じて見せたりと現実を先取りしていた。 -- 名無しさん (2020-08-24 19:53:09)
- 4DX版見てきたが、「状況」のシーン最高だったな。あとやっぱこの映画は冬に見るのとてもが良い -- 名無しさん (2021-02-11 16:58:17)
- しのぶさんについては榊原氏の見方を支持したいな。というか「膨大な学術書・小説・聖書等の資料からの引用で成り立っている」ってまんまイノセンスじゃん…… -- 名無しさん (2021-12-11 03:03:26)
- 面白いけどレイバーいらねえ -- 名無しさん (2022-02-09 23:35:11)
- この記事やウィキだとF-15改は3次元推力偏向ノズルと書かれていますが2次元の間違いではと思います。設定資料集だとベクタード2次元ノズルと書かれてますし、見た目もF-22やF-15S/MTD -- 名無しさん (2022-07-20 10:50:33)
- ↑の続き の2次元ノズルと似たデザインをしています。そもそも元ネタの一つがS/MTDだと思うし。 -- 名無しさん (2022-07-20 10:54:11)
#comment
*2 公開当時実際に運用されていた航空自衛隊の防空指揮管制システムで、正式名称は「自動警戒管制組織」。現実では2009年7月に運用を終了し、後継の「自動警戒管制システム(JADGEシステム)」に置き換えられている
*3 実在する陸上自衛隊の指揮通信用装甲車。第二次大戦後日本において初めて実用化された装輪装甲車でもある。
*4 正確には使ったものの二課に妨害されて失敗した、また腹心と思われる人物は使うつもりはなく止めに入っていた
*5 特に「かつての特車二課メンバー達の飲み会」に関するエピソードは押井監督も気に入り、絵コンテまで書いたが尺の都合で削らざるをえず、後の小説版で表現された。
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