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VF-0 フェニックス(ブイエフゼロ フェニックス)はOVA『マクロス ゼロ』に登場する架空の兵器(可変戦闘機)。
ペットネーム(愛称)の「フェニックス (PHOENIX)」とは、「不死鳥」または「火の鳥」と呼ばれる伝説上の鳥の名であるが、関連メディアで後付けされたものであり、劇中では専ら「ゼロ」ないし「ブイエフゼロ」としか呼ばれない。
マクロスシリーズ20周年作品として2002年に発表されたOVA『マクロス ゼロ』に登場する可変戦闘機(ヴァリアブル・ファイター)。この作品は初代『超時空要塞マクロス』(設定年代は2009年)より前の2008年という設定のため、「VF-1 バルキリー」の試作型としてナンバーを遡る本機が新たにデザインされた。デザイナーの河森正治は変形機構の設定についてはVF-1で一度やっている分、基本的には楽だったと語っている。
主人公の工藤シンや先輩のロイ・フォッカーらが乗る『マクロス ゼロ』の主人公機としてビデオソフトのパッケージに描かれている。フォッカー機(S型)、一般機(A型)はVF-1同様の可変翼だが、シン機(D型)はクリップドデルタ翼となっているのが特徴。
各種商品化も行われている。プラモデルはスケールモデルの老舗ハセガワから発売された。ファイター形態、バトロイド形態それぞれ商品化されており、劇中未登場のVF-0B、VF-0Cといったバリエーションも発売されている。
また、『スーパーロボット大戦Scramble Commander the 2nd』、『マクロスエースフロンティア』、『マクロスアルティメットフロンティア』、『Another Century's Episode:R』などの関連ゲームにも登場している。
河森は、VF-0がVF-1より進化した機体に見えることについて、最初はVF-1より古めかしくデザインしたところ、F-14に似すぎてしまい、リアルではあるが主役メカらしくなかったためと語っている。ショーモデルの車で未来的な技術を使いながらも、市販車では搭載されない事があるという例を挙げて、試作機の方が新技術を使っている部分もあると解説している[1]。
VF-0 フェニックス | |
設計・製造 | ノースロップ・グラマン/ロックウェル/新星共同開発 |
---|---|
全長 | ファイター時:18.69m |
空虚重量 | 16,191kg(D型:16,805kg) |
エンジン | (主機)EGF-127改 ターボファンジェット×2 (副機)新中州ARR-2 ロケットモーター×3 |
エンジン推力 | (主機)91.08kN×2(アフターバーナー使用時148.9kN×2) |
最大速度 | (高度11,000m)マッハ2.74(D型:マッハ2.62) |
航続距離 | 2,075km(D型:2,400km)(背部燃料タンク装備時) |
上昇限度 | 25,000m(D型:26,500m) |
乗員 | 1名(B、D型:2名) |
武装 | 【固定武装】 マウラー社製レーザー機銃×1(S型:×2) 【標準武装】 ヒューズGPU-9 35mmガトリングガンポッド×1 (装弾数550発、AHEAD弾使用可能) 【標準装備】 中距離空対空ミサイルAMRAAM2 (レイセオン-ボフォースAIM-200A I/ALH誘導)最大搭載数×12 【拡張・選択装備】 大気圏内用スーパーパーツ×2 (マイクロミサイル(レイセオン-エリコーンGH-30BI/IR誘導)×24 またはガンポッド予備弾倉を格納) その他、旧・米/NATO軍標準航空兵装の大半を装備可能 【防御兵装】 フレア&チャフディスペンサーシステム (AN/ALE55×1、IDECM) (AN/ALQ220A) アクティブ・ステルスシステム (ASS/PS110) SWAGエネルギー変換装甲システム (AWAG/RA105) 他 |
VF-0はVF-1 バルキリーの試作モデルの1つであり、本来はテスト用の機体であった。しかし、反統合同盟軍が可変戦闘機SV-51の実戦投入で先んじる事態を受け、統合軍は急遽実戦用の改造を施したVF-0を30機ほど製造し、試験的実用部隊を編成した。このため、本機は試作機の中でも「先行量産型」に近い位置づけとみなされる。なにぶん急な話であったため、製作した試作機をごっそり運用現場である空母「アスカII」に運んだだけでなく、中島雷造技術主任などの開発技術者も同様に送り込み、微調整や不具合の改修、整備にあたらせた[2]。
可変戦闘機用の小型熱核反応タービンエンジンがまだ実用段階に達していなかったため、代用として従来型ジェットエンジンの中で最大級の推力を持つEGF-127をオーバーチューンして搭載している。従って、大気圏内での無補給飛行能力や大気圏外活動能力は持ち合わせていない。また、限界まで出力を搾り出したため燃費が非常に悪い上、変形機構の都合で燃料搭載スペースが限られているため航続距離は1990年代末に実用化されたF-14後継機F/A-18Eの7割以下しかない。このため、作戦行動中は空中給油機の支援が不可欠となる。また、可変戦闘機用のアビオニクスが未完成であったため、操縦性も良好とは言い難い。ノズルは推力偏向方式を採用、コブラなどの変則マニューバもこなす。デリケートなエンジン、不慣れなバトロイド形態と相まって、その性能を充分に引き出せたのは、VF-X1のテストパイロットで実験部隊を率いた統合軍のエースパイロットロイ・フォッカー少佐のみといわれている。
エンジンサイズと燃料タンクに合わせ機体はVF-1 (14.62m) よりも一回り大きくなり、2000年代初頭の主力戦闘機とほぼ同サイズとなったため、かなりの装備を既存の戦闘機用部品から流用する事が出来た。そこにVF-1とほぼ同様の3段変形機構やレーザー砲などのオーバー・テクノロジーが投入され、バトロイド形態では余剰出力を利用したSWAGエネルギー変換装甲により、部分的に装甲強度を確保し「戦車並の防御力」を得ている。ただしファイター形態では基本的にエネルギー変換装甲が働いていないので、飛行速度がマッハ1.6以上になると変形できない。また、アクティブステルス “ASS/PS110”装置も備えている[3]。なお、後の機体に採用されなかった、この機体独自の機能として、EGF-127の発電能力を活かすために機体に搭載された大容量エネルギーキャパシターへと、発電されたエネルギーをため込み、ファイター形態時にこれを使用する事で短時間だがSWAGエネルギー変換装甲を起動する「マイティウィング・モード」がある[4]。本来は宇宙戦も想定していたため各部の気密性も高く、水面下20m程度までならばインテークを閉じた「サイレント・モード」で数分程度の水中行動が可能である。これらから、在来機と新世代機の中間に位置する過渡的な機体と形容される。
固定武装としてモニターカメラ兼銃座(バトロイドの頭部)にマウラー製レーザー機銃を装備(型式により搭載数は異なる)。標準武装として35mm3銃身のガトリング砲ガンポッドと空対空ミサイル12発(左右主翼下4つのハードポイントに各3発ずつ)を装備する。
追加兵装システムとして、ファイター時の機動性向上を目的としたFASTパック(スーパーパーツ)、バトロイド時の武装・装甲強化に特化したプロテクター・ウェポンシステム(通称「リアクティブアーマード」。リアクティブアーマーを利用した追加装甲パーツ)などが考案され、これらの装備は後継のVFシリーズにも受け継がれることとなった。
従来のマクロスシリーズでは、バルキリーの開発や製造に携わったメーカーとして、ノースロップ・グラマンは「ノースロム」、ロックウェル・インターナショナルは「ストンウェル」と、実名をもじった企業名がつけられていたが、『マクロスゼロ』では実在の航空機も多数登場する関係性からか、実在の企業名が実名のまま登場する(「マウラー」だけは実在社名マウザーではなくアナグラム化されたままである)。また、ガトリングガンポッドのメーカー名は従来、ヒューズ社創業者の息子で現代アメリカ航空業界の父であるハワード・ヒューズのファーストネームをチョイスしていたが、今作では社名そのままのファミリーネームを登場させている。
一方、これらに加えて「新中州重工」に関しては『マクロスゼロ』では「新星」という企業名が宛てられている(新中州重工のモデルとしては、かねてから非公式に旧中島飛行機=現富士重工であると考えられているが、名称的には現存しない企業である)。従来のマクロスシリーズ中における「新星インダストリー」なる企業は、新中州重工とストンウェルの航空機部門が2012年に合併して誕生した企業であるため、『マクロスゼロ』の時代にはまだ存在していないことになるが、マクロスシリーズでは設定上のスペック等が必ずしも正確なデータとは限らず、後年の軍事評論家が作った推測データ的な扱いであるという解釈(シリーズ全体がマクロス世界の架空の現実を作品化したというメタフィクション構造[5][6][7]も存在するため、テンプレート:要出典範囲。
実験部隊の移動基地となった統合軍空母アスカには、各地から優秀で若いパイロットが集められ、訓練が繰り返されていた。そして2008年7月、マヤン島沖のプロトカルチャー遺跡争奪戦へ派遣され、SV-51と史上初の可変戦闘機同士の対戦を繰り広げることになる。なお、この争奪戦は統合軍の極秘事項として長く封印されたため、本機も幻の機体として眠ることになったが、VF-0で培われた技術及び実戦データーはVF-1に引継がれ、その開発に貢献することになる。
50年後を舞台とした『マクロスF』の時代には、マヤン島の事件やVF-0の存在も公にされており、劇中で本作のエピソードが映画化された際は、実機が失われて存在していなかったため、最新鋭の機体ながら似たシルエットを持つVF-25を撮影した映像を、CGで後加工してVF-0に見せる手法を取ることが示されている。
VF-1のGPS-1S(プロテクター・ウェポンシステム、いわゆるアーマード装備)に相当する、バトロイド形態用の全身装甲兵装システム。両肩と胸部にはマイクロミサイルランチャーを備え、腰部にはハンドグレネードを複数装備しており、これは手で引き出して敵へと投げつける。大重量化した機体を支えるため、背部に増設されたジャンプ・ブースターは、機体の機動性と運動性をある程度確保し、その直上に、背部をカバーするためのセンサーユニットが設置されている。その名のとおり、各所に爆発反応装甲を採用しており、緊急時には装甲のパージが可能である。『マクロス・クロニクル』ではPWS-0Xの型式が与えられている。
空母アスカにおいて応急措置的に考案される仕様。現場合わせのため正式名称はなく、別の仮称で呼ばれることもある。
VF-0シリーズ用追加兵装パックの開発は進行していたが、VF-1用の開発データをフィードバックする形で行われており、マヤン島での戦闘時完成していたのは両エンジンナセル(脚部)用のパーツのみで、ツインブースターを装備したSV-51に限界性能の差をつけられる事態が生じる。そこで、空母アスカの中島雷造班長率いる整備員達は、高出力ターボファンジェットを持つ無人戦闘偵察機「QF-2200A ゴースト」を丸ごと追加ブースターとして機体背面に接続するという案を編み出す。ゴースト本体のエンジンにもチューンを施した結果、通常時の推力は20%増し(アフターバーナー使用時は90%増し)となり、この余剰出力を頼みにミサイルポッド・増装タンクを最大限に搭載するという荒業が可能になる。
ゴーストの装着や追加兵装による形状の変化によって[9]ステルス性は失われたも同然の状態となり、またミサイル兵器の消費による重量バランスの変化と限界近くまでオーバーチューンしたゴーストの極端な出力特性から、機体の挙動予測は非常に困難になった。シミュレーションで行われた飛行特性データの投入や自己学習型の空戦機動システムの補助は有るものの、結局の所はパイロットの技量を信じ機体を託すしかないのが実情であった。この決戦用の特別仕様機はA型、S型の各1機ずつ改造され、工藤シンとロイ・フォッカーの手に委ねられる。
『スーパーロボット大戦Scramble Commander the 2nd』においては、この装備を装着した形態に「特攻突撃仕様」という名前が付けられている。
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