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ゼントラーディ人(ゼントラーディじん)は、テレビアニメ『超時空要塞マクロス』およびその続編「マクロスシリーズ」に登場する架空の巨人型異星人(生体兵器)。
劇場版『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』では設定が変更され、ゼントラーディは男性の巨人族を指す呼称となっている。詳細は「メルトランディ」の項を参照。
テンプレート:ネタバレ
古代のプロトカルチャーが戦闘員として利用するために遺伝子操作によって創造した人種。容姿こそ人類と酷似しているが、その身長は人類の約5倍[1]となっており、地球統合軍にてバトロイド(可変戦闘機の格闘形態)やデストロイドなどの巨大ロボット兵器が実用化されたのも、ASS-1(マクロス)の調査結果から巨人異星人との遭遇・戦闘が想定されたためである[2]。また一部の臓器の数や位置が人類のそれとは異なっており、宇宙の真空中でも生身で短時間活動できるなどの強靱な肉体を持つ者もいる(体格や構造は階級や役職により異なる)。更に闘争本能の増進も施されており、第一次星間大戦後に地球に帰化したゼントラーディ人の中には、破壊衝動を抑えきれず暴動を起こす者が相次いだが、彼らの強靭で大きな肉体は、終戦直後の復興の労働力として重宝された。
出自および構成に関して、TV版と劇場版では一部設定が異なる。TV版ではゼントラーディ人の敵対勢力は監察軍で、ゼントラーディの男性と女性は同じ艦艇には乗っていないものの、同じ基幹艦隊の指揮下で活動。男性は白兵戦向けの強靭な肉体、女性はパイロットとして適した、小柄で高いGに耐えられるように作られていた。劇場版では、プロトカルチャーが単性生殖を実現させた結果、男(ゼントラーディ)と女(メルトランディ)に分断され、戦闘に至ったとされている。反乱や謀反への安全対策として、知能も平均的な地球人の小学生前後レベルに限定され、戦闘のみに特化された種族のため、美術・音楽(歌)などの文化に免疫がなく、文化活動の場面に遭遇(例:歌を聞く等)すると、激しく動揺したり興奮状態に陥る。男女の恋愛行動に対しては、特に異常な反応(カルチャーショック)を示し、この点はTV版、劇場版とも共通している。
生殖能力はあるものの男女間の交流はほとんどなく、クローン技術により兵士が「製造」されている。プロトカルチャー時代に、試験的に生殖能力を去勢した兵士も製造されたが、戦闘力が著しく低下したために、この措置の本採用は見送られた。また応用技術として、肉体を地球人サイズに縮小する「マイクローン化」や、逆にマイクローンを巨人サイズに戻すことができる「マイクローン装置」を所有している。マイクローン化したゼントラーディ人は生物的に地球人とほぼ同類で交配・混血も可能だが、これは地球人もプロトカルチャーによる、「亜プロトカルチャー計画」によって創り出された生物種であったことに由来しており、地球人もマイクローン装置により巨人化する事が可能である(劇場版ではマクシミリアン・ジーナスが巨人化してメルトランディに帰化する)。
TV版の28話以降、および『マクロス7』などの続編では旧ブリタイ・アドクラス艦隊将兵の多くがマイクローン化して新統合政府に参加しており、新統合軍にも所属している。地球人とゼントラーディ人のハーフやクォーターも数多く誕生している。『マクロス7』はTV版の設定を受け継いでいるが、男性をゼントラーディ、女性をメルトランディと呼ぶこともある[3]。大戦後の2度の巨人ゼントラーディ人による反乱により、地球では巨人サイズでの居住が禁止されたが、マクロス7船団にはエキセドル・フォルモら非マイクローンのゼントラーディ人が少数所属しており、マクロス・フロンティア船団でも一部区画にて巨人ゼントラーディ人と地球人・マイクローンとの共存が行われている。
なお第一次星間大戦でのボドル基幹艦隊による軌道爆撃により、人類は総人口のほとんどを失い約100万人を残すのみとなり、帰順したゼントラーディ人約800万人より少数となった[4]。このため以後の「地球人類」は、マイクローン化した帰化ゼントラーディ人の方が多いことになる。大まかに元ブリタイ・アドクラス艦隊指揮下の帰化ゼントラーディ人と、元ボドル基幹艦隊指揮下の帰化ゼントラーディ人に分類され、前者のゼントランは比較的穏健派に属し、地球人類との共存共栄に積極的だが、後者ゼントランは上位指揮系統の壊滅により否応なく人類に降伏、和平に応じた勢力であることから、新統合政府に反感を抱いて、反社会的なテロ活動を起こす者も存在する[5]。もちろん全員がそうとは限らず、大多数のゼントラーディ人の生存者は、新統合政府主導の地球人類との融和・帰化政策に恭順的であり、戦闘種族としての彼らの能力と経験は後年の宇宙移民時代においても大変重宝されている。
身体的な特徴として、寒色系の肌の色が挙げられるが、褐色や肌色など地球人とさほど変わらない者も多い。劇場版や『マクロスプラス』以降の続編では、旧シリーズには無かった演出として、尖った耳が特徴として加わっている。地球人との混血児にも純血児ほどではないが耳の端がやや尖っているといった細かな描き分けがなされている。その他、青・緑・ピンクといった純血の地球人には存在しない色の頭髪を持つ者も多く、ハーフやクォーターでもそうした人物が多い。また『マクロスF』では、一部のゼントラーディ人は頭髪が意思や感情により動く能力を持ち、クォーターであるランカ・リーもその能力を受け継いでいるという設定が加えられた。
プロトカルチャー言語から発展した独自の言語体系を使用しているようだが、TV版では演出上の都合もあり、最初から完全な翻訳機をゼントラーディ側が所有していた(それでも作中には、ゼントラン語が度々登場している。特に、第一次星間大戦後の地球で、ゼントラーディ人がゼントラン語を使うシーンが複数存在している)。そもそも軍事行動以外の習慣のないゼントラーディ人の使用言語は、地球人類のそれと比較すると非常に語彙のバリエーションが少ない。この傾向は劇場版において更に強調され、より未知の好戦的な異星人としての印象を強めている。当初は独特のゼントラン語を使用しており(PS2版ゲームソフトでは、TV版ストーリーモードにおいても劇場版同様の演出方針が採られている)、「デ・カルチャー(意訳:そんな馬鹿な)」などが有名である。作中で次第に地球の言語[6]とゼントラン語が混合して使用されるようになった。なお、表記には独自のゼントラン文字が使われており、その一部に地球のラテン文字(ローマ字)に該当する物があったことから文字の対比の後、翻訳方式がまとめられ、地球人側の翻訳技術の向上に貢献することとなる。
元ボドル基幹艦隊のゼントラーディ人は地球人類との混血化が進み、帰化することで純粋なゼントラーディ語のみを使用する者もいなくなったが、2059年時点でゼントラーディ血統人種で構成される部隊などでは、軍事行動関係の命令や指示などをゼントラーディ語で行っているケースもある[7]。
一部の単語はそのまま地球言語として定着しており、前述の「デ・カルチャー」などは、普通にテレビCMなどにも使用されるポピュラーな単語となっている。小説版『マクロスF』にて早乙女アルトは「デカルチャー」を古臭い死語だと言っており、普通に使うランカ・リーと言い合いをする場面がある[8]。
劇場版では、早瀬未沙がプロトカルチャー語で書かれた「愛・おぼえていますか」の歌詞カードを翻訳したり、プロトカルチャーからの音声メッセージを片言ながらも理解できたところから、統合軍も西暦1999年に墜落してきたマクロス内部に残存していたであろう資料やデータなどから、ゼントラン語(メルトラン語)をある程度解読していたものと推察できる。
ゼントラーディ人は種族全員が戦闘員であり、ゼントラーディ軍の将兵である。彼らには「民間人」(戦争をしない人間)という概念自体が存在せず、社会生活全てが軍事行動と直結している。
ゼントラーディ軍は1,000個以上の「基幹艦隊」に分かれて行動している。1個基幹艦隊は移動司令部である超大型要塞と500万隻近い宇宙戦艦、搭載された無数の戦闘ポッドで構成される。全ての基幹艦隊に識別ナンバーが割り振られているが、便宜上、総司令官の名前を冠した名称で呼ばれている。第一次星間大戦の際、人類と交戦した基幹艦隊は、ゼントラーディ軍第118基幹艦隊(通称:ボドル基幹艦隊)である。基本的に基幹艦隊同士の連携等は行われず、お互いの艦隊の位置も命令系統上位(エキセドル・フォルモの説明で登場する「ベルナル級」以上)の将官までしか知らされていない。軍隊として本来存在するはずの、基幹艦隊を統括する上位機構もシリーズ中では明言されていない。そもそも本来の主人であるプロトカルチャーは、遙か太古に自らの生み出したゼントラーディ軍と監察軍の戦いの中で滅亡しており、既に根源的な戦争の目的や理由を失ったまま軍隊全体が盲目的に戦闘行為を行っているとも言える。なお、総司令官を失った基幹艦隊の残存艦艇は速やかに撤退の後、距離的に最も近くに位置する他の基幹艦隊に合流すべし、とする軍法がある。
撤退の際に取り残されたゼントラーディ艦隊または部隊は、闘争本能の赴くままに戦闘を繰り返す「はぐれゼントラーディ」という危険な海賊的戦闘集団と化し、辺境宙域において幾度となく新統合軍の治安部隊と交戦している。マクロスシリーズの正史には含まれていないが、『超時空要塞マクロスII -LOVERS AGAIN-』では「マルドゥーク」という、はぐれゼントラーディを歌によって従えた勢力が登場する。
ゼントラーディ人は創造する能力を与えられておらず、運用している兵器は全てプロトカルチャーの作った無数の惑星や衛星の全自動兵器廠により製造されている。例えば標準的な戦闘ポッド・リガードは、約3億を数える兵器廠で常時生産され続け、前線に供給されている。本編中では明言されず、登場もしないが、戦艦やフルブス・バレンスのような機動要塞を建造する兵器廠も存在する(こういった兵器類は生産サイクルも長く、艦艇類は数十から数百周期に1隻、要塞クラスになると数千周期に1隻のサイクルで生産されているものと思われる)。修理や整備等の保守技術も所有させないために、プロトカルチャー時代に建造が開始された当初から、全般的に耐久力を重視した設計・構造となっており、数万周期(年)前に建造され、現在も現役で戦闘に参加している歴戦の艦艇も存在する。しかし、前述されているように知能が限定されているため、比較的複雑で高度な機材の性能維持と運用は困難で、例えば司令部偵察ポッド・ケルカリアなどは標準装備でありながら、各艦隊ごとに数十機ずつしか配備されていない。
基本的に一つの兵器廠で単一の兵器が大量生産されていると見られ、劇中にもその種の描写、台詞がある。戦闘等で生産ラインが破壊されると兵器廠自体の修復も不可能なのに加え、ゼントラーディ人の文化にはそもそも「整備」「修理」の概念が無いため、既存生産分の部品の共食いも含めやはり不可能となり、該当する兵器は修復されることもなく使い捨てられて、以降は消耗する一方となる。例えば、戦闘ポッド・グラージ等は、28万周期前にロイコンミ兵器廠の生産ラインが監察軍の総攻撃により全壊したため、ゼントラーディ全軍を通じて希少品となっている。また、一部の兵器廠は新統合軍によりゼントラーディ軍から奪取され、地球近辺へ移動して終戦直後の早急な戦力増強に活用されている。
第一次星間大戦後、地球人類によりこれらの兵器の基幹技術が調査解明され、それらを導入した地球製兵器の開発も進められた(YF-21等)。また逆に地球の修理・改良技術を習得したゼントラーディ人により、ゼントラーディ兵器に改造や改良を加えた機体が確認されている(ヴァリアブル・グラージ等)。
核兵器の一種である反応弾に至っては、地球暦の紀元前38万年前に全ての生産プラントが戦火で失われ、幻の兵器として言い伝えのみがゼントラーディ全軍に伝わっていた。
ゼントラーディ軍ではその役割に適した能力を特化した個体が製造されている。『マクロス・パーフェクトメモリー』内記事「空白の二年間」に、量産性の高い「一般兵士タイプ」、戦闘能力が低い代わりに知能の高い「記録参謀タイプ」、真空中でも耐えられるほど強化された「指揮官タイプ」の三つに分けられるという記述がある。プレイステーション用ゲーム『マクロス デジタルミッション VF-X』には通常のゼントラーディ人のサイズをはるかに上回る司令官クラスのゼントラーディ人が登場する。
ゼントラーディ軍固有の役職・階級である「記録参謀」は、艦隊指揮官の補佐をするために、遺伝子操作により非常に高い記憶力、知能を持たされている。その代わりに体格は小さく戦闘力も低い。エキセドル・フォルモは「ゼム一級記録参謀」であるが、他の階級があるかどうかは不明。『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』においてはテレビ版と違い、巨大な大脳と機器操作用の触手を持つ外見になっており、これに近いデザインは『マクロス7』や美樹本晴彦の漫画『超時空要塞マクロス THE FIRST』にも引き継がれている。
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