布団爆弾(布団爆雷)

ページ名:布団爆弾_布団爆雷_

登録日:2022/10/30 Sun 05:07:39
更新日:2024/06/27 Thu 11:00:03NEW!
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布団爆弾とは、梱包爆薬の一種。
名前の由来はその形状が座布団に似ているからという説がある。正式名称は布団爆雷


太平洋戦争の末期に行われたフィリピン・ルソンの戦いでよく用いられたらしい。


梱包爆薬とは

簡単にいえば爆薬を袋や箱、縄などで包み、時限装置を付けた爆弾である。


元々、戦場で爆薬を扱う場合、銃弾が飛び交う中、爆破したい目標の前で成分や量を調合し、さらに使用者が爆破に巻き込まれないよう、爆発のタイミングを調整しなければならなかった。
当然ながら、一歩間違えれば爆発事故が起きかねない、非常に危険な作業であり、爆薬に関する専門的な知識を持った一部の兵士にしかできなかった。


そこで、最初から調合済みの状態で袋詰め・箱詰めにして、安全装置をつけることで誰でも扱えるようにしたのが梱包爆薬というわけである。


日本陸軍では対戦車戦闘用に使う場合、梱包爆弾・梱包爆雷と呼ばれることがあるが、使用方法は布団爆弾と異なる。しかし、見た目が似てるためややこしく、さらに後述の急造爆雷とも混同されることが多い。


構造

予め量や成分を調整した7~10kgの爆薬を、ゴムの内張りが施された麻袋で包み、ゴムなどで密封した簡素な時限爆弾であり、備えられていた起爆装置と安全装置も簡単なものだった。


爆薬の種類やその量によっていくつかのタイプがあり、また湿気に弱く保存には細心の注意が図られた。

使用法の手順


1.移動する敵戦車部隊に対し、機関銃や口径が105㎜以下の火砲による猛射を行う。機関銃はもちろん、火砲に関しても榴弾を使用しているため、流石に戦車は撃破できないが、歩兵と戦車を切り離せる*1上、目眩ましにもなるし移動速度が遅くなる。


2.発煙筒などで煙幕を炊いて戦車の視界を塞ぐ。*2


3.棒地雷(棒状の爆弾)や地雷を持った兵士が、うまく地雷を戦車に踏ませて*3キャタピラ*4を断裂させ、完全に行動不能にする。


4.続いて布団爆弾を持った兵士が戦車に近づき、爆弾を車体上に乗せ、時限式の信管を作動させる。


5.布団爆弾が起爆するまで約10秒の猶予があるため、使用者達は安全圏に退避する。


6.布団爆弾の爆発により戦車は完全に破壊される。



(※後述の急造爆雷であれば、手順2~5までを省略できる*5。)


使用の際の誤解


誤解として、「太平洋戦争末期における日本陸軍が、アメリカ軍の戦車を破壊するための特攻(自殺攻撃)に用いられた。」もしくは「布団爆弾を抱えた日本陸軍兵士が移動する敵戦車の下に潜り込んで、爆弾を爆発させ、兵士の命と引き換えに戦車を破壊した」というものがある。


しかし、布団爆弾は本来、使用者の命と引き換えに戦車を破壊する兵器だったわけではなかったし、当初は戦闘不能になった敵戦車を破壊し修理不能にする、いわば後処理のための器材であった。


(とはいえ戦車に肉薄するため死亡率は高いことにはかわりはない。特に本機材を対戦車兵器として主要する大戦末期だと、敵であるアメリカには制空権が取られているため、空には米軍の偵察機が飛び交ってる上、抗日ゲリラによる密告などの理由から待ち伏せが難しかった。)


ではなぜ、使用者の死亡が大前提の兵器と勘違いされるようになってしまったかはいくつか理由がある。


まず、敵であるアメリカ軍が爆弾の設置と装甲板の密着を防ぐため、有刺鉄線などで戦車をトゲだらけにしたからというのがある。トゲや有刺鉄線は日本軍兵士がよじ登るのを防ぐだけでなく、設置された布団爆弾と装甲板との間に空間を作る効果もある。布団爆弾は密着させないとその効果がほとんどなくなってしまうのである。


次に物資不足により布団爆弾から、構造と使用手順を簡略化した急造爆雷が使われるようになったことである。兵士不足から素人でもすぐ覚えられるように、急造爆雷を背負って戦車底面に潜り込む使用方法が想定・多用されるようになった。


3つ目の理由として急造爆雷と布団爆弾は見た目や特性が似ていたことだ。使用者側から見れば、死ぬ可能性が比較的高い布団爆弾確実に死ぬ急造爆雷とさしたる違いはないため、似たようなものであった。


これらの理由から、布団爆弾は現代で言われるような特攻兵器として扱われるようになっていった。


類似品

梱包爆雷・梱包爆弾・梱包爆薬

書籍や資料により、複数の標記がありややこしい。
土嚢袋に爆薬を詰め、安全装置と時限装置をつけた爆弾。布団爆弾同様、起爆装置を作動させると10秒後に爆発する。
布団爆弾と違うのは。投げて使うことを主眼にしていることである。
爆弾が戦車の下に転がり込むように投げつけて使ったり、天板に乗るように上から投げ落として使った。
爆弾には肩掛け紐あるいは取っ手がつき、手提げかばんのように持ち運ぶタイプなど複数の種類が存在した。



急造爆雷

布団爆弾や梱包爆弾のさらなる簡易型。
木箱に爆薬を詰め、簡素な信管をつけた爆弾。様々な種類があったようで爆薬の量によって3kg~15kgの複数のタイプがあり、例えばM4中戦車を撃破する場合は7kg級のモノを使用し、それより重装甲の戦車には10~15kg級を用いる想定だった。
布団爆弾や梱包爆弾とは違い、安全装置や時限装置が省略されている場合も多かった。
布団爆弾や梱包爆雷と違い時限式ではなく、起爆装置を起動させて1秒後に爆発する特攻仕様が多かったが、爆発するまで10秒ある仕様もあった。



円錐爆雷・半球爆雷

原始的な成形炸薬弾。別名有孔爆薬とも呼ばれる
形状は円錐爆雷は円錐型、半球爆雷は半球型とまんまである。
ドイツも第二次世界大戦初期に使っていた兵器で日本オリジナルではない。本来はトーチカを構成する、分厚い装甲板やコンクリート壁を撃ち抜くために開発された。生産された成形炸薬弾の中では威力が最も高く、条件によるが最大貫通力は200mmもあった。
円錐爆雷の起爆装置には、10秒後に爆発する通常仕様と一秒後に爆発する自爆攻撃用*6の2種類が存在し、前者は布団爆弾と同様に戦車の天板に乗せて使用するが、後者は使用者が木の棒で戦車の下に潜り込ませて使用した。
爆薬の量によっていくつかの等級が存在し、現地生産型も存在したが、このような兵器は精巧な加工技術が求められるため、現地生産品は効果が薄かったらしい。
陸の特攻兵器として有名な刺突爆雷は、2㎏型の円錐爆雷に長柄を取り付けたものである。



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  • FPSにおいて敵戦車に近づいてC4プレゼント攻撃と想像するとわかりやすい -- 名無しさん (2022-10-30 06:05:39)
  • ふとんがふっとんだ -- 名無しさん (2022-10-30 07:22:37)
  • ↑書こうと思ったら書かれてた -- 名無しさん (2022-11-06 14:31:29)

#comment

*1 戦車は視界が悪いため、火力と盾を歩兵に提供するのと引き換えに視界を補う戦術を取ることが多かった。
*2 最初の頃は、1.を飛ばして2.から始まることが多かった。その場合は夜間に攻撃が行われ、最後尾か列から孤立した戦車、あるいは地形で速度が落ちた戦車を狙った。
*3 棒地雷はキャタピラの隙間に突っ込んで起爆させる爆弾。地雷は九三式戦車地雷と呼ばれ、普段は地面に埋めて使うがここではキャタピラの上に乗せて使う。いずれもM4 中戦車のキャタピラを切断するには威力が不足しており、複数個使用が基本だった。
*4 正式名はクローラー。無限軌道または履帯と訳されることも多い。
*5 急造爆雷は特攻兵器であり、使用者は死ぬため退避の必要はないし、サッと戦車の下に潜って轢かれれば爆雷が爆発し、戦車を破壊できるので、足止めの人員も訓練も省略できる。
*6 厳密には特攻ではないが、使用法の姿勢的に、戦車に踏まれる危険性が高い。

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