SCP-1283-JP

ページ名:SCP-1283-JP

登録日:2017/12/04 (月) 15:41:51
更新日:2024/02/16 Fri 12:52:04NEW!
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向こう側の人とは、もう会えない。




『SCP-1283-JP/踏切のむこう』は、SCP Foundationに登場するオブジェクトのひとつ。
オブジェクトクラスはEuclid。


文字通り「」をテーマにした競作『死のコンテスト』の応募作品でもある。



概要

SCP-1283-JPは東京都八王子市郊外に存在する踏切。
線路を横切るあの踏切である。
丘陵を緩やかに登る小径が線路と交差した場所にある。


外見・機能は普通の踏切と違いなく、ある条件を満たしたときだけ異常性が発現する。



その条件はわりと細かいが、手順は以下のとおり。


まずこの踏切の南西、市道へと繋がる下り側方面に親しい人物と死別した経験のある人が立つ。
なお、本家記事ではこっちを「α方面」としている。逆に反対側の北東の上り側通路は「β方面」。


そして日本時間の午前2時に、この踏切の前で目を閉じ、その親しかった故人との再会を強く念じる。
この時、1283-JPの半径200m以内に他に人間がいてはならない。


すると、踏み切りの遮断機がおり、電車が通るような音が聞こえ出す。
この「電車」が行ってしまう前に、目を開けたり映像記録を録ろうとすると失敗し、中断してしまう。
その音が過ぎ去り、ずっと目を閉じていた目を開くと………



降りた遮断機の反対側に、その故人の姿が出現する。



踏み切りを挟んで、死者と再会できるというオブジェクト。
この故人はSCP-1283-JP-Aと指定され、会話も交わすことができる。
ただし、接触したり遮断機を乗り越えたりしようとしても、未知の力で阻害される。



説明したとおり、他の人間が近くにいるとこの現象は起きず、
発現中もSCP-1283-JPの半径100m範囲への他者の進入は未知の効果によりできない。


なお、電車が通り過ぎ故人が出現すると観測装置を再起動できるが、今度は録音がノイズだらけで不可能になる。


つまり、死者との会話の内容がわかるのは被験者ただ一人。
だが、被験者の報告はおおむね共通している。


記憶も性格も姿も、間違いなく、死んでしまった彼(彼女)だと証言。
自分がもう死んでしまったことを知っていて、生前には言えなかったお別れや、話を交わしたそうである。


そしておおよそ20分経つと、白い衣服を身につけた4歳前後の幼児が出現。
SCP-1283-JP-Bと定義されたこの子供は、笑顔を浮かべたまま、出現した故人を通路の奥へ引っ張っていこうとする。


この「お迎え」に、故人は別れを惜しむように抵抗することもあるが、それでも最後にはこの「お迎えの子供」と手をつないで、道の反対側へ去っていく。
そして両者が去ってしまうと遮断機が上がり、この現象は終了する。


ちなみに、一度体験した人がもう一度やっても、同じ人物が現れることはない。
再会は一度だけなのだ。



元々は「死者と話ができる踏切」という都市伝説で、地元住民やインターネットで噂になっていたのを財団が発見・確保した。
現在は財団によって人が近寄らないようにしているが、それまでは地元の人間にたびたび利用されていた様子。


収容にあたっては「この辺りは私有地です」ということにして踏切に人が近づかないようにし、入っても警備員に扮した職員が追っ払う。
他の人間が近づくとこの現象が失敗することを利用し、もしもの時は職員が区域内に立ち入って中断させることも可能。


それでも起きちゃった場合は、定点観測機器により現象を記録、そして進入者への詳細な聴取を行なう。
話が済んだら虚偽の記憶、つまり「そんな不思議現象は起きなかった」という記憶を植え付け、解放している。



実験記録

このSCPによって再会する相手は様々で、収容以前にも利用されているが、財団が把握している例は以下のとおり。
ちなみに、一人の時しか発生しない上に録音もできないので、当然ながら記録は本人の証言によるもの。



  • 記録1283-JP-1

進入者: 10代男性
出現した相手: 事故死した元交際相手


財団が収容する前にあった体験談。
知人から噂で聞いて、半信半疑ながら試してみたら、恋人が現れたのだという。
「天使に呼び戻される」までの時間、再び会話、思いの確認、最後のお別れが叶い、本人はこの現象に感謝している。


財団の監視下でもう一回やらせてみたが、再び彼女が現れることはなかった。
なお、噂の出所も確かめようとしたが、その知人も別の知り合いから聞いたとのことで、出所は未だ不明。



  • 記録1283-JP-3

進入者: 20代男性
出現した相手: 10歳前後の男児。


ここからはおそらく財団の監視下での実験例。
出現したのは病死した弟だとのこと。
外見も用意された資料と一致し、しばらくコミュニケーションをとった後、件のSCP-1283-JP-Bと共に消失した。
時間は24分32秒。



  • 記録1283-JP-4

進入者: 30代女性
出現した相手: 推定60代前後の男性


死去した父親と再会。
SCP-1283-JP-Aの話した自身や娘に関する内容は全て正確で「本人」とみなされる。
娘の近況を何度も質問し、その息災を願う言葉を繰り返したという。
財団の指示で「この踏切どうなってるの?」と質問させたが、この父親もその答えは知らなかった。


23分50秒時点で「お迎えの子」と一緒に消滅。
父親は「お迎えの子」には好意的な様子だった。



  • 記録1283-JP-7

進入者: 90代女性
出現した相手: 旧国民服を着用した推定20代前後の若年男性


今回のSCP-1283-JP-Aは戦没した夫。
相当年月が経っているが、コミュニケーションに支障はなかった。
戦後の出来事については知らなかったので、知識・記憶は死の段階で止まっている様子。


女性に対して早世を詫び、自らの愛情と再度の別れを告げ、21分58秒でやっぱりSCP-1283-JP-Bに連れられ消滅。
今回もSCP-1283-JP-Bには好意的だった。



  • 記録1283-JP-10

進入者: 40代男性、財団勤務職員
出現した相手: 60代男性


今度は財団職員自らによる実験。
出現した相手は、別のSCPの暴走で殉職した別の職員。映像をみた別の研究員も間違いないと証言している。
SCP-1283-JP-Bと共に19分18秒時点で消失したが、今回は今までとは違う目的があった様子。
亡くなった研究員はあるオブジェクトの重要な情報を持っていたのだが、今回の実験でその情報のサルベージに成功。
その情報が正しいことも後に立証された。
これ、使いようによってはかなり便利では?





……ところで、ここまで読んで何か気付かないだろうか?


ヒントは『時間』である。






では次の実験記録へ。



  • 記録1283-JP-11

進入者: 30代女性、財団勤務職員
出現した相手:30代男性



女性職員の志願による実験。
SCP-1283-JP-Aを事故死した婚約者であると主張した。


今回も疑問点を色々確認しようとしていたのだが異変が起きた。



SCP-1283-JP-Bが今までより遥かに早く出現したのだ。しかも同じ姿の「子供」がもう1体出現。


2人に引っ張られて、今回は12分20秒時点でSCP-1283-JP-Aはコミュニケーションを終了。
左右両手を繋いで、13分08秒時点で消失。



………なんかきなくさくなってきたぞ。





incident-1283-JP-02-B

で、次の実験記録だが、またまた異常が発生。
この死者の出現は午前2時に発生するので、それ以前に実験のための作業をしておく必要がある。


作業班が準備をしていたところ、深夜0時14分にSCP-1283-JP-Bが出現。しかも今度はなんと8体も。


当然、準備中なのだから人もたくさんいるし、誰かが故人を強く強く思い浮かべ、その人が出現してもいない。


どういうことなんだと、この「天使」たちに質問してみたが、彼らは笑顔で黙っているばかり。
そのまま2時になってしまい、しょうがないのでこのまま実験を始めることにした。



  • 記録1283-JP-112

進入者: 40代女性
出現した相手:20代男性



今回も今まで通り。
被験者は目を瞑ったまま故人を思い浮かべ、電車が通り過ぎてから目を開き、同時に観測機器を再稼動。



そこで確認された光景は「故人」に群がるようにして、その身体を強く引っ張る「天使」たち。
「故人」が体勢を崩し転倒すると、「お迎えの子供」は衣服や手足・頭髪などを掴み、半ば引きずるようにして移動。
結果わずか2分40秒時点で双方β方面に消失。


この間、「天使」はもちろん、引きずられる「故人」も満面の笑顔を浮かべ、談笑しているような仕草すら終始見せていた……



…………いやいやいや。



この事例の後、SCP-1283-JPの実験は延期されたが、
踏切にこの実験の関係者が近寄ると、時間や人数に関係なくSCP-1283-JP-Bが現れるようになった。


「子供」の人数は以前より増え、現在は15人まで確認されている。


依然として意思疎通には成功していない。
この子供たちは黙って踏み切りのこちら側を見つめるだけ。




満面の笑顔で。




真相


深い未練は蜜の味。



SCP-1283-JPは、都市伝説として流布されていた話を財団が聞きつけ、収容にいたったシロモノ。
財団はこの都市伝説の出所、すなわちこの踏切がいつから異常性を発揮したのか調査しているが、いまだ答えは見つからない。


だが、過去ある時期より以前の噂では、この都市伝説には今とは違う形で伝わっていたことが判明した。



元々の話では、出現した「故人」は「お迎えの子供」に連れられるのではなく「鉄道に乗って帰ってゆく」のだと。



この情報がいつどのような過程で失われたのか、いつからあの「天使」が現れたかは不明。
財団の担当班は調査を継続している。


だが、この情報から「SCP-1283-JP-B」に関するある仮説が生じた。


一つは何らかの事件が起きて「踏切」の異常性が変化し、「お迎えの子供」が登場したという可能性。
財団やら要注意団体が余計なことして異常性が変化した例はままあるので、ありえなくはない。



もう一つ。



財団は出現する子供を「SCP-1283-JP-B」、つまりSCP-1283-JPの一部と判断した。
これがそもそも間違っていたのではないかという可能性。


つまりは「お迎えの子供」は「SCP-1283-JP-B」じゃなくて、元々は違うオブジェクトだったという可能性。
この「天使たち」の正体は不明だが、踏切で起きる現象の一部などではなく、ある時からそこに住み着いた別の存在だったのではないか、という説。



現状、どちらの説も裏付けるだけの証拠はない。
が、どちらが正解であれ、もう一つ判明した事実がある。



「故人」が出現してから消滅するまでの間、録音機器には酷いノイズ音しか残らない。
しかし、財団は実験を繰り返すうちに、このノイズに共通するパターンがあると気付いた。
それを解析することで、本来の音響を推測・復元する事に成功。


そこで確認されたのは、和やかな話を交わしたという被験者の話とは全く違うものだった。



復元された音声データは現時点確認される限り その全てが、███に類似した未知の音響と、
実験当時出現していた故人のものと一致する絶え間ない絶叫だった。




SCP-1283-JP-Bは実験を繰り返すごとに、より早く、強引にSCP-1283-JP-Aを連れ去るようになった。


彼らに連れて行かれた「故人」はもう2度と出現しない。


そして何度も彼らに「故人」を与えているうちに、「子供」はますます踏切に群がるようになった。






公園で餌をもらうハトのように。








追記・修正はもう会えない誰かとの再会を願いながらお願いします


CC BY-SA 3.0に基づく表示


SCP-1283-JP - 踏切のむこう
by rkondo_001
http://ja.scp-wiki.net/scp-1283-jp


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