登録日:2017/10/14 (土) 16:39:14
更新日:2024/02/15 Thu 13:33:56NEW!
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SCP-2460は、シェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト (SCiP) のひとつである。
項目名は『Dark Satellite (暗黒衛星)』、オブジェクトクラスは当初Safeだったが、Keterに格上げされた。
概要
SCP-2460は、地球を周回している重力的アノマリーである。定義上、これは地球の自然衛星という事になる。
表向きには、SCP-2460の軌道上には空間的に散らばった、巨大なスペースデブリの塊がある事にしており、50km圏内への接近を禁止し、財団以外に観測がされないようにしている。
高度が上空395kmから1万2430kmになる楕円軌道を4時間で公転しており、その中心部には約50m×30m×15mの物体が存在する。しかしながら、この大きさにして1.24×1013kg (124億トン) という異常な程大きな質量を持つと推定される。推定される平均密度は5.51×108kg/m3であり、地球の10万倍、白色矮星と同程度とされている。
SCP-2460は、視覚的には様々な種類の物体が表面に沸いては沈む事を繰り返すように見える。これらは中心から105mより内側の範囲内で戻ってくる。
大半は宇宙塵と岩片だが、以下のようなものもある。
- SCP-2460の "表面" である約50m×30m×15mの微小天体。クレーターが存在しない。
- オールトの雲由来と推定される、直径5mの彗星核。
- 高重力下で超流動状態となっている推定される約1000トンの水素とヘリウム。
- ワニのようなミイラ化した人型生物が乗っている、全長10mの未知の宇宙船。
- それぞれ1人の人型生物を載せた90機のカプセル。ミイラ化している。
SCP-2460は可視光線の範囲内の光子に対しては、0.01という低い反射能である物の相互作用を持つ。もし光子が素通りするなら、SCP-2460は不可視である。
一方で、それ以外の波長や電荷、磁気モーメント、波動放射の一切を放出する事が無い。SCP-2460と相互作用を持つのは、他に重力のみである。
SCP-2460の性質
SCP-2460は、一見するとブラックホールに似ているが、ブラックホールではない。
その実態は量子スピン消失によってフェルミオン物質から位相転換した、電磁相互作用を持たないボソン物質の塊である。
と言っても、物理学の専門用語が乱立して、何を言っているのか分からん人の方が多いだろう。
専門用語に深入りして説明すると、専門用語の解説に専門用語が必要となってしまうため、多少 "正しさ" を犠牲にしても、なるべく平たく説明する事を試みる。
物理学に明るい人は、以下の説明部分は読み飛ばしてもOK。
説明を開く
この宇宙には、電子、陽子、中性子、光子、ニュートリノ、ヒッグス粒子のような、様々な種類の粒子が存在している。この粒子は、大きく分けて「フェルミオン (フェルミ粒子)」と「ボソン (ボース粒子)」の2種類に分類する事が出来る。
フェルミオンは、通常の物質を形作っている粒子であり、例えば原子はクォークと電子というフェルミオンで構成されている。一方でボソンは主に力を伝達する粒子であり、光子はその1つである。
フェルミオンには、「パウリの排他原理」と呼ばれる性質により、複数の粒子が同一の量子状態を占める事が出来ない。もう少し簡単に言うと、量子状態とは粒子の位置を決める "住所" のようなもので、同じ住所に2つ以上の粒子を置く事は出来ない。
どうしてそうなるのか詳しい説明は省くが、パウリの排他原理は、卵パックで卵の入る場所には1ヵ所に1個しか入らないという、当たり前のような結果を結果を導く。
もしパウリの排他原理が無ければ、同じ場所に卵は2個以上入ってしまう事になる。それどころか、幽霊のように壁をすり抜ける事すら可能である。
一方で、ボソンはこのパウリの排他原理に従わない。従って重ね合わせが可能である。
また、パウリの排他原理の他、電磁相互作用もこのような重ね合わせを排除する。
普通の物質は原子で出来ており、電子が原子核を取り囲んでいる。電子はマイナスの電気を帯びており、マイナス同士の電気は、磁石が同じ極同士で反発するように、互いに反発しあう。
物質同士をぶつけたとしてもすり抜けたり重なったりせず反発するのは、この電磁相互作用のおかげでもある。
もし電磁相互作用をしなくなれば、互いに反発する事が無くなってしまうため、すり抜ける事も可能となる。
ところで、粒子には「スピン」と呼ばれる、平たく言うと自転のような性質がある。その粒子がフェルミオンかボソンかは、このスピンの値によって区別される。
フェルミオンのスピンは、1/2のような非整数、ボソンのスピンは1のような整数であるという決まりがある。整数は0も含む為、フェルミオンのスピンはどうであれ0以外の値となる。何らかの原因でフェルミオンのスピンが0になれば、それはボソンになったとみなす事が出来る。
0以外の値から0になる事から、SCP-2460中の説明ではこれを「量子スピン消失」という用語で呼んでいる。この用語だけは架空なので、実際の物理学には存在しない事に注意しなければならない。
なお、電磁相互作用の欠如は、ボソン化や量子スピン消失でも説明がつくものではなく、財団の研究者も十分に理解していない。
一言で言うと、SCP-2460は、通常の物質を形作っているフェルミオンがボソン化、更に電磁相互作用が欠如した事によって、重ね合わせが発生した結果1つの塊となったものであり、何千もの物体が1つに重なった結果、大きな質量を獲得し、その重力によって重なった状態を維持しているのである。
SCP-2460の本体から時々物体が湧き出て見えるのは、実際には物体同士が1つの重心を中心に揺れ動いている結果である。
更に2013年2月15日、[編集済]の惨事により*1保持板付きのスチールボルトがSCP-2460に衝突した結果、見かけは変化していないが、ボルトはSCP-2460と同じくボソン物質に変化している事が判明した。
これは即ち、SCP-2460は触れたフェルミオン物質をボソン物質に変換する性質があるのである。
SCP-2460から見える物体も、そのような経緯を辿った "犠牲者" である。
一方でボルトは保持板に取り付けられた状態を維持しており、これはミリ秒未満の差においては物体の重ね合わせが発生しない事を意味している。
だから、岩塊や宇宙船のような大きな物体は、構成する部品や原子が互いに重ね合わさらず、素粒子サイズの極小の塊にならないのである。
本当の性質
SCP-2460が偶然財団の所有する軌道ユニットに接近した機会を用いて、財団はSCP-2460の接近有人探査を試みた。
その結果、SCP-2460の5km以内に接近した途端、無線通信が途絶した。通信途絶後もカメラによって観察を行ったが、エージェントは通信途絶に気付いた後、燃料噴射を行ったが、船体を無意味に通過するだけであり、結果脱出も軌道修正も行えず、中心の塊へと落下した。
哀れ、エージェントはSCP-2460の一部となってしまったのである。
この観測の結果、SCP-2460の中心から5km以内では通信が行えない事、そして通信途絶の最期の瞬間、見かけの物質密度が付近より1000倍も一気に増える事が観測された。
この観測結果は、SCP-2460は決して中心の塊が本体ではなく、その周辺部の5km圏内が全体である事を示している。
電磁相互作用の欠如が重ね合わせの理由の1つであるが、電磁相互作用は光子が伝達する力である。光子の波長の1つは電波であり、無線通信が途絶したのは相互作用の欠如と関連している。*2
また、見かけの物質密度が増えた事は、実際には何もあるようには見えない5km圏内には、不可視の物体が存在する事を意味している。
目に見える、つまり可視光線も光子の波長の1つであるため、やはり相互作用の欠如は不可視と関連しているのである。
実際のところ、SCP-2460の "見える" 部分は、全て後から取り込まれた外部由来の物体であり、SCP-2460の本体とは異なって観る事が可能である。
ただし、なぜそのように部分的ながら電磁相互作用が可能なのか、財団は理由を完全には解明出来ていない。
QK-クラスシナリオ
SCP-2460の存在は、触れた物を通常物質と相互作用させる事が出来ないボソン物質に変換する事であるが、宇宙にある限りは、せいぜい人工衛星がもしかすると衝突する恐れがあるかもという点だけで、ぱっと見での危険はないかもしれない。
しかしながら、実際にはSCP-2460は極めて危険である。
SCP-2460は、物質が重なり合っているせいで非常に重い塊である。そうなると、僅かな引力の変動で軌道が簡単に乱れやすく、地球に落下する恐れも十分にある。
先ほど挙げた人工衛星の衝突でさえ、SCP-2460の質量を増やし、軌道を変える恐れがある。先述の50km圏内立入禁止はこれが理由である。
SCP-2460が地表に落下すると、SCP-2460に触れた地球の物質はボソン化され、ボソン化されていない物質と相互作用する事が出来なくなる。つまり、そこには何もない "穴" が開いたのと同じ状態となる。
SCP-2460はそのまま中心部へと落下し、圧力が無くなった周りから、高温のマントルや核が "穴" を通じて地表へと噴き出すだろう。
これで終わりではなく、SCP-2460は反対側から出て、また地球へと落下する軌道を繰り返す。地球は自転している為、次回は別のところに "穴" を開ける。これを繰り返せば、地球は決して触れる事の出来ない高密度の岩石の塊へと変質するだろう。
これがQK-クラスシナリオ (量子縮退世界終焉シナリオ) である。
地球にSCP-2460を落下させないためには、SCP-2460を遠ざける必要がある。ところが、SCP-2460は重力でしか相互作用をする事が出来ない。
そこで財団の科学者は、直径22km程度の小惑星を誘導、どうにかしてSCP-2460を弾き飛ばす方法を提案している。
恐竜を滅ぼした隕石の2倍も直径の大きい小惑星を地球に誘導したり、ちょっとでも誘導にミスがあればSCP-2460が地球に落ちてしまうような方法を取るのだから、当然簡単な話ではない。
本当の正体
ところで、SCP-2460は不幸にも地球の周回軌道上に存在するのだろうか。
実際のところ、この質問に意味はない。なぜならば、SCP-2460は宇宙に広く存在する可能性の方が高いのである。
SCP-2460の性質は、重力でのみ観測可能で、電磁波では観る事も、自ら放射する事も無く、その全体の相互作用は気付かれないほど微弱である。
これとそっくりな物が、現実の宇宙論においても存在する。「暗黒物質」である。
暗黒物質は、実際に宇宙に存在するはずの質量の大半が、実際には観測できない事から暗黒と呼ばれる物質の事である。宇宙論最大の謎の1つの正体に対し、財団はSCP-2460は暗黒物質であるとの結論を出している。
宇宙の85%に存在する暗黒物質が、地球の近くにあるのはむしろ当然で、しかも未だにQK-クラスシナリオで滅びていない事の方が奇跡ですらある。
追記・修正はボソン化してからお願いします。
ご静聴ありがとうございました、それでは良い夜を。 ― コーデリア・アージェント博士
メタ的な考証兼蛇足
仮にSCP-2460が実在したとして、SCP-2460に作者のWrongJohnSilver氏は、実際の見かけはこの報告書の通りにはならないだろうと語っている。
仮に量子スピン消失が起きたとしたら、全ての粒子はボソンとなる。この場合、実際には物体は形を維持できず、ボース=アインシュタイン凝集と呼ばれる凝集を起こし、極めて小さな塊になる。
更に、電磁相互作用の欠如は、報告書でも語られている通り、電磁波では不可視という事になる。更に、原子同士の反発も結合も無くなってしまう。これは、SCP-2460に取り込まれた物体が形をもって見える事と矛盾する。
物理学上では、知られているフェルミオンには未発見のボソン、知られているボソンは未発見のフェルミオンのペアが存在するという「超相対性理論」と呼ばれる仮説が存在する。仮に物質がボソン化しても形を保っているとしたら、これはクォークがスクォーク (スカラークォーク) に、電子がスエクトロン (スカラー電子) に変換された結果かもしれない。しかしながら、現在の観測ではその存在は実証されておらず、存在しない可能性の方が高いと見られている。
以上のように、SCP-2460の見かけは、元々がSFにしろ、多少内容を面白くするために完全に硬派にはならず脚色している事をWrongJohnSilver氏は認めている。
SCP-2460 - Dark Satellite
by WrongJohnSilver
http://www.scp-wiki.net/scp-2460
http://ja.scp-wiki.net/scp-2460 (翻訳)
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▷ コメント欄
- なんで地球の方がこいつに引っ張られて吸い込まれないんだろう -- 名無しさん (2017-10-14 17:44:38)
- SCP-2460の質量は地球の5000億分の1、SCP-2460から5kmの距離でその重力は地球の30万分の1なので、重力的影響はほぼ無視できるレベルですね。124億トンというのはちょっとした山レベルの重さです。 -- 名無しさん (2017-10-14 18:59:46)
- あ、ごめん地球の10万倍っていうのは密度の話か -- 名無しさん (2017-10-14 19:34:20)
- 機動戦艦ナデシコの「ボソンジャンプ」の「ボソン」ってこれか。 -- 名無しさん (2017-10-16 17:50:59)
- なるほど、わからん・・・でもこういうSCPってSCPみたいでSCPだわ -- 名無しさん (2018-06-26 18:58:50)
- 恐ろしいけど、マロンがあるね -- 名無しさん (2019-10-24 19:33:34)
- 蛇足のところ、「超相対性理論」ではなく「超対称性理論」では? -- 名無しさん (2021-12-09 07:13:08)
- うーん、知的~ -- 名無しさん (2022-09-08 22:59:18)
- 理解できないということを理解した -- 名無しさん (2023-06-07 15:59:09)
#comment
*2 本文中ではこの内部から無線通信が行えない範囲をシュバルツシルト半径と呼んでいる。厳密にはSCP-2460の後ろ側に存在する背景が見えており、光子がSCP-2460を通過して届いている事から、ブラックホールのシュバルツシルト半径とは意味が異なる。
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