登録日: 2017/06/12 Mon 20:43:17
更新日:2024/02/06 Tue 13:46:19NEW!
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scp scp財団 scp foundation roget fortunefavorsbold thaumiel 航海道具 scp-2799 航海者
大航海時代は、とうの昔に終わったのさ。
SCP-2799とは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」において登録されたオブジェクトの一つである。
項目名は「The Navigator (航海者)」。
オブジェクトクラスは「Thaumiel」。皆さんご存知財団の最終兵器の一つ……なのだが、コイツについては事情が少々異なる。
というのは、他の同クラスのオブジェクトが「何らかのリスクや危険性を孕んでいて迂闊に使えない切り札」であるのに対し、このSCP-2799は「もう使えない、使っても意味がない」のである。
異常性がなくなったわけではないのでクラス変更はされていないが、何がどうなってこんなことに?
それには、ある一人の博士が関係している。
概要
まずこのオブジェクトのアイテムナンバーは、財団が作成した四つのアノマリーの集合に与えられたものである。
それぞれ真鍮で出来た、六分儀・コンパス・懐中時計・望遠鏡であり、これに財団の「秘術師」たちが特性を吹き込んで出来上がった。
……さらっと書かれているがとんでもねーな財団。
そしてこれらが持つ性質だが、一言で言うと「SCP発見装置」である。
これはThaumielを含む全てのオブジェクトの中でもかなり古いものであり、未知のオブジェクトの発見・確保のために立案された「プロジェクト・ナビゲーター」に基づいて生み出されたものである。
で、実際に何が起きるのかというと、まず活性化した四つのアノマリーは、オブジェクトを発見すると、それが収容される、または異常性を失うまで、それぞれ違う反応を示す。
六分儀は、その場から北極星を観測する。これが「未発見のオブジェクトがあったぞー!」というお知らせである。
コンパスは、現在の場所から、発見されたオブジェクトへ向かう直線方向を指し示す。
懐中時計は、そのオブジェクトがある場所の現地時間を表示する。
望遠鏡は、ある場所からそのオブジェクトが存在する地点を映し出す。
これらの情報は、メルカトル図法による地図と照らし合わせることで、確度100%でオブジェクトを発見できる、という優れもの。
さらにこれまでに173回起動され、120のオブジェクトを発見している。53は恐らく収容できなかったのか異常性がなくなっていたかなのだろうが、これだけ実績があればそら納得のThaumielである。
さらに、この時SCP-2799にもっとも近い人物ひとりは、その時示されている未発見オブジェクトに関する幻覚を見る。
この幻覚はふつう、オブジェクトに関する性質や場所、その起源についての情報を断片的に示し、収容されるまでこれが続く。
テストによれば、関連情報が得られたのは55%であるが、2回に1回情報が得られるのなら十分な確率である。
インシデント
しかし、ここまで便利なオブジェクトにも、その活躍が終わる時がやって来た。
ある年のある月のある日の午前3時45分、SCP-2799はプロジェクトの予定にない活性化を起こした。
示されている場所を調べてみると、何とサイト-19の職員寮。
施設との通信による確認を行ったが、収容違反は起きておらず、また未収容のオブジェクトも発見されなかった。
1時間ほど経ってセキュリティ担当者トムリンにより、この時SCP-2799にもっとも近かったDクラス一人に対するインタビューが行われた。
内容はこちら。
トムリン: 私が理解するところによれば、あなたは今強烈な幻覚を体験している。
D-0991: 誰もおれに尋ねなかった……誰も今まで尋ねなかった……けどやつらはそれをお構いなしにやるんだ、なあ?
トムリン: ……理解できたと思う。何を経験したか私に説明できますか?
D-0991: ひとつの経験じゃない。三つの経験。それは全部…それ… [苦しむ声]
トムリン: オーケー、落ち着いて、深呼吸して。
D-0991: 誰もかれらに尋ねなかった!かれらはただそれを取っていった。かれらはそれに全ての時間をかけた。根が深く……深く深く深く、そう岩盤みたいにだ、とにかく深く走って、それは、根は岩盤を割ってそのまわりをそっくり変えちまった。ひとつの……ひとつはそう、全ての死だ。彼ら全てのための死。もう一つ、かれらは生きてる。かれらはやる、やっちまう。かれらは今や、全ての生と死だ。それともう一つ。彼は死ぬ。
トムリン: 誰かが死ぬと?……かれら、とは誰なのです?
D-0991: 誰かじゃない。 「それ」だ。専門性を維持する。かれら… うううう!かれらは"人びとでなし"だ!人でなしは人か?あんたはどう思う!? 死してもなお? 死せずともなお? 特に、そう、死せず!
トムリン: 「死せず」とは何を意味するのですか?
D-0991: かれらは、待て待て待て、何も起こさない。最悪が起こり、何も起こらない。彼女を取り戻すが、何も、起こらない。ピラミッドの頂点から根を抜くことはできない。彼を、かれらをなすがままにさせろ。長年のツールのようになるまで、彼も名前を持たなくなるまで、顔や生まれや性や人種が変わっても決して変わらない何か。何も起こらない。何も起こらなかった。
トムリン: この他に有益な情報が得られると思えない。ボブ、これを――
D-0991: 三倍の明るさ(bright)で輝く星は永遠に燃え続ける、永遠に永遠に永遠に……正しい質問をしていない。
トムリン: 正しい質問とは?
D-0991: 誰がチキンで、それで、朝食は何だ?
結局このインタビューでは、示されたオブジェクトがなんなのかはわからなかった。
しかしその直後、事件は起きた。
サイト-19に収容されているオブジェクトの一つ、SCP-076-2「アベル」の収容違反が起きたのである。
サイト内を暴走するアベルは、この時オブジェクトEO-963を運んでいたある博士を出くわし様に殺害。
その後鎮圧されたが、数日後にEO-963を捜索していたDクラス職員がたまたまそれを手に持った結果、人格が乗っ取られる……という事案が発生。
もしや、インタビューの内容はこのことだったのか? そういえば「三倍の明るさ(ブライト)」とか言ってたな。
と思ったかどうかは定かではないが、職員はSCP-2799-4、望遠鏡を調査。
覗き込んでみると、映し出されていたのはブライト博士の顔だった。
もうお分かりだろう。
SCP-2799は、SCP-963「不死の首飾り」を示したのだ。
サイト-19でアベルの収容違反が起き、巻き込まれたブライト博士が殉職し、その精神がEO-963に移し替えられて事実上の不死となる、という未来を。
「正しい質問をしていない」とは恐らく、オブジェクトに取り込まれた博士の精神が何らかの異常をきたしていることを示唆していると考えられるが、詳細は不明。
ここで問題が一つ。
説明したとおり、SCP-2799は未発見のオブジェクトを探知し、反応を示す。
そして、そのオブジェクトが収容されるまでその反応は終わらない。
つまり、SCP-2799は、この先SCP-963となったブライト博士が収容されるか、異常性を失うまでその位置を示し続け、
それまでは、新しくオブジェクトの探知は不可能となる。
この問題に関して、O5評議会は決定を下した。
上記インシデントと、また利用可能な他のより良い技術を現在我々は保有していることを念頭に置き、プロジェクトNavigatorが即座にキャンセルされることは監督司令部の決定である。
添付書類に概説されているよう、プロジェクトに関連するすべての装置のための特別な取扱方の実施が今週末までに行われることを期待する。
関連決議にて、ジャック・ブライト博士は財団の職員としての地位を保持し、以て全ての関連した特権が与えられる。取扱方は、彼の人格のために制定されない。
SCP-963は彼の意識のみではなく、意識自体を含むオブジェクトとして指定される。
要するに、SCP-963「不死の首飾り」が、ブライト博士の人格と関連する権限を持って財団で働いている、という扱いになったのだ。
これはSCP-2799的には「収容」に当たらないようで、相変わらず使えないまま。
ついでに、問題のDクラスもずっと幻覚に囚われたまま。すぐ「終了」されたんだろうけど
そして、ブライト博士をどうにかしないとSCP-2799は再び使うことは出来ず、その「どうにかする」手段はブライト博士自身にとっても目下の最重要課題である。
SCP-2935「呼んだ?」
それに、技術の進歩によって財団の出来ることの幅も増えた。人工衛星、ネットワーク監視システム、単純な人員の増加。
SCP-2799よりも、もっと速くて確実な探索方法がたくさん出来たのならば、無理に頼る必要もない。
これらの事実を以てプロジェクト・ナビゲーターは終了、SCP-2799は別々のサイトに保管されたまま、永久に引退することになった。
探し出すために作り出された航海道具は、たどり着くことのない目的地を、今も指示している。
追記・修正はブライト博士をどうにかしてからお願いします。
SCP-2799 - The Navigator
by Roget,FortuneFavorsBold
www.scp-wiki.net/scp-2799
ja.scp-wiki.net/scp-2799(翻訳)
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▷ コメント欄
- 人知れず迷惑を掛けるブライト博士ェ… -- 名無しさん (2017-06-13 00:42:55)
- これ収容不可能系や概念系なアノマリーを目標にしたらそこから先は動かなくなってたのかな? -- 名無しさん (2017-06-13 09:26:21)
- これまでの起動回数「173」は、狙ってそうしたんだろうな。 -- 名無しさん (2017-06-13 12:09:02)
- 173という数字はSCPにとって重要なものだからな -- 名無しさん (2017-06-13 21:29:04)
- カス猿ブライト -- 名無しさん (2017-06-13 22:00:49)
- 例のリストとかで忘れられがちだけど、ブライト博士はあの首飾りから解放されることを望んでるんだぞ -- 名無しさん (2017-06-14 15:16:46)
- 一回に1個だからなあ。精度ガバガバでも索具輪みたく複数ヒットする仕様なら産廃にもならなかったろうに -- 名無しさん (2017-06-14 16:48:12)
- フェイクで収容プロトコル作ってもだめなの?? -- 名無しさん (2017-06-14 22:30:17)
- なんかさらっとDクラスの本名っぽいの露出してるんだけどいいのかこれ? -- 名無しさん (2017-07-02 02:47:29)
- ↑x2 963ha -- 名無しさん (2017-07-05 17:29:50)
- 間違えた、963にはちゃんと特別収容プロトコルも規定されてる。でも2799的には「こんなものが収容と言えるか!」ってことらしい -- 名無しさん (2017-07-05 17:32:33)
- 散々迷惑(というレベルですらないが)をかけた上に財団の業務にすら悪影響を及ぼして、なおその地位が揺るがないブライト博士...財団の性質上、幹部の弱みを握ってる程度じゃこうはいかない。何か別の理由があるのか、はたまた迷惑話の裏で財団に多大な貢献をしてるのか -- 名無しさん (2018-02-14 11:23:07)
- navigatorなら航海者じゃなくて水先案内人じゃないの? -- 名無しさん (2018-05-27 03:43:52)
- ↑2 はっきり言えば禁止リストは公式じゃないし、今回の事案はブライト博士のせいというより2799の誤作動のせいじゃないかな。 -- 名無しさん (2018-11-04 12:23:35)
- ジャック・ブライト 漸く憩う -- 名無しさん (2019-06-16 14:23:10)
- 財団一の問題児がどこにいるか常時分かるって、それはそれで便利なような? -- 名無しさん (2019-06-28 10:28:35)
- なんだかんだ出来る範囲で身内庇ってくれる財団好き 他の要注意団体なら無慈悲に終了処分が検討されそう(出来ないだろうけど) -- 名無しさん (2019-07-01 04:22:59)
- まぁ正直ブライト博士じゃなくても他の厄介なSCPを捕捉して同じ状態になりそうではある -- 名無しさん (2019-10-30 03:13:16)
- NeutralizedやExplaindにならずThaumielのままなのは、ブライト博士が“漸く憩う”事が出来たらまた使う気満々って事か…? -- 名無しさん (2019-11-18 23:32:59)
- 事故でブライト博士が行方不明になった時、このSCiPで捜索出来ると考えるとそれなりに便利かも…。 -- 名無しさん (2020-02-29 19:40:01)
- もしブライト博士をスルーしても、パッと思いついたのではリヴァイアサン辺りを捕捉して結局機能停止しそうな気がする。 -- 名無しさん (2020-03-05 00:02:34)
- ↑3 常時ブライト博士を映す望遠鏡とかブライト博士の方向を指し続けるコンパスとかは非異常なものではないのでNeutralizedやExplaindにはならないよ。safeやAOにならないのはまあその時が来たらまた使うこともあるかもねって感じじゃない -- 名無しさん (2020-03-22 01:42:00)
- 概要の上の「ある博士」で察してしまった…w -- 名無しさん (2020-05-14 01:09:52)
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