登録日:2016/05/31 Tue 07:02:32
更新日:2024/01/23 Tue 13:41:29NEW!
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ビデオドロームに死を
Death to Videodrome.
新人間よ 永遠なれ
Long live the new flesh.
■ビデオドローム
『ビデオドローム(原:VIDEO DROME)』は82年の加(カナダ)映画。*1
奇才デヴィッド・クローネンバーグの代表作の一つで、80年代カルトの代名詞の一つ。
日本人なら冒頭にヒロシマビデオのクラキ=サンが売りに来たゲイシャAV『サムライ・ドリーム』に、まず度肝を抜かれる事は間違い無い。*2
深層心理の具現化や意思の投影すら可能とするメディアと、それを利用した人格改造の危険性……と思わしきテーマを、肉体変容や肉体と機械の融合といった、クローネンバーグ独特の映像美により描く。
共感出来る人間には称賛の的だが、共感出来ない人間には全く理解不能で、公開当時も現在も賛否両論。
実際、当時の監督自身に「私にも分からん」と言わしめたほどの難物なのである。*3
ユニバーサル映画が一部資本を提供して制作されたものの、全く興業収入が振るわず、ソフト化によって漸く評価を獲得。
日本でもCICビクターからビデオソフトが発売された後に、85年に漸くミニシアター上映されたのみだったとの事。*4
しかし、本作で示された革新的、且つ核心的なテーマやガジェットは以降の様々な創作に影響を与えたと言われる。
一応、ジャンルはホラー映画。
極めて不快な、人によってはトラウマを抱えかねない場面も登場してくるのでまあ間違えてもいない。
これ以降のクローネンバーグは、同ジャンルにカテゴリーされるテーマでは原作付きの作品を撮るようになるので、そうした意味でも貴重な作品である。
当時、漸く一家庭を越えて個人所有も進んでいた「ビデオ」をタイトルに冠しているが、本作で語られている、風刺とメディア論はそのまま現代のネット世界にも適用出来るとの評価をされている。*5
【物語】
野心的な若きケーブルTVオーナーのマックス……。
彼が代表を勤めるトロントの「ch83シビックTV」では、視聴率獲得の為に暴力やセックスを売りにした過激なテーマの映像や番組を流していたが、現在ある映像だけでは、どうしてもメディアとしての限界が存在してしまう事に不満を抱いていた。
そんなマックスが近頃になって心を奪われていたのは、社のアンテナが偶然拾った「ビデオドローム」なる、本物としか思えないスナッフムービーだった。
「ビデオドローム」を目にして以来、マックスのみならず、恋人で「ch83」のパーソナリティでもあるニッキーもまた過激な行為を求めていくようになる。
マックスの指示を受けて「ビデオドローム」の出所を探っていたハーランは告げる。
「ビデオドローム」は偽装により海外からの受信と思わせていたが、実際にはピッツバーグから配信されている、と。
やがて、姿を消してしまうニッキー。
……そして、マックスもまた「ビデオドローム」の本拠地へと導かれていくのだった。
「ビデオドローム」の創始者が、かつてTV対談をしたメディア研究家のオブリビアン教授である事までは突き止めたマックスだが、娘のビアンカにはぐらかされて本人には会えないままで終わる。
……しかし、後にオブリビアン教授からのメッセージが入ったテープがマックスの元に届けられる。
そこには「ビデオドローム」の視聴により精神ばかりか肉体までもが変容していくことと、教授自身もまた「ビデオドローム」に取り込まれてしまっていたという事実が語られていた……。
【登場人物】
※ネタバレ含む。
■マックス・レン
演:ジェームズ・ウッズ
「シビックTV」の代表。
マンネリ化したメディアに飽き飽きしていた所で、偶然から目にした「ビデオドローム」の過激な映像に惹かれてゆく。
のめり込む中で現実と幻覚の境が曖昧になって行き、そして……。
似てるけど『ロボコップ』の人では無い。*6
お腹くぱぁ。
※
■ニッキー・ブランド
演:デボラ・ハリー
美貌のパーソナリティーでマックスの恋人。
過激な体験談の悩みに答えるラジオを担当している(やらせ)。
マックス以上の速度で急激に「ビデオドローム」に魅せられていゆく。
TVモニター越しのSMプレイ。
※
■ブライディ
演:ジュリー・カナー
マックスの秘書。
■マーシャ
演:ラリー・カドー
映像バイヤー。
■ビアンカ・オブリビアン
演:ソーニャ・スミッツ
オブリビアン教授の娘。
姿を消した父の代わりに現在の「ビデオドローム」(※本来は個室ビデオやネットカフェみたいなもの)の主催をしている。
しかし、現在の「ビデオドローム」の主体は彼女では無いようだが……?
■オブリビアン教授
演:ジャック・クレリー
メディアの教祖。
本人曰く、自分の名はメディア上の実体の無い記号だと言うが……。
モデルはメディア研究の第一人者マーシャル・マクルーハン。
「メディア論」の知識をある程度でも入れておけば、本作の理解の助けになるかもしれない。
■ハーラン
演:ピーター・ドゥヴォルスキー
「シビックTV」の技術者。
偶然から拾った「ビデオドローム」電波をマックスに見せる。
※
■コンベックス
演:レスリー・カールソン
メガネメーカーの社長。
※
【余談】
- 劇中で使用されているビデオテープはベータである。
※
- 「ビデオドローム」のドロームとは、空港を意味する語であり、字幕では「ビデオ闘技場」等と訳されている。
元はギリシャ語のドロモス(走行)に由来する語であり、情報の集積と高速の伝播を込めた造語であろうと予想されている。
- 驚愕の特殊効果は『狼男アメリカン』でオスカーを獲得したリック・ベイカーの手によるもの。
現在の視点から見ても感嘆の業を堪能しよう(グロ注意)。
追記修正は「ビデオドローム」に触れてからお願いします。
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*1 邦題は『ヴィデオドローム』表記の場合もある。*2 このシーンに登場する張り型は監督お手製なのだとか。
*3 監督がシナリオを書いていく内にありとあらゆる狂ったアイデアが浮かんでしまい、収拾がつかなくなった。そのため、俳優たちは自分の台詞の意味が分からず、スタッフはどの場面を撮影してるのか分からず、監督自身も撮っては破棄を繰り返すカオス状態だったという。
*4 その前に有名なヒロインの全裸に惹かれて輸入版を購入した紳士が多数いたらしい。
*5 2004年に発売されたDVDの副音声で監督は、「今観直すとすんなり理解できるので驚いた」と語っている。本作のテレビとビデオをPCとネットに置き換えれば納得いくだろう。
*6 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』の人。ウッズは本作が出世作となった。
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