インドラ/帝釈天

ページ名:インドラ_帝釈天

登録日:2015/11/17 Tue 10:22:51
更新日:2024/01/16 Tue 13:03:32NEW!
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■インドラ/帝釈天たいしゃくてん

「インドラ」は古代インドの雷神・軍神・英雄神。
ギリシャ神話のゼウスや、メソポタミアのバアル、バビロニアのマルドゥクらと共通した性格を持つ古代宗教に共通する最高位の神格であり、中国でも天を司る唯一神的神「天帝」と同一視された。
名前の大意は「主」であり、これもゼウスやバアルと共通している。その語源はインド・ヨーロッパ祖語のころまで遡る。例えば、インドラの多数ある異名の一つに「huta("呼び出された"の意)」があるが、これの語源は「gheu(e)」であり、「God」の語源でもある。
紀元前12世紀頃にインドに流入したアーリア系神話と、インダス文明を築いた土着民族の信仰が統合、習合されて纏められていったと考えられているインド最古の聖典「知の聖典リグ・ヴェーダ」では、数多の神々に捧げられた1028の讃歌の内、実に1/4にも及ぶ讃歌が彼一人に捧げられ、神々の王スレーシャと呼ばれた。


仏教では仏法守護の主神の一つ。仏教文化が中国を経由したことにより、因陀羅、帝釈天、天帝釈、天主帝釈、天帝、天皇などと漢字表記されるようになった(なお、天帝と天皇は「天皇大帝(北斗の神)」が語源と見られている)。
矢張り最高位の天部にして強力な護法、国家堅固の神であり、釈迦羅しゃから(強力な者、勇猛なる者)、梵名をそのまま音写した釈迦堤婆院因陀羅しゃかだいばいんいんだらと云った名前でも記されている。



【概要】

古代インドの雷神であり、天空神マルト神群(モンスーン)を率いる。
風神ヴァーユと共に天空の支配者として広い信仰を得た。
解りやすいのが一番である。
インドに入り込んだアーリア人の英雄神であり、喧嘩と酒に強くて女性問題もとにかく派手といった理想的なアーリア系の若者の姿で描かれた。
また何か知らんが奥さんに嫉妬された程の猿好き。
元々の土着信仰の対象となっていた非アーリア系の神々や自然災害の象徴たる怪物を退治する姿が描かれており、神々の王として君臨した*1
ヴェーダ時代は非アーリア系の神々の代表格である阿修羅アスラと戦う役目を担っていたのはインドラであり、最初はアスラの勢力が優勢だったが、最終的にはインドラが勝利を収めたと初期仏典をも含めた古聖典に描かれている。
しかし、後に堕落したバラモンに反発するかの様にインド哲学ウパニシャッドの改革派とも言うべきジャイナ教や仏教が生まれ*2、やがては非アーリア系の神話や支持をも取り込み大成した仏教がバラモンに勝った。


隣国イランに目を向けてみると、インドと同系統の神話が伝わりながらも逆に非アーリア系の神々の方が信仰の対象となった古代ペルシャ神話を基盤とするゾロアスター教では悪魔となっており、悪神アンラ・マンユの眷属に数えられている。
また、南伝仏教(上座部仏教)が伝来して土着の精霊信仰と結び付いたスリランカでもインドラは悪魔の地位へと堕ちている。


…インドでは、後に仏教に追い詰められていたヴェーダ=バラモンが息を吹き返して、敵対していた非アーリア系神話や土着信仰を吸収してヒンドゥーへと生まれ変わったが*3、新たなる信仰の主役となったのはシヴァヴィシュヌブラフマーらであり、インドラの神格は相当に落とされてしまった*4
インドラの特に知られた英雄譚としては、天空を塞ぎ雨をせき止めた悪ヴリトラ退治があり、同様の神話は矢張りバビロニアやギリシャにも残っている。
ヴリトラとは「塞ぐ物」を指し、神話内で幾度もインドラに打倒されていると云う。


工芸神トヴァシュトリの作った雷を操る武器ヴァジュラを持ち、神酒ソーマを好む。
ヴァジュラの威力は「インドラの火」と伝えられる程に凄まじく、魔神の軍勢を一撃で焼き尽くしたとされる。
後のヒンドゥーの時代にも(本人の格は下がっても)神々の最終兵器的な扱いをされていたり*5、かのラピュタにまで配備されていた事が確認されている(※「旧約聖書にある、ソドムとゴモラを滅ぼした天の火だよ。ラーマヤーナでは、インドラの矢とも言われているがね」)。


ヴァジュラは後に密教に於いて金剛杵として煩悩を打ち砕く象徴を顕す法具となり、神酒ソーマも後の時代にまで引き継がれる名として神名としても伝わっている*6
乗り物は4本の牙を持つ白象アイローヴァタである*7


仏教では帝釈天
強力なる者、神々の王たるインドラシャクロー・デーバーナーム・インドラを音写、漢訳して纏めたらしい。
中国での地位も加えて、梵天ブラフマーと並ぶ天部の最高位の神として迎え入れられた。
「リグ・ヴェーダ」に倣い、金剛杵を携えた雷神として信仰を集め、日本では葛飾柴又の帝釈天が寅さんや両さんでも見られる様に有名。
神々の王らしく統治者の守護者、仏法の守護者として人気を集め、四天王を率いる須弥山の主として知られる。
昔は王族が地方毎に居たのだろうが、今の世の中では国家元首の地位にまで登り詰めるのは容易では無い為、一般人が真の加護を受けるまでの道のりは遠そうである。


密教では十二天の一柱として東方の守護者となっているが、これは零落した後のヒンドゥーでの地位を反映した設定である。
梵天と同じくバラモンの有力な神であった事からか、初期仏典にて身投げした修行僧や優れた尸迦バラモンが帝釈天に転生したり、梵天と同様に釈尊に帰依をして説法を懇願する姿が描かれる等、本来のインド神話とも違う仏典のみの帝釈天の姿も見られる。



【姿】

髪は燃えるような赤。
全身が茶褐色、或いは金色で、エネルギッシュで美しい男神(色黒のDQN…?)。
生まれてすぐにヴリトラを退治した姿はマルドゥクを思わせる。
後のヒンドゥーでは一面四臂で描かれている。


ヴァジュラを手にアイローヴァタや二頭立ての戦車で天空を駆け巡る。


初期ヴェーダ時代にはトラブルを起こしても向かう所敵無しといった所であった。
※奥さんのシャチー=舎脂もレイプで愛を勝ち取ったと伝えられる……古代始まってんな。


……が、後には女癖の悪さから呪いで全身に千個の女陰が生じたり*8、睾丸を刈られたり、シャチーの元仲間であるアスラ退治に行っても負けたり、ガルーダに負けたり、羅刹王ラーヴァナの息子、メーガナーダ=インドラジット(インドラを制した者・因陀羅耆特)に負けたりと、割と禄な目にしか遭っていない(オ○○コに関しては改心して苦行に励み、後に千個の眼に変えて開眼している…やっぱり苦行大事)。


仏教では当初は唐衣を纏った男神として日本に伝わる。
共に釈迦如来の脇侍として付けられている梵天に似た姿だが、衣の下に鎧を身に付けている方が帝釈天である。
また、密教系の像形では本来の金剛杵を携え、白象に乗った姿で描かれており、三眼で描かれる場合もある。
前述の千目開眼の神話に倣い、全身に千の目を持つ極めて密教色の強い帝釈天も在り、空海により伝来されたと云う。



【真言】

■ノウマク サマンダボダナン シャカラヤ ソワカ(大咒)


■オン バザラヤダ ソワカ(小咒)



【種字】

■イ(金剛界)


■シャ(胎蔵界)



【余談】

日本のフィクションでは「アスラからシャチーを奪い、しかも激怒したアスラをブッ飛ばし追放した(インドラもまた後にアスラ王マハーバリに倒されたが)」という逸話から、「帝釈天」=「阿修羅族の宿敵」として書かれるケースが複数存在する。

  • 『百億の昼と千億の夜』(光瀬龍)

メインキャラの阿修羅王(美少女)の長きにわたるライバルとして登場。後半では束の間の幻視の中に現れ、阿修羅王に謎を残した。


  • 『宇宙皇子 天上編』(藤川圭介)

恐らく最もゲスい帝釈天。神話上のエピソードの他、主人公の仲間を捕まえ後宮へと浚った。


  • 『聖伝』(CLAMP)

天界の天帝から権威を簒奪し、阿修羅王の妻だったのに自分に寝返った舎脂の手引きで阿修羅族を滅ぼし、敵対者は容赦なくつぶす暴君。だがその強さに惹かれ支える家臣がいたり、劇中での凶行の数々が遠い日の「誓い」のためだったりと、「悪人」だが「ラスボス」ではない不思議な立ち位置。むしろこの話では舎脂の方がどうしようもなくゲスイ。


忍者の祖である六道仙人の息子達として大筒木アシュラと大筒木インドラが登場。
やはり兄弟で対立している。




追記・修正は悪竜退治してからお願いします。


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  • ゼウスといいトールといい、雷神にはろくでもない奴しかおらんのか・・・ -- 名無しさん (2015-11-17 11:42:07)
  • 荒々しい自然現象の中でも、雷は地震に次いで恐れられてきた存在だからな。人間が期待するのは雷の次に来る恵みの雨であって雷に打たれて死ぬことじゃないからな --   (2015-11-17 12:29:57)
  • 真・女神転生1では魔神第2位→真2では魔神最下位。もしかしてインドにおける地位の下落ぶりを反映したのか -- 名無しさん (2015-11-17 12:35:07)
  • サスケ&マダラ「呼んだ?」 -- 名無しさん (2015-11-17 12:44:29)
  • ↑うん。ロクでもない -- 名無しさん (2015-11-17 13:12:31)
  • 帝釈天へと 夕日が落ちる~♪ -- 名無しさん (2015-11-17 17:49:47)
  • アバチュだとロアルドが変身する姿。フェイスオープンしたり腕がヴァジュラに変形したりギミックが凄くカッコいい。小説版だと未登場だったのが惜しい -- 名無しさん (2015-11-17 18:16:19)
  • とにかくカマセのイメージ -- 名無しさん (2015-11-17 18:57:13)
  • ジャンプの某仏像漫画でロリっ子(舎脂)を凌辱した人か。思えば俺のNTR描写好きはここから始まったのかもしれん・・・・・・ -- 名無しさん (2015-11-17 23:27:20)
  • 洞窟に閉じ込められる五人のインドラの話が好き -- 名無しさん (2015-11-18 01:01:55)
  • ただのジョックじゃねーか! -- 名無しさん (2015-11-18 03:33:17)
  • シヴァの方が強いよね? -- 名無しさん (2015-11-18 04:47:40)
  • ↑戦闘力的にはヴィシュヌ=ガルーダ>インドラ、ラーマ>インドラジット>インドラ。ヴィシュヌ(とその化身ラーマ)とシヴァが同格と考えるとそれで合ってるな -- 名無しさん (2015-11-18 05:07:13)
  • 天空戦記シュラトに出てきた雷帝インドラが真っ先に浮かんだ。役どころはヴィシュヌの配下に見せかけたシヴァの部下だったが。 -- 名無しさん (2015-11-18 09:02:18)
  • これだから雷神系列は… -- 名無しさん (2015-11-18 10:53:07)
  • インドラ5人もいたの? -- 名無しさん (2015-11-18 22:21:48)
  • 確か彼が腹がへったところに、ウサギが自分を食えと火の中に飛び込んで、それをあわれに思ったことからまつりあげて、今の月にはウサギがいる、という伝説になったんだったか -- 名無しさん (2015-11-19 14:00:19)
  • そういえば、こいつは二本の槍を持ってるけど、正式名称あるのかな? -- 名無しさん (2016-01-07 15:49:42)
  • ぐう畜エピソードも多いシヴァやヴィシュヌより好きやで。実力者なのに変な失敗するところがなんか憎めないんだよ。 -- 名無しさん (2016-11-19 22:23:10)
  • ハイスクールDxDだとラスボス候補になりつつあるな -- 名無しさん (2017-01-26 13:12:23)
  • 帝釈天で産湯を使った人は? -- 名無しさん (2019-03-15 11:21:49)
  • 人 の 妻 寝 取 っ て ん じゃ ね え よ -- 阿修羅 (2019-07-16 11:00:06)
  • ↑娘の方だよwまあやってることはどのみちろくでもないけど -- 名無しさん (2019-07-16 11:08:45)
  • まあDQNではある -- 名無しさん (2020-04-09 17:53:31)
  • 問題児シリーズでは頼れる大人として活躍   数億クラスの借金背負ってっけどな! -- 名無しさん (2020-04-09 18:07:58)

#comment

*1 神格ではより高位に創造主ブラフマーや天の司法神ヴァルナといった神が居るが、インドラの威勢はそれをも凌いだ
*2 紀元前7~5世紀頃=仏教で云う六師外道の時代
*3 ぶっちゃけ、大乗仏教を経て密教へと姿を変えていた仏教のパクりであった
*4 叙事詩「ラーマーヤナ」に見られる様に基本的にかませ扱いされたりと、嘗ての英雄神も涙目である
*5 トンでも系のオカルト話では核兵器に準えられている
*6 酒と訳されているが正体はアッパー系の薬物と考えられている
*7 スリランカではいやらしい目つきと物理反射で知られるギリメカラになったとされる
*8 人妻に色目を使ったのが原因…未遂説もある

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