落語

ページ名:落語

登録日:2018/08/06 Mon 17:30:07
更新日:2024/03/21 Thu 13:20:37NEW!
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えー、日本には、素晴らしい文化が多くございますが、
とりわけこれからお話します伝統芸能は…、小さなお子様からお年を召した方まで幅広く愛されております…


「おーい、大家さん、大家さん!」
「なんだい、大騒ぎして。八つあんじゃないか。え?昼間からどうしたんだね」
「ほら、宇息寺の冥殿和尚、知っているだろ?」
「あぁ、あの宇息に籠ってばかりいる理屈屋の衆道家かい。あいつがどうした?」
「俺の父方があそこの檀家でよぉ、こないだ爺さんの法事に行った時、顔を合わせたんだ」
「ついでに菊門を掘られたかい?」
「バカ言っちゃいけねぇ、俺は衆道家じゃないやい。まぁ厭味ったらしい奴だからさ、ネチネチネチネチ檀家なのにろくに顔を出さないし寄付もしないことに文句をつけてきやがったのさ」
「それじゃお前が悪かろう。もう少し熱心に通ってもバチは当たらないよ」
「別に嫌味ぐらいなら聞き流すけどよ、聞き捨てならねぇのが、『お前みたない無教養な奴は落語も知らないだろうね』って一言だ。落語って言ったら江戸っ子の魂じゃねぇか。そう言われて黙っている江戸っ子がいるかよ」
「なるほど、それはそうだろうね」
「アイツは続けてこう言ったんだ。『悔しかったら落語について項目を立ててみろ』ってね。もちろん俺は『あぁいいともやってやるさ』と答えてやったさ」
「エライ。それでこそ、江戸っ子だ」
「そうだろ、偉いだろう。……だから大家さん」
「ん?なんだい?やっと話が元に戻るのかい?」
「俺に落語について教えてくれ。大見得切ったはいいけど、何にも知らねぇんだ」
「……お前はまずその安請け合いする癖を治すべきだねぇ。まぁいいさ。何にせよ、何かを学ぶ気になったのは素晴らしい。せっかくだから私の知っている限りのことは教えてやろうじゃないか」


落語の歴史

「えー、そうだねまずは歴史から行ってみようか」
「おう、俺は歴史は得意だったから、そういう話は大好物だ」
「……本当かねぇ。じゃあ、江戸の公方様を初めから順番に言ってごらんよ」
「そんなの簡単だい。えー、まずは東照神君家康公」
「お、よく知っているね。それじゃあ次は?」
「…………」
「……一人目で終わりかい。まぁそんなこったろうと思ったけどね」
「俺は過去には生きねぇ男なんだから、これでいいんだよ」
「さっきと言っていることが真逆じゃないかい。とりあえずざっと歴史について触れていくよ。面白い話を集めよう、ってぇのは人間の本能って奴でね、それこそ竹取物語の昔から似たようなことをやっている本はたくさんあった」
「なるほど、そういや俺の女房も、あっちこちで面白い話を仕入れてくるのが好きみたいだぜ」
「そりゃただの井戸端会議だよ。えー、とにかくそう言った『面白い話』を人前で演じる人も現れるようになった。その元祖が京都の安楽庵策伝って人だと言われている」
「安楽死の作戦?変な名前の人だねぇ」
「八五郎には負けると思うよ。そう言った次第で、こういった『語り芸』は人気を博していったんだけど、さて八っつあん。『語り芸』の他の例がわかるかい?」
「俺に難しいこと聞くんじゃねぇよ、さっさと先に進めてくれよ」
「少しは自分の頭で考えないかい。『講談』ってものがあるんだよ」
「……やっぱり小難しいねぇ。俺には落語だけで十分だい」
「そうかい?それじゃあこの違いは後で触れるとして、今は江戸にどうやって落語が広まったかを教えよう」
「別にそんな難しいことは知らなくてもいいのに……」
「えー、江戸っ子に落語が愛されるようになったきっかけは、何と言っても寄席の存在がある」
「寄席なら、俺も前を通ったことがあるぜ」
「まぁそうだろうね。寄席ってのはとにかく人気を博したから、江戸のあっちこっちにできたんだ。特に文政期に大きく発展したんだよ。いつ行っても同じように落語が演じられている場所、というのが重要だったんだ」
「へぇ、なるほど」
「さて、そんな風に江戸の街で大きく発展した落語だが……一応この話の設定は江戸時代ということになっているんだが、ここから少し時代を無視するよ」
「え?どういうことだい?」
「話の中の登場人物であるアンタは気にしなくていいことだ。八っつあんは大人しく聞き役に徹していればいいんだよ」
「な、なんだかよくわからねぇな……」
「わからなきゃわからないでいいからアホみたいに頷いていな。さて、お上から度々禁止令を食らいながらも、江戸っ子の味方であり続けた落語だが、幕末になり、王政復古が為されると大きく事情を買える」
「え?公方様が公方様じゃなくなるのかい?」
「タイムパラドックスが起きるから、ここだけの話にしておくんだよ。時代が明治になると、全く新しい機器が登場するようになった。レコードだ」
「た、たいむぱら……ぱら……?れ、れこーど……?」
「レコードに録音された落語は、全く新しい落語の楽しみ方を庶民に与えた。さらに時代が下り、昭和の頃になるとさらに革新的なイベントが起きる。そう、テレビ放送だ」
「??????」
「理解できない、って顔しているね。ちょうどいいからそのまましばらく黙っていな。レコードと違って噺家の顔と動きが見えるテレビは落語との相性が抜群だった。テレビ演芸ブームってのが起きたのもこの頃だね」
「…………」
「とうとう黙りこくっちまったか。まぁいいや。そして、テレビ演芸の一つの極致と言えるのが、昭和、平成、そんでもって令和の今でも絶賛放映中の人気番組『笑点』さ。この番組の影響もあって、『落語家の芸能人化』も加速度的に進み、落語家の認知度もさらに上がったって寸法さ。ハイ、お疲れ様。ざっと1000年ぐらいの歴史をグッと圧縮して語ったから、色々と足りないと思うけど、まぁ気になるところは自分で調べておくれ」
「…………ハッ!?お、大家さん!?い、今は一体……」
「安心しな、ちゃんと江戸時代だよ」


落語の特徴

「さて、ざっとした歴史を知ったところで、今度は落語の特徴について教えようか」
「落語なんて単なる笑い話じゃないのかい?」
「その考え方があさはかなんだよ。落語ってのは独特の特徴を持っている芸なんだ。えー、さっき落語の仲間として『講談』を挙げたね。それと落語の違いがわかるかい?」
「えーっと、週刊少年ジャンプを出している……」
「そりゃ集英社だよ。講談社はマガジンだ。って、なんでアンタがそんなことを知っているんだい」
「……ハッ!?お、俺今何か言っていたかい?」
「……まぁいいさ。とにかく、講談も落語も一人で語る芸なのは同じさ。だが、内容が違うんだ」
「内容?」
「内容と言うか、正確には演じ方だね。えー、講談ってのはいわゆる軍記物とか、政治にまつわる話とか、お堅い内容をこう朗々と読み上げるんだ。基本的には「会話」というのはなく、大半の部分はいわゆる「地の文」で説明される。なんていったって軍記物だからね」
「ふむふむ、堅苦しいねぇ」
「それに対して落語ってのは今まさに私たちがやっているような感じさ」
「え?どういうことだい?」
「第四の壁の外から見ればわかるさ。要は全編会話形式で進むんだ。場面転換とかでたまに状況説明が入ることはあるけどね」
「ふーん、要するに?」
「落語ってのは『一人芝居』なんだよ。自分一人でどれだけ役を演じ分けられるか、それが噺家の腕の見せ所と言ってもいいだろうね」


落語の楽しみ方

「ま、まぁ歴史や特徴なんざ知らなくても別にいいことよ。今演じられている落語を見ればそれでいいんだからな」
「お待ちよ、八っつあん。お前さん、落語の見方を知っているのかい?」
「……え?見方なんてものがあるのかい?なんだか小難しいねぇ……」
「そんな難しいことじゃないよ。まず、落語ってのは大体3つの部分に分かれる。『マクラ』『本題』『落ち』だ。落ちについては『サゲ』ということもあるね」
「ふむふむ」
「まず、マクラってのは要するに噺の導入部さ。大抵は世間話だとかの軽い笑いを取るためのものであることが多い。本題とは、主題は同じでも直接話の繋がりはないことが多いね」
「別にそんなものなくてもさっさと本題に入ればいいのに」
「そういう噺家もいないこともないがね、やっぱりマクラってのは大事だよ。上手いマクラがあると、観客と噺家の距離がグッと縮まって本題に入り込みやすくなる」
「へぇ、そういうものかい。今度から俺も話す時はマクラを意識してみようかな」
「お前さんみたいな気の短い男がそんなことできるかねぇ……とにかく、マクラで場が温まったらいよいよ本題だ。これは噺の本編だよ。噺家の実力が一番現れる場所と言ってもいいね」
「なるほどねぇ、本題を見れば実力がわかるのか」
「名言みたいに言っているけど、ごく普通の話だよ。本題の中にも細かく笑いの種を仕込みつつ、話を進めていく。そしていよいよクライマックスとなる落ちだ」
「……クライマックス?」
「おっと、この時代にはない言葉だったね。それまで上手く作って来た場の盛り上がりを最高潮にするもしらけさせるも、この落ち次第さね。落ちまで語ったら、噺家が一礼して退場するって寸法さ」
「ふーん、なるほどねぇ」
「おや、お前さん扇子を出したね」
「あぁ、暑いからね」
「その扇子は噺家にとってとても重要な存在なのさ」
「え?センスが重要なのかい?」
「……今一瞬時代が混線した気がしたねぇ。ともかく、噺家の小道具と言えば扇子と手ぬぐいなのさ」
「へぇ、こんなものが小道具になるのかい?」
「あぁ。むしろ噺家は扇子と手ぬぐい以外は使ってはいけないんだ。この二つを思いっきり活用して様々なものに見立てる手腕は是非とも一見すべきだよ」
「例えばどんな風に?」
「噺の中でそばを食べる場面があるとするだろう?そんな時、上手い噺家は扇子を箸に見立てて実に美味そうにそばをたぐるんだ。すする音までしっかりと再現してね」
「見事なものだねぇ」
「それだけじゃないよ。なんとそばとうどんでは、ちゃんと食べる時の音を変えるのさ。そういった細かい芸ができてこそ、一流の噺家と言えるだろうね」
「ほぉ、それはすごい」
「それともう一つ。顔の向きにも注目するんだ」
「どういう意味があるんだい?」
「落語ってのは立場が上の者と下の者の会話で成り立つ形式が多い。そう言った時、立場が下の者は舞台の上手(かみて)を見て話し、立場が上の者は下手(しもて)を見て話すんだ。この顔の向きの演じ分けを良く見れば、今どちらの登場人物が話しているか混乱することはないはずだよ」
「上手と下手ってのは?」
「上手は舞台の右側、下手が左側だよ。演じる側からすると逆になるんだけど、まぁ八っつあんは客席から見るだけだからこれで十分だろう」
「へぇ、そうかい」
「……おい、八っつあん。なんで私の右側に移動しようとしているんだい」
「いや、別に。ずっと大家さんが下手を見て話していたなぁと今気づいたわけじゃないですよ」
「…………」


落語の種類

「さて、そろそろお開きにするかね。最後に落語の大まかな種類を話して終わりにしようか」
「いよっ、待ってました!」
「……お前さんは終わりが近づくと盛り上がるね。まぁいいさ。まず、演じられている地方で分けると『上方落語』と『江戸落語』がある」
「それは名前からわかるぜ。上方ってのは京の方で演じられているので、江戸落語ってのがこっちで演じられている落語だろう?」
「そんなのは子供でもわかるよ。パッと見てわかる違いは、道具だよ。上方落語は『見台』『小拍子』『膝隠』という道具が追加されている」
「流石上方。豪勢だ」
「他にも言葉が違うからね。お前さんには上方はまだ少し早かろう。まずは江戸落語から始めるのがいいだろう」
「まぁそうだろうと自分でも思うよ」
「それと、制作時期によっても呼び方が変わるね。いわゆる『古典』と『新作』というのがある」
「ほぉ、そりゃもちろん新しいものの方がいいに決まってらぁな」
「お前さんは骨の髄まで江戸っ子だねぇ。そうは言っても、古典でもいいものはたくさんあるよ。例えば寿限無なんかは、誰にでも面白さがわかりやすいね。これは時代に合わせて細々と設定を変えて演じられることも多い一作だし、ある意味では常に新作落語と言える存在さ。まぁどこからどこまでを新作と呼ぶかは人にもよるがね、やはり古典というのは受け継がれ洗練された面白さがあるからこそ今まで生き残っているんだよ」
「へぇ、そういうものなのかねぇ」
「狭義で新作落語というと、カラオケやゴルフ、はてはストレス解消法やペットの話など、いわゆる戦後文化を題材にしたもんを指すことが多いかな」
「これを読んでるwiki篭りってやつでもとっつきやすそうな内容も多いんですねえ。」
「次に、内容による違いがあるよ。一番多いのは滑稽話。落語と聞いて真っ先に思いつく面白いお話のことさ」
「例えばどんなものがあるんだい?」
「有名なのは時そば目黒のさんまなんかがあるね。とにかく笑わせることに特化したお話だから初心者向けと言えるね」
「他には、どんなものがあるんだい?」
「人情噺というのがあるよ。落語は笑えるばかりじゃなくてしんみりするものもあるんだ。これの代表格は『芝浜』だね」
「ほぉ、そういうのもあるのか」
「それとね、怪談噺ってのもある。ぞぅっとするようなお話だってあるんだよ」
「や、やめてくれよ大家さん。俺はそういうのは大の苦手なんだ」
「ハハハッ、そんなに怯えなくても大丈夫さ。あと、これはお子様には聞かせられないんだが……艶笑噺ってのもある」
「延焼?」
「燃えるお話じゃなくて萌えるお話さね。大人向けの艶めかしい笑い話だよ」
「おぉ、そういうのなら大好物さ」
「とにかく、色々な種類があるから、どういう演目なのか事前に調べてから行ってみることだね」
「おう、ありがとうよ、大家さん。今から寄席に行ってみるぜ」
「あぁ、待ちなさいお前さん。さっきから気になっていたんだが、仕事はどうしたんだね」
「え?あぁ、しまった!つい、気になって(追記になって)、出席する(修正する)のを忘れていた!」


…おあとがよろしいようで。



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