ミトコンドリア・イヴ
ミトコンドリア・イヴ(みとこんどりあ・いう゛, Mitochondrial Eve)とは、分子生物学(Molecular biology)、人類遺伝学(Human genetics)においてミトコンドリアDNA(mtDNA)の系統を遡った場合に、人類共通の母系祖先とみなせる概念上の女性である(注1)。
概要
ヒトのミトコンドリアDNAは母親からその子供へと遺伝し、父親の持つミトコンドリアDNAは子供へは遺伝しない。このことから、ミトコンドリアDNAに生じる変異の起きた前後関係を特定することで、やがて「一人の女性」に収斂する(most recent common ancestor)年代が推定されている。この「人類共通の母系祖先(mt-MRCA)」を分子生物学、人類遺伝学の分野では「ミトコンドリア・イヴ」と定義している。ミトコンドリア・イヴは、16±4万年前の一人の女性だと推算されている(注2)。
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ミトコンドリア・イヴの発見
カリフォルニア大学バークレー校のレベッカ・キャンとアラン・ウィルソンのグループは、できるだけ多くの民族を含む147人のミトコンドリアDNAの塩基配列を解析した。これを元に彼らは全てのサンプルを解析し系統樹を作成した。すると、人類の系図は二つの大きな枝にわかれ、ひとつはアフリカ人のみからなる枝、もう一つはアフリカ人の一部と、その他すべての人種からなる枝であることがわかった。これはすなわち全人類に共通の祖先のうちの一人がアフリカにいたことを示唆する。このように論理的に明らかにされた古代の女性に対して名付けられた名称が「ミトコンドリア・イヴ」である。
Y染色体アダム
これに対義する概念として、父系から男系男子にのみ受け継がれるY染色体の変異の起きた前後関係を特定することで、「人類共通の父系祖先」に収斂するY染色体アダムが知られる。
注1)Rebecca L. Cann, Mark Stoneking, Allan C. Wilson (1987). "Mitochondrial DNA and human evolution"Nature 325: 31 - 36.
注2)ブライアン・サイクス『イヴの七人の娘たち』大野晶子訳、ソニー・マガジンズ、2001年11月。ISBN 4-7897-1759-3
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