Y染色体アダム
Y染色体アダム(Yせんしょくたいアダム, Y-chromosomal Adam)とは、分子生物学(Molecular biology)、人類遺伝学(Human genetics)においてY染色体の系統を遡った場合に、人類共通の父系祖先とみなせる概念上の男性である(注1)。
概要
ヒトのY染色体は男性から男性へと遺伝する。通常、Y染色体は男性の細胞核中に1本単独で存在し、相同染色体対を作らず、擬似常染色体領域と呼ばれる一部の領域を除いて、染色体の乗換えは起きない。このことから、Y染色体の特異的な領域(MSY, male specific region of Y chromosome)に生じる一塩基多型(SNPs)から、変異の起きた前後関係を特定することで、「一人の男性」に収斂する(most recent common ancestor)年代が推定されている。この「人類共通の父系祖先(Y-MRCA)」を分子生物学、人類遺伝学では「Y染色体アダム」と定義している。Y染色体アダムは、33万8000年前の一人の男性だと推算されている(注2)(注3)。
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人類滅亡の危機を乗り越えて、全世界へ拡散
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イスラエルと米国の研究者を中心とする国際研究グループが、米学術専門誌『American Journal of Human Genetics』に発表した論文によると、アフリカ東部では13万5000年~9万年前に激しい旱魃の被害にみまわれ、この旱魃の結果人口が減少、人数的に少ない集団に分離することを余儀なくされた人類は、7万年前に一時、約2000人未満の集団にまで減少したと考えられ、絶滅の危機をなんとか生き残った人類は再び集団を作り、他の大陸への移住を試みることで人口は拡大し、現在に至る繁栄の基礎を作ったと推測される(注4)。
ミトコンドリア・イヴ
これに対義する概念として、母系からのみ受け継がれるミトコンドリアDNAの変異の起きた前後関係を特定することで、「人類共通の母系祖先」に収斂するミトコンドリア・イヴが知られる。
注1)Peter A. Underhill et al. (2000). "Y chromosome sequence variation and the history of human populations"(PDF). Nature Genetics 26: 358 - 361.
注2)Karmin, Monika, et al. (2015). "A recent bottleneck of Y chromosome diversity coincides with a global change in culture"(PDF). Genome research.
注3)doi:10.1038/81685 "Y chromosome sequence variation and the history of human populations"(PDF). nature.com
注4)『人類は7万年前に絶滅寸前の状態に追い込まれていた』(2008.12.20)
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