シスター/修道女

ページ名:シスター_修道女

58790登録日:2025/05/07 Wed 18:37:40
更新日:2025/05/08 Wed 07:59:05NEW!
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『修道女』(:nun)とはキリスト教において、カトリック教会・東方教会(修道会はないが修道院はある)等の修道会*1に属して修道院で暮らす女性の修道士のことである。
(日本においては「尼」「尼僧」の訳語が当てられるが、これらは本来は仏教における「比丘尼」を指す呼称である)


『シスター』は修道女同士及び他者から修道女に対する呼びかけの際の呼称。
「ともに神に仕える姉妹」というニュアンスを持ち、他への呼びかけは「シスター・○○」*2
また、修道院長や修道会の長などの敬意を払われるべき立場にある場合には「マザー・○○」と呼ばれる*3
(英語圏では修道院長に対する呼びかけは『Mother Spriorl』『Reverend Mother』などが使われる)
○○の部分は修道名で呼ばれる場合もあるが、一般社会で活動する場合はこの部分を本名で通す人もいたり、そもそもシスターと付けずにそのまま本名で活動する人もいるなど多種多様。
本名使用禁止などといった極端な縛りなどは存在せず、世間に向けてなんと名乗るかは個々の修道会などのルールや、事務手続き上の都合に合わせて柔軟に選ばれるようだ。


なお、日本語では「修道女」と「シスター」は混同されて同義語のように扱われているが厳密には異なる概念で、


  • 修道女 :「修道院の中から出ずに祈りと観想と労働の日々に徹する」
  • シスター:「祈りと観想を重んじつつ修道院の外部に出て社会奉仕と宣教に励む」

という明確な違いが存在する。
なお、カトリックを題材としないフィクション作品におけるシスター、修道女については、こちらの項目を参照の事。





【概要】

キリスト教の教義においては、女性は「アダムを堕落させたイヴの輩」であり、女であること自体が原罪として蔑視される存在だった。
しかし「主と結婚した者」である修道女だけは(ある程度)その原罪を免ぜられた存在になれると考え、
歴史的には男女を超えた修道会全体の指導者として大きな力を持った者もたくさんいたという。


会によってプロセスは異なるが、シスターを志す者は概ね以下のような段階的な修行を積んでいく。


  • 志願期
    • 召命神の招きの確信を求め信仰を強化する期間及び修道生活における適正の見極め期間。
      会によってはこの前に準備段階を設けているところもある。

  ↓

  • 着衣式(僧服の授与)

  ↓

  • 修練期
    • より直接的な準備段階で、会憲(修道会の理念・規則)を学び使徒職*4を体験する。
      修道会毎に違いはあるが概ね約2年。
      会によってはこの前に準備段階を設けているところもある。

  ↓

  • 初誓願
    • 貞潔*5・清貧*6・従順*7の3つの誓いを初めて公に宣誓する。
      ここで正式にシスターとして認められ修道会に受け入れられる。(修道名を頂くのもこのタイミング)*8

  ↓

  • 有期誓願
    • 初誓願以降、1年毎に誓願を更新しながら他のシスターたちと同様の使途職に励んでいく。
      何年間続くは会によって異なり、この段階の前に準備段階を設けているところもある。

  ↓

  • 終生誓願
    • 生涯の奉献を誓う最終段階。キリストとの婚姻の証である指輪、もしくは十字架が授与される。
      この段階になると基本的に還俗(僧の身分を捨て世俗に戻る事)は認められなくなる。

……というのがおおまかなカトリックでのプロセスである。
その生活は朝早くから1日が始まり、祈り・生活・勤行に身を費やし、観想修道会*9であれば修道院の外には出ず勤労と祈りに徹し、
活動修道会*10であれば信徒使徒職として院外に出て各種活動に参加する。
ミッションスクールの教員などが最たる例であるが、病院や介護職などに就いている者もいる。
なお、教職に就く者であれば教員免許など、その職業に必要な資格条件は一般の人となんら変わりない。


内部において指導的な役割を果たす女子修道院長「Abess(ラテン語:Abbatissa)」は存在するが、
前述の通り修道女は女性であるが故に司祭等の聖職者の地位に就くことはできない。
よって洗礼や告解などの秘蹟(サクラメント)や典礼の主導などをすることもない。


その日常のすべては「清貧・貞潔・服従」の3つの修道誓願に基づく厳粛で禁欲的なもの。
に帰依するものとして厳しい規律を保ち、気高い純潔を守る修道女たちは、男性優位のヨーロッパ社会においても大いに尊敬されるべき存在とされていた。



……という建前になってはいるが、身の回りの女性を思い浮かべて(女性なら我が身を顧みて)みよう。


恋愛禁止・おしゃれ禁止・ぜいたく禁止・ショッピングその他お出かけ禁止・一日中厳格な規律の下に宗教活動・報酬は衣食住の保証………etc


ここまで厳しく生活を制限されながら、生きてこそいけるものの報酬も最低限という、非常にハードな職業なのである。
にもかかわらず入る修道女が絶えなかったのは決して信心深い女性が多かったからでもなく、実際は当時の事情としての家に置いておくと都合が悪い女性…例えば、いい歳だったり素行が悪かったりして結婚相手が見つからない娘、あるいは若くして未亡人となった義母など、率直に言ってみれば「これ以上は家の財産を食い潰される」「痴態を晒す前に女の園に隔離」といった厄介払い先として修道院に預けることが常態化した為と言われる。要するに時代劇の尼寺みたいなもの


多くが身分の高い家柄な上、高額な持参金も出される手前修道院も断れないのだが、そもそも家の言いつけで渋々修道院に入るようなやさぐれた女性が急に禁欲だの節制だの言われて律儀に守るわけがなく、修道院ごとの風紀にもよるが後期になると色々な意味で乱れた生活をしていた例も珍しくない。
基本的に女性しかいないせいでレズの館になっていたとか、禁欲的な生活を送っているが故に抑圧された性欲を抱えていて大騒動になったとか、「神父が修道院の修道女全員(30人以上)とハーレムを作っていた」なんて記録もあったりして、シャレにならない性的スキャンダルの温床となっている。
これは関係者や知る人ぞ知る裏話ではなく、普通に世間一般でも語られる話であり、英語で修道院を意味するNunneryという言葉は、売春宿という意味合いのスラングでもあった。


こういった状況はカトリックの腐敗の象徴として宗教改革運動の下地になったほか、近代以降の修道院改革に伴う修道院腐敗の是正を経ても完全にはなくならず、現代に至るまで「聖職者の手による児童や修道女に対しての性的虐待」という歪んだ行状で残り続けてきたが、カトリック教会の権威の傘に守られてきたため、表立って公にされることはなかった。
そして2000年代に入り、被害者と家族の告発によってこれらの問題が一大スキャンダルとして表面化し、カトリック教会の権威と信頼性に大ダメージを与える深刻な大問題として今もなお尾を引いている。


《修道服》

大体のイメージとしては、

  • 黒やといった質素な色合い
  • ゆったりとしたロングスカートのワンピース
  • 腰紐で縛る
  • ウィンプル(白い頭巾)で髪を納めて頭を覆い、白くて広い襟元を持つ
  • ヴェールをかぶる

といった感じだろうか。


ちなみに、出家の際に必ず頭を丸める仏教の尼僧ほどではないが、シスターも髪を短くする傾向がある。
これに関しては髪の手入れの手間の軽減の他、手入れのために大量の水を使うこと自体が「清貧の誓い*11」に反するという考え方からきているらしい。


修道服は基本的に手作りだが、受注生産する所もある。
また世界的傾向として、中世時代のような厳めしく古めかしいローブスタイルの修道服は動き難さや衛生、外出時の安全性などの問題から現代ではあまり見られず、活動的で動き易いものが主流となっている(修道院の中だけで生活・活動する観想修道会では昔ながらの服装に近いところが多い)
短いスカートやベールを取り入れるところが多く色調も様々なものが存在する。


外出の際も基本的には修道服である。
日本に住んでいる人の中には、修道服姿のシスターが町を歩く光景をフィクションでしか見たことない人もおられるだろうが、
これに関しては、その人が住んでいる地域に教会が多いかそうでないかによって異なり、
キリスト教の信者自体が少ない日本でも教会が多い地域であれば、修道服姿のシスターが町を歩いている光景は(そこの住民には)さほど珍しくなかったりする。


また、現代では修道服が一般の人との間に壁を作ってしまうという考え方から、修道服を着ない修道会も多いという。



【主な実在のシスター】

  • 聖ブリギッド
    • アイルランドの守護聖人で最初期の女子修道院長
  • 聖スコラスティカ
    • カトリック系修道院の基礎を作った聖ベネディクトゥスの妹
  • 聖キアラ
    • アッシジのフランチェスコの仲間、『ブラザーサン・シスタームーン』など
  • エロイーズ
    • 神学者アベラールとの恋愛事件と往復書簡で知られる
  • ヒルデガルト・フォン・ビンゲン
    • 中世ドイツの修道女。薬草学、作曲、幻視体験など多才だった
  • 聖テレサ
    • 対抗宗教改革時の一改革者。『聖テレジアの法悦』『3幕の4人の聖人』など
  • ベネデッタ・カルリーニ
    • 幻視者。同性愛疑惑裁判で知られる
  • ソル・フアナ=イネス・デ・ラ・クルス
    • スペイン詩人。『修道女フアナ・イネス』やオクタビア・パスによる伝記など
  • 聖ベルナデッタ
    • ルルドの泉の顕現体験者。『ベルナデットの歌』など
  • 聖テレーズ
    • 「小さき道」「小さき花」の哲学で知られる教会博士。『テレーズ』など)
  • マリア・フォン・トラップ
    • いわゆるトラップ一家合唱団の奥さん。『菩提樹』『サウンド・オブ・ミュージック』『トラップ一家物語』などで有名。
      • サウンドオブミュージックやトラップ一家物語では恋愛感情と修道のはざまで苦悩した末に尼僧の身分を捨てて結婚したという設定になっているが、実際には家庭教師としてトラップ家に来る前に既に還俗していた。
  • マザー・テレサ
    • 現:北マケドニア共和国・スコピエ生まれの修道女でカトリック修道会「神の愛の宣教者会」創立者。インドの貧困者救済を決心して修道女を志し、「貧しき人の中でも最も貧しい人に仕えよ」との啓示を受けてスラム街に出て貧困層の救済に尽力すると共に、紛争地帯の人道支援などの業績からノーベル平和賞を授与された。
      • その後、死後50年後という条件を大幅に短縮する異例の措置により聖人として列せられた。
  • スール・スーリール
    • ヒットソング「ドミニク」で知られるベルギーの歌手。修道会在籍中に作曲を学んでおり、自ら作詞作曲した『ドミニク』の世界的大ヒットにより「歌う尼僧」として世界的に有名となった。スール・スーリールの名は英語で「シスター・スマイル」を意味する芸名で、修道女としての本名はリュック・ガブリエル。
    • 『ドミニク』の大ヒット後まもなく世俗的名声を嫌って歌手活動を一時停止し、その後カトリックの保守性に対する批判的立場を強めた末に還俗。
      • 晩年になって芸能活動による収入に対し政府より追徴課税を課されて深刻な経済難に見舞われ、経済状況の改善のために芸能界復帰を図るも失敗、パートナーとして懇意にしていた同性の親友と心中した。
  • マリー=ルイーズ・アベ
    • ベルギーの元修道女で、修道名はシスター・ルーク。修道院入り後に祖国ベルギーがナチの侵攻を受けたことを機に還俗し、その後は祖国に献身するため看護士として働いた。
      • 彼女の半生に基づいた小説『尼僧物語』の作者ヒュームとの人生が百合的に語られることがある。
  • シスター・コリータ・ケント
    • ポップアーティスト
  • シスター・ヘレン・プレイジェーン
    • 死刑廃止論者。『デッドマン・ウォーキング』など
  • ドロレス・ハート
    • ハリウッドデビュー間もなく引退し修道院入りしたことで有名なアメリカの元女優。映画『天使にラブ・ソングを…』の主人公デロリスの名前のモデルとも言われている。
      • また画芸術科学アカデミーの会員であり、アカデミー賞選考の投票権を持つ唯一の尼僧でもある。
  • シスター・クリスティーナ
    • 2015年に現役修道女シンガーとして劇的なデビューを果たしたイタリアの修道女。




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  • シスター/修道女(属性)の項目から分割しました -- 名無しさん (2025-05-07 18:38:21)
  • カトリックを題材とする作品の場合、シスターの扱いは修道女属性ではなくこっちになるかと。 -- 名無しさん (2025-05-07 19:07:54)

#comment()

*1 基本的にプロテスタントには一部の例外を除き存在しない
*2 フランス語では「スール・○○」
*3 あくまで指導者的立場に対する尊称であり、「神に仕える姉妹」という立ち位置は変わらず、呼びかけにおいてシスターと呼ばれることも普通にある
*4 「自らを神の使徒してキリストの愛を世に広めるために携わる職」の意で、つまるところ「奉仕と宣教」のことである。
*5 生涯独身を貫き純潔を守る
*6 私欲の一切を捨てて私有財産を放棄し、質素な生活を重んじる
*7 目上の立場の言葉にキリストを見出し、(意見が正当なものである限りは)従う。
*8 ただし、修道会サレジアンシスターズ日本支部のHPでは「修練期を迎えた段階でシスターと呼ばれるようになる」との記載があるため、どのタイミングでシスターと呼ばれるようになるかは修道会によって異なる模様。
*9 修道院に生涯定住、院外への外出禁止という規則を持つ修道会で、世俗との接触を一切遮断し祈りと勤労に徹することを旨とする。1度入ると基本的に個人の意思で出ることは許されない。
*10 祈りと勤労に加えて外界での奉仕活動を旨とする修道会
*11 私欲を捨てて一切の財産を持たず質素倹約に徹する

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