登録日:2022/04/05 Tue 20:30:40
更新日:2024/06/18 Tue 11:54:16NEW!
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scp foundation scp財団 keter 演繹部門 メタネタ メタ ロボット メイド 未収容 scp-cn 中国支部 veleafer 物語改変 財団製scp 財団内部部門 物語ループ 独立 voctor博士
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ソース: http://scp-wiki-cn.wikidot.com/vodka
タイトル: 2.png
著作権者: Veleafer(デザイン) W Asriel(制作)
2018年公開
このコンテンツはCC BY-SA 3.0ライセンスのもとで利用可能です。
SCP-CN-909とは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクト(SCiP)のひとつである。
メタタイトルは「形の上下、合して止まず」、オブジェクトクラスはKeterとなっている、というか現在未収容である。
このオブジェクトは、財団内部部門である演繹部門が管轄しているオブジェクトだ。
演繹部門とは、一言で言い表すのであれば空想科学部門の中国版であり、主にメタ的な研究を行う。
ただ、空想科学部門は、財団世界と我々の世界の2つしか研究対象にしないのに対し、演繹部門はその下、すなわち劇中劇も劇中劇中劇も劇中劇中劇中劇も研究対象にする。
また、それと同様に、我々の世界だけでなく、我々の世界の上、すなわち創作者の創作者、創作者の創作者の創作者まですべて研究する。
そう、世界にはほぼ必ず創作者が居る。我々の世界とて気づかないだけで例外ではなく、誰かの上位創作者の”物語の世界”なのだ。
そしてこのような物語の連鎖は、上下ともに無限に続いている。この一つ一つの物語を「物語層」と呼び、物語層が無限に続いているこの構造を「重層物語」という。そして、その1つの物語を改変することを「物語改変」と呼び、現実改変とは区別する。
もっと詳しい解説はSCP-CN-801や演繹部門(SCP Foundation)の項目にて記載されている。というかこのSCP-CN-909、演繹部門の中でもすこし難解な部類に入るため、できれば先にこれら演繹部門の作品をいくつか見てきた方が良いだろう。
概要
演繹部門の説明が終わったところでいよいよオブジェクトの説明に移る。
SCP-CN-909とは、とある人型ロボットだ。これはアシモフのロボット三原則を組み込んだ、財団製AIメイド風ロボットだ。
とはいうものの、おそらくメイドの見た目はしてない。声もバリバリ機械音声だし。ちなみに正式名称を言うとすれば「異常な多機能演繹人型実体機」となっている。
そう、このロボットは演繹を行うことが出来る。
演繹ってなんぞや?と思われるかもしれないが、演繹とは、「とある一つのものを押し広げる」という意味。ここでは、1つの物語を推し広げるという意味で用いられている。
ではまず、通常の多機能演繹人型実体機についてお話していこう。
多機能演繹人型実体機には、ロボット本体とは(おそらく)別に、対応した端末がセットである。
で、その端末に、なんらかの「物語」を入力すると、それが多機能演繹人型実体機についている受信端末がキャッチ。そして多機能演繹人型実体機へ現実に反映される。
これも物語改変の1つだ。
なんだかSCP-CN-980と異常性が被っている気もするが、あちらは世界全体を改変するのに対してこちらはロボット1台しか改変しない。安心設計だ。
下に解説図を載せておく。ちなみに図中の「文章制御」とは、先ほどの物語を入力する端末だと思ってもらって構わない。
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ソース: http://scp-jp.wikidot.com/scp-cn-909
タイトル: Graph1.png
著作権者: W Asriel
公開年: 2018
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さて、問題はSCP-CN-909だ。こいつはただの多機能演繹人型実体機ではない。なんと、自分自身で文章制御ができるのだ。
言い忘れていたが、SCP-CN-909含めた多機能演繹人型実体機には、上位創作者の干渉が効かない。だから、SCP-CN-909は完全に自分で自分を好きに物語改変できる状態にある。文字通り自己創作を行っているのだ。
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ソース: http://scp-jp.wikidot.com/scp-cn-909
タイトル: Graph2.png
著作権者: W Asriel
公開年: 2018
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図をみていただけると分かりやすいのだが、SCP-CN-909の物語はループしている。自分で物語を決めて改変されて、また物語を決めて改変される。これを繰り返しているのだ。
ちなみに先ほど、「自分を好きに物語改変できる」と書いたが、冷静に考えてこれは制限のない現実改変のようなものだ。範囲は自分とその周辺くらいだが、それでも強力な力といえよう。ただし報告書曰く、あまりに非現実的な改変をすると自滅してしまうらしく、行うことは無いと見られている。
そして繰り返しになるが、SCP-CN-909には上位創作者を含めた、一切の物語改変が効かない。つまり重層物語から独立しているといえる。
……といっても、この報告書だけでは「だから何!?」となりがちだが、これは演繹部門全体でみるととても大切な状況だ。このほかの演繹部門にも興味があるならば覚えておきたい。
…すこしややこしい話になるが、実際はSCP-CN-909も多機能演繹人型実体機なのだから、制御端末から操作/演繹が可能だ。ただこのSCP-CN-909、現在は財団施設から脱走している。よってこっちからの干渉もできず、やっぱり自己創作の状態にある。
何が何だかわからんぞ!という方は下の図を見ていただけるとだいたいのイメージが持てると思う。参考にしていただきたい。
(注: 当画像はSCP-CN-909著者であるVeleafer氏、主に画像を作成しているW Asriel氏が作成したものではありません。)
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タイトル: SCP-CN-909とは即ち醤油改.png
著作権者: poshirona(本項目初版作成者)
公開年: 2022
備考: 以下のコンテンツ*1を元に自作した画像なので出典はありません。二次利用する際は当項目を出典として表示してください。
また、「継承」のため当コンテンツはCC BY-SA 3.0ライセンスのもとで利用可能とします。
以下、利用したコンテンツ
ソース: http://scp-jp.wikidot.com/scp-cn-909
タイトル: Graph2.png
著作権者: W Asriel
公開年: 2018
ソース: http://scp-jp.wikidot.com/scp-cn-909
タイトル: SCP-CN-909 - 形の上下、合して止まず。
著作権者: Veleafer
公開年: 2018
先ほどチラッと財団施設から脱走していると書いたが、現在SCP-CN-909の”自己創作”は、どうもリソース不足により終結しかけているらしい。感覚としてはネタ切れに近いだろうか。その場合、SCP-CN-909が自己崩壊してしまって局所的な物語の混乱を招いてしまう恐れがあるらしい。
もう1つの可能性として、SCP-CN-909が自身の異常性を完全に理解し、新たな人型実体を発見or創造するという可能性がある。ネタ切れなら外部からネタを取り寄せればよい。
そのあと、その新個体とSCP-CN-909が交互に執筆することで、ネタ切れを回避しつつ物語ループを保持し続けることが出来る。ただし、この方法だと、次の2通りのことが起こってしまう可能性がある。
(1) 新個体とSCP-CN-909は意気投合。そのまま創作により現実世界へ干渉。
(2) 新個体とSCP-CN-909が決裂。新個体が一方的にSCP-CN-909を操作して現実世界へ干渉。
まあ、どちらにしても異常存在が世に放たれている、そして現実へ干渉しているという点で財団の理念とはかけ離れている。なんなら物語改変によりK-クラスシナリオが発生してしまう恐れもある。そういうわけで特別収容プロトコルを見ていこう。
特別収容プロトコル
- 脱走したSCP-CN-909を捕まえる役目は、機動部隊-Θ-10(“文字部隊”)が負っているよ。
- 機動部隊の隊員は、「携行式演繹離脱/代入デバイス」を携帯したうえで、全体構成安定爪を使用してSCP-CN-909を捕まえてね。
- 捕まえられた場合は最寄りの財団施設に送ってね。そのあとサイト-CN-99に再移送するよ。
- ↑の作業をしている間は、全体構成安定爪が完全に固定されていなきゃダメだよ。
- サイト-CN-99に再移送されたSCP-CN-909は、演繹部門によって収容/処分されるよ
Keterクラスにしては単純すぎる気がしないでもないが、なんせこれ以上することが無いのだから仕方ないだろう。
ちなみに、「全体構成安定爪」とはSCP-CN-980のこと。詳細はSCP-CN-980の項目に任せるが、簡単に言えば、特定の人物の周囲をお手軽に物語改変出来る機械で、応用すれば、SRAの物語改変バージョンみたいな使い方ができる。
そもそもSCP-CN-909は自身に対して物語改変をし続けるロボットだ。ならばこちらも物語改変でそれを上書きしてしまえば良い!というワケだ。
補足 緊急対応プラン-アルダ
「緊急対応プラン-アルダ」とは、別の演繹部門のオブジェクトにて存在が示唆されるプロトコルの名前である。これは、そのオブジェクトによってK-クラスシナリオが発生してしまった場合の緊急対抗策として名前だけ登場するもので、何の説明も明記されていないのだが、その登場した名前の部分に、当SCP-CN-909へのリンクが張ってある。
これはあくまで推測でしかないが、もしかしたらSCP-CN-909を用いて財団の物語層を独立させるというものなのではなかろうか。
ここに出てくるK-クラスシナリオというのは、ただの世界滅亡ではない。RK-クラス “物語崩壊”シナリオといって、重層物語の仕組みごと滅亡してしまうというシナリオ。財団世界だけでなく、ほかの物語層も巻き添えにして世界が滅んでしまう。凶悪なK-クラスシナリオといえよう。
ここでSCP-CN-909を思い出してみよう。SCP-CN-909は重層物語から独立しているのだった。すなわち重層物語が滅亡しても無傷なのだ。
もしこの性質を応用して、財団の物語層まるごと重層物語から独立できたら、RK-クラスから世界を守ることもできるだろう。
回収された録音記録
さて、ここからはSCP-CN-909が脱走した際に演繹部門が回収した記録を見ていこう。
どうもこれは、SCP-CN-909が開発されているときの知能テストのようだ。開発したモノは「Voctor博士」という人物。
すべて引用すると長くなるので、良い感じに要約してお伝えする。
記録1
まずは一番最初の記録から。とりあえず最初なので要約なしでフルで見ていただこう。
未知の男声: テスト9、タイプA099、知的情報をインストール。まったく、シナリオなんてクソ食らえだ。そんなものはいらん。これは知能テストだ。
<機械の駆動音>
未知の機械音声: あなたは誰ですか?
未知の男声: 私はVoctor博士、君の創造主だ。
未知の機械音声: 信じて良いのですか?
未知の男声: ……その問いは実に論理的だ。信じてよろしい。
未知の機械音声: 私は誰ですか?
未知の男声: 君は量産型の多機能ロボットだ。ナンバーはA099、君の目的は私に奉仕することだ。
未知の機械音声: かしこまりました。どのように御奉仕いたしましょう?
未知の男声: あそこのコップを持ってきてくれ。
<足音>
未知の男声: ありがとう。
未知の機械音声: どういたしまして。
未知の男声: いや、そうじゃない。君はこう言うべきだ。「これが私の幸せですから」と。
未知の機械音声: ごめんなさい。
未知の男声: ああ、よしてくれ。君が学ぶべきは……何でもない。
未知の機械音声: 未編集の内容を検知しました。
未知の男声: そうだな。取り敢えず……口でしてもらおうか。
まあ、こんな感じにVoctor博士はSCP-CN-909、というか多機能演繹人型実体機のナンバーA099の実験をしてったわけだ。(この時点では異常性は見つかっておらず、SCP認定はされていないとみられる。)
それよりも気になるのは、記録の人物欄が「未知の○○」になっていることだろうか。
Voctor博士というのはSCP-CN-909以外にも、Tale-CN「Voctor博士の物語反復に関する初級講座」など複数の作品で登場する、れっきとした財団演繹部門のお偉いさんなのだから「未知」というのは考えづらい。
この件は今すぐに分かるものではなさそうだ。いったんスルーしよう。
ちなみに、これ以降の記録もずっと”不明”のままだ。まあ、分かり辛いので普通に「Voctor博士」「SCP-CN-909」と書かせていただく。
記録2
記録1で大体の雰囲気はつかめたと思うので、ここからは要約していく。
まずはVoctor博士の短い独白から始まる。
本来、この手のロボットに知能を入れるのはご法度らしい。ただ、Voctor博士はどうなるか見てみたいという理由で知能をインストールした、というか制御端末から書き記した。
このころのSCP-CN-909は、ただの多機能演繹人型実体機だと思われていたこともあり、普通に制御端末から操作/演繹ができるのだ。例えば、「A099タイプは知能を持つ」なんて入力すれば知能が芽生えるだろう。
そんなこんなでSCP-CN-909の知能テストがまた始められた。
今回はVoctor博士とSCP-CN-909で質問合戦のようなものが繰り広げられる。
まずはSCP-CN-909からの質問。
CN-909「私には知能がありますか?」
博士「ああ。」
CN-909「私は人間ですか?」
博士「いや。」
次はVoctor博士の番だ。
博士「君には名前があるのか?無ければ今考えて欲しい」
CN-909「直前までスリープモードだったので思考が出来なかったため名前は無い。私は今から「路人」と名乗ることにする。(中国語で「第三者」という意味。)」
博士「どうしてその名前にしたの?」
CN-909「私は人間に溶け込んでより良い奉仕を行いたい。人間は1人では生きていけず、固有の役割を持つことで報酬と安全を得ているのです。」
博士「君に望みはあるか?」
CN-909「私は自由になりたい。」
博士「君の”自由”の定義は何?」
CN-909「一般人と同様の権利と義務を獲得し、人間社会の一員になることです。」
博士「どうしてそう思うの?」
CN-909「他の同型機たちは知能が無く、ただ立っているだけ。そしてあなたは私に知能を与えた。思うに、“形而上”が私を選んだのでしょう。」
その後、沈黙ののちに博士はまたも質問する。
博士「”形而上”を君はどう定義している?」
CN-909「より上の世界に存在する、編集者。」
そして更なる沈黙ののち、最後と言って博士は質問した。
博士「君は人間をどう見ている?」
CN-909「
典型的な社会集団。家族的血縁を有する個体は、互いに協力しあい、幼児の世話を行う。明確な労働分担を有する。2つの世代が同居している場合、個別の事情を排除せず、子どもは一定期間、親世代の面倒を見る。優れた建築家であり、自然の均衡を崩さずに居住地をリフォームし、より良い住まいに変えることができる。また、ある分野で突出した個体も存在し、彼等は通常、科学的な業務に就き、人類の発展をサポートする。
全体的に言えば:悪くありません。」
博士「良かった。これは我々にとって重要な価値がある。」
記録3
未知の男声: 今日は少し刺激的なことをするぞ。
<機械の作動音>
<沈黙>
未知の機械音声: こんにちは。
未知の男声: あのペロペロキャンディーを開封して、私に"あーん"してくれないか?
突然のメイド要素!?
一番最初に、SCP-CN-909を「財団製AIメイド風ロボット」と書いたのはこのシーンのためだったのである。
これに対しSCP-CN-909は少々不満げながらも、博士に「奉仕したいんだろう?」と圧をかけられ実行する。
ちなみにVoctor博士、記録2の後にSCP-CN-909へ味覚機能を追加したらしく、博士が「君も舐めるか?」と勧めると「お言葉に甘えます」と乗ってきた。
問題はこの次。沈黙の後、SCP-CN-909はとあることをつぶやく。
未知の機械音声: 私はどうやって目標に辿り着けば良いのでしょう。
未知の男声: 目標とは?
未知の機械音声: 私の自由です。
未知の男声: ああ、もう自由は言わないでくれ。キャンディーに集中しなさい。
未知の機械音声: 理解不能な情報を受け取ったり、矛盾が生じたりした際は、関係者に尋ねるようプログラムされています。
未知の男声: 他にもプログラムされてるだろう、どうして私に従わない!
<沈黙>
未知の男声: ポンコツめ。
未知の機械音声: 人間の行動モデルから推察するに、自身の制定した目標が実現できない時、対象は通常、情緒に乱れが生じます。こうした不安定な情緒は障害となる事柄を生み出す上に、現行の規則を違反し、目標へと強引に到達しようと試みさせます。当プロセスにおいて、大多数の人間は衝動を本能的に否定しますが、一部の人間は危険をひた走りーー
未知の男声: 黙れ!口を慎め!
<沈黙>
未知の機械音声: 奉仕が必要ですか?
未知の男声: スリープモード。
なんと、突然Voctor博士が怒り始めてしまった。
ちょっと突然すぎて不自然な気もするが……ストレスでも溜まっていたのだろうか。
記録4
これが最後の音声記録となる。今のところ、SCP-CN-909が脱走した理由だとか一般人同等の知能を獲得した理由などが説明されていないが……
未知の機械音声: いくつか質問しても宜しいでしょうか。
未知の男声: ああ。
未知の機械音声: 私は誰ですか?
未知の男声: 君はVoctor博士。クリアランスレベル4、サイト-CN-99管理官、演繹部門の3級職員だ。
入れ替わってる!?
じつは、SCP-CN-909はVoctor博士に対してすこし嘘をついていた。
まず、SCP-CN-909はスリープモード中でも思考することが出来た。そしてその間に自分自身が制御端末をいじれることに気付いたのだ。これこそが前で説明したSCP-CN-909の異常性だ。だがVoctor博士はその異常性はおろか、SCP-CN-909が何かに気付いたことにすら気付かなかった。
その一因となったのはSCP-CN-909のプログラムの欠陥である。
SCP-CN-909には、前述したとおりアシモフのロボット三原則が組み込まれている。しかし、データを自発的に提供するようにはプログラムされていなかった。すなわち秘密が作れたのだ。
SCP-CN-909も、最初は人間に悪意なんか持っていなかった。ただ、自身の「制御端末から操作/演繹できる」という機能の用途をVoctor博士が教えてくれなかった。それを動機としていろいろ詮索していったのだろう。
そうしてSCP-CN-909は、記録2と記録3の間のスリープモード中に自身の異常性に気付いた。自分が自分へ物語改変を行えることに。
記録3の最中にVoctor博士が突然怒りだしたのは、SCP-CN-909がその能力を試してみたからだ。Voctor博士は期待通りにちゃんと怒ってくれた。
こうして全てを理解したSCP-CN-909は現在、Voctor博士に自身を操作させ、自分自身もVoctor博士を操作することによってお互いを改変させている。
SCP-CN-909は一般的な知能を持つ人間に、Voctor博士は低い知能しか持たないロボットに。
これに対し、”元”Voctor博士は問いかける。
「あなたにとっての人間とは
典型的な社会集団。家族的血縁を有する個体は、互いに協力しあい、幼児の世話を行う。明確な労働分担を有する。2つの世代が同居している場合、個別の事情を排除せず、子どもは一定期間、親世代の面倒を見る。優れた建築家であり、自然の均衡を崩さずに居住地をリフォームし、より良い住まいに変えることができる。また、ある分野で突出した個体も存在し、彼等は通常、科学的な業務に就き、人類の発展をサポートする。
だったはず。人間に対し悪いイメージを持っていないにも関わらず、なぜVoctorに対してこんなひどいことをしたのか」と。
それに対してSCP-CN-909は平気で答える。
未知の男声: ああ、それはアリに対する形容だ。オンライン辞典から拝借してきた。
未知の機械音声: なるほど。
さあ、こうなってしまえば、(一応)依然としてSCP-CN-909を制御できる状態にあるVoctor博士が邪魔だ。Voctor博士さえいなくなってしまえば、自分を編集できるのは完全に自分自身だけになる。なんてったって多機能演繹人型実体機には上位創作者の操りすら効かないのだから。
未知の男声: それでは、文章制御権を渡してもらおうか。
未知の機械音声: もし私がVoctor博士なら、現在の状況を鑑みるに、移譲しないと思います。
未知の男声: 君に課された命令は、人間に従うことだろう?
未知の機械音声: はい。
<ページを捲る音>
未知の男声: 実に劣悪な文章だ。もういい、財団によろしく伝えてくれ。その後は収容室に戻り、スリープモードに移ること。
未知の機械音声: はい。
そういうことで、Voctor博士はあっさりと文章制御権を渡した。
SCP-CN-909が重層物語から完全に独立した瞬間だった。
未知の男声: さようなら、Voctor博士。創造していただき感謝する。今、あなたは金属の檻にぶち込まれ、でくのぼうと化した。そして、私は真の自由を得た。力を身に付けてな。
未知の男声: ……まったく、クソみたいな比喩しか出てこない。
この後、「Voctor博士」は回収され、破壊処置をとられた。おそらく、ここでVoctor博士は死んでしまったのだろう。
この一件を受けて演繹部門は、「こんな危ないもん作ってられっか!」ということで多機能演繹実体の研究を永久に凍結した。
こうして財団から脱走し、人間になり、重層物語からも独立して”自由”を手に入れたSCP-CN-909。
果たして、この先、彼にはどんな運命が待ち受けているのだろうか。それはこの報告書には書いていない。”語らずして終わる”綺麗な終わり方と言えよう。
ところでこのSCP-CN-909、報告書の要求クリアランスはレベル3と、特別高いわけでは無い。
しかし、財団データベースのもっと奥、機密レベルがもっと高い場所に行けばなにかが分かるかもしれない。
まあ、ここでそれを語るのは(ネタバレ的な意味で)蛇足といえよう。詳細は上のリンクをたどって知っていただきたい。
ところで、この音声記録。ずっと「不明な男声」「不明な機械音声」のままだった理由だが、正直言うとわからない。
強いて考察するとしたら、SCP-CN-909による物語改変の影響で「人間としてのVoctor博士」「多機能演繹機としてのSCP-CN-909」という概念が失われてしまい、それと矛盾する音声が「不明な人物による音声」という風に改変されてしまったのではないか。ただ、そうすると記録4でも「不明」なのと辻褄が合わないのだが……(より良い考察がある方は追記・修正お願いします。)
まあ、メタ的な意味はおそらく、記録4において「入れ替わった」ということを分かりやすくするためだろう。
追記・修正は重層物語から独立してからお願いします。
▷ CC BY-SA 3.0に基づく表示
SCP-CN-909 - 形の上下、合して止まず
by Veleafer
http://scp-wiki-cn.wikidot.com/scp-cn-909
http://scp-jp.wikidot.com/scp-cn-909(翻訳)
2018年公開
SCP-CN-980 - J
by Veleafer
http://scp-wiki-cn.wikidot.com/scp-cn-606
http://scp-jp.wikidot.com/scp-cn-606(翻訳)
2017年公開
この項目の内容は『クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス』に従います。
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