ツキナシ(相棒)

ページ名:ツキナシ_相棒_

登録日:2021/08/13 Fri 15:30:49
更新日:2024/05/02 Thu 20:20:49NEW!
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真実は、消去することはできない。変えることも、隠し続けることもできない。


何故なら…神の目がしっかりとそれを捉えているからです。




「ツキナシ」とは、2006年11月15日に放送された『相棒 Season5』第6話のエピソード。
脚本:西村康昭/ 監督:近藤俊明



以下、ネタバレにご注意下さい。




【あらすじ】

一級建築士・宮澤邦彦の遺体が自宅のリビングで発見された。
宮澤の妻や近所の住人の証言から、作家の北之口秀一が容疑者として浮上するが、一課が事情を聞いても「どれも決定的な証拠にはならない」とかわされ、報道陣の取材に対して派手なパフォーマンスを披露するなど挑発的な行動を繰り返す。


だが数日後、永田沙織という女性が北之口のアリバイを証言しに現れた。
たまたま居合わせた薫が特命係の部屋で事情を聞くと、彼女は一枚の写真を提示する。
そこには犯行があった日時に北之口が自宅近くの交差点で信号待ちしている姿が写っていた。
写真には東京タワーが写っており、その日はイベントで特別な色のライトアップがされていたため事件当日なのは間違いない。
さらに背景の時計も夜10時57分を指しており、この場所から宮沢邸までは車で1時間かかる距離だったことから犯行は不可能と判断され、北之口のアリバイは証明された。


だが、完璧すぎるアリバイほど怪しいものはない。納得のいかない右京らが写真について北之口に事情を聞くと「知らない間に撮られたからよく覚えていないが、コンビニにタバコを買いに行ったときにでも撮られたものだろう」と答えるが、コンビニの防犯カメラを調べたところ北之口は写っておらず、彼が嘘をついていると確信する…




【登場人物】

■事件関係者

  • ◆北之口秀一

演:川崎麻世
作家。
直木賞を受賞する文才に加え、その端正な顔立ちから女性に絶大な人気を誇っている。
自宅には自身の著書やトロフィーが大量に置かれており、「ナルシスト」「北之口秀一記念館」と揶揄されることもあったらしい。
事件当夜、宮澤邸から逃げる姿を目撃したという近所の住民の証言、彼の履いている靴と合致する靴跡、室内に残されていた無数の指紋など複数の証拠が存在したが、
「指紋は昼間行ったときのもの」「目撃証言は見間違い」「靴だって量産品だから証拠にはならない」と犯行への関与を完全否定している。
当初は警察の要求にも一切応じようとしなかったが、何故か3日後には突然警視庁に出頭し、一課の取り調べに応じた。
理由を問われると「いつまでも犯人を逮捕できない警察に失望したから」と答え、その後報道陣の前で派手なパフォーマンスと共に潔白を訴えた。


  • ◆永田沙織

演:渋谷琴乃
商業カメラマン。
趣味で夜景を撮影した際に偶然北之口の姿を写しており、後日報道を見て北之口だと気づいたためアリバイを証言しに来たと述べている。
その後の調べで北之口との間には何の繋がりも見つからなかったため、証言は真実だと判断された。


  • ◆宮澤邦彦

演:松田ジロウ
一級建築士。
自宅のリビングで何者かに刺殺されているのを妻によって発見される。
死亡推定時刻は妻が入浴していた夜10時55分から11時15分の間と判断された。
盗られた物などは特になかったため、怨恨による殺人と考えられている。


  • ◆宮澤志穂

演:鈴木希依子
邦彦の妻。
北之口とは同じスポーツクラブに通っており、時々車で自宅まで送ってもらっていたが、事件の日の昼は突然家に上がり込んできて襲われそうになったという。
これについて北之口は「関係を迫ってきたのは志穂の方だが、彼女の心境を慮り黙っていた」と述べている。


  • ◆スポーツクラブの客

北之口と同じスポーツクラブに通っている女性客。
「宮澤さんだけじゃなく、自分たちも家まで送ってもらったことがある」「あの先生が人殺しなんてするはずがない」と北之口犯人説を真っ向から否定している。
最近、スポーツクラブでは何者かによる盗撮が問題になっているらしく、北之口を追いかけるよりそっちを調べて欲しい、と薫に頼んでいた。



■特命係

  • ◆杉下右京

演:水谷豊
ご存じ特命係係長の警部殿。
調査の中で北之口の著書を買い揃えて目を通しており、ストーリーに対し的確な解釈を披露したことから、警察を無能呼ばわりする北之口にも「あなたは信用できそうだ」と一目置かれていた。


  • ◆亀山薫

演:寺脇康文
右京の初代相棒。
北之口邸に写真やトロフィーが所狭しと飾られているのを見て「まるで北之口秀一記念館」ともらしたが、その直後北之口から全く同じフレーズを言われ、聞こえていたのかと引きつった顔をしていた。


■トリオ・ザ・捜一

◆伊丹憲一
演:川原和久
トリオ・ザ・捜一のリーダー。愛称「イタミン」。
芹沢に事件発生の報を入れる際、画面も見ずに着信履歴の一番上が芹沢だと思い込んで電話をかけ一方的に要件を話した結果、実際につながったのが薫だったため(少し前に薫が間違ってワン切りしたらしい)自ら現場に特命係を呼び込んでしまうことに。


  • ◆三浦信輔

演:大谷亮介
トリオ・ザ・捜一の一人で、一番のベテラン。
まともに画面も見ず着歴だけで電話をかける伊丹の癖は前からよく思っていなかったらしく、右京らが来た際には伊丹同様面白くない顔をしていた。
あなた2話前の事件で特命係に助けてもらったじゃないですか…


  • ◆芹沢慶二

演:山中崇史
トリオ・ザ・捜一の一人で、伊丹と亀山の後輩。
特命係が来て最高に不機嫌だった伊丹と三浦の前に「遅くなりました!」と能天気に現れたため、八つ当たりとばかりに二人がかりで頭を叩かれていた。お気の毒に。




【以下さらなるネタバレ】



































こんな都会の真ん中で、月なんか見てないわよ…



◆永田沙織


やはりあのアリバイ写真は偽造されたものだった。


沙織の写真をよく見てみると、背景のビルに月が写り込んでいるのがわかる。だが事件当日の月の入りは19時08分、写真を撮影した時間に月が写っていてはおかしいのだ。
この事実を突きつけられた沙織は観念し、写真が偽造だと認めた。
北之口の熱狂的なファンだった沙織は、隠し撮りした北之口の写真に事件当日の東京タワーを合成してアリバイをでっち上げたのである。


だが警察に連行された沙織は「自分が勝手にやっただけで先生は関係ない」「悪いことをしたとは思ってない、先生を疑う警察が間違ってる」と繰り返し、北之口もまた「僕は本当に何も知らない」「いい加減なアリバイ工作なんかされてむしろ迷惑している」と主張するばかり。
状況的には間違いなく北之口が犯人だが、決定的な証拠はない。北之口のプライドの高さにも手こずらされ、またも捜査は行き詰ってしまう。


その夜、花の里にて。
北之口の本を売った金で饅頭を買ってきた薫に「初版本なら高く売れるからもっとでかいのが買えたんですけど」と言われたたまきは「じゃあ、北之口秀一の新刊高く売れるかしら」と返す。新刊の内容に興味を持った美和子に乞われ、たまきはあらすじを語り出す。


たった一夜を共にした男女が、名前も知らず別れた後で愛に気付いて互いを捜し求め、その手段として女は男が好きだと言っていたラジオ番組に電話をかけ、二人だけがわかる方法でメッセージを送る…という内容らしい。


その話を聞いていた右京は警視庁に出頭してきたときの北之口のパフォーマンスを思い出し、「ヒントは最初から、目の前に提示されていたんです」と事件の真相を見抜く。




【以下…事件の真相】




























あんなところで、あの女にさえ会わなければ…!



◆北之口秀一
今回の事件の犯人…の一人。


彼が隠していた犯罪は殺人ではなく盗撮であった。
事件当日、志穂に体を拒まれたことにプライドを傷つけられた彼は、志穂の入浴姿を盗撮しようと宮澤邸に侵入したが、そこでこの事件のもう一人の犯人…永田沙織が宮澤邦彦を殺害する場面を目撃してしまう。
ここで警察に通報していればすぐに事件は解決できたが、そんなことをすれば当然自身の盗撮もバレてしまうため、通報など出来るはずもなかった。


以前北之口邸を訪ねた時、薫がふともらした「北之口秀一記念館」という言葉を、まるで聞いていたかのようにそのまま口にしたことで右京に盗撮の事実を見抜かれ、そこから宮澤邸に盗撮目的で侵入したことをも暴かれた。


推理を聞いた北之口は「推理小説のアイデアになりそうだ、いくらで売ってもらえますか?」ととぼけて見せたものの、右京は「あなたのメッセージの方が秀逸なアイデアだ」と返し、警視庁前で報道陣に囲まれた時の録画を見せる。


報道陣の前で彼が言った



真実は、消去することはできない。変えることも、隠し続けることもできない。
何故なら…神の目がしっかりとそれを捉えているからです。



という言葉。
何も知らなければ単なるキザな台詞にしか聞こえないが、犯人である沙織にはその真意が伝わった。
要約すれば「お前の犯行は神の目、すなわちビデオに収めた。バラされたくなければ俺のアリバイを作れ。俺たちは一蓮托生だ」。取り調べに応じるふりをして警察に出頭したのも、報道陣を利用してメッセージを送るための布石だったのである。
こうして北之口は報道を見た沙織と人知れず落ち合いアリバイ写真を作成。さらに、万一写真の合成が暴かれた時のため、沙織が熱狂的な北之口のファンであるかのように装ったのである。
だが、沙織の部屋に置かれていた北之口の著書はどれも最近刷られたものばかりだったため、その偽装はあっさりと見破られた。


また、北之口が自宅に仕掛けていたカメラとスポーツクラブに仕掛けられていたカメラが同じだったことから、スポーツクラブで問題になっていた盗撮犯の正体も彼であることを見抜かれた。


全てを暴かれた北之口は観念したかに見えたが、突如警察に電話をかけて自分が宮澤邦彦を殺したと言い出す。
何のつもりかと薫が携帯を取り上げると「自首すれば罪は軽くなるんだろ」と北之口は言い、盗撮の方が刑は軽いと薫は呆れるが、北之口はとんでもない持論を展開し始めた。



いいか、のぞきが世間に知れたら、作家北之口秀一は終わりだ、死刑だよ。


作家じゃない僕は僕じゃない。のぞきなんてプライドが許さないんだよ。


小説家でいられるなら、僕はよろこんで殺人者にでもなる。


刑務所の中だって書けるんだろ。


まあその方が、あがりものの小説家としては、かえって箔が付くんじゃないのか?



あまりに身勝手な言い分に憤慨する薫に対し、これ以上の捜査がしたいなら令状を持ってきなさい、と苦し紛れに反論したものの、令状はすでに請求済みで1時間もすれば発布されると右京に返され、最後の抵抗も無駄に終わる。
家宅捜索が行われれば、パソコン内の動画や音声データ、プリントアウトした写真にカメラや受信機…証拠はいくらでも出てくると言われ、観念した北之口は全てを自供。


あの日、宮澤邸に侵入した彼は、カーテンの隙間から室内の様子をうかがい、志穂が浴室へ向かったのを確認したところであらかじめ鍵を開けておいた浴室の窓から盗撮を始めた。
結局、すぐに志穂が窓を閉めてしまったことで盗撮は失敗。幸い姿は見られなかったためあきらめて帰ろうとしたところで沙織が邦彦を殺害する現場を目撃し、咄嗟に一部始終を撮影する。
だが、撮影に夢中になるあまりビデオカメラが窓ガラスにぶつかり、その音で沙織に気付かれたため慌てて宮澤邸から逃亡したのだった。



あの先生のぞきバレちゃったんだ…



◆永田沙織
被害者の邦彦とは不倫関係にあったが、妻の妊娠がきっかけで一方的に別れを告げられたことに腹を立て、彼を殺害するに至った。
薫から連絡を受けた伊丹らに北之口陥落を告げられたことで事情を理解、素直に逮捕された。


自供を終えた北之口は狂ったように笑いながら、「作家・北之口秀一」を自ら殺害するかのように、飾られていたトロフィーや賞状を手当たり次第に破壊し始めた。
やがて力尽きたように崩れ落ちた北之口に、薫と右京は引導を渡す。



勘違いすんなよ。罪名は、ブランドじゃねえんだよ。


ましてや罪を選ぶ権利など、あなたにあるはずがないじゃありませんか。



もはや抜け殻同然となった北之口は、薫に引きずられるようにして警察へと連行されるのだった。




【余談】

今回の話に登場した北之口秀一は、相棒Season9第3話「最後のアトリエ」において名前のみだが再登場しており、とある画家の生涯を綴った本を出版している。
彼がこの後どのような刑を食らったのかは不明で、自身が言っていた通り刑務所の中で書いているのかも知れないが、盗撮・犯人隠匿は長期間の懲役を受けるような罪ではない*1のでこの頃には出所している可能性が高く、あるいは罰金刑だけで済まされたとも考えられる。
作中の描写によれば主に恋愛小説を書いていたようだが、今回の事件で盗撮が公になったことでメインターゲットである女性からの人気は地に落ちたことだろうし、恋愛小説家から伝記等を扱う作家に転向したのかもしれない。
「作家じゃない僕は僕じゃない」との言葉通り、何があろうと作家という職にしがみつく姿はある意味天晴と言えよう。


本作の約5年前に放送された某推理アニメのエピソードに登場した犯人も今回の北之口に近い考えを持っていたが、こちらも右京と薫と同じく刑事が激怒している*2



追記・修正は報道陣を利用してメッセージを送りながらお願いします。



  • この話はよく覚えています。たしかに恋愛小説家なら盗撮していたという事実だけで終わりでしょうね。ただ後のエピソードで伝記作家に転向できたのなら文才はあったのだと思います。 -- 名無しさん (2021-08-13 18:00:57)
  • 被害者の妻の入浴シーンがエロかった -- 名無しさん (2021-08-13 20:06:23)
  • 不謹慎な話、芸人なら笑いのネタになるかもしれないけど作家が盗撮···「盗んだ」と言う悪いイメージから他者のアイディアをも「盗んだ」とも取られかねず「作家」としては死刑も同然だから「殺人罪」を選んだのは解らなくはありません。無論自分のプライドや名誉を守る為に罪を偽る等言語道断ですがね。 -- 名無しさん (2021-08-13 20:32:49)
  • 盗撮作家が名前だけの再登場していたのは知らなかった。伝記作家として再始動できたのならすごい。でもペンネーム使って別名義にした方がよくない? -- 名無しさん (2021-08-14 06:05:08)
  • ↑本人も言ってますけど、ノンフィクション作家ならむしろ箔がつくと考えたのでは。まぁスタッフのサービスでしょうが。 -- 名無しさん (2021-08-15 21:19:56)
  • 次の回である「剣聖」は加害者が可哀想に思えてくるオチだった -- 名無しさん (2021-08-15 22:13:00)
  • ↑アカレンジャーの方が伊丹さんの剣道の先生でしたね。 -- 名無しさん (2021-09-06 00:37:08)
  • ふと思ったが北之口は沙織が殺人を犯す場面をカメラに収めちゃったから下手すると彼女に口封じされる可能性もあったのによく無事ですんだな。殺人の証拠になるものを撮影しちゃった為に殺された佐木という例もあるのに -- 名無しさん (2022-09-25 10:04:25)#comment(striction)
*1 宮澤邸やスポーツクラブでの盗撮について住居侵入罪が加わる可能性もあるが。
*2 ただし、この犯人は北之口とは逆に、重い罪を逃れる為に軽い罪で逮捕されようとしていた。

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