Quatre Mains(ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q)

ページ名:Quatre Mains_ヱヴァンゲリヲン新劇場版_Q_

登録日:2021/04/29 Thu 22:09:36
更新日:2024/05/27 Mon 10:44:01NEW!
所要時間:約 8 分で読めます



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エヴァ フランス語 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:q yamaha ピアノ 挿入曲 鷺巣詩郎 碇シンジ 渚カヲル q エヴァンゲリオン ダブルエントリーシステム エヴァンゲリオン第13号機 ヱヴァンゲリヲン新劇場版 リリンの生み出した文化の極み quatre mains ピアノ曲 連弾 手の込んだ手抜き予告←意外とそうでもない シンジとカヲルの出会いが分かる項目








時に西暦2012年7月13日。



ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Qの公開日が2012年11月17日に決定してから日が浅い頃である。金曜ロードSHOW!(現:金曜ロードショー)のとなりのトトロ放送時に同作の特報映像が流れた。



前作から3年もの歳月を経ているため、エヴァファンの多くはどのような新規映像が出るのかと楽しみにしていたところであると思われる。



が………









概要

Quatre Mainsとはヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q、及びその予告にて使用された楽曲の1つ。作曲・編曲は鷺巣詩郎。演奏は宮城純子・北るみこが担当。


本編で用いられたのはQuatre Mains (bande-annonce)*1
後にフルバージョンである「Quatre Mains(à quatre mains) =3EM16=」が「Shiro SAGISU “Music from EVANGELION:3.0” YOU CAN (NOT) REDO.」に収録されている。
劇中では4パターンのアレンジで使用されており、劇伴版サントラ(Mナンバーでの収録)ではそれぞれ「3EM11_QuatreMains_E_03_mx3」、「3EM15_QuatreMains_Fun_07_edit_B」、「3EM16_QuatreMains_60sec」、「3EM21A_QuatreMains_G」の名前で収録。
題名はフランス語で「キャトルマン」と発音し、直訳すると「4本の手」という意味になる。また、音楽用語としては「4手連弾」という意味を持つ。
本作のタイトルである「Q」に合わせ、Qを頭文字に据えた名前になっているのだと思われる。



曲が示す通り、連弾によって美しいメロディが高低広い音域を軽快に、かつ流れるように展開していくのが特徴。


劇中では第1奏者(高音域)を渚カヲルが、第2奏者(低音域)を碇シンジが担当している。





特報

さて、話を冒頭部分の「Q」の特報映像の件に戻そう。
上述した日時の特報映像で初めてこの曲が世に出た。
が、その登場の仕方が余りにもブッ飛んだものだった……。




ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q



TV版 特報








P L A Y


B A C K




この表示と共に、まずはヱヴァンゲリヲン新劇場版:序のハイライトが流れ始める。


第3新東京市に攻め入る第4の使徒と紆余曲折の後に初号機に乗り、迎え撃つシンジ。


恐怖と戦いながら必死で町を救ったにも拘らず、トウジに怒りを向けられ、エヴァに乗る意味を見失う中でくすぶっていた気持ちが爆発し、第5の使徒に発狂しながら刃を向ける。


自らよりもに近いレイに戸惑う中で襲ってきた第6の使徒
迎え撃つべく立てられた「ヤシマ作戦」の発動過程でセントラルドグマ内のリリスの存在、ミサト達の覚悟、そして今までわからなかったレイの心情を知るシンジ。
作戦を通し、シンジはレイの心に迫り、レイもまた彼に対して心を開き始める…。



前 々 回



ヱヴァンゲリヲン新劇場版:


[[>ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序]]






P L A Y


B A C K




続いてのハイライトはヱヴァンゲリヲン新劇場版:破


真希波・マリ・イラストリアス式波・アスカ・ラングレーと言った新たなエヴァのパイロットが登場し、変化していく人間関係。


第8の使徒との戦闘を経て近づいていく距離だったが、アスカが3号機の起動実験中に第9の使徒に3号機ごと侵食されてしまう。
ダミーシステム起動により使徒は倒されたが、一連の出来事によりシンジは初号機を降りることを決意。


しかし彼に関係なく第10の使徒が現れ、NERVを窮地へ陥れる。
2号機獣化第2形態や零号機の特攻もむなしく、レイが第10の使徒に取り込まれてしまう。
加持との対話を経て戻ってきたシンジは使徒を相手に奮戦。
電源が切れてなおレイを助けようとする一心から初号機が擬似シン化第1覚醒形態へと昇華し、精神世界にてシンジは彼女を抱きしめる。


一方実世界では昇華した初号機によってサード・インパクトが起ころうとしていた……。



前  回



ヱヴァンゲリヲン新劇場版:


[[>ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破]]



と、2作品のハイライトが終わり、いよいよ11月17日に公開されることが決まった「Q」の新規映像が蔵出しされると思われた。



が……。



特  報



ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q





先ほどまでの勇ましい雰囲気とは全く異なり、予告内で披露されたのはおよそ30秒もの間、3DCGYAMAHA色々な意味で衝撃的な物だった……。*2




上記の放映版予告の後に公開された1分20秒版の映像でもサイケデリックな映像と共にこの曲が用いられたが、相変わらず新規の情報はなかった。
(こちらで用いられたのもbande-annonce版。)



これに対してある者はただただ唖然とし、ある者は「裏切ったな。僕の気持ちを裏切ったんだ!」と怒り、またある者は「ある意味エヴァらしい」と考察を始めるのだった……。




本編

予告では色々な意味で印象を残したこの曲だったが、本編での扱いはと言うと……。





劇中でこの曲が用いられたのは旧NERV本部にシンジが連れられた後。
14年もの歳月が経っているという事実、WILLEからの冷ややかな目、崩壊したNERV本部、様子のおかしいレイ*3、ただ13号機に乗れとだけ告げてくるゲンドウ。



これらを受け止め切る事が出来ないシンジは廃墟と化したNERVの建物の上で蹲っていた。



そんな中、階下から聞こえてくるピアノの調べと「話そうよ」と告げる声。
行ってみると……。






あ、あの。話をするんじゃないの……?


ピアノの連弾も音階の会話さ。やってみなよ。


……いいよ。僕には無理だよ。


生きていく為には新しいことを始める変化も大切だ。


簡単さ。君はこっちで、鍵盤を叩くだけでいいんだ。





呼んできた少年はシンジをピアノに座らせて、何故か弾くことを勧めてくる。
戸惑うシンジ、少年はそんな彼に対し、隣からそっと彼の手を鍵盤の上に乗せる。傍から見ると危ない人である。


困惑しながらシンジはたどたどしく音を鳴らす。
すると少年はさりげなく彼の右側に座って旋律を奏で始める。


過去にチェロを学んでいたからか、少年の主旋律の内容を驚くほどの速さで吞みこみ、低音域の伴奏を補完していくシンジ。





音が楽しい。2人ってすごいね!




少年は嬉しそうにシンジに告げ、シンジもまた、笑顔になっていく……。
それは14年の空白から目覚めてから初めてシンジが心から笑えた時でもあった。




そして時は経ち、夕暮れ……。






ありがとう。何だか久しぶりに楽しかったよ。


僕もさ。またやろう。いつでも来てよ、碇シンジ君。


うん。……あの、君は?


僕はカヲル。渚カヲル。君と同じ、運命を仕組まれた子供さ。


カヲルと名乗る素の少年は目覚めてから今に至るまでで、初めて自分の存在を肯定的に見てくれた。変わり果てた世界と非情な人間関係で傷ついたシンジにとって、カヲルの存在はまさに「救い」そのものだった。




その後、シンジは廃墟の中にぽつんと置かれたピアノの所に赴き、そして彼と連弾を重ねた。



その頃には一部が途切れていた演奏も洗練され、更に美しい演奏へと仕上がっていった。*4
晴れた大空の中を並んで走る二頭の馬の様な、軽やかな、息の合ったイメージを伴って。





どうしたらもっと上手く弾けるのかな?


上手く弾く必要はないよ。ただ気持ちのいい音を出せばいい。


じゃあ、もっといい音を出したいんだけど、どうすればいい?


反復練習さ。同じことを何度も繰り返す。


自分がいいなって感じられるまでね。それしかない。





心を通わせていくシンジとカヲル。
その後、シンジは世界の真実、そして初号機の真相などを知り、絶望の底へと叩き落されてしまうが、そんな彼にカヲルは、世界のやり直しへの可能性を提示し、彼に希望を与える。
それはまさに「自分がいいなと感じられる世界」へと戻るため、「エヴァに乗る」という行為を反復させるということ。
シンジ・カヲルはダブルエントリーシステムの採用された13号機へと搭乗。希望を掴むために、2人でエヴァを動かしていく……。






……と、本編における「Quatre Mains」はシンジとカヲルが連弾によって心を通わせていく過程で使われた曲として出てきている。
また劇中では連弾時に楽譜ノートが置かれていたが、初演奏時にはそれがなく、カヲルがシンジに自分の演奏に合わせて自由に伴奏部分を弾かせていた事を考えると、楽譜を用意して彼に弾かせたというよりも、シンジが付け加えた部分を後から書き足し、それに基づいてカヲル側の旋律にも手を入れる形で完成したという可能性も考えられる。


その他にも、連弾曲と言う形式や、「4本の腕」と言う名前が13号機のダブルエントリーシステム、そして通常の腕と胸部に格納された2本の腕の、計4本の腕があるという構造に関するヒントになっていたため、一見ただピアノ演奏を流しているだけに見える特報映像も、実際にはしっかりと予告としての役割を果たしていた事が分かったのだった。






余談

  • この曲を収録した「Shiro SAGISU “Music from EVANGELION:3.0” YOU CAN (NOT) REDO.」には「Quatre Mains(chambre cordes)*5」という弦楽バージョンがあり、こちらは同じ曲でありながらかなり豪華な雰囲気に仕上がっており、受ける印象もかなり異なる。

  • この曲は連弾曲であるため、基本的には2人で弾くものなのだが、この曲を1人用にアレンジし、それを弾くという強者も存在する。興味がある人はそちらを聞いてみるもいいかもしれない。




追記・修正は自分がいいなと思える内容が出来るまで反復練習を重ねた上でお願いいたします。

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  • 実際、何を言ってもネタバレになるような映画だし、事前宣伝では思い切って全く情報を明かさないしかないよなぁとは思う -- 名無しさん (2021-04-29 22:48:38)
  • 特報映像、すごく音楽にあってるしテンポも良くて、個人的には好き。映画の予告じゃねぇ!っていうのもすごくわかるけど(笑) -- 名無しさん (2021-05-01 10:45:44)
  • ↑↑まさか14年も間が空くなんて想像もしていなかったしな……誰もが破予告の続きをやると思っていたよあの頃は -- 名無しさん (2021-05-08 12:19:27)
  • あのピアノは持ち込まれたもの?それともピアノ趣味のゲンドウがもともと持っていたもの? -- 名無しさん (2021-06-09 21:43:50)
  • とある考察だと、ラストシーンに映る「 木とピアノ 」について → ピアニスト = 指揮者がいないピアノ + その隣に木 → しきしゃ - き = -- 名無しさん (2021-10-25 23:17:08)
  • ↑すみません、入力と送信ミスをしてしまいました。しきしゃがいない - き = ししゃがいない → 死者がいない → 誰も死なない = 「 全滅エンドを迎えた旧劇とは一転した展開になる 」という説があったのを思い出した。 -- 名無しさん (2021-10-25 23:20:45)

#comment(striction)

*1 bande-annonceは「予告編」と言う意味。
*2 一応、最後に公開日及び劇中でカヲルの発した「希望は残っているよ。どんな時にもね。」というセリフが出るが。
*3 所謂「破」まで過ごしてきた綾波レイ本人とは違うので当然なのだが。
*4 ちなみに演奏初日はピアノの椅子がカヲル用の高さに設定されていたが、シンジにとっては少し高すぎたため、以降はカヲルの方が歩み寄る形で椅子の高さが低くなっている。
*5 chamber cordesは意訳すると「室内弦楽」。

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