登録日:2011/07/06(水) 23:00:29
更新日:2023/08/10 Thu 14:48:22NEW!
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日本にも原子爆弾を作った男が居た
今、世界で原子爆弾を持っている国は8つ
オレは9番目の男
だからオレの名は……9番
●太陽を盗んだ男●
『太陽を盗んだ男(THE MAN WHO STOLE THE SUN)』は79年の日本映画。
日本屈指のアクションエンターティンメント大作にして、一時代を築いた傑作カルト映画である。
原作・脚本を担当したレナード・シュレイダーの妻チエコ・シュレイダーの思い付きである「普通の青年が原爆を作り時の政府を恐喝する。その最初の要求はTVのナイター戦を最後まで放映する事だった……」というアイディアを元に今や伝説と化した鬼才・長谷川和彦が創り上げた衝撃的なエンターティンメント作品であり、数々の逸話と毀誉褒貶に彩られた伝説を持つ事で知られている。
タイトルの『太陽を盗んだ男』は元題(The Kid who Robbed Japan)から紆余曲折を経て長谷川監督自身が決定したもの。
原子力を太陽になぞらえた印象的(詩的)なタイトルは非常に人気が高い。
【スタッフ】
監督 長谷川和彦
製作総指揮 伊地智啓
製作 山本又一郎
脚本 レナード・シュレイダー
…… 長谷川和彦
音楽 井上尭広
撮影 鈴木達麿
1979年 10月6日公開
上映時間 147分
製作 キティフィルム
配給 東宝映画
1979年キネマ旬報 日本映画ベストテン2位 キネマ旬報読者選定ベストテン1位 映画芸術誌ベストテン3位 2009年度キネマ旬報オールタイムベスト映画遺産200(日本映画篇)〈日本映画史上ベストテン〉7位……etc
※数々の受賞、逸話、伝説に就いてはとても書き切れるものでは無いので一部を除いて割愛させていただきます。
【物語】
ある中学で理科(科学)の教師をしている城戸誠は「風船ガム」と生徒からも揶揄されるやる気の無い男。
飄々として掴み所の無い彼だが、自らの知識を利用して「何か大それた事」をしようと漠然と考えていた城戸は長い時間をかけて周到な計画を練った後に、東海村の原子力発電所に忍び込み核燃料であるプルトニウムを盗み出し原子爆弾を製作するのだった。
いざ日本政府を恐喝する段階に於て、城戸は計画の実行の直前に自らが巻き込まれたバスジャック事件をほぼ独断で解決した警視庁丸の内署の山下満州男警部を自らとの交渉役として計画に巻き込む事を決める。
……国会議事堂に梅干し入りのダミーを仕掛ける事により自らの「本気」を理解させる事により最初の要求……。
「巨人×大洋」戦終了までのナイター中継*1を実現させた城戸だったが、元より原爆を作って以降の計画を練っていなかった城戸は愛聴していたラジオ番組のDJ沢井零子に助けを求め、彼女から出されたアイディア「ローリングストーンズ日本公演*2」を政府への第2の要求とするが……。
【登場人物】
- 城戸誠(演:沢田研二)
中学で理科を教える飄々とした男。
当時の演者の年齢から30歳前後と推定される。
どうにもやる気を感じない男で、生徒に先駆けて学校に遅刻して来たりするが、バスジャック事件後に何を思ったのか独自に原子爆弾を作り上げた後に9番(当時の8つの原爆保有国に続く者の意)を名乗り、日本政府を恐喝する。
「ニャロメ」と名付けた野良猫を可愛がっていたが……。
長谷川監督とは演者の初主演ドラマ『悪魔のようなあいつ』からの縁。また後に映画『夢二』で主人公を務めたとき、監督が演じた殺人者と遭遇する羽目に。
- 山下満州男(演:菅原文太)
本作のもう一人の主人公で、遠足(親睦会)帰りのバスが異常者にバスジャックされて皇居に乗り込んだ事件に於て現場指揮を執るのみならず、事件を独断行動で解決してしまう。
その警察の枠組から外れた強烈な個性を城戸に目を付けられ、後に彼と政府との交渉の場に於ける相手役として城戸に選ばれる事になる。
城戸には常に先手を取られてばかりだったが……。
ラストの死闘は最早伝説。
- 水島刑事(演:汐路章)
山下の部下。
- 石川刑事(演:石山雄大)
山下の部下。
後に未確認生物(UMA)対策特別捜査本部の本部長を務めた……訳ではない。
- 交番の警官(演:水谷豊)
原子力発電所襲撃の為に城戸に襲われ拳銃を奪われる。
……後の特命係の万年警部……かもしれない。後に城戸のリアル後輩を嫁にし(さらにその後嫁と城戸の演者も同じ舞台で共演した)、城戸のリアルでのバンド仲間が警部の元上司役、城戸の演者の2人目の妻の弟が鑑識役になっている。
演者は自身の出世作ともなった長谷川監督の前作で主演を務めた縁からの出演。
- 沢井零子(演:池上希実子)
本作のヒロイン。
城戸も愛聴するラジオの美人DJ。
決め台詞は「ダメなあなたとダメなわたしの共犯放送」
深夜帯で活躍していたが、昼間に公開放送をした際に目的を失いコンタクトを取って来た城戸に興味を持ち、彼に「ローリングストーンズ日本公演」のアイディアを与える事になる。
……後に実際に顔を合わせた城戸自身に惹かれ、彼の逃亡を幇助すると共に自らの通称でもあった「ゼロ」を名乗り事件の共犯者となる。
- 浅井(演:風間杜夫)
零子のラジオのプロデューサーを務める。
当初は城戸の事をイカれたファンと捉え相手にしない様にとの注意を与えていたが、事件を知ってからは寧ろ城戸の手助けをしようと言う零子に賛同する様になる。
- 田中警察庁長官(演:北村和夫)
- 仲山総理大臣秘書(演:神山繁)
- 田中の部下・江川(江角英明)
- サラ金業者(演:小松方正)
- サラ金の回収員(演:西田敏行)
- 電電公社技師(演:草薙幸二郎)
- アナウンサー(演:林美雄)
- 山崎留吉(演:伊藤雄之助)
遠足帰りのバスをジャックした軍服姿の男。
機関銃片手に生徒と城戸を人質に皇居に乗り込み天皇との面会を要求する。
演じた伊藤雄之助は、ゴテ雄の異名を取った日本映画史に名を残す怪優中の怪優である。
【注目の場面】
●皇居でのバスジャック事件の顛末
●原爆完成を祝いガイガーカウンターをマイクに歌うジュリー(アドリブ)
●日本映画では後にも先にも有り得ないレベルの首都高のカーチェイス
●銀座でゲリラ撮影でばら蒔かれた五億円(無論偽物ですが)
●ヘリコプターからとんでもない高さから飛び下りる山下警部役のスタントマン(20mを優に超える)
●ラストの科学技術館屋上での城戸と山下警部の死闘(正に死闘)
【ゲリラ撮影】
※本作ではゲリラ撮影……と云うか逮捕覚悟で本物を利用して撮影されたシーンが多い。
●皇居へのバス突入シーン
※しかし……決死の覚悟にも関わらず警官の対応がのんびりしていた為、映画では早回しで使用されている。
●変装した城戸が国会議事堂に潜入するシーン
※妊婦に化けた(腹に原爆を抱えた)城戸が国会議事堂に入場するシーン。
何と建物、警備員は本物で隠し撮りされた。
●ビルから札束をバラまくシーン
※エキストラ確保を兼ねて実際の「メーデー」に合わせて撮影された。
【結末】
原爆制作費用として借りた金の返済を迫られた城戸は、とうとう第三の要求として「現金五億円」を政府に伝える。
現金受け渡し現場に9番が現れることを予測した山下刑事は周到に罠を張り巡らせるも、城戸は原爆の場所を伝えることと引き換えに五億円をビルの屋上からばらまかせ、その混乱に乗じて姿を晦ます。
さらに城戸は山下刑事の手を掻い潜り、一度は確保された原爆の起爆装置を取り戻すことに成功する。
やがてローリング・ストーンズ日本公演の当日が訪れる。
会場に必ず9番が来ると踏んだ山下刑事は、ついに科学技術館屋上で城戸と対決する。
城戸は「原爆は30分後に起爆する!」と山下刑事を脅迫するが、山下刑事は決死の覚悟で城戸に掴みかかり、二人は文字通りの死闘を繰り広げ、共にビルから転落する。
瀕死の重傷を負いながらも、生き延びたのは城戸だった。
彼は原爆を抱え、朦朧とした状態でフラフラと雑踏の中を彷徨い歩き……。
そして、30分が過ぎた。
【余談】
日本を代表する様々なクリエイターやアーティストに強い影響を与えており、近年では『エヴァンゲリオン新劇場版 破』の監督である樋口真嗣が同作に於てオマージュとして本作のBGM(「YAMASHITA」)を伊吹マヤの出勤シーンに使用したり、『ドキドキ!プリキュア』では構成脚本家の趣味なのか外見がまんま城戸の担任教師・城戸先生が登場している。
山下警部がラスト近くに叫ぶ「ローリングストーンズなんか、来やせん」の台詞は演じた菅原文太の熱演もあり、本作を代表する名台詞として有名。
大槻ケンヂを始め、それに魅せられた著名人も多い。
特に話題には挙がらないが、『ウルトラマンレオ』最終回「さようならレオ!太陽への出発」を見ている場面がある。これはタイトルの「太陽」に引っかけたものである。他にも『鉄腕アトム』の歌を歌いながら原爆を作ったりと、シュールなネタが多く散りばめられている。(アトムは原子力稼働の「科学の子」であり、初代アニメの最終話は”暴走した太陽に対処するため突入”という結末。ある意味テーマソングとして順当でも皮肉でもある)
原案、脚本のレナード・シュレイダーは映画「タクシードライバー」の脚本を書いたポール・シュレイダーの兄。
「追記、修正なんかされやせん」
「さあ……いくぞ……9番……」
「あひゃあああああああああああ!!」
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▷ コメント欄
- ラストの山下の叫びってこんなに伸ばしてたっけ? 割と短かった気がしたが・・・ -- 名無しさん (2014-03-06 12:08:00)
- カーチェイスは同時期のザ・ドライバーとか観てしまうと見てられないな。ブリットやフレンチ・コネクションにも遥かに劣る。コメンタリーでも外人監督が「何でこんなC級映画みたいなシーン入れたんだ」とゴジに文句を言っている。 -- 名無しさん (2014-04-19 21:41:32)
- 劇中劇で流れるウルトラマンレオは最終回の変身シーンだよね。 -- 名無しさん (2014-06-09 20:57:51)
- なにげに特撮、レオとのコラボ作品? -- 名無しさん (2014-09-12 22:51:26)
- 「ローリング・ストーンズなんか来やせん」とは言ってたけど「こーん」なんて台詞なかったよ -- 名無しさん (2014-12-29 00:48:41)
- 30分過ぎたあとどうなったんだ? やっぱり爆発したのか? -- 名無しさん (2018-10-24 13:57:04)
- モロに都心で爆発した -- 名無しさん (2018-10-26 00:13:45)
- ↑バッドエンドやんけ!(悲鳴 -- 名無しさん (2020-05-02 02:37:48)
- 九番て今でいう「無敵の人」で、特に理由が目的があったわけでなく、ただ溜めこんだ鬱憤を爆発させる機会を探していただけだったんだよね。ナイターもとりあえず程度の要求で、原爆作っただけでほとんど満足してたからすぐに持て余しちゃったし。作中刑事に言われた通り、本当に吹き飛ばしたかったのは自分自身。だからあそこで爆発させた -- 名無しさん (2020-05-02 07:32:32)
- だいぶ前に修正されてることになにか言うのもアレだけど、大槻ケンヂの本読んでたらこの映画を紹介してて菅原文太の熱演ぶりを加味してか台詞を「来おぉぉぅんっ!」と書いてた。初稿の人もしやそれ読んで書いたのでは -- 名無しさん (2020-11-30 23:18:05)
- ↑俺もそれ読んだことあったからか後から読んだかは忘れたけど、初めて見たときは「来ぉぉぉぉん!」…て聞こえたんだよなぁ。…意外にこの体験してる人って居るのかな? -- 名無しさん (2020-12-15 21:21:10)
- 流行りのネトフリでも配信されてるから興味ある人は是非見てみよう。プリキュアの城戸先生のモデルにもなってる(笑) -- 名無しさん (2021-02-10 10:42:48)
- 東京(と都民)にとっても、当人にとってもバッドエンドw でも、本当に吹き飛ばしたかったのは自分自身だったってことは、九番にとってはハッピーエンドなのか(困惑 -- 名無しさん (2021-02-10 12:20:28)
- 爆弾を完成させた時にボブ・マーリーの曲を沢田研二が口ずさむけど、あれもアドリブなんだとか -- 名無しさん (2021-02-12 10:54:36)
- 仮面ライダーファイズのたっくんの髪型が城戸先生のソレ -- 名無しさん (2021-08-19 00:02:49)
#comment
*2 1973年に日本公演が行われる予定だったが、メンバーの麻薬使用歴やビートルズ来日時の混乱が再発生することを恐れた政府により入国審査で却下され、チケットは完売していたにも関わらず公演は中止となった。のちに来日は1990年に実現し、以降何度か公演している。
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