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更新日:2024/05/17 Fri 11:09:54NEW!
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What's your name? Mr...
(お名前は?ミスター…)
Bond. James Bond.
(ボンドだ。ジェームズ・ボンド)
「007シリーズ」とは、イギリス・アメリカ合作のスパイ映画のシリーズ。
概要
イギリスの秘密情報部=MI6のスパイであり、殺しのライセンスを持つコードナンバー007こと、ジェームズ・ボンドが主人公のスパイ活劇。
製作プロダクションはイギリスのイオン・プロダクションズ。
原作は第二次世界大戦中、イギリス海軍情報部に所属していたイアン・フレミングの小説で、初期作品は彼の小説が原作となっている。
年代の経過とともに演じる俳優が変わり、作風も年代ごとに変化しているのが特徴のシリーズで、見返す際に時代背景を楽しむのもまた一興である。
基本的に一作完結なので、どの作品から見ても予習なしで楽しめるが、6代目(ダニエル・クレイグ)ボンドの作品は一続きなため、予習・復習は必須。
演出上のシリーズのお約束として、必ず劇中のどこかでタイトル回収を行うというものがある。
なお、本項目ではテレビ映画版『007 カジノ・ロワイヤル』および『ネバーセイ・ネバーアゲイン』はイオン・プロダクション製作ではないため、除外とする。
主な登場人物
ジェームズ・ボンド
演:ショーン・コネリー(1~5、7:初代)、ジョージ・レーゼンビー(6:2代目)、ロジャー・ムーア(8~14:3代目)、ティモシー・ダルトン(15、16:4代目)、ピアース・ブロスナン(17~20:5代目)、ダニエル・クレイグ(21~25:6代目)
本シリーズの主人公。
イギリス秘密情報部=MI6のエージェント。
殺人許可証を持つことを許された「00」の地位を持つコードナンバー「007」。
更に言えば「ジェームズ・ボンド」という名前も007の地位を持つ者が名乗る一種のコードネームであり、本名は不明。
基本的に英国政府に対し忠誠を誓い、任務の達成に尽力しているが、普段は気障で女たらしな快楽主義者。
魅力的な女性を見つけると任務の一環、あるいはそれには一切関係なく口説き、情報を聞き出してはすぐにベッドイン。
また、命令違反も多く、独断専行でしょっちゅう休暇やら謹慎やらを食らっても無視して突撃するなど、Mが頭を抱える問題児。
好きな酒はウォッカ・マティーニをステアせずにシェイク。但し他の酒や飲み方を楽しむ場面も多い。
愛銃はワルサーPPKがメインだが、18~21ではワルサー P99を使っている。
恐らく実銃のプロモーションの関係だったのだろうが、やはり007=PPKのイメージが強いのかP99の売り上げが伸びなかったのか、22作目から再びPPKに戻っている。
作品によっては掌紋照合などの特殊な銃を使用している。
20作目までは小粋な洒落が好きな伊達男として描写されていたが、ダニエル・クレイグが演じた6代目ボンドは執念深くもタフ、殺伐とした一面など、ボンド自身の人間性を殊更強調して描かれている。
M
演:バーナード・リー(1~11)、ロバート・ブラウン(13~16)、ジュディ・デンチ(17~23)、レイフ・ファインズ(23~25)
MI6の00部門の部長にして、ボンドの直属の上司。
主にボンドに任務の指令を与え、国務長官らと共にボンドの繰り出す無茶や戦果に一喜一憂するのが大体の出番で、何かと無茶をするボンドには手を焼いている。
3代目のジュディ・デンチは初の女性Mであり、前2代以上の堅物としてボンドと衝突を繰り広げていた。
6代目ボンドのダニエル・クレイグとは親子のような関係を築いており、23作目『スカイフォール』ではメイン級の扱いを受け、「真のボンドガール」とまで言わしめる活躍をした。
4代目のレイフ・ファインズ演じるMは特殊部隊隊員の経験を持つ元イギリス陸軍中佐で、元軍人らしく自ら戦闘に参加する場面も。
Q
演:ピーター・バートン(1)、デスモンド・リュウェイン(2~19)、ジョン・クリーズ(20)、ベン・ウィショー(23~25)
MI6の技術部門、Q課の課長(Quartermaster)。
原作小説では「Q課」としてしか登場しておらず、個人としての「Q」は映画オリジナル。
ボンドカーをはじめとする数々のスパイアイテムを発明し、ボンドの手助けをしている。作品によっては現場に駆り出されることも。
大概「いかにもな博士キャラ」な老年男性だが、ダニエル・クレイグ版ボンドでは公開当時32歳のベン・ウィショー演じる歴代最年少のQが登場、
今までのQと比べてかなり若いだけあって独自のキャラ性をしており「ペン型爆弾とかもう古い」と言い放ったり最先端技術を粗末に扱うボンドに苦言を呈するなどしていた。
マネーペニー
演:ロイス・マックスウェル(1~14)、キャロライン・ブリス(15~16)、サマンサ・ボンド(17~20)、ナオミ・ハリス(23~25)
Mの秘書の女性。
主にボンドの任務のためのチケット手配や報告書の作成を担当している。ボンドとは際どいジョークを叩き合うが、彼が決して関係を共にしない女性である。
とはいえ、マネーペニー側はボンドを憎からず想っているような描写もあり、彼の結婚式では大泣きするという場面も。
4代目は「イヴ・マネーペニー」という本名が設定された(彼女がマネーペニーであることは公開前は伏せられていた)。
フェリックス・ライター
演:ジャック・ロード(1)、セック・リンダー(3)、リック・ヴァン・ヌッター(4)、ノーマン・バートン(7)、デヴィッド・ヘディソン(8、16)、ジョン・テリー(15)、ジェフリー・ライト(21・22・25)
CIA(アメリカ中央情報局)の諜報員で、ボンドの盟友でもある。
アメリカや中南米が舞台の作品では頻繁に登場し、ボンドの任務の手助けをしている。
作品によって人種や立場がコロコロ変わるため、初見だと混乱することも。
エルンスト・スタヴロ・ブロフェルド
演:アンソニー・ドーソン(2、4:ノンクレジット)、ドナルド・プレザンス(5)、テリー・サバラス(6)、チャールズ・グレイ(7)、ジョン・ホリス(12:ノンクレジット)、クリストフ・ヴァルツ(24・25)
悪の秘密結社「スペクター(SPECTRE)*1」の首領。
麻薬密売や戦争の誘発といった悪事を手広く行い、何度もボンドの前に立ち塞がる。
初期作品では顔が映らなかったが、5作目『007は二度死ぬ』で初めて登場。ただし、作品ごとにビジュアルは変わっている。
白猫を抱き抱えて撫でるのが趣味。
7作目を最後に権利関係のいざこざで長らく現れなかったが、ダニエル・クレイグ時代になり権利関係が解消されたことで復活。
34年ぶりに登場したクリストフ・ヴァルツ演じる6代目は、ボンドと義兄弟の関係であり、父親の愛を奪われた嫉妬心から彼への私怨として、これまでの事件の裏で糸を引いていた事が明らかになった。
ボンドガール/ボンドウーマン
本作に登場するヒロイン達。
基本的に1作ごとに交代し、映画ラストがイチャつきシーンで終了しても、続編になると過去のヒロインについてはほとんど触れられない。
ただし例外も存在し、そうした「例外」はボンドにとって特別な存在である事が強調されている。
作品によってはボンドガールに該当する女性が複数人登場することがあるものの、本項目では代表的な一名を挙げる。
- ハニー・ライダー(1)
演: ウルスラ・アンドレス
たまたまドクター・ノオの秘密基地に入り込んだ女性。
記念すべき最初のボンドガール。
白のビキニ姿で海辺に現れる初登場シーンは様々な作品、さらには本家007シリーズでもオマージュされるほどに有名な場面。
- タチアナ・ロマノヴァ(2)
演:ダニエラ・ビアンキ
ソ連の工作員でボンドを誑し込もうとしたが、逆に惚れてしまってソ連から寝返る。
全裸にチョーカーを付けただけの姿でボンドを誘惑する場面はなんともセクシー。
- プッシー・ガロア(3)
演:オナー・ブラックマン
敵のボス、ゴールドフィンガーの部下で女性だけの空中サーカス団の団長。柔道の達人。
男顔負けの気の強さと腕っぷしだったが、ボンドに即落ちして彼の味方になる。名前が危ない。
- ドミノ・ドゥルヴァル(4)
演:クローディーヌ・オージェ
兄を敵のラルゴに殺され、敵討ちのために情婦となってラルゴの屋敷に潜り込んでいた女性。
「付き合うなら兄のように男らしくてカッコいい男性と!」と公言するなどかなりのブラコン気味。
フランス人である中の人は本作の出演に際して英語を猛特訓したものの、本編では吹き替えられてしまうハメに。
- キッシー・鈴木(5)
演:浜美枝
スペクターの基地に潜入するためにボンドと偽装結婚した日本人の海女。
もう一人のボンドガールであるアキを演じた若林映子と共に、現在に至るまでメインのボンドガールを務めた初の日本人であり、当時は大きな話題となった。
日本人離れしたスタイルの持ち主で、劇中ではビキニ姿を惜しげもなく披露してくれる。
浜美枝は現在も存命であり、文化放送で今もレギュラー番組を持っている。
- テレサ・ディ・ヴィンセンツォ(6)
演:ダイアナ・リグ
犯罪組織ユニオン・コルスのボスの一人娘。大変行動的でお転婆な性格。
ボンドが本気で恋に落ち、結婚してスパイを辞めることまで考えた運命の女性。しかし、スペクターの手に落ち悲劇的な結末を迎えた。
- ティファニー・ケイス(7)
演:ジル・セント・ジョン
違法ダイヤモンド密輸の仲介役。狡猾な性格だが、盗んだテープをあっさり見つけられるなど抜けてる部分がある。
名前の由来は母親が宝石店のティファニーで産気付いてそのまま出産したことから。
作品の評価が控えめに言っても賛否両論なせいか「最も印象に残らないボンドガール」という有り難くない称号を頂戴するなど微妙に不遇。
ちなみに中の人はボンド役のショーン・コネリーをはじめ、フランク・シナトラなどの大スターらと数々の浮名を流していた恋多き女優としても有名。
- ソリテア(8)*2
演:ジェーン・シーモア
敵ボスのカナンガ専属の占い師。
タロットカードでの予知能力を持ち、ボンドを追い詰めたが素顔は非常に純粋で少女のように無垢な女性。
カナンガに無理矢理従わされていたがボンドに助け出される。
- メアリー・グッドナイト(9)
演:ブリット・エクランド
MI6の諜報員。作中何度もドジをやらかしてボンドを危機に陥れた。
原作小説では有能な00課の秘書なのだが映画ではまるっきり正反対な役柄のドジっ子。
ボンドが他の女性を抱く間、クローゼットに押し込まれるなどわりと悲惨。
- アーニヤ・アマソーヴァ(10)
演:バーバラ・バック
ボンドと協力することになったソ連のスパイ、XXX(トリプルX)。恋人をボンドに殺されたと知るのだが…。
演者のバーバラ・パックは後にビートルズの元ドラマー、リンゴ・スターの夫人となったお方。
- ホリー・グッドヘッド(11)
演:ロイス・チャイルズ
宇宙工学の博士。ボンドと共に宇宙へと飛ぶ。
宇宙飛行士・科学者・さらにはCIAのエージェントと三足の草鞋を履く才女。
なお「グッドヘッド」とは「フェラが上手い」の隠語。
中の人は親族がテキサスの石油王という生粋のお嬢様。
- メリナ・ハヴロック(12)
演:キャロル・ブーケ
両親を敵ボスのクリスタトスに殺され、復讐に燃える海洋学者。ボンドに協力する。
ブロンドやグラマラスな印象の女性が多かったこれまでのボンドガールとはタイプの違う、長い黒髪のクールビューティーな美女。
ロジャー・ムーアが印象深いボンドガールとして真っ先に名を挙げるほどの美貌の持ち主。
意外なことにキスシーンこそあるが、ボンドとベッドインはしない。*3
- オクトパシー(13)
演:モード・アダムス
女だらけの宝石密輸団の首領。大人の魅力でボンドを翻弄する。
演じたモード・アダムスは第9作『黄金銃を持つ男』の敵役スカラマンガの情婦アンドレアを演じており、二度目の起用となった。
また、次回作でもエキストラとしてカメオ出演を果たすなどシリーズとは縁が深い。
- ステイシー・サットン(14)
演:タニア・ロバーツ
石油王の孫娘。事件を追うボンドと一緒に謎を追う。
中の人は撮影当時30歳だがボンド役のムーアは当時57歳と親子ほどの年齢差だったため、ラブシーンなどはまるで祖父と孫のようだともっぱらの評判。
ブロンドヘアーが印象的だがこれは染めており、地毛はブルネット。
- カーラ・ミロヴィー(15)
演:マリアム・ダボ
恋人のコスコフに騙され、狙撃犯になりかけたチェリスト。初恋の相手を忘れられない純な女性。
ボンドがスパイであることを知らずに親密になるのだが……。
劇中ではナース服、ソ連軍の制服などのコスプレ姿を披露する。
- パメラ・ブーヴィエ(16)
演:キャリー・ローウェル
CIAの諜報員で元米国軍のパイロット。通称パム。
麻薬王サンチェスを逮捕するため中南米に潜伏していたところをサンチェスへの復讐に燃えるボンドと共闘することになる。
Qの秘密兵器を勝手にいじって危うくボンドを殺しかけるなど意外と迂闊。
やきもちを焼く姿が可愛い。
- ナターリア・シモノヴァ(17)
演:イザベラ・スコルプコ
ロシアの秘密宇宙基地に勤めるプログラマー。職員の大虐殺から生き残り、ボンドと行動を共にする。
荒事とは無縁の一般人ながらここ一番での機転と度胸はボンドにも引けを取らないほど。着の身着のままでロシアの雪原に投げ出されたところを生還するなど何気に生存力も超人級
- ウェイ・リン(18)
演:ミシェル・ヨー
中国の諜報員。格闘術に優れており、ボンドと遜色ないアクションを繰り広げた。
中の人はジャッキー・チェンをして「俺より目立つから共演したくない」と言わしめた逸話を持つバリバリのアクション女優。
劇中でもカンフーバトルや派手な銃撃戦を披露し、単純な戦闘力ならおそらく歴代ボンドガールでも最強クラス。
- クリスマス・ジョーンズ(19)
演:デニス・リチャーズ
原子力科学の博士。奪われた核物質の解体のためにMI6に協力する。
健康的なお色気を見せるが、本作の演技でゴールデンラズベリー賞の最低助演女優賞を受賞してしまうなどわりと不遇。ぶっちゃけもう一人のボンドガールだったソフィー・マルソーの方が人気
- ジャシンタ・ジョンソン(20)
演:ハル・ベリー
NSA(アメリカ国家安全保障局)のエージェント。通称ジンクス。メイン(最期で死亡しなかった)のボンドガールとしては初の黒人女性。
ハル・ベリー自身、前年のアカデミー賞で初の黒人女優による主演女優賞を獲得した事もあり話題となった。
- ヴェスパー・リンド(21)
演:エヴァ・グリーン
イギリス財務省の職員。初対面の印象こそ最悪だったがクレイグ版ボンドが初めて恋に落ちた女性で、スパイを辞めて彼女との生活を夢見るほど愛することになる。
が、その裏にはある秘密が……。
- カミーユ・モンテス(22)
演:オルガ・キュリレンコ
敵のボスであるグリーンの補佐を務めていた女性。正体はボリビアの諜報部員。
目的達成のためなら女性の武器を使うこともいとわず、非常に勝気でしたたかな性格。
背中に大きな火傷の跡があるが、これは過去の出来事が関係しているようで……。
ヒロインだがボンドとのベッドシーンが存在せず、それどころか恋愛関係にもならないという異色のボンドガール。
- セヴリン(23)
演:ベレニス・マーロウ
シルヴァの部下の女性。ボンドをシルヴァの下に案内した直後に悪趣味なゲームで粛清される。
かなりあっさりと殺されてしまうので驚いた人も多いのではないだろうか。まあ正直本作のボンドガールは満場一致でMだしね
- マドレーヌ・スワン(24・25)
演:レア・セドゥ
オーストリアの診療所に勤める医師で、スペクター幹部のミスター・ホワイトの娘。
父の死の真相を突き止めるためにボンドの任務に同行する。
二作品に跨ってメインのボンドガールを務めたというシリーズでも唯一無二の存在。
さらに
ボンドとの間に子供を授かったという意味でも唯一無二の女性。
ボンドカー
本作に登場する車で、その名の通りボンドが乗る車。
Qによって開発された車で、様々な秘密兵器を有している。そして大抵壊される。
シリーズの目玉となっているが、ここでは幾つかの車種を取り上げる。
- アストンマーティン・DB5
ボンドカーの代表的車種。初登場は第3作『ゴールドフィンガー』で、防弾装甲や機関銃、イジェクションシート、オイル散布装置などを備えた。
その後は第5作『サンダーボール作戦』でボンドカーとして再び登場した他、第17作『ゴールデンアイ』以降はMI6からの払い下げ車という設定でボンドのプライベートカーとして登場。
そして、第23作『スカイフォール』で久々にボンドカーとして登場した。
- トヨタ・2000GT
第5作『007は二度死ぬ』にするボンドカー。日本の諜報部が所有していた。
装備はソニー製のテレビ電話など。
日本車としては2021年現在に至るまで唯一のボンドカーで、映画用に2台のみ特注されたオープントップ仕様となっている。*4
- ロータス・エスプリ
第10作『私を愛したスパイ』に登場するボンドカー。
最大の特徴は潜水艇への変形機能を有していることで、潜水艇にチェンジする際はタイヤを格納して水平舵などを展開する。
装備は自動車時は目潰し用セメントガン、潜水艇時は地対空ミサイルや魚雷など。
- アストンマーティン・V8
第15作『リビング・デイライツ』に登場するボンドカー。
劇中ではヴァンテージ・ヴォランテ(コンバーチブルタイプ)とサルーン(クーペタイプ)が登場するのだが、特徴的なのがサルーン。
カーラジオにカモフラージュした無線機は序の口で、レーザーカッター、ミサイル、出し入れ式大型スパイク、スキー用アウトリガー、果てはロケットブースターや時限式自爆装置まで装備している。
劇中ではチェコスロバキアにおいてそれら全てを用いたカーチェイスを繰り広げ、ボンドが脱出した後に先述した自爆装置によって自爆した。
第25作『ノー・タイム・トゥ・ダイ』にもプライベートカーとして登場。
- T-54/55
第17作『ゴールデンアイ』に登場するボンドカー……というよりは戦車。
中盤でボンドがロシア軍より強奪し、壁なんてものは何のその、パトカーも踏み潰し、果てはブロンズ像を乗せながらサンクトペテルブルクでのカーチェイスを繰り広げる。
- BMW 750iL
第18作『トゥモロー・ネバー・ダイ』に登場するボンドカー。
本作から2作続けてタイアップの一環でBMWが起用された。
スポーツカーが多いボンドカーの中では唯一となるセダンで、特殊装備はミサイル、防弾ガラス、まきびしなどだが、一番の特徴は携帯電話による遠隔操作が可能なこと。
劇中ではそれを活かし、ボンドを後部座席に乗せながら立体駐車場内でのカーチェイスを繰り広げ、最後はボンドが脱出した後に屋上から落下してレンタカー屋に突入・大破した*5。
この作品以降、ブロズナン版ボンドに登場するボンドカーは遠隔操作装置が標準装備となる。
- BMW Z8
第19作『ワールド・イズ・ノット・イナフ』に登場するボンドカー。
特殊装備は地対空ミサイルや遠隔操作装置。
劇中ではミサイルを用いて敵のヘリを撃墜したのだが、直後に別のヘリに吊された大型チェーンソーで真っ二つにされてしまうというあっけない最後を迎えた。
- アストンマーティン・V12ヴァンキッシュ
第20作『ダイ・アナザー・デイ』に登場するボンドカー。
機関銃、ミサイル、自動追尾式ショットガン、防弾仕様のガラス・シャーシなどに加え、前作・前々作のボンドカーに引き続き遠隔操作装置を搭載するが、一番の特徴は光学迷彩を装備していること。
Qはこの特徴からヴァンキッシュを捩って「ヴァニッシュ(Vanish=消えて無くなる)」と呼んでいる*6。
劇中では敵キャラ・ザオの駆る特殊装備満載のジャガー・XKRと、双方とも特殊装備を駆使する激しいカーチェイスを繰り広げた。
- アストンマーティン・DB10
第24作『スペクター』に登場するボンドカー。装備は機関銃、火炎放射器および緊急脱出装置と選曲のセンスがダサいミュージックプレイヤー。
ローマで開かれたスペクターの会合に潜入するために使用するも、本来なら009の装備であったはずの物をボンドが勝手に持ち出したがために、刺客のMr.ヒンクスの駆るジャガー・C-X75からの逃走劇では殆どの装備が使えず*7、最終的には川に自沈させている。
DB5が初めて起用された『ゴールドフィンガー』公開50周年を記念したモデルであり、本作の為だけに製造されたジェームズ・ボンド専用車といってもいい*8007・アストンマーティン両者にとって象徴的な車両。
プラットフォームやトランスミッションはV8ヴァンテージのものが流用され、撮影用に8台、プロモーション用に2台の計10台が製造された。うちプロモーション用の1台は2016年にチャリティーオークションに出品され、240万ポンド*9で落札された。
作品一覧
ショーン・コネリー主演
第1作 007/ドクター・ノオ(Dr.No)
※日本初公開時の邦題は『007は殺しの番号』
1962年製作
監督:テレンス・ヤング
舞台:ジャマイカ
敵:ドクター・ノオ
ジャマイカの英国諜報部員が失踪する事件が発生。
調査に向かったボンドは、その裏で、米国のロケット打ち上げを妨害する謎の組織の存在を知る。
ボンドが忍び込んだその孤島クラブキーは、マッドサイエンティスト、ドクター・ノオが支配していた。
記念すべきシリーズ第一作。低予算のB級映画として制作されたものの、予想に反して大ヒット。
ほぼ無名に近かったショーン・コネリーは一夜にしてスターの仲間入りを果たし、映画も後の続編へと繋がっていった。
第2作 007/ロシアより愛をこめて(From Russia With Love)
※日本初公開時の邦題は『007/危機一発』。また原作小説の邦題は「ロシアから愛をこめて」
1963年製作
監督:テレンス・ヤング
舞台:イスタンブール、ヴェネツィア
敵:ローザ・クレッブ、ドナルド・グラント
ソ連の暗号解読機の引き渡しを条件にイギリスへの亡命を希望する女タチアナ。
しかしそれは、ボンドの命を狙う組織スペクターの罠だった。
重厚なスパイものとしてファンの中でも評価の高い作品。
オープニングの前に展開されるプレアクション、奇想天外な秘密兵器など、シリーズの基礎となるべきお約束はすでにこの作品から導入されていた。
第3作 007/ゴールドフィンガー(Goldfinger)
1964年製作
監督:ガイ・ハミルトン
舞台:スイス、フォート・ノックス(アメリカ)
敵:オーリック・ゴールドフィンガー、オッドジョブ
大富豪ゴールドフィンガーの周囲で起こる不可解な殺人事件。
調査を進めるボンドは、ゴールドフィンガーが目論むある陰謀を知ることとなる。
ゴールドフィンガーの右腕として、帽子を武器に使うオッドジョブが登場。
全身を金粉まみれにされて殺される美女など、幾多のパロディを生んだ名シーンはこの映画が元。
また、特殊装備を満載したボンドカーの活躍も本作が初出。
シャーリー・バッシーが歌う同名の主題歌も世界的に大ヒットした。
第4作 007/サンダーボール作戦(Thunderball)
1965年製作
監督:テレンス・ヤング
舞台:ナッソー(バハマ)
敵:エミリオ・ラルゴ、フィオナ・ヴォルペ
原爆を搭載したNATOの爆撃機がスペクターに強奪された。
核戦争を止めるため、ボンドは爆撃機があると狙いをつけたナッソーでの捜索を開始する。
タイムリミットが迫る中、ボンドは原爆を見つけられるのか。
シリーズでも屈指の人気作であり、記録的な興行収入を挙げた一作。
00エージェントが勢揃いするというシリーズを通しても貴重なシーンがあることでも有名。*10
後にワーナー・ブラザース映画によって『ネバーセイ・ネバーアゲイン』としてリメイクされ、現在では番外編としてカウントされている。
第5作 007は二度死ぬ(You Only Live Twice)
1967年製作
監督:ルイス・ギルバート
舞台:日本
敵:エルンスト・スタヴロ・ブロフェルド、ヘルガ・ブラント
米国やソ連の宇宙ロケットが消失する事件が発生。
米ソ緊張状態の中、ボンドは自分の死を偽装しながら日本へと潜入捜査を開始。
そこで、スペクターの秘密基地と、宿敵ブロフェルドの姿を見ることとなる。
シリーズ初のアジアが舞台。丹波哲郎や若林映子、浜美枝といった日本の名優も出演。
変わったところではのちに『笑点』で座布団運びを務める松崎真も出演している。
日本が舞台と話題にはなったが、コネリー時代屈指のツッコミどころが多いエピソードのため評価は分かれる。
ジョージ・レーゼンビー主演
第6作 女王陛下の007(On Her Majesty's Secret Service)
1969年製作
監督:ピーター・R・ハント
舞台:スイス、イギリス
敵:エルンスト・スタヴロ・ブロフェルド、イルマ・バント
伯爵夫人のテレサと恋に落ちたボンド。
彼女の父親から、テレサとの結婚を条件にスペクターの計画を阻止する助力を受けることになる。
雪山を舞台に秘密裏に進行するスペクターのテロ計画。果たしてボンドは野望を打ち砕き、愛を貫けるのか。
アメリカン・ニューシネマに影響を受けたとされるシリアスタッチなストーリーと衝撃のラストでシリーズ中の異色作だが、公開当時はあまり受けなかったため、次作で方針転換されることに。
日本でも上映時間が長いため、テレビ放送が中々されないなど不遇であったが、ストーリーの良さから後年になり評価を高めた1作で、第25作目『ノー・タイム・トゥ・ダイ』も同作の影響を受けている。
ショーン・コネリー主演(復帰)
第7作 007/ダイヤモンドは永遠に(Diamonds Are Forever)
1971年製作
監督:ガイ・ハミルトン
舞台:ラスベガス
敵:エルンスト・スタヴロ・ブロフェルド、ウィント、キッド
宿敵ブロフェルドと決着をつけたボンドが次に就いた任務は、ダイヤモンドの密輸調査。
ラスベガスでダイヤモンドの行方を調査するボンドだったが、その裏で思いもよらない黒幕を知る。
前作の興行収入が期待外れの結果に終わったため、破格のギャラと条件でショーン・コネリーが復帰することになった一作。
ブロフェルドとの決着がつく作品だが、前作と比べてコメディ寄りなため、そのギャップに困惑する声が多かったものの、興行的には大ヒットした。
ロジャー・ムーア主演
第8作 007/死ぬのは奴らだ(Live And Let Die)
1973年製作
監督:ガイ・ハミルトン
舞台:ニューヨーク、ニューオーリンズ、サン・モニク
敵:ドクター・カナンガ、ティー・ヒー・ジョンソン
南部アメリカで諜報員の不審な死が続発。
ニューヨークへと怪しい大統領の調査に向かったボンドを待ち受けていたのは、オカルトを駆使した怪しいブードゥー教の組織の罠だった。
悪役がブードゥー教を信仰しているなど、全体的にホラータッチな描写が多く、そうした意味ではシリーズでも異色。
脳天を撃ち抜かれても死なない不死身の男サミディ男爵など敵のキャラクターはどいつもこいつも非常に濃い。
主題歌を歌うのはポール・マッカートニーであり、楽曲は世界中で大ヒット。現在もライブで歌われる名曲となった。
第9作 007/黄金銃を持つ男(The Man With The Golden Gun)
1974年製作
監督:ガイ・ハミルトン
舞台:ベイルート、マカオ
敵:フランシスコ・スカラマンガ、ニック・ナック
ボンドに届いた黄金の弾丸の殺人予告。
事件を調査するうちに、ボンドは事件の背後にいるのが悪名高き殺し屋(何故か乳首が3つある)のスカラマンガだと知る。
さらにスカラマンガはある恐るべき計画を立てていた。
コミカルタッチなアクションとおバカなヒロインといった要素で笑いに絶えない作風となった。
これ以降、ムーア時代の007はツッコミ要素多めのシリーズとなる一方、娯楽大作として評価される形に。
映画中盤でのきりもみ回転しながら向こう岸へ跳び移るカースタントは映画史に残る名シーン。
アンチボンドとも呼べる名悪役、フランシスコ・スカラマンガを演じたのはスター・ウォーズのドゥークー伯爵やロード・オブ・ザ・リング・ホビットのサルマンなどで有名な名優クリストファー・リー御大。
ちなみにリー氏は007シリーズの原作者であるイアン・フレミング氏とは従兄弟の関係だったりする。
第10作 007/私を愛したスパイ(The Spy Who Loved Me)
1977年製作
監督:ルイス・ギルバート
舞台:カイロ、ルクソール、サルデーニャ、海洋
敵:カール・ストロンバーグ、ジョーズ
イギリスとソ連の原子力潜水艦が姿を消した。
事件を調べるボンドは、ソ連の女スパイと共同作戦を練ることとなる。
事件の裏には、誇大妄想に取り憑かれた海洋学者の大富豪ストロンバーグの陰謀が隠されていた。
刺客として、ストロンバーグに雇われた噛み付きを得意とする殺し屋ジョーズが登場。
第1作から数えて15周年、さらにはシリーズ10作目ということで前作の二倍の予算をかけて制作された記念作品。
興行収入も前作の二倍となり、世界中で大ヒットを記録した。
ボンド役のムーアも本作がお気に入りだとか。
また、シリーズで初めて主題歌の題名がタイトルと異なる作品*11となった。
第11作 007/ムーンレイカー(Moonraker)*12
1979年製作
監督:ルイス・ギルバート
舞台:カリフォルニア、ヴェネツィア、リオデジャネイロ、アマゾン、宇宙ステーション
敵:ヒューゴ・ドラックス、ジョーズ(後に寝返る)
スペースシャトル「ムーンレイカー」が何者かに奪取される事件が発生。
調査に乗り出すボンドは、宇宙開発事業に取り組んでいる大富豪ドラックスの存在を知る。
宇宙に飛び出したボンドは、果たしてドラックスが企てる大規模テロを食い止めることができるのか。
『スター・ウォーズ』の影響を受けて終始イギリスが舞台となる原作*13を大幅に脚色し、なんと宇宙が舞台となった*14。前作に引き続き巨漢の殺し屋ジョーズが登場し、まさかの展開に。
前作である程度持ち直した評判をSF要素で台無しにするなど酷評されたが、当時の流行りのおかげで興行収入は大成功に終わった。
特にパラシュートなしで飛行機から突き落とされ、先にダイブしていた敵のパラシュートを奪って助かるという大迫力のプレアクションは今日に至っても高く評価されている。
第12作 007/ユア・アイズ・オンリー(For Your Eyes Only)*15
1981年製作
監督:ジョン・グレン
舞台:ギリシャ
敵:アリストトゥル・クリスタトス、エミル・レオポルド・ロック
イギリスのミサイル誘導装置「ATAC」を乗せた船が沈没した。
ソ連に発見される前に回収せねばならないため、ボンドは行動を開始。
復讐に燃える女メリナと協力した彼は、装置を狙う武器商人と対決することとなる。
前作の主に後半がアレだった反省から一転して、初期のコネリー時代を彷彿とさせる作品であり、ムーア時代でも人気最上位に位置する作品。
それ故か本作は秘密兵器の出番は少なめで、ボンドカーも自爆しただけで出番が終了、定番のカーチェイスは何の変哲もない小型車で行われた。
また今回Mは休暇中という理由でシリーズ唯一1回も出番が無い。*16
ちなみに本作は主題歌を歌っているシーナ・イーストン自身がオープニングの映像で熱唱するという珍しいシーンがある。
第13作 007/オクトパシー(Octopussy)
1983年製作
監督:ジョン・グレン
舞台:デリー(インド)、東~西ドイツ
敵:カマル・カーン、オルロフ将軍
イギリス諜報員が殺され、鍵となった陶器の卵を追うボンド。
そのうち、彼は宝石密輸団のボス、オクトパシーと彼女がオーナーを務めるサーカス団に行き当たる。
そこには、東西冷戦に絡んだソ連過激派の陰謀が潜んでいた。
比較的シリアスだった前作から再びコミカル路線に回帰した一作。
劇中でターザンのような雄叫びを上げながら行うロープアクションなどはその代表例。
今作よりバーナード・リー氏の逝去に伴い、ロバート・ブラウン氏が二代目のMに起用された。
また、シリーズ史上初めて主題歌“All Time High”の歌詞の中に作品のタイトル“Octopussy”が織り込まれていない作品となっている。*17
第14作 007/美しき獲物たち(A View To A Kill)
1985年製作
監督:ジョン・グレン
舞台:パリ、サンフランシスコ
敵:マックス・ゾリン、メイ・デイ(後に寝返る)
諜報員が盗んだ、核爆発時に発生する電磁パルスにも耐えられるという謎のICチップ。
製造したとされる大企業の調査をするボンドは、ICチップ市場の゙独占を狙ったシリコンバレー壊滅のテロ計画を知る。
IT時代の先駆けともなった作品。
ムーア時代最終作品であるが、元々コネリーより年上のムーアだったためこの頃になるとアクションのキレなどは皆無。
その人柄から現場で愛されたため、スタッフはムーアに降板を言い出し辛かったようだが、撮影時ボンドガールを演じた女優の母親が自分より年下と知ったことで降板を決めた。
また、第一作から長年マネーペニーを演じてきたロイス・マクスウェル氏も同じく年齢を理由に*18本作を以って降板となった。
余談だが、ロッキーシリーズのイワン・ドラゴで知られるアクションスターのドルフ・ラングレン氏は本作が映画デビュー作だったりする。
主題歌を歌うのは、当時世界中でアイドル級の人気を誇ったイギリスのバンドデュラン・デュランであり、主題歌はアメリカでも1位を記録する大ヒット。
ティモシー・ダルトン主演
第15作 007/リビング・デイライツ(The Living Daylights)*19
1987年製作
監督:ジョン・グレン
舞台:ブラティスラヴァ(チェコスロバキア)、モスクワ、ウィーン、タンジール、アフガニスタン
敵:ゲオルギ・コスコフ、ブラッド・ウィテカー、ネクロス
ボンドらの助けでソ連から亡命してきたKGBの将軍が、KGBが進める「スパイに死を」計画を知らせるが、直後何者かによって攫われてしまう。
事態を重く見たMによってKGBのトップ・プーシキン将軍の暗殺を命じられたボンドだったが、
引っかかるものを感じたボンドは独自にブラティスラヴァに飛び、鍵を握る女チェリストを追求する。
そこには、ある意外な人物の陰謀が潜んでいた。
シリーズ25周年記念作品。大型予算を組んで制作され、KGB内部の権力闘争やアフガン戦争など当時の国際情勢を反映させた一作となった。
ボンド役の交代によりユーモラスでコミカルだったムーア版から一気にハードでシリアスな雰囲気になるなど、ガラリと作風が変化することに。
第16作 007/消されたライセンス(Licence To Kill)*20
1989年製作
監督:ジョン・グレン
舞台:キー・ウェスト(フロリダ)
敵:フランツ・サンチェス、ミルトン・クレスト、ダリオ
ボンドは友人であるフェリックスの結婚式に出席しようとしていたが、その道中で麻薬取締局に協力して南米の麻薬王サンチェスを捕らえることに成功する。
しかし取締局の捜査官が買収されていたことでサンチェスは脱獄。新婚生活を始めようとしていた矢先のフェリックス夫妻を手下のダリオらに襲撃され、フェリックスは妻を殺害された上に意識不明の重体となってしまう。
脱獄したサンチェスを捕まえ、フェリックス夫妻の仇を取るために、ボンドはMの命令を無視して独自に調査に乗り出す。
復讐に燃えるボンドやグロ描写など、視覚的にキツい描写が多いのが特徴。
ラストの戦いはシリーズでもトップクラスにボロボロになりながら戦う姿であり、スタント含めて見る価値あり。
ダリオ役を演じたベニチオ・デル・トロは強い印象を残したが、冷戦が終わりを迎え麻薬絡みのエピソードになるなど、スタッフの苦慮が窺える作品であり、世界的に見れば興行収入もシリーズ屈指の低さに終わるなど、6年間の封印の決定打となってしまった。
これらのゴタゴタの間にダルトンはボンド役へ興味を失くし、そのまま降板してしまうことに。
ピアース・ブロスナン主演
第17作 007/ゴールデンアイ(Goldeneye)*21
1995年製作
監督:マーティン・キャンベル
舞台:サンクトペテルブルク、キューバ
敵:アレック・トレヴェルヤン、ゼニア・オナトップ、アーカーディ・ウルモフ、ボリス・グリシェンコ
ロシアの秘密犯罪組織「ヤヌス」の手によって、ソ連時代に開発された衛星EMP兵器「ゴールデンアイ」の起動システムが強奪された。
奪還のため、ボンドはロシアに入るが、そこで彼は、ヤヌスのボスの衝撃の正体を知る。
6年越しの続編で、90年代らしいアクションやCGスタントの導入に女性Mといった新要素が加えられ、演じるブロスナンの演技力も相まって新たなシリーズの幕開けとしての評価は高い。
ソ連崩壊に伴ってロシア国内でのロケが許可されるなど時代の移り変わりも実感させられる作品。
ほぼ同時期のやはりスパイ映画でトム・クルーズ主演の『ミッション:インポッシブル』も本作の影響を多大に受けたと公言している。
NINTENDO64のゲームも発売。
当時日本での64ユーザーは主に小学生が多かったため、64所持の子供たちの間では鉄板ゲームの1作となり、日本におけるFPSゲーム普及のきっかけを作った他、日本での昭和末期~平成最初期生まれの人間の多くが007シリーズを知りファンになるきっかけとなった。
第18作 007/トゥモロー・ネバー・ダイ(Tomorrow Never Dies)
1997年製作
監督:ロジャー・スポティスウッド
舞台:ロンドン、ハンブルグ、サイゴン、海洋
敵:エリオット・カーヴァー、ヘンリー・グプタ、リチャード・スタンパー、ドクター・カウフマン
イギリスのフリゲート艦と中国の戦闘機が同時に攻撃を受け、フリゲート艦は沈没、戦闘機も撃墜されるという大事件が起きる。
英中間が一触即発となる中、ボンドは事件の影に潜むメディア王カーヴァーの陰謀を暴こうとする。
中国の諜報員と組んだボンドは、果たして英中間に勃発しようとしている戦争を止められるのか。
ブロスナン時代から女性スタッフが管轄となったため、女性の立場の向上が増えてきたが、このシリーズでは今までのシリーズでは比にならないほど、前線で戦うボンドガールが描かれた。
ボンドカーに搭載された遠隔操作機能や武装をフル活用しての大立ち回りも見せ場の一つ。
本作よりしばらくボンドの銃はワルサーP99となる。
第19作 007/ワールド・イズ・ノット・イナフ(The World Is Not Enough)*22
1999年製作
監督:マイケル・アプテッド
舞台:ビルバオ、ロンドン、アゼルバイジャン、カザフスタン、イスタンブール
敵:ヴィクター“レナード”・ゾカス、エレクトラ・キング
MI6が取り返した金によって英国貴族の石油王が爆殺された。
事件の黒幕であるテロリストを追うため、ボンドは被害者の警護をしつつ石油パイプの護衛を務める。
しかし、テロリストの思惑は全く別のところにあった。
裏切りの応酬による複雑なストーリーと相まってブロスナン作品の中では人気は少なめだが、ソフィー・マルソー演じる悪女の色っぽさには定評がある。
ちなみに本作でQは引退することをボンドに告げて後任のR*23を紹介し、去っていくというシーンがある。
これはQ役のデスモンド・リュウェリン氏が高齢を理由として本作を最後に俳優としての引退を表明したため。
シリーズ第二作から長年に渡ってQを演じてきたリュウェリン氏の引退は世界中の007ファンに衝撃を与え、カムバックを望む声も多かったものの、
奇しくも撮影終了の6週間後に交通事故で死去してしまい、本当に今作が遺作となってしまった。
第20作 007/ダイ・アナザー・デイ(Die Another Day)
2002年製作
監督:リー・タマホリ
舞台:北朝鮮、香港、ハバナ、アイスランド
敵:グスタフ・グレーブス、ミランダ・フロスト、タン・リン・ザオ
ヘマをして北朝鮮軍に捕まったボンドはテロリストのザオと交換に釈放されるが、機密を漏らしたことを疑われMからの信頼を失ってしまう。
ザオを逮捕するため独断で動き出した彼は、事件の背後にいる大富豪グレーブスと北朝鮮とのある関係に気付く。
果たして彼は、動き出した新兵器とグレーブスの陰謀を止められるのか。
今作ではQ役は前作でRを演じていたジョン・クリーズ氏に交代したが以降Qはしばらく出番は無くクリーズ版Qは今回が最初で最後となった*24。
主題歌はマドンナが歌い、アメリカのチャートでトップ10に入るヒットを記録するが、本編のゲスト出演は酷評。
また、舞台の1つに北朝鮮があるため、当時2代目将軍様が激怒した。
20作記念という事で、過去作のセルフオマージュ的要素も散見される。
ダニエル・クレイグ主演
クレイグ主演作のみ連作形式をとっている。また、ボンドは『カジノ・ロワイヤル』で諜報員になったばかりという設定。
第21作 007/カジノ・ロワイヤル(Casino Royale)
2006年製作
監督:マーティン・キャンベル
舞台:マダガスカル、マイアミ、モンテネグロ、ヴェネツィア
敵:ル・シッフル、ミスター・ホワイト
新人諜報員のボンドは、テロ組織のネットワークに繋がる証拠を手に入れる。
彼は、資金係のル・シッフルが手に入れようとする金を賭け、カジノで争うことになるのだった。
しかし、その果てにボンドは、自分の愛を失うこととなる。
007シリーズ原作第1作の完全映画化。傷つき、悩む等身大の新しいボンド像を作り上げた。
序盤のパルクールでの追跡シーンを始め、中盤での緊迫感に溢れた長時間に渡るポーカーのシーンなど見所は多い。全裸で股間を拷問されるボンドが見られるのはこの作品だけ
第22作 007/慰めの報酬(Quantum Of Solace)
2009年製作
監督:マーク・フォースター
舞台:トリノ、ハイチ、ブレゲンツ、ボリビア
敵:ドミニク・グリーン、メドラーノ将軍
ヴェスパーの復讐のために奔走するボンドは、小さな手掛かりを頼りに環境慈善家のグリーンを調べる。
やがて彼は、グリーンが裏社会を牛耳る組織「クォンタム」の一員だと知る。
ボリビアの天然資源利権を獲得するためにクーデターを引き起こそうとするグリーンを、ボンドは止められるのか。
上映時間が106分とシリーズで最も短い作品。
クレイグ版ボンドの中では残念ながら芳しい評価を得られなかったが、これは脚本家ストライキの影響でストーリーを練り直すことができなかったことが少なからず影響していると思われる。
本作をもってフレミングの原作は名実ともに完全に枯渇し、次作『スカイフォール』からは完全オリジナルストーリーが展開することとなる。
第23作 007/スカイフォール(Skyfall)
2012年製作
監督:サム・メンデス
舞台:イスタンブール、上海、マカオ、ロンドン、スコットランド
敵:ラウル・シルヴァ
MI6のスパイのリストが強奪され、MI6はサイバー攻撃を受ける事となる。
事件を追うボンドは、黒幕がMI6とある因縁があり、そしてMの秘密に繋がっていると知る。
第1作から数えてシリーズ50周年となった記念作品。
MI6の在り方やMとボンドの関係等、内省的な問題に収着するシリーズで最も異質な作品だが、見事な構成から「シリーズ最高傑作」との呼び声も高い。
『ダイ・アナザー・デイ』以来しばらく登場していなかったQが久々に復活。
歴代最年少の今までにないタイプのQが登場した。
また本作からボンドの愛銃がワルサーPPKに戻っている。
余談だが本作の敵のシルヴァのアジトの島のモデルは、日本の長崎県長崎市の端島(軍艦島)である。
第24作 007/スペクター(Spectre)
2015年製作
監督:サム・メンデス
舞台:メキシコシティ、ローマ、アルタウスゼー、サハラ砂漠、ロンドン
敵:フランツ・オーベルハウザー(エルンスト・スタヴロ・ブロフェルド)、ミスター・ヒンクス、C / マックス・デンビー
先代Mの最後の指令から、ミスター・ホワイトの足跡を辿るボンドは、秘密組織「スペクター」の存在を知る。
その中心人物は、ボンドにとって最も因縁深い人物だった。
MI6存亡の危機と、自らの過去の決別を、ボンドはいかに対処するのか。
タイトル通り、権利関係で長らく揉めていたために登場できなかった「スペクター」とブロフェルドが34年ぶりに復活。
製作費は約2億4500万ドルとも3億ドルともいわれ、ボンドシリーズの中では一番となった。
主題歌を歌うのはサム・スミス。ボンド映画の主題歌としては史上初となる全英オリコンチャート1位を記録するなどヒットを飛ばし、ゴールデングローブ賞やアカデミー賞も受賞した。
第25作 007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(No Time To Die)*25
2021年製作
監督:キャリー・ジョージ・フクナガ
舞台:マテーラ、キューバ、ノルウェー、日本(北方領土)
敵:リュートシファー・サフィン、ローガン・アッシュ、プリモ
2021年時点でのシリーズ最新作。
「スペクター」から5年後、引退しジャマイカで日々を過ごしていたボンドは、旧友のライターからある科学者の救出任務を依頼され、現役復帰する。
しかしそれは、危険な最新技術を操る正体不明の敵との戦いの始まりに過ぎなかった。
前作『スペクター』に引き続いて原点回帰的な要素を取り入れつつ、『カジノ・ロワイヤル』でスポットが当たるようになった「ジェームズ・ボンドとは何たるか」も描いた、
クレイグ版『007』の最終作にして集大成とも呼べる作品になっており、そのラストはシリーズ史上掟破りとも評されている。
当初は2020年4月10日公開の予定だったが、新型コロナウイルスの影響により公開延期が相次ぎ、イギリスでは2021年9月30日に公開された。
主題歌を歌うのは007シリーズ史上最年少アーティストとなるビリー・アイリッシュ。
余談
ジェームズ・ボンドのお気に入りのカクテルにしてシリーズ定番の決め台詞「ウォッカ・マティーニをステアせずシェイクで(Vodka Martini, Shaken, not stirred)」だが、この飲み方は一種の再現レシピとして「ボンドマティーニ」と呼ばれている。
『カジノ・ロワイヤル』ではボンドは自分オリジナルレシピのウォッカマティーニを注文しており、愛した女にちなんで「ヴェスパー」と名付けている。
このマティーニは現実でも「ヴェスパー・マティーニ(単に「ヴェスパー」とも)」の名前で親しまれている。
ちなみに英語版Wikipediaには「Shaken, not stirred」の個別項目があり、各作品でボンドが件のカクテルを注文したシーンのまとめが作られている。
2005年にアメリカのテレビ番組の企画で行われた「アメリカ映画の名セリフベスト100」にて、「ボンド。ジェームズ・ボンド」は第22位、「ウォッカ・マティーニをステアせずシェイクで」は第90位にランクインしている。
追記修正をステアせずシェイクでお願いします。
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▷ コメント欄
- ジョン・グレン監督期がいちばん面白いと思うの -- 名無しさん (2020-03-29 21:42:41)
- ジェームズ・ボンドはサイコパスとイギリスの大学のサイコパスの講義で上げていたとか -- 名無しさん (2020-03-29 21:54:18)
- 2度死ぬの後の女王陛下の007とかムーンレイカーの後のユアアイズオンリーとかぶっ飛んだ作品の後に賢者タイムみたいにシリアスな作品が入るよね -- 名無しさん (2020-03-29 22:24:55)
- 6代目ボンドは発表当時はアンチサイトが出来て降板依頼署名が行われるくらい叩かれてた。カジノロワイヤルが大ヒットしたんであっという間に静かになったけど -- 名無しさん (2020-03-30 01:39:25)
- ちょっと前に歴代OO7がBSでやってて横から見てたんだけど女の扱い悪かったりしてて意外だった。特に初期の頃 -- 名無しさん (2020-03-30 08:55:19)
- ダニエル・クレイグはビジュアルが歴代と比べても"イギリス人"っぽくないからね 個人的にも違和感はあったけど作品が面白かったのでOK -- 名無しさん (2020-03-30 10:50:43)
- クレイグ以前の偶数ボンドは面白いのに扱いが不遇で悲しい…3,4作品はやってほしかった -- 名無しさん (2020-03-30 20:05:30)
- まあ4代目のダルトンに関しては本人の降板希望もあったらしいからねぇ。プロデューサーはあと4,5本はやってほしかったそうだけど -- 名無しさん (2020-03-30 21:36:50)
- ステアではなくシェイクで作るウォッカマティーニはまずいカクテルとして有名 -- 名無しさん (2020-03-31 14:38:03)
- 「まさか原作には忍者は出てこんだろ」と思いながら「007は二度死ぬ」を読んだらもろに出て来たのでたまげた(ただし映画と違って戦闘には参加していない)。 -- 名無しさん (2020-09-27 16:06:41)
- ダニエル・クレイグのボンドの一人称が「俺」じゃないのが不満。 -- 名無しさん (2020-10-11 21:37:54)
- 「死ぬのは奴らだ」のミスター・ビッグは原作ではなぜかソ連の手先、映画では某小国の首相だったが、再映画化されたらボンドの敵ですらなくなり、「女王陛下」のユニオン・コルスみたいに協力者として描かれるかもしれない。 -- 名無しさん (2020-10-31 01:45:19)
- ヴェスパーマティーニってジン3対ウォッカ1対キナ・リレ0.5で作るやつじゃないかな? -- 名無しさん (2020-12-19 02:44:10)
- ニュースで女がボンドになるって聞いたけど男女平等の意味を履き違え過ぎだと思う -- 名無しさん (2021-03-16 13:58:52)
- ↑女性ボンドは「ない」と製作会社社長が明言してる。ただイギリス出身のアフリカ系ボンドの可能性は言われてる -- 名無しさん (2021-09-24 13:23:12)
- イギリス系の黒人ボンドならオズワルドボーテングみたいなど派手スーツで決めてほしいな。女性ボンドの話はどうせならロシアのXXXのスピンオフでトランプそっくりのアメリカ大統領に一泡吹かせる話とか -- 名無しさん (2021-11-14 12:18:15)
- メディア王エリオット・カーバーさんが、スペクターよりスペクターしてナントも -- 名無しさん (2022-06-05 13:27:38)
- ↑×3まさか先行してイギリス首相に初の有色系が誕生するとは思わなかった。 -- 名無しさん (2022-11-20 13:56:08)
- リビング・デイライツでヒロインが「チェロを取りに行かなきゃ!」ってワガママ言って「時間がないんだよ」とか言いつつ次のシーンでため息つきながらヒロインのチェロ乗せてるシーンは硬派だけど優しいダルトンの良さが出てたと思う -- 名無しさん (2022-12-18 12:29:38)
- ある意味徹底しているというべきか、ベッドシーンのようなヤってるシーンは数あれど女性の乳〇とか局部は絶対に映らないんだよねーOPのほぼシルエットの女性は全裸なのか…!?とかドキドキしたもんだ。まあそれ目的で見るような作品じゃないんだけどね。 -- 名無しさん (2023-03-03 15:08:36)
#comment
*2 「ソリテール」とも表記される。
*3 示唆するようなシーンはある
*4 ボンド役のショーン・コネリーの身長が188センチと高すぎて乗車すると非常に不格好になってしまい、急遽車体の屋根を取り払う改造を施したため。
*5 ボンドはこの車をレンタカー屋の店員に扮したQから受領しており、それと同じレンタカー屋に突入させることで「車を返却した」というユーモアになっている
*6 訳によっては「幻の名車」とも。
*7 機関銃は照準こそできたが弾が入ってないために撃てず、使えたのは火炎放射器と緊急脱出装置という状態だった
*8 公開された2015年当時の主力モデルであった『DB9』の後継モデルは『DB11』と名付けられた
*9 日本円で約3億7500万円
*10 ただしボンド以外の顔は隠れて見えない
*11 他には「オクトパシー」「カジノ・ロワイヤル」「慰めの報酬」「スペクター」
*12 題名の「ムーンレイカー」とは伝承に基づくイギリス英語の隠語。直訳すると「熊手を使って月を集める人」で、転じて「馬鹿者」という意味がある。
*13 なお、原作者のフレミング自身は『ムーンレイカー』という題名に疑問を持っていたが、「ムーンレイカー」という言葉にこだわる編集者に説き伏せられる形で『ムーンレイカー』という題名にしたという
*14 原作では、「ムーンレイカー」は弾道ミサイル及びその開発計画を意味している
*15 For Your Eyes Onlyは「あなたの目だけ(に見せる)」という意味。「Eyes Only」は極秘文書に使用される慣用句で、直訳で「目で見るだけ」、転じて「複写不可」などの意味を持ち、日本語版では「読後焼却すべし」とも意訳されている。
*16 演じていたバーナード・リー氏が撮影前に逝去したため
*17 『私を愛したスパイ』も映画と主題歌のタイトルが一致していないが、歌詞の中には主題歌のタイトルが入っていた
*18 実はボンド役のロジャー・ムーアとは同い年だった
*19 題名の「リビング・デイライツ」は直訳すると「生きた日光」だが、「○○ the living daylights out of」で「意識(正気)が飛ぶほど○○」という意味の慣用句となる。時々誤解されるが「living daylights」自体には「死ぬほど恐ろしい」という意味は無い。元々は原作の短編「ベルリン脱出」から採られた
*20 原題は「殺人許可証」の意味。当初は「Licence Revoked(剥奪されたライセンス)」であったが、諸事情により変更された
*21 題名の「ゴールデンアイ」は原作者のフレミングがジャマイカに所有していた別荘の名に因むもの。元はフレミングが海軍情報部時代に指揮していた作戦名で、フレミングはこの別荘で007シリーズの執筆を行っていた
*22 題名の意味は「世界を手に入れてもまだ足りない」。元はローマの詩人ユウェナリスがアレクサンドロス3世を風刺した言葉で、ボンド家の家訓でもある。
*23 ボンドがふざけてそう呼んだだけで本当にそういう名前かは不明
*24 ゲーム作品では何度か出番がある。
*25 「死ぬ間もない」「死んでいる暇はない」といった意味。「死ぬまでの時間が無い=即死」ではない。
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