フェンスの町で(相棒)

ページ名:フェンスの町で_相棒_

登録日:2017/12/29 (金) 20:44:00
更新日:2024/04/26 Fri 17:09:34NEW!
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親にも教師にも、僕らは何も期待してません。そんな事どうだっていいんです。


ただ、フェンスを見上げていて、こんなもん壊れちまえばいいのに、って思っただけなんです。



「フェンスの町で」は、2009年11月25日に放送された『相棒 Season8』第6話のエピソードである。


脚本:福田健一
監督:東伸児




概要

シリーズの恒例である、現実世界の社会問題を取り扱ったエピソード。
今回の主題となっているのは、未だ根強い問題として残っている「米軍基地問題」
しかし、内容は「基地に人生を狂わされた、思春期盛りの少年たちの犯罪を特命係が追う」という基地絡みのポリティカルな問題を避けたものになっており、
社会問題を扱いながらも、どこかスッキリとした後味が特徴のエピソードとなっている。


あらすじ

閉店間際の郵便局が強盗に襲われ、現金が強奪された。
局内の監視カメラに写っていた犯人は鮮やかな動きで従業員を無力化すると、拳銃らしき武器で従業員を脅し、まんまと現金を奪い取ることに成功。
事件発生後は急いで検問が設置され、最寄りの駅などに警戒態勢が敷かれるも、犯人らしき人物は引っかからない。
捜査一課の伊丹たちは、犯人の鮮やかな動きと手口、そして被害にあった郵便局が米軍基地付近にあることから基地関係者が犯人と推察するも、
デリケートな基地問題に触れることを嫌った内村に「米軍基地のことは忘れろ」と強く牽制されてしまう。


一方、特命係も独自に強盗事件を調べていた。
神戸は基地関係者の犯行を否定し「荒事に慣れたプロの犯行」という見解を示すも、
右京は、監視カメラに映る犯人が、金庫室の非常ボタンを見落としていることに着目し、神戸の推理に待ったをかける。
本当に犯人が犯罪のプロなら、こんな初歩的なミスを犯すだろうか?
それを疑問に思った右京は、神戸を連れていつものように独自の捜査を開始する。


登場人物

レギュラーキャラクター

特命係の警部殿。
独自に郵便局強盗事件を捜査する中、犯人が金庫室の非常ボタンを見落としていることに気付き、
「犯人は基地関係者」という捜査一課の見解や「犯罪のプロの犯行」という神戸の推理に疑問を持つ。
犯人の手際の良さから、基地周辺のサバイバルゲームサークルにあたりをつけて捜査を開始。一見して犯人とは思えない、15歳の少年・土本公平に目をつける。


サバゲーサークルでは、サークルの使っているエアガンが違法に威力を増したものであることを見抜いて暗に脅迫し、
一帯で活動するサークルの名簿を提供させることに成功。
「ソフトな脅迫だ」と舌を巻く神戸に、「人聞きの悪い。取引です」と嘯いた。

特命係の二代目相棒。もと警察庁警備局所属のエリート。
郵便局強盗事件に対しては、基地関係者の犯行を否定して「犯人は犯罪のプロ」という推理をしたが、右京にはやんわりと否定されてしまう。
右京の推察を裏付ける証拠が見つかった後は右京とともに、土本公平と、彼の練った「計画」の正体に迫る。

トリオ・ザ・捜一。今回は出番少なめ。
犯人の訓練された動きと、検問に引っかからないことを理由に、捜査の目を基地関係者に向ける。
内村及び中園の日和った姿勢に伊丹・芹沢は不服な様子だったが、三浦だけは「忘れるんじゃなく、慎重に行けってこと」だと解釈していた。

強盗犯の使っていた拳銃をモデルガンを改造したスタンガンだと見抜き、一晩で自作するジェバンニぶりを見せた。
改造スタンガンに心惹かれるものがあったらしい。

いつものように特命係のオフィスで休憩していた。
「公平が口を閉ざしてしまった」と愚痴る神戸に「あの年頃の子供は大変」と、自分の経験をもとに語った。
夏休み最終日に髪を金色に染め上げ「ビジュアル系のバンドを始める!」と言い出した息子を
「俺そっくりの顔なのに無理だ(※要約)」と自虐混じりに諭したところ、息子に口を利いてもらえなくなってしまったらしい…。

フェンスの向こう、米軍基地に疑念を向ける捜査一課の面々に対し、直々に出向いて「フェンスの向こう側のことはまず忘れろ」と釘を差した。

ゲストキャラクター

  • 土本公平(森田直幸)

サバゲーサークルの提供した名簿を通じ、右京が疑念を向けた少年。
基地付近の中学校に通う学生で、教師の佐藤によると、特に問題のある生徒ではないらしい。
クラスでいじめの標的となっており、特命係が中学校を訪ねた時には複数の生徒に囲まれ、主犯格の少年に殴る、蹴るの暴行を受けていた。


右京が自身の推理に従って目をつけた矢先に、母親からの通報で駆けつけた捜査一課に連行されてしまう。

  • 土本由香里(仁藤優子)

公平の母親のシングルマザー。
郵便局強盗事件の報道を見て、報道された犯人像が公平に似ていたことから警察に通報する。
家族ではあるが公平とは没交渉気味で、公平がいじめの標的になっていたことを知らなかった。また、どこか公平を恐れているような素振りを見せる。

  • 郵便局強盗犯

郵便局を襲撃し、金庫室から金を奪った強盗犯。
無駄のない動きで改造スタンガンで従業員を威嚇・無力化し、金を奪った後は速やかに逃走。
警察が素早く強いた検問や警戒態勢にも引っかからず逃走に成功した。


「動きに無駄がないこと」「検問に引っかからないこと」から一課は「犯人は基地関係者で、基地内に逃げ込んだから検問にかからなかったのでは」と推測するも、
内村が直々に釘を差したため、基地に手を出せずにいる。
神戸は基地関係者説を否定し「犯人は犯罪のプロ」と推理するが、右京は「犯人が金庫室の非常ボタンに気づいていなかった」ことから神戸の説に疑問を投げかけた。








【以下、事件の真相につきネタバレ注意







謎めいた犯人の正体

内村・中園の牽制によって捜査一課が大きく動けない中、特命係は独自に捜査を進める。
犯人が使っていたのはモデルガンを改造したスタンガン。
背負ったリュックに入ったバッテリーとコードでつながれ、トリガーを引くと、キサンタンガムでゲル状になった赤い塗料が噴き出す仕組みになっていた。
似たものを一晩で自作した米沢によると、この改造スタンガンはネットに制作方法が出回っており、
作るのに特殊な工作機器は不要、費用もさほど掛からなかったという。


右京は、神戸がそろそろ「捜査」に慣れたころだと考えて、強盗事件の犯人像について神戸に問う。
現場検証に向かう道すがらで神戸は、郵便局に近い米軍基地は作戦・通信・輸送系の基地で戦闘要員はいないことを指摘。
このことから、基地の人間を疑うのは早急と考える。
現場となった郵便局では、

  • 携帯の検問情報サイトは正確で即時性が高く、バイク用のナビも高性能化している。→検問を潜り抜け、バイクで脱出することも不可能ではない。
  • スタンガンを使ったのは、「銃では弾薬を証拠として残してしまう」「電気ショックで、記憶を曖昧にさせる」という考えから。
    さらに血に見える赤い塗料で周囲の恐怖心を煽り、死傷者も出さなかった。

と、残された証拠から自分なりの意見をまとめて「犯人は強盗慣れした、プロの犯罪者」という結論を出す。


「なるほど。犯罪捜査の盲点を指摘し、なおかつ 得た情報を多角的に分析する。実に模範的な回答です」
「そりゃどうも」
「優等生的というか 教科書的というか…あっ、失礼。独り言が過ぎました」
「いや、杉下さんの独り言は音声・意味ともに非常に明瞭なんですね、ハハ…」


右京は、神戸や捜査一課の意見とは異なる解釈もできる、と自説を語る。

  • スタンガンを使ったのは、銃を買うお金もコネクションもなかったから。血液の偽装も苦肉の策。
  • 郵便局への襲撃も思惑あってのことではなく、そこしか思いつかなかったから

さらに、右京は金庫室の監視カメラで、犯人が立っている位置からは非常ボタンが確認できず、ボタンを見落としていたことを指摘。
犯人が捜査一課の思うような基地関係者や神戸の言うようなプロの犯罪者なら、非常ボタンを見逃すとは思えないという右京。
さらに、右京は「ライダーの格好もフェイク」と推理。
犯人の被っていたヘルメットが顔面を覆い隠すフルフェイスではなくハーフキャップであったことに疑問を持った右京は
「ハーフキャップのヘルメットはかさばらない」ことを理由に、
「ライダーの格好は警察に『犯人はバイクで逃げた』と誤解させるための偽装」「犯行後はジャケットやメットを脱いでバッグに詰め込み、別の手段で逃走した」
と推理する。
それを裏付けるように二人は、郵便局付近の空き地で自転車のタイヤ痕を発見する。


右京は、基地周辺で活動するミリタリー関係・サバイバルゲームのサークルに目を付けた。
神戸の「プロの犯罪者」説は否定されたとはいえ、犯人の身のこなしは明らかに軍事的な訓練によるもの。
それを学んだとすれば、ミリタリー系の活動をするサークルが有力だろう、と右京は言う。
神戸の道案内を不安視しつつも、近隣のサークルを取りまとめる大型サークルのもとに向かう特命係。
サークルの拠点に続く道の途中で、二人はエアガンによる狙撃を受ける。
神戸は間一髪それをかわしたが、右京はよけられずにBB弾を受けてしまう。


サバイバルゲームサークルのリーダーを務める大瀧は、メンバーの非礼を特命係に詫びたものの、
特命係の「近隣のサークルの名簿の提出」という依頼はすげなく拒否する。
しかし右京は改正された銃刀法を盾に、先ほど右京を狙ったエアガンの威力が過剰ではないかと指摘*1
念のためにサークルで使われるエアガンをチェックしたい、と大瀧らを暗に脅迫する。
指摘は図星だったのか大瀧は態度を変え、チェックを免れるために名簿を特命係に提供した。


「ソフトな脅迫だ…」
「脅迫とは人聞きの悪い。取引です。」


捜査一課が相変わらずフェンスの向こうに疑念を向ける中、名簿に目を通した右京は15歳の少年、土本公平に着目し、神戸とともに土本家を尋ねる。
右京は犯人が自転車で逃走した理由を「免許を取れる年齢ではなかったから」と推測し、免許を取れる年齢に達していない公平にまず疑いを向けていた。
土本家は留守でコンタクトは取れなかったが、二人は公平の自転車のタイヤが、現場に残っていたタイヤ痕と一致することを発見。
公平はサークルで軍事的な訓練を受けており、右京の考える犯人像には当てはまる。
二人は次に、公平の通う中学校に向かった。


中学校の教師・佐藤は公平は問題のある生徒ではないと話すが、
佐藤に案内された校舎の屋上で、公平は複数の生徒に囲まれ、殴る蹴るの暴行を受けていた。
とっさに神戸が公平をかばって立ちふさがり暴行を止めさせるが、今度は伊丹達捜査一課がやってきて、公平を連行してしまった。
ノーヒントで土本公平まで辿り着いた特命係に驚く三浦。一課は公平の母親・由香里からの通報でやってきたのだという。


早速、捜査一課の聴取が始まった。
公平はあっさりと「自分が郵便局を襲った」と自供。
クラスでいじめられる毎日に嫌気が差し、強盗で得た資金を元手に町を出てどこか遠い場所で暮らしたかった、という動機を語るが、
強盗を終えると体中から力が抜けて、何もする気がなくなってしまったという。
「サークルで訓練を受けていたなら、いじめていた連中に対抗できたのでは?」という疑問に対しては、
「不良グループのバックには暴走族がいて、その先輩にはヤクザがいる」という噂が恐ろしくて反撃できなかったと答える。
逃走方法は右京の読み通りで、犯行直前にヘルメットを被って郵便局を襲い、金を奪った後にライダーの服装を脱いで予め持ち込んだバッグに隠し、
「バイクで逃走した」という情報に気を取られる検問を、自転車で通り抜けたのだという。


取調室の外では、三浦が公平の母親、土本由香里から話を聞いていた。
由香里は報道された犯人像が公平に似ていたのがなんとなく気になり、公平が学校にいる間に彼の部屋に入って、クローゼットの中に大金が隠されていたのを見つけた。
彼女は身分不相応の大金を不審に思い、警察に公平の事を伝えたのだという。
三浦は更に公平や事件のことを尋ねるが、由香里は「公平が怖い」と言ったきり、うつむいて口を閉ざしてしまった。


矛盾する供述

事件は解決したが、神戸はまだ公平の自供に違和感を感じていた。
公平は単なる中学生にもかかわらず、刑事に囲まれながら冷静に受け答えをしていた。
肝が座っている、という形容で片付けられない不自然さを、神戸は拭うことができなかった。
そんな中、右京は公平の教科書の片隅に、爆薬の化学式を記した落書きを見つける。
同時に、米沢も復元した公平のPCのデータから、爆弾の材料をまとめたエクセルファイルと、爆弾の製造法を記したWebサイトを見つけていた。


公平を取り調べる特命係。よく許したな捜査一課。
土本家近くにあるホームセンターの防犯カメラには公平の姿が写っていた。
ホームセンターのレジには顧客一人一人の買い物のデータが全て残っており、特命係は公平が爆弾の材料を購入したことを突き止めていた。
公平は爆弾に関してもあっさりと自供。
本当は、強盗で得た資金で逃亡する前に、教室を爆破してクラス全員に復讐するつもりであったと明かし、爆弾は「西町のふれあい橋の下の空き地」にあると白状。
「何で最初からその話をしないの?」という神戸に、「爆弾まで作っていたとなると、罪が重くなるから」という公平。


公平の言った場所を探すと、供述通り爆弾が見つかった。
だが、米沢と爆発物処理班によると、爆弾には起爆用のタイマーがセットされておらず、遠隔操作できるような仕掛けもなかったという。
そもそも公平のPCにあった材料リストにも、タイマーなどの材料は記されていなかった。
右京は、爆弾の時限装置は市販のタイマーを改造すれば簡単に作れるという。
公平はまだ真実を隠しているのではないかと疑う特命。


再び公平を取り調べる特命は、爆弾のタイマーについて尋ねる。
すると公平は、
「強盗をしたのは大量に爆弾を作るため」「作った爆弾で学校全体を破壊したかった。そのためなら死んでもよかった」と今までの供述を翻す。
「学校ごと爆破するほうが罪が重い。取り調べや裁判での心証が悪くなる」と、裁判への影響を懸念し真実を伏せていた公平に対し、
神戸は「『やるつもり』だけだったら、罪は変わらない」「嘘を重ねるほうが、よっぽど心証が悪い」と嘘を重ねることを咎めた。


今まで素直に答えていた公平はその供述を最後に、口を閉ざしてしまった。
「死んでもいい」と言いながら、量刑や心証を気にする、矛盾した公平の態度に疑問を持つ特命。
オフィスで休憩していた角田課長の「息子が話を聞いてくれなくなった」という話題から、二人は公平も両親と不仲だったことを思い出す。


特命係は土本家を訪ね、由香里に話を聞くことにした。
三浦と由香里の話を立ち聞きしていた特命は由香里と公平の家庭内での関係を尋ねる。
由香里は公平が学校でいじめられていることを知らないなど、三浦に話した通り互いに没交渉の関係にあった。
その原因は、1年前に離婚した夫にあるという由香里。


職場の草野球チームに入っていた夫は、ある日グラウンドの駐車場でYナンバー*2の車とトラブルになり、殴られてケガを負った。
警察は基地関係のトラブルには及び腰で、大きな捜査は行われなかった。
警察をあきらめ市役所などに相談をする由香里は、相談を重ねる中で同じような体験をした人と知り合い、その集まりは次第に規模を増して小さなグループに成長した。
…が、グループの成立からほどなくして、グループの活動が快く思われなかったのか、夫は会社の不景気に際して真っ先にリストラされてしまった。
基地関係者とのトラブルは解決せず、それをきっかけに職まで失ってしまった由香里の夫は、
理不尽に対するくやしさ・怒りを、由香里に暴力という形でぶつけるようになり、二人はそれがきっかけで離婚。
夫と別れ一時の安息を得たと思った由香里だが、日に日に別れた夫に似てくる息子・公平に暴力を振るうかつての夫の面影を見た彼女は、
次第に公平を遠ざけるようになってしまったのだという。


由香里が公平を距離を置く理由を知った特命係。
基地関係者とのトラブルで両親が離婚し、母と子との関係にも父親のおかげで溝ができてしまった土本家。
そこから神戸は「公平は、土本家を破壊する原因となった米軍基地を憎んでいる」と推測。
爆弾製造の真の目的は学校の爆破によるいじめへの報復ではなく、公平にとっての諸悪の根源である米軍基地への攻撃なのではないか…という推理を立てる。


次に特命係が訪れたのは、公平の通っていたサークルを仕切る元自衛官・山下の働く自動車修理工場。
山下が言うには、サークルで教えているのは自衛隊の徒手格闘を改良した実戦向けの格闘術だという。
特命係の前で山下は同僚と演武を披露し、「互いに訓練を積めば、急所を攻撃しないように加減ができる」と説明。
その言葉で、二人は中学校の屋上でのことを思い出す。
公平は不良グループに一方的にやられていたが、取調室では平気な様子だった。
土本に暴行を加えていた少年は、実は公平の仲間…という可能性に二人は行き当たる。


特命係は、町で堂々とサボる不良グループに話を聞くことにする。



はい君たち、四中?


オッサン 誰?


(手帳を取り出しながら)ちょっと話を聞かせてもらいたいんだけど。


(逃げる不良グループ)


はいはいはい!素直に質問に答えてくれたら、学校サボったの見逃してあげるよ。
オッサン呼ばわりした事もね。


…わかったよ。



不良グループの5人は、

  • 公平をいじめていた少年の名前は村越
  • 村越はいじめに参加しているが、不良グループと常に行動しているわけではない
  • 不良グループが公平をいじめていると「代われ」と言って、公平に暴行を加える。
  • 一度、村越と公平が河原で一緒にいるところを見た。村越によると「土本が弱すぎるので鍛えていた」という。

と証言。


右京と神戸の中で、「村越と公平は仲間」という推理は確信に変わりつつあった。
二人は共犯関係にあることを周囲に隠すために、村越は公平にあえて殴る蹴るの暴行を加え、周囲に対して「いじめの被害者と加害者」と印象づけた。
そして村越は格闘術で意図的に急所を外し、公平に大きなダメージを与えないようにしていた。
だが、「なぜ人間関係を偽装したのか」という疑問はまだ残っている。
郵便局強盗も二人でかかれば、もっとスマートに、手早く終われたはず。
なのになぜ、公平は村越との共犯関係を隠し通すのか?


二人は村越に接触するために村越家を訪ねる。応対したのは母親の村越由美だった。
由美は村越が帰ってきていないことと来客中であることを告げ、邪険な態度で二人を追い払おうとする。
息子が事件に巻き込まれたというのに、母親とは思えぬ淡白な対応の由美。
すると、家の奥から「客人」が現れる。客人の正体は、基地関係者の外国人・ジョニー。
特命係に応対してきたときとはうって変わって、しなを作った態度でジョニーに接する由美。
ジョニーを見送った由美は、訝しげにその光景を見つめていた二人に弁明するかのようにまくしたてた。


私だって人生を楽しむ権利あるんじゃないですか?
夫と別れてからずっと子供に縛られて、毎日勤め先のスーパーと家の往復でもう心が腐りそうでした。
あんな日々もう嫌なんです。


…村越くんはご存知なんですか?


さあ、知らないんじゃない?しばらく顔も見てないし。


由美は丁度鳴った携帯電話を取り、応答する。
電話口からは、「デイビット」なるアメリカ人の声。由美はジョニーにそうしたように、楽しげな声でデイビットと談笑していた…。


村越家を後にして、再び公平を聴取する特命係。
右京はこれまでに得られた手がかりと証言を元に、公平、そして村越が考えた「真の計画」の内容を公平自身の前で推理してみせる。
彼らの真の計画の目的は、郵便局から強奪したお金でありったけの爆弾を作り、その爆弾で基地にダメージを与えること。
本来は公平・村越の二人組でこの計画は遂行されるはずだったが、この計画は強盗を担当した公平が逮捕されることも計算に入れており、
その場合は村越一人で計画を遂行できるよう、「計画は公平一人のものだった」と公平が偽装する手はずになっていた。


学校で「いじめの被害者と加害者」の関係を装っていたのは、公平が逮捕された時に村越に疑惑を向けないため。
ふれあい橋の下に隠していた爆弾を見つけさせたのは、わざと爆弾を見つけさせ、事件は終わったと思わせるため。
だが、エクセルファイルに記されていた材料の量は、最初の爆弾のサイズを考えると多すぎる。そこから右京は「爆弾はもう一つ存在する」と確信していた。


右京は、公平と村越の境遇が似ていることを指摘する。
基地が原因で家庭を破壊された公平と、母親の愛情を失った村越。
二人共、基地を憎むに十分な理由を持っていた。


右京の推理を前に、口を閉ざしていた公平はゆっくりと真実を語り始めた。



親にも教師にも、僕らは何も期待してません。そんな事どうだっていいんです。


ただ、フェンスを見上げていて、こんなもん壊れちまえばいいのに、って思っただけなんです。


フェンスを壊せば 何かが変わると思った?


わかりません。けど、そんな気になって。村越も同じ気持ちで…。
だから、絶対に僕たちはやり遂げなきゃいけないんです。



己に言い聞かせるように、強固な決意を語る公平。
しかしこのまま計画を続行すれば、確実に村越の命は失われる。



このまま計画を実行し続けるという事は 村越君1人が爆弾を持って基地に突入するという事です。
それがどういう事になるのか、爆弾を作った君ならわかりますよね。


唯一の理解者である村越くんを、君は見殺しにするつもりですか?
土本君…。今、村越君の命を救えるのは君だけです。
彼を…一番大切な友達を 死なせてもいいんですか?



その言葉に、公平の決意は揺らいだ。
彼は第二の爆弾の隠し場所を告白するが、すでに村越は爆弾を持ち、侵入経路として事前に打ち合わせていた第3ゲート東側のフェンスへと向かっただろう、とも話す。
村越の決意は強固であり、計画の中止はありえない、という公平。


村越の自爆を止めるべく、急ぎ取調室を出る特命。
ドアを開いて飛び出す直前の2人を、公平が呼び止めた。


助けてください!俺…友達 村越しかいないから…。


ありがとう。


急ぎましょう。


少年たちが本当に望んだもの
公平の予想通り、村越は第二の爆弾を持って第3ゲート東側のフェンスの目前まで来ていた。
ゆっくりとフェンスに向けて歩む村越の前に、先回りしていた特命係の二人が現れる。


君が背負ってる、そのたった一つの爆弾。
それだけじゃ基地を破壊するどころか、ほとんどダメージなんて与えることはできない!君の命がなくなるだけだ。


うるせぇ…俺なんてどうなったっていいんだ。俺が死んだって、誰も悲しまねえよ。


君のやろうとしていること。それは 君の尊い命を捨てるほど価値のあるものなんですか?


わかんねぇ…わかんねぇ…。


その行動が本当に正しいのか、村越自身にもきっと良くはわかっていなかったのだろう。
あるいは、自分の行為が無駄でしかないことをどこかで悟っていたのかもしれない。
それでも、村越は計画を実行しようと起爆装置のスイッチを取り出す。自分たちの平穏を壊した基地に復讐するために。友である公平の犠牲に報いるために。


君は、自分が死んでも誰も悲しまない…そう言いましたね。本当にそうでしょうか?


なぜ僕たちがこの場所を突き止められたか、わかるよね?


土本君が「君を助けてほしい」と言っています。


友達は 君しかいないそうだよ。


公平の思いを知った村越が動きを止める。
その隙に、特命は爆弾とスイッチを取り上げる。村越は全くの無抵抗だった。
爆弾を手放した村越が、ゆっくりと膝から崩れ落ちる。
村越の背後、特命係の視線の先に、事前に連絡していた捜査一課のパトカーのランプが瞬いていた…。



  • 土本公平

いじめられていた原因は両親の離婚。名字が変わったことを不良グループからいじられ、それがいじめに発展していった。旧姓は鈴木。
いじめのせいでクラスでは孤立していたが、同時期に村越も同じように両親が離婚したことを知り、
「基地さえなければこんなことにはならなかった」という思いを共有した2人は密かに意気投合。
いつしか公平は基地を破壊するストーリーを密かに考案し、村越とともに計画実現のために動き始めた。
そして公平は、思いを共有する村越との「基地破壊計画」を推し進めることが楽しくなっていった。


計画を遂行するために格闘技を教えるサークルに入り、
逮捕された時に村越に疑いの目が向かないよう「公平が格闘技を学び、さらに村越に教える」という形で互いに格闘技を覚え*3
学校では「いじめの被害者と加害者」を装って、徹底的に二人のつながりを隠した。
郵便局での犯行の際はライダーの格好をすることで「移動手段はバイク」と思い込ませて捜査を撹乱、
逮捕された後も「個人の犯行」と供述し続けるとともに、爆弾を発見させて村越との関わりを隠したが、供述の矛盾を特命係に突かれて全てを自供。


その動機は「基地を壊すことで、なにかが変わると思った」という、緻密な犯行に対して曖昧なもの。
言ってしまえば、思春期特有の「若気の至り」からくる刹那的な行動であり、それで具体的に何が起こり、何が変わるのかは自分にもわかっていなかった。
しかし「村越が死んでもいいのか」という特命係の説得に心が揺らぎ、村越を助けるために爆弾の場所と侵入経路を自白。
彼が本当に望んでいたのは基地の破壊ではなく、村越とのかけがえのない友情だった…。
村越良明(阪本奨悟)
不良グループの一員と思われていた、公平の共犯者。


公平と同じように両親が離婚し、母親は自分を半ば見捨てて基地関係者の男たちにうつつを抜かすようになってしまった。旧姓は手塚。
そのことから恐らく基地への憎しみを抱き、境遇の似た公平と密かに意気投合。
共に基地破壊計画を推し進め、公平が逮捕された後も計画を続行しようとした。


彼も、公平と同じく「基地を壊すことで、なにかが変わると思った」という動機から計画を進めたが、
その意志は公平よりも強固であり、自爆も厭わずに爆弾を抱えて計画を続行しようとした。
しかし、右京に「君のやろうとしていること。それは 君の尊い命を捨てるほど価値のあるものなんですか?」と問われた際には、
「わかんねえ…わかんねえ…」と迷いを見せていた。彼自身、自分の行為が無駄でしかないことをどこかで悟っていたのかもしれない。


最後は公平が自爆を望んでいないことを特命係を通して知ったことで戦意喪失。
彼も公平と同じく、真に望んでいたのは憎しみを分かち合える仲間だったのだろう。

  • 村越由美(滝沢涼子)

村越良明の母親。
原因は不明だが夫と離婚しシングルマザーとなっていたが、
同じ境遇の由香里が「かつて暴力を振るった父親に、公平が似てきたから」というまだ理解できる理由で公平を突き放していたのに対し、
由美は自分の生活を束縛する良明を、身勝手な怒りによって遠ざけ、無関心を貫いていた。
「夫と別れてからずっと子供に縛られて」という特命係に対する言動から、良明を「自分の生活を束縛する枷」としか見ていないことがわかる。
その後は複数の基地関係者の外国人たちと交際するようになり、それが本人曰く「人生の楽しみ」になっていた。
ジョニーとの会話では「go to bed」という言葉が聞き取れることから、基地関係者の外国人向けに「春を売っていた」可能性も否定できない。


シングルマザーとなり、生きるために自由を奪われたという点では大いに同情できるが、彼女が良明に少しでも愛を向けていれば、この事件は防がれたかもしれない。
良明の不幸は、母親がシングルマザーの素質が無かったことだろう。子供は親を選べない悲しさがここにある。


…だが、由美のこの息子を突き放す振舞いが公平と良明の友情が生まれるきっかけになったことも否定できない。



  • 土本公平のかつての父親

公平が事件を起こす引き金となった元凶といっていい人物。
米軍関係者がかかわる事件に巻き込まれたことがきっかけに、『何かを変えなければ』という正義感のもとに行動した結果、逆にそれが自分の身を滅ぼすという結末になったことには同情でき、本人としても非常に辛いであろうし、働き盛りで妻子がいるなかその後も再就職できないというのはあの年代の男性では過酷なストレスであろう。
だが、彼が犯した最大の過ちはよりにもよって本人を長年支えてきた妻にその苛立ちの矛先を向け、妻へのDVに走った点だろう。
越えてはならない一線を越えてしまったことが、結果的に妻と息子の人生を狂わせることとなってしまった。
良明と同じく公平もまた、このように生まれてくる子供は親を選べないという不変の事実に運命を狂わされたといえる。





事件から一夜明け、二人は警察に保護されていた。
無言で向き合う公平と村越。やがて公平が口を開く。


…しゃべっちゃった…。ごめん。


何が、ごめんだよ。


…ごめん。


一方、特命係は基地のフェンスの周囲を散歩していた。
話題に上がるのは、やはりあの2人のこと。


よかったですね。


ええ…。


計画通りにいってたら 彼らの人生終わってましたよ。


ええ…。しかし、彼らの犯した罪は、決して軽いものではありません。
それだけに、彼らにはこれから乗り越えなければならない事がたくさんありますねぇ。


まだ若いですからね、やり直せますよ。ね?


ええ。そう信じましょう。


余談

相棒でも珍しい、一切の死人が出なかった回。
Season5・12話「狼の行方」やSeason6・15話「20世紀からの復讐」、season7・11話「越境捜査」など前例がないわけではないが、
それでも作中で死人が出ないのはかなり珍しい。


冒頭と終盤に流れたコーラス曲は、イギリスの少年合唱団「リベラ(Libera)」の「Secret」。
「基地の攻撃」という「秘密」を通じて仲間になった公平と村越にかかった選曲だろうか。


劇中では明確にされなかったが、「基地」のロケ地は横田基地周辺とのこと。


公平を筆頭に子供を気にかける素振りが多かった神戸。
神戸の子供との絡みはSeason9・13話「通報者」などで更に掘り下げられることになる。


なお登場人物の土本公平だが、下の「公平」という名前はあの陣川と同じ名前である。
尤も陣川はこの回には出てない為それが何かあったわけではないが、レギュラーとゲストの名前被りが出るのは長編の常であろう。



追記・修正はちゃんと計画を立ててから。


  • 神戸は「計画通りにいってたら二人の人生終わってた」と言ってましたが、具体的にどんな罪に問われるのかどうか分かる人いたらご教授をお願いします。 -- 初稿執筆者 (2017-12-29 20:50:22)
  • ↑ そういう「現実なら~~になるだろう」系の指摘は野暮だし荒れる恐れがあるし止めといた方がいい。作中では綺麗に終わったんだし -- 名無しさん (2017-12-29 21:45:35)
  • ↑いくらなんでも指摘がズレ過ぎでしょ…。 -- 名無しさん (2017-12-30 15:27:17)
  • ↑3 基地内で爆発物を爆発させた時点で警備兵に射殺される可能性があります -- 名無しさん (2017-12-31 01:40:58)
  • ↑4 そもそも村越少年は自爆しようとしていたので、計画では二人とも自爆する予定だった可能性あり -- 名無しさん (2018-03-22 01:16:08)
  • 事件の後、村越少年の母親は加害者家族バッシングで人生転落する可能性があるだろうけど、仮にそうなったとしてもあまり同情できないし -- 名無しさん (2018-06-23 00:24:07)

#comment

*1 平成18年8月21日に改正された銃刀法では、一定以上の威力を持つエアガンは「準空気銃」と称され、所持を禁止されている。
*2 駐留軍人や軍属の個人所有の自動車を示す特殊ナンバープレート。Yは、「横浜」のY。
*3 不良グループの「公平と村越が河原に一緒にいた」という証言は、公平が村越に格闘技を教えていた光景を証言したものだった。

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コメント

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名無し
>> 返信元

ありがとう!他の曜日で4の再放送やってるけど何でか殺人ヒーターはやらなかったんだよね 楽しみにしてる

返信
2024-04-30 01:35:07

名無し
>> 返信元

特に支障はないはずだし関東地区では先週金曜日に流れたので

返信
2024-04-29 18:22:41

名無し

自分の地域丁度シーズン8始めたんだけどこれ再放送されるのか気になってる

返信
2024-04-29 01:56:44

名無し

米軍基地問題が題材ということで、あんまり再放送されない話だと思ってたけど、結構再放送されてたね。僕も見た記憶ある。

返信
2024-04-27 08:47:18

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