ダウンフォース

ページ名:ダウンフォース

登録日:2009/07/01 (水) 16:51:48
更新日:2023/11/21 Tue 11:00:19NEW!
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ダウンフォースは、主にモータースポーツにおいて使用される用語。
単純な質量以外の要因で車体を地面に強く押し付ける下向きの力のこと。


■揚力とダウンフォース

ダウンフォースについて話す前に、まず「揚力」について解説しよう。
重量が300トン以上の重量を持つ航空機(特にジャンボジェット機等)がなぜ空を飛べるのか疑問に思ったことはないだろうか?
その秘密は、あの大きな翼の上下を流れている空気にある。


止まっている状態の飛行機の翼には、空気によって上面には「下に押さえつける方向」に、下面には「上に持ち上げる方向」に同じだけの力(圧力)がかかっている。


しかし、飛行機が滑走をし始めると、翼の上面を流れる空気の力が小さくなり、逆に下面を流れる空気の力は大きくなる。
結果、下に押さえつける力より上に持ち上げようとする力の方が大きくなり、重い航空機を飛ばすことができるのである。
この時、上面と下面で発生する力の差が揚力である。


余談ではあるが、揚力が航空機の重量を上回って初めて飛ぶことができる。
揚力は速度が向上するほど大きくなるので、航空機には必ず飛行可能な最低速度が定められている。


ダウンフォースは、翼の上面と下面の力の差という意味では揚力と同じなのだが、下に押さえつける力が上に持ち上げる力より大きい場合に発生するも力のことを言う。
そのため揚力とは力の方向が正反対になり「逆揚力」とも呼ばれる。つまり、物体にダウンフォースがはたらくと、その物体は地面に押さえつけられることになるのだ。


自動車の高速走行時にはタイヤの路面追従性の低下が起こり、操縦安定性の悪化やタイヤの空転、車体の形状によっては揚力まで発生してしまうことがある。
ダウンフォースを発生させることができれば、タイヤを地面に押しつけて、これらを防ぐことができるのである。


この力を発生させるためには、飛行機の翼を上下反対にしたような部品を取り付ける必要がある。
その部品こそが、現在で言われている「スポイラー」や「ウィング」のことである。


ウィングの概念が登場した60年代以降のレーシングカーは、より高速で走行しながらコーナーを曲がりたいため、必ずダウンフォースを得るように設計されている。


現代のF1マシンはダウンフォースを発生させる部品の形状がかなり発達しており、最大で2.5tほどのダウンフォースを発生できるとされる。
F1マシンの重量は800kg以下と非常に軽量であるため、単に空力のみを考えた場合、理論的にはF1マシンが天井に張り付いて走る事も可能とまで言われている。
また、フォーミュラーカーではよく接触により壊れる部品でもあり*1、ピットに戻った際に交換できるように交換しやすい形状になっている。ウイングだけで数百万が吹き飛ぶ高級品であるが

■タイヤとダウンフォース

車が効率よく曲がるためにはタイヤの摩擦力を大きくするか、接地圧を大きくすることで対応できる。


簡単に表すと
摩擦力=摩擦係数×タイヤ接地圧


であるが、各レースでは規則によりタイヤの摩擦係数(サイズ、構造、材質)は全車両でほぼ同一であることがほとんどである。
また、タイヤの開発は当然タイヤメーカー中心であるため、車体を作るチームやメーカーだけの努力で改善できるものではない。


車体を作っているチームやメーカーが介入できる分野でグリップ力を高め、コーナリングパワー(CP)を稼ぐには、
タイヤを地面に押し付ける力、つまり上式におけるタイヤの接地圧を増加させる他ない。


そのためにできる一番簡単な方法は、車体の重量そのものを増やすこと。
しかし、車体重量を増加させした場合には、コーナー走行中に慣性力(遠心力)が大きくなってしまう。
せっかく車体を曲げようとするために必要な摩擦力を上げても、それに逆らおうとする遠心力まで大きくなってしまえば全く意味がない。
おまけに、ゴムには一般的に荷重がかかると摩擦係数が低くなる性質があるため、接地圧が2倍になっても摩擦力が2倍になることはない。その一方で、遠心力の大きさは重量に比例する。そのため、車重の増加でタイヤの摩擦力が増えた場合は、遠心力がそれ以上に増えていることがほとんどである。
そのため、車重で摩擦力を増やしても結局は遠心力と相殺し合って効率よく曲がる目的を達成できない...どころか、遠心力に負けて逆にコーナリングスピードが下がってしまうケースのほうが多い。おまけに、車両重量が大きいと、車が加速するにも減速するにも大きな力が必要となるため、エンジンやブレーキに強い負荷がかかることになる。


タイヤを地面に押し付ける力が小さくなることを承知でレーシングカーが非常に軽く作られているのは、このように車重でタイヤのグリップを上げてもほとんどメリットを得ることができないためである。


では、車体重量が軽く、遠心力の小さい状態でもタイヤ接地圧を大きくするためにはどうすればよいのか?その答えがダウンフォースだったのである。



■ダウンフォースの特性

しかし、ダウンフォースも万能というわけではない。
強いダウンフォースを得られれば旋回時の速度を向上させることができるが、エネルギー保存の法則により、
同時に誘導抗力(空気抵抗)も増すことになり、ストレート走行時の最高速度が犠牲になってしまうのだ。


つまりダウンフォースを簡単に説明すると、


ダウンフォースが強ければ強いほど、安定性の向上でコーナーの平均速度は高まる反面、ストレートでの最高速度は落ちる。
また、タイヤを強く地面に押しつけて横滑りを防ぐため、タイヤの消耗は和らぐ*2


ダウンフォースが弱ければ弱いほど低速でしか曲がれない反面、ストレートの最高速度は伸びる。
一方で、ダウンフォースによって得られるタイヤの接地圧は少なくなり、横滑りが大きくなり、タイヤの消耗は早い。


これらのことから、マシンを速く走らせるためには、そのサーキットにおけるダウンフォースの「適量」を把握すること非常に重要となる。
実際、コーナーが多く、大きなダウンフォースが必要になるサーキットと、直線の多く、空気抵抗が少ない方が速く走れるサーキットでは、ダウンフォースの発生量が全く異なるウィングが使用されることが当たり前となっている*3


これらのことから、速いレーシングカーを開発するにあたっては、「いかに空気抵抗を発生させずに多くのダウンフォースを生み出せるか」ということが非常に重要である。
この命題に対して、レーシングチームのエンジニアは、日々頭を悩ませているのだ。


■可変空力システムの歴史

ダウンフォースを大きくすれば直線が遅くなり、少なくすればコーナーのスピードが落ちてしまう。というのは前述の通り。ここから「直線とコーナーでダウンフォースの発生量を変えることができる」のが、理想の空力パーツであることは容易に想像できるだろう。


実際、航空機にも揚力の大きさを状況に応じて調整できるよう、翼の一部分の角度を操縦席から変えることができるようになっているのはよく知られており、レーシングカーにウィングが普及した当時から、同様の考えを持ったカーデザイナーは多くいたと思われる。


なにせ、ウィングが登場した1960年代当時から、いわゆる可変ウィングはあっという間に普及したのだから。


コーナーでロール*4する際のサスペンションの動きと連動して、コーナを曲がっている際は角度が大きくなり、直進の時は角度が浅くなって、ダウンフォース量は直進安定性を確保できる最小限のものとなり、同時に空気抵抗も減るという機構を有したレーシングカーが世界各国で登場した。


しかし、当時はウィングをしっかりと固定する方法が確立していなかったため、これらのウィングが走行中に壊れて大事故を起こすケースが多発。また、ウィングそのものの効果の大きさゆえに、レーシングカーは急激にスピードアップしていった。これらの要因により、現代と比べものにならないほど車体の強度が低かったレーシングカーの安全性を確保できなくなっていたのである。


そこで、レースの運営団体は、ウィングそのものに様々な規制を施した。ウィングの固定位置や幅に関する規則が定められるようになったほか、ウィングはサスペンションではなく車体本体にしっかり固定されていなければならないとされ、可変機構も同時に禁止されいった。


これらにより、可変ウィングは一時レースの世界から姿を消していた。


しかし、マシンやサーキットの安全が確保できるようになった現在では、可変エアロに再びスポットが当たりつつある。


有名なのがDRS(空気抵抗低減装置)で、これは競り合っている2台の車両のうち、後方の車両にのみ可変リアウィングの使用を許可することで、直線でスピード差を生じさせ、追い抜きを促進するというもの。


あくまで追い抜き促進が目的であるため、他の可変空力装置は禁止されていることや、使用条件もかなり細かく設定されている事も付け加えておく。


しかし、そのような規則が存在しない市販車では、ブレーキを踏んだ際やステアリングを切った際に角度が大きくなるウィングが高級スポーツカーの間で普及しており、こちらではパフォーマンス面での恩恵を得られる装置として受け入れられている。


地上効果とウイングカー

効率のよいダウンフォースが生まれる車両形状はF-NipponやIRLを代表とするウイングカー形状。
F1にも70年代後期に登場した。


それから、現在規制と進化を繰り返しているディフューザーであるが、そのダウンフォースはF1マシン全体の40%〜50%を占める。
フロントウイングが20%〜30%。
リアウイングは30%〜40%となる。



■その他

難しそうだが、我々一般人が体験できるダウンフォースは身近で、約100km/hもあれば感じることはできる。
ウイングなどの空力添加物があれば、つけるかつけないかで体感できるし、逆にセスナが150km/hで離陸できるというから、容易に想像できるはず*5


ミニ四駆、ラジコンにおいて

また、ミニ四駆の某博士は間違ってはないがデタラメである。
確かにミニ四駆でも、理論上ダウンフォースを発生させることはできるが、あのサイズと重量*6にあのスピードで効果を体感および実感できるだけの量にするのは、現実では困難だからである。
もし体感できたとしても前述のように最高速度が犠牲になってしまうので、間違いなくレースでは不利になる。
漫画やアニメの設定は、現実をかなり誇張したものと捉えるのが無難だろう。
現実のミニ四駆レースにおけるダウンフォースは、接地時は主にローラーのスラスト角によって機械的に発生しており空力は眉唾扱いされていた。
しかし、近年のアップダウンやジャンプの激しいコースを攻略するにあたり、空力がジャンプやレーンチェンジャーの下り坂といった車体が宙に浮いたときの姿勢制御に関わっていることが注目されつつある。


一方、同じ自動車模型であっても、一般的な1/12~1/8スケールのラジコンカーであれば話は別。
こちらはサイズ・重量比が実車に近づいている上に、ある程度以上競技を意識したモデルとなればダウンフォースを気にする必要が生じるレベルのスピード*7が出るためである。
例えばツーリングカーの場合、前部はフロントグリル~ボンネット~フロントウィンドウの範囲、後部はリアウイング*8が主なダウンフォース源となる。
そのため、「このコースはコーナーが多いからハンドリングをクイックにしたい。鼻先が短いボディでダウンフォースを前寄りにしよう」といった具合にボディ選びがセッティングの範疇として重要となる。
さらに、純粋な競技用ボディではレギュレーションの許す範囲でダウンフォースを稼ごうとした結果、「実車ならドライバーが乗れない*9し、エンジンも入らない」「4ドアセダンで競うクラスなのにどう見てもピックアップトラックにウイングを付けたようにしか見えない」といった模型として問題がある形状のものが数多く作られている。


市販品でも空力パーツはあるが、空力を考えた場合、どの速度帯を狙うかでまったく方向性が違うので、体感できないものや逆にリフト*10を起こすものまである。


なお、自動車ではなくベーゴマの防御力付加を狙ってダウンフォースを利用した事例も存在するが、その効果のほどは当該項目をご覧いただきたい。



この項目はダウンフォースの設定を間違え、失速中です。
追記、修正を頼みます。


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  • ダウンフォースじゃ! -- 名無しさん (2014-01-31 22:53:56)
  • ミニ四駆のサイズでダウンフォースを発生させようとすると、とんでもない速度が必要になるとかなんとか -- 名無しさん (2014-05-17 22:11:12)
  • マグナムはDFが無いからストレートが速いって設定だったのにベルクカイザーの左右合体は強力なDFを発生させるから超速くなる設定だった。なんでやねん -- 名無しさん (2015-08-29 10:27:20)
  • ↑とは言ってもトライダガーもそういう設定だったし…… -- 名無しさん (2015-08-29 11:19:20)
  • ↑↑サイクロンマグナムのダウンフォースの設定は漫画とアニメで正反対だったなw -- 名無しさん (2015-10-25 23:59:29)
  • ↑3 マグナムは空気抵抗が少ないからトップスピードが高い、トライダガーはダウンフォースで地面にマシンがしっかりと設置してタイヤの空転等のロスがないから速いって考えれば良い。ベルクは知らん、マシン2台横に繋げたって空気抵抗が極端に変わると思えん -- 名無しさん (2016-10-09 16:20:21)
  • レツゴはトラクションばかりで空気抵抗を考えなさすぎ -- 名無しさん (2018-01-12 01:14:47)
  • 漫画で豪樹がやってた手に羽くっつけて走るやつって割と危険だよな -- 名無しさん (2018-07-11 23:10:23)
  • サイバーフォーミュラだとファン、というかプロペラでダウンフォースを増減させていたけど、あれって実際にはどうなんだろ? -- 名無しさん (2018-07-12 00:06:49)
  • ↑現実でも、ファンカーと呼ばれるF1のブラバムBT46BやマクラーレンF1に装備されている。 -- 名無しさん (2018-07-12 09:36:46)
  • トライピオ(ぼそっ) -- 名無しさん (2020-08-08 22:21:00)
  • ↑最早爆転世代のベイブレードの中でも1番の知名度なんじゃないかな…w -- 名無しさん (2020-12-14 17:49:38)
  • ラジコンカーの話が出てこないので淋しい。レース用ボディのデザインがダウンフォースを重視しすぎて「お前のような4ドアセダンがいるか」状態になったり、コンパクトカーボディを乗せたらダウンフォースがフロントが過多・リアが不足になって前後タイヤの減りに露骨に差が出たりとか愉快なことになってるのに。 -- 名無しさん (2022-08-07 10:46:34)

#comment

*1 カーボンファイバーでできているので軽くて丈夫だが、流石に300㎞/h近くのスピードと、軽いとはいえ800キロもあるマシンに接触すると破損してしまう上、安全上エネルギーを分散させるために意図的に壊れるようになっている
*2 ただし、「タイヤを押し付ける」という特性上、タイヤを変形させようとする力は強くなるため、負荷に耐えられずに裂けたり破裂したりするリスクはかえって大きくなる。よって、より頑丈な構造のタイヤを使用する。タイヤの空気圧を高く設定するなど、タイヤの変形を抑える対策が必要となる
*3 中には、角度を変えることでダウンフォースの発生量を調整できるウィングも存在する
*4 遠心力でコーナーと反対向きに車体が傾く現象
*5 ただし、航空機の場合、少し機首を上げるだけで揚力と空気抵抗が増え、かなり飛びやすくなる。
*6 実際にスケール換算してみるとわかるが、実車と比較するとミニ四駆はサイズの割に非常に重い。そのため、タイヤ接地圧のほぼすべてを車重に依存している
*7 おおよそ30km/hあたりから操縦性に影響を及ぼし始める
*8 実際の機能は「ウイング」よりも風圧をダウンフォースに変える「スポイラー」の方が近い。
*9 キャビンが前すぎて足が収まるスペースがない、そもそも運転席が小さすぎる等
*10 簡潔に説明すると「ダウンフォースを発生させるはずのものが、逆に揚力を発生させてしまい浮き上がっていく」こと

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