蒼天航路

ページ名:蒼天航路

登録日:2017/06/16 Fri 05:24:19
更新日:2024/02/06 Tue 13:48:24NEW!
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蒼天航路 モーニング 漫画 曹操 三国志 講談社 アニメ マッドハウス 日本テレビ 09年春アニメ 李學仁 王欣太 衝撃のネオ三国志



『蒼天航路』とは、原作・原案:李學仁、画:王欣太により1994年10月から『モーニング』で連載された漫画の事。
1998年9月に李が死去してからは王欣太一人での執筆になり、2005年11月に完結した。
キャッチコピーは「衝撃のネオ三国志」と結構大仰な看板ではあるが、その言葉に恥じないだけの特徴をきちんと備えている。


まず一つ目の特徴は『三国志演義』では専ら悪役とされている曹操を「最も人というものに興味を示した英雄」として主人公に据えた所。
これは単に曹操視点の三国志という意味に留まらず、この作品自体がストーリー云々よりも場面場面での人物描写の方に注力しているという意味でもある。
寧ろ曹操は作品の象徴的な存在で、主役は各エピソード毎にいると言った方がより正確かもしれない。


二つ目の特徴はその人物描写に非常に大胆なアレンジが施されている所。
曹操が何でも出来る完璧超人だったり、孫権が超絶野生児だったり、孔明がまるで人外だったりする。
表現も中々過激で


  • 張角の吐いた血反吐が龍をかたどる
  • 曹操が「いきなり巨大化する」「"漢中王"という言葉にぶっ刺される」といったどこぞの美食家みたいなリアクションをとる
  • 孔明が怒りのあまり%%爆肉鋼体%%筋骨隆々になる

とまるで自重していない。
加えて、曹操の死をもって終劇となる事や、話がちょくちょく端折られている事*1からも、「三国志の物語を追う」という点では少々不自由するところがあるかもしれない。
しかし、各エピソードでそれぞれが吐き出す力強い言葉や場面を盛り上げる迫力満点のコマの数々は、その欠点を補って余りある魅力を産み出しており、一目見たなら忘れられないインパクトを読者に残す。既読者ならば


「ならばよし!!」



「兵卒の夏侯惇です。よろしく。」



「ニイメンハオ。」



「陳宮ーー!!!!」


といった台詞を挙げただけで、その場面がすぐさまフラッシュバックされるだろう。


どいつもこいつもキャラが立ちまくっているので、(それが正確かはともかく)武将の覚え易さに関しては他の漫画の追随を許さない。それどころか、「この作品が今日の日本人が抱いている曹操の人物像に少なからず影響を与えている」といっても言い過ぎではないかもしれない。
三国志という物語のある瞬間を切り取り、極彩色で彩って、目にする者の網膜に焼き付ける。そんな漫画である。


主な登場人物

念のため断っておくが、これはあくまで「蒼天航路」での人物像なので注意されたし。


「俺の戦いは至弱より始まり、そしてすべての敵を崩し、やがて至強をも倒すにいたる。」


「剣を抜けば数多の敵を屠り」
「躍りを舞えば女性が残らず卒倒し」
「舌を振るえば皇族をも唸らせ」
「策を弄せば味方ですらも戦慄する」
という、何でも出来て何でもやっちゃうパーフェクト主人公。


中華の様々な方面に革新的な変化をもたらし続けるその才と行動力は、天子をして「今は曹操という時代なのだ。」と言わしめたり、陳宮から「貴様は躍起になって人材を集めてはいるが、その実貴様は何者も必要としていない。」と皮肉られるほど。
しかしその急進さは他人からの理解というものを常に置き去りにし、故に彼は時に「誅すべき悪」として、時に「ただただ阿る対象」として、時に「人ならぬ化け物」として人々の目に写る。
彼はそんな人々とぶつかり合いながら
「国とは?」「天子とは?」「兵士とは?」「支配とは?」「儒とは?」「芸術とは?」「医とは?」「曹操とは?」
といった数々の問いに対して答を見いだしていく。


「俺は死ぬまで詩を謳い、戦場を駆け回るのだ。俺は俺でしかない。」






「目の前にあいつがいる時より、こうして何百里を隔てている時のほうがずっと孟徳のことがよくわかる。」


曹操麾下最古参の隻眼武将。曹操の事を「孟徳」と呼ぶ数少ない人物。
図抜けた武威も煌めくような用兵術も持っていない(と言われる割には結構無双している)が、義に厚く人同士の「間」や「呼吸」を測ることに長けており、立場の違う人間とも心を通わせる事が出来る。


彼はその長所でもって
「江南の軍の、朝廷への忠誠が低いという世評を改めるよう孫堅に進言する」
「(曹操の命令とはいえ)兵卒に成りきり理解することで、兵卒の視点から戦の趨勢を占う」
「いつまで経っても軍を与えられない曹仁に彼に足りない物は何かを諭す」
といった、ただ敵を屠るだけの将とは違った活躍をみせる。あと迷子の末に敵陣壊滅させたりとか。
曹操はそんな彼を「曹操の母」「天下で最も慕われている将軍」と評している。


「孟徳よ!どれほど不可解で不愉快な命令であろうと今まで通り意地でも従い抜いてやるぞ!」






  • 荀イク

「荀イク文若!ついに、あらゆるものを見聞し頭の中に天下を納めて、しかもそれらをすっかり忘れてもどって参りましたあーーー!!」


曹操麾下最古参の軍師で「王佐の才」の持ち主と言われた人物。少年の時分に曹操の軍師に志願し、黄巾の乱を共に戦った。
少年時は典型的な優等生タイプだったが、乱の平定後世界を見聞して回り、再び彼の下に馳せ参じた時には小汚ないオッサン飄々として遊び心溢れる人物へと変わっていた。


戦時の後詰めや、人材の推挙・育成など 主に内政面で曹操を長く支えるが、「主君が活躍すればするほど、本人の意志に反して彼を上へ上へ押し上げようとする力が肥大化する」という事実を目の当たりにし、漢王朝の存続に危機を感じるようになる。
その危機感はやがて彼の心身を蝕んでいき…。


「いつごろからか殿は、天意とか天命という言葉を口になさらなくなりました…いまこの同じ時世に同じ中華の地にありながら、天を畏れずに生きられるなんて。」






「あんたらから戦の匂いがしてこないんだよ。」


曹操麾下軍師の一人。
居丈高で相手を威圧する様に話す点や、少ない手勢で呂布や烏丸族を下すなど専ら戦闘面での活躍が目覚ましい点などが、荀イクとは対照的な人物。
根っからの戦好きで、袁紹を倒しすっかり弛緩してしまった曹操幕内でもただ一人、新たな敵との戦いを求め続けた。
「主君を意に介さず自分のやりたい戦をやる」という欲求はやがて政への関心と昇華し、曹操も「遂に俺の配下から王が生まれるのだ!!」と歓喜するのだが…


「国…政…実に面白い…」






  • 許チョ

「あの人は狼だよ…。強くて速いけど、みんなの中で一番自分をわきまえている。」


巨大な体躯とその見た目に違わぬ怪力、丸っこい顔に間延びする話し方が特徴の武将。軍を率いる事はなく、専ら護衛役として常に曹操の傍らに侍る。
典型的なパワーデブポジションだが、曹操が激昂し突出しすぎた際には問いを投げ掛ける(曹操自身がよく敵将に行う) 形で諫めようとするなど、決して馬鹿な人物ではない。


鋭い感性の持ち主で、時に人を動物に例えて評することがある。側でいつも聞いている曹操も自分を例えて欲しいと興味津々なのだが、本人曰く「それを考えるといつも眠くなってしまうから駄目だ」とのこと。


「天の下で一番大事な物はなんだぁ?許チョの大事はずぅーっと!曹孟徳のお命だぁーー!!」






  • 夏侯淵

「これよりこの夏侯淵のゆく道は自らが王たる意志なくば歩めぬ道。その峻厳なる道はあえて曹孟徳と我の過去を冷たく分かつ。」


夏侯惇の従兄弟で弓術の達人。
許チョが言っていた「狼」とはこの人の事で、非常に合理的で無駄を徹底的に嫌う性格をしている。弓や兵法を好むのもその性格故。
よって一介の将としてはこれ以上無いほどに優秀な人物なのだが、赤壁で大敗を喫し江陵の確保も覚束なくなった曹操が彼に求めたものは将以上の資質、即ちかつて郭嘉に見出した王としての資質であった。
「その分と性質を超え、唾棄してきた無数の無駄とどれだけ向き合える?」
曹操が言葉にはしなかったこの思いに答えるかのように、後に彼は道理も主君の意志も乗り越えて、自らの意志で劉備に挑むことを決意する。


「曹洪!曹仁!俺達は曹孟徳だ!惇兄!約束の盃を掲げよう!我らの魏国に!」






「呂奉先は最強であり、最強の者に敗因などない!」


常に「最強の武」を求め続ける青龍刀使い。
当初はそれを呂布に見いだし彼に仕えていたが、下ヒ城での戦いにて曹操軍に敗北。曹操の「呂布を最強と見た者にまだ道は遠いぞ!」との言葉を受け軍門に下る。
その能力は烏丸族の討伐や合肥の戦いで遺憾無く発揮され、特に合肥においては僅か七千の兵で呉軍十万を跳ね返すどころか、逆に孫権をあと一歩のところまで追い詰める活躍を見せる。
その時刻まれた呉軍の恐怖と敗北感は、以後曹操軍が威嚇として頻繁に用いる「遼来来」という言葉に集約される。


「恐れを知りて、なお畏れぬか!最強の武とは正にその天命を突き抉る為にある!!」






  • 賈ク

「全てを見通せるが故に奴はその能力に飽きている。詩文をあやつり、女に耽溺し、自ら承知の上で飽きを埋めようとしているのだ。」


張繍配下の軍師。自称「幕下で最も残忍で酷薄な軍師」で、巻末で天下三分をギャグだと言い切った人物。
曹操が張繍の伯父の妻である鄒氏に目をつけた事を利用して暗殺を目論むも失敗。護衛の典韋と息子の曹昂を殺害するのみに留まった。
その後野戦での知恵比べにも負けその強さが身に沁みた彼は、主君共々袁紹との決戦前の彼に投降する。


曹操の恐ろしさを誰より理解しつつもそれを怖れない中々豪気な人物で、
「息子を殺しておいて尚、殺されないと確信して軍門に下ろうとする」
戦時に軍師と将軍を残らず降格させるという、曹操の正気の沙汰とは思えない行動を目の当たりにしても彼の勝利を疑わない」
「生死を彷徨う曹操を見てそれを利用した策を思い付く」
等々、彼の発想や行動は「嘗て敵であったからこそ」というものが多い。


「想像する脳がないなら一度敵にまわってみろ。あのお方の強さが身に沁みてわかり、本当に信じることができるようになる。」






「確かに私にはこれという殊勲がござらん! しかしそれは殿が今まで一度もこの曹仁に一軍をお任せにならなかったからでござる!」


夏侯惇、夏侯淵、曹洪と並び称される、曹軍四天王の1人。曹操の従兄弟で、彼とは旗揚げ以前からの付き合い。初期は割とイケメンだったが、いつの間にかスキンヘッドのヒゲ親父になった。
戦歴は長いが世間の評価は低く、袁紹が曹操軍の主だった武将に勧誘の手紙を送った際には彼にだけは送られなかった。曹操「気にするな曹仁、俺の所にも来ていない」。
曹操からもあまり信頼されておらず、長い間一軍を任されなかった。夏侯惇曰く「お前は曹操に心を委ねて信頼していない」との事。
戦功を焦り、官渡の戦いでは勝手に許都に戻って、曹操に袁紹軍への無謀な奇襲を進言。曹操に「もう一度命令に違えば首を撥ねるぞ!」と言わせる程に怒らせた。


劉辟の反乱の際に遂に軍を与えられるが指揮はダメダメ。劉辟や援軍に来ていた劉備からヘボ将と馬鹿にされるが、声が枯れて身振り手振りで指揮するようになってからは指揮能力が向上して、劉辟をあっさり討ち取った。どうやら追い込まれると力を発揮するタイプだったらしい。
以降は荒々しさ一辺だった性格に冷静さが備わって頼もしくなり、多くの戦場で功績を上げる。赤壁の戦いの後は江陵の地を周瑜の猛攻から1年も守り抜き、曹操は勿論、敵である馬超や関羽からも認められる程の名将になった。


「いやいや来たぞ来たそ! これぞ曹仁本領のどんづまりだ!」



「生まれて初めてな…ふくろの中身を覗いちまったよ…」


曹操と覇を争う英雄の一人で、三国の一つ「蜀」の君主。若い頃は鬼嚢と名乗り、侠客の頭領として活躍していた。
黄巾の乱の際に「皇帝の血筋の劉氏である自分が漢王朝を復興させる」という大義名分で天下に名乗りを挙げる。
「自らが望む望まないに関わらず人々の衆望を集める事が出来る」という類稀な才能を持っている。
曹操はそんな彼を「何でも入る天下の嚢」と称し、劉備自身もそれを寄り所としていた。
しかしそれ以外の才はさっぱりな上、自分の理想に目を向けてばかりだった為に、いつまでも負けては流れてを繰り返し、いよいよ劉備であることを止めてしまおうかというところまで追い詰められる。
そんな折、関羽の手引きで諸葛亮という妖しげな人物と出逢い、彼の人生は遂に転機を迎える事になる。


物事の諸々に対しては常に「簡単で分かりやすく」が彼のモットー。
但しこれは彼が浅慮だからでは決してなく、己の名声は民草によって支えられており、物事の答えは民草に対して出すものだと自覚しているからである。
従来の三国志演義における「聖人君子」とは大きく異なる本作の「義侠の人」としての劉備像は革新的で、後世の創作に大きな影響を及ぼしている。
天下人として覚悟を決めた劉備が%%先人をリスペクトして%%妻子を文字通り「投げ捨てる」シーンは必見。


「要はここでおいらををまるごと認めちまえってこった!」






「健気な非力で情を集めて、行ける天下がどこにある。」


劉備三兄弟の一人。褐色の肌に長く蓄えた髭、得物の青龍刀がトレードマーク。因みに張遼が青龍刀を持つに至ったのは、この関羽が呂布と互角に戦ったのを目の当たりにしたから。


文武両道という言葉がぴったりの万能選手だが、同じく万能な曹操とは「誰からも認められ、頼られる」という点が決定的に異なる。
人材マニアの曹操に敵も味方も含めて、恐らく作中最も評価された人物。
曹操は関羽を称えて死後の彼を祀り、孔明は「彼は未知数。期待はするがわからぬものは想定できない」と絶賛し、張角は「貴方はいずれ神になる男だ」と語り、劉備に至っては彼が自分の下から離れただけで、涎を垂らしながら人目を憚らず泣き叫ぶほど狼狽した。
「勝てば都と天子をやる」という曹操の途方もない賭け事に乗り掛かった劉備の不始末を自分の首で償おうとしたり、いつまでも芽が出ずに半ば心が折れている彼をよそに人材の発掘に勤しんだりと、何かと駄目な所がある主君を辛抱強く支え続けている苦労人である。
終盤は荊州から樊城に進軍。常識を超えた武勇を発揮して、魏軍を徹底的に苦しめる。魏軍のホウ徳や呉軍の蒋欽、史実では病死だった孫皎など多くの将兵を打ち取るも最後は史実通り呉軍に捕らえられ、孫権直々に止めを刺された。その神がかり的な活躍は老いた曹操を凌ぐ存在感を発揮し、作品終盤は関羽が主役と言っていい。


「まだわからんのか。俺はな…あんたと一緒に天下に行きたいのだ!!」






「退けい!退けい!!退けい!!!情けねえ!情けねえ!!情けねえ!!!いつの間にやらこの張飛様とあろうものがよー!逃げに長けちまったじゃねえかーー!」


劉備三兄弟の一人で二人の弟分。
得物である蛇矛を一度振るえば万の軍勢をも圧倒するという剛の者だが、その武を活かす機会に恵まれず、主君同様長い間燻り続けていた。


常に「侠」という概念を己の行動原理とし、弱きを助け強きを挫く高潔な精神を持っている。燻り続けたその矜持と武は、劉備最大の逃避行である「長坂の戦い」で遂に華開く事になる。
しかし彼は、非常に粗暴で純粋に殺戮を愉しむという一面も同時に持ち合わせており、張飛を「侠の塊の様な方」と評した劉備の息子劉冀も、嬉々として兵士を殺す彼(と民草)を目にしてからは、最早侠という物が一体何なのかわからなくなっていた。


「どこの何者だろうと知ったこっちゃねえ。なんぼの軍が相手だろうと関係ねえ。天よ!ただ刮目せい!!」






「曹操様がこの世に生を受けて以来、中華の人口は激減の一途を辿っている…どうです?」


言わずと知れた蜀の天才軍師その人。劉備に天下三分の計を授けた人物。
その天下を「増やす」という発想は勿論、上の台詞の様に「曹操を一つの現象として統計的に」とらえたり、天下が甘くない例えとして「自分のいきり立ったイチモツをさらけ出す」など、当時の中華の人々にはちょっと理解できない思考回路を持っている。
理解の及ばない天才という意味では曹操と同族だが、曹操はあくまでも「まるで化け物」なのに対して、彼は 「本当に化け物」の如く描写されている。
例えば目の中に瞳が三つあったり、例えば遠方にある火打ち石から火花を吹き出させたり、例えば瀕死の曹操と精神をシンクロさせようとしたり…。%%でもビームは出さないからセーフ。%%


自らを「正と奇を操る者」と称し、その怪しげな言動で人々を惑わせ続けるが、そんな自分の存在自体が「虚実定かならぬ物」になっている事に、彼は気づいていなかった。
「"生きる" "死ぬ"というリアルのみに生きている民草や"曹操"には自分の存在は認識されない。」
という驚愕の事実を突きつけられ、漸くその事を理解した彼は激しい怒りを孕みながら赤壁の戦いへ臨む。


「何故そう思うかはわからない…だが…私は曹操に穢された!!」






「唾棄すべき無数の暴虐が…恥辱にまみれたこの屍が…なぜこうも煌びやかで美しい!?」


涼州軍閥馬騰の子。曹操に帰順した父から軍を受け継ぎ、韓遂らと共に乱を起こす。
非常に純粋で天下に完全な潔癖さを求める人物。故に腐敗が進んだ漢王朝や、天子を傀儡にして実権を握っている曹操に激しい義憤を抱いている。
その純粋さは彼に「一度穢れてしまった物は徹底的に破壊し尽くして新しいものを生み出すしかない」という考えを抱かせ、かつて暴虐の限りを尽くした董卓を「美しい」とさえ思わせるようになり、自らの行動をあえて「乱」と称するに至った。


しかし韓遂らが
「玉に瑕がつけばそこから私情があふれ出るかもしれん。しかし馬超自身はそれを決して認めないだろう。」
と危惧していた様に、最初こそ義憤でのみ戦っていた乱の盟主は、敗北を知り挫折を味わい憎悪と執着を覚えてからは、自分自身が「純粋でない徹底的に破壊し尽くさなくてはいけない穢れた物」になりつつあるという矛盾を抱えるようになってしまった。
純粋さ故の危うさは「アンタはフローレス。故に危うくもあるんだね」と言われたこの人に通じるものがある。
韓遂とも配下の者たちとも袂を分かち全てを失った彼は放浪の末、天下の大徳劉備と邂逅。大勢の人々がそうするように、彼も劉備の大義に身をゆだねることになる。


「抗う我に敗北なし。ただ一心に斬り、刺し、突き、裂く!奸な権力に抗し、砕き、抉り、拉ぎ、屠る!ひたすら殺し、誅し、弑し、戮す!」



「命は、天より受く。」


三国の一つ「呉」を建国した孫権の父親。本作では黄巾の乱時に初登場。
曹操からは「私とは違う種の人間で天下を担う者がいるとすればああいう男だろう。」と評され、この時から既に他の人物より一歩抜きん出た存在だった。
合理的で、周りの意見に耳を傾けそれらを一つの意志としてまとめ挙げることができるという理想的なリーダーシップを備えている。


董卓が廃墟にした洛陽にたどり着いた時には夏侯惇の「何か地味な労力を費やし、義軍としての風評を得られるがよい。」との助言から、都の復興に着手。
結果中華全土から孫堅の下に人々が続々と馳せ参じるようになった。
孫堅配下の者達はこれを「風評の力」と呼び、自分達の天下が近づいてきた事を実感していた。
全てが順調かに見えたが、ある時一人で思案にくれている所を暗殺者に襲われ死亡。息子の孫策の台頭まで孫家は大きく力を落とす事になる。


「今果つる時を迎えてみれば、何と悔いなき天命よ…おお!快なり!!」






「誰の手の者かは知らんが孫策の弱点を教えてやる…気が猛る時、俺は眉間以外を狙わない。」


孫堅の息子。父の死以降は暫く袁術の将として働いていたが、洛陽復興時に発見した玉璽と引き換えに返還された孫堅の手勢千余りを元に旗揚げ。
瞬く間に周辺諸侯を撃破吸収して一大勢力へと上り詰める。


猪突猛進という言葉は彼の為にある、と言えるくらい勇猛果敢で決して後ろを振り返らない。どのくらいかというと、「腰に刺さった毒矢を意に介さずに暗殺者を皆殺しにする」ほど。
「また暗殺者かよ。孫家学んでねーな。」
と思われるかもしれないが、実際その通りで彼はいよいよ曹操と決戦という所で件の毒が回り死亡。天下の夢は弟の孫権に引き継がれる事になる。


「百万の人間の百世に渡る恨みを肴に天下という盃を飲み干そうとしている…俺が歩んでいるのはそういう道だ。」






「わし自身の天命とは?国とは?天下とは?歴史とは?わしはそれらを知りたいがため、わしは孟徳と戦うことにする。」


孫策の弟で三国英雄最後の一人。
曹操の様に誰もが予想だにしない答えを出すのでもなく、劉備の様に誰にでも分かりやすい答えを出すのでもなく、問いは問いのまま心にぶち込み納得いくまで何度でも咀嚼する、というスタンスの持ち主。
性急な答えを嫌い、己の意を明らかにする事が少ない為、曹操に恭順するか否かで真っ二つに分かれていた孫家陣営は一時混乱に陥る。
しかし己が抱える数々の問いの答えを知る為に、彼は曹操と戦う事を決意する。


……こう書くとなんだか哲学者じみているが、若い頃はバリバリの野生児で、虎に跨り動物達と文字通り寝食を共にしていた。
特に虎はお気に入りらしく、「仁」という名前をつけ、君主になってからも腹ごなしに一緒に熊を探して食ったり、敵に殺されてしまった際は喪に服そうとするなど、家族同然の扱いをしていた。
孫家の重鎮であり孫権の喧嘩相手でもある張昭はそんな主君に「全くもって乱世を嘗めている」と常に腹を立てている。


「なにもかもがせわしいのう、しかもいつの間にやらわしまでがその中におる。いかんな、これは孫仲謀の時の進みようではないぞ。」






「伯符!亡き殿孫策よ!孫家は代を重ねる毎に豪壮になっていく!そうであるな!」


孫策の親友にして孫呉の大督。
「美周郎」と呼ばれるほどの整った美しい顔立ちをしているが、その下にはいざとなれば一睨みで周囲を黙らせるほどの恐ろしい顔を秘めている。
その顔と弁舌でもって味方に有無を言わせず自分の意志を押し通す様は、張昭をして「孫家にとって曹操以上に危険な存在になるかもしれん」と言わしめている。


曹操打倒の悲願を果たせず急死した孫策の遺志を継ぐべく、降伏に傾きつつあった孫家陣営を抗戦論で必死に押し留めたり、まだ若すぎる主君に代わって軍の手綱を握ったり、自分と曹操の「軍の差と個人の差」両面で苦しんだり、「丞相を殺した漢王朝に仇なす賊め」と賈クにネチネチ責められたりと、何かと苦労を抱え込む人物。
劉備も孫権との宴席で、彼の一人で抱え込むには大きすぎるその責務について言及していた。
それが原因かはわからないが、後の江陵での戦いで流れ矢を受けてからは容態芳しくない状態が続く。
そんな中でも彼は彼なりに天下の青写真を描いていたが、孫権にそれを伝え終えた所で容態が急変し死亡した。
赤壁の際は勿論、死の直前にあっても主君には決して弱みを見せることがない気丈な男であった。


「挑む者ならば一瞬たりとてその歩みを止めてはならぬ!王たるものが一臣を顧みて覇道を見失えば、万の臣を死に至らしめるぞ!!」










「億の単位で周瑜殿に及ばぬ自分が、腹立たしくてなりません…!」


赤壁決戦の直前に孫権が登用した「八頭の獣」の内の一人。興奮すると鼻血を出す体質。
後に周瑜の後継として孫呉総司令官となり、曹操・関羽と死闘を繰り広げる。


出たての頃は蔣欽とバカやって正座反省させられる・罠とわかっていながら挑発にひっかかる等、危なっかしい若武者といった印象であった。しかし孫権に勉学について諭され(怒鳴られ)てからは一念発起。将としての資質を磨き始める。
勉学不足の頃でもその素質は確かで、張紘に「不思議とよく当たる」と評される事も。ただとにかく頭脳労働は苦手なようで、一度に複数の事を考え始めるとその愚直なまでの生真面目さに、物事の本質まで思考を回す性質から鼻血を出してぶっ倒れる事も。
しかしその愚直なまでに成長する姿勢でもって抜擢した孫権のみならず、他の将兵や張昭といった面々の心も掴み、第二次濡須口の戦いの頃には曹操陣営も唸る程の将帥にまで成長する。
荊州・関羽攻略戦では幾多の策を駆使する程までになるが、病に侵され余命いくばくもない状態になってしまった。
(なおこの頃には将軍として相応の風格を身に着けたが、寒門の出という事もあってか名門で"イケメン"な陸遜をちょっと僻むコミカルな面も)


「己の天命を見誤り、道理を斬り捨てた者と交わす言葉はあるまい!貴様は朝日を浴びてはならぬ!」






  • 甘寧

「ニイメンハオ」(中国語で「こんにちは、%%死ね!%%」の意)


後に魏の張遼と並び称される事になる呉の代表的武将。赤壁の際に孫権が周瑜に勧める形で孫家の将となる。
川賊出身だが「引くべき時は引く」という戦の呼吸をきちんと心得ている人物。孫権曰く「嗅覚だけで生き残ってきた者」とのこと。
最初の活躍がとにかく衝撃的で、曹操と賈クの言動に感銘を受けた蔡瑁が虚空に放った


「ニイハオ」


の言葉に返事をしながら突然現れ、直後彼を真っ二つにした。コワイ!!
その後彼は合肥で張遼にボコボコにされた仕返しとして、僅かな手勢で魏軍の駿馬百頭を強奪するといった活躍もしている。
……因みにその際も彼は律儀に敵に挨拶を求めたが、スゴイ・シツレイな魏軍の兵士達はそれに応えなかった。直後奴らがバラバラになったのはいうまでもない。
あっ、でも中華にニンジャは実在しない。いいね?


「受けたものに必ず報い、奪われたものに必ず報いる。報恩と報復、わが道に欠かすべからざる二ヶ条。」



「天に確たる意志などなく、地に確たる歴史もない。後世とは何か。前世に天意が消滅し、この董卓が誕生したことを知るのみだ。」


漢王朝北部にある并州の牧(総督)。
王朝の実権を握る十常侍ら宦官を一掃しようと何進と袁紹が出した要請に応える形で洛陽に進軍。道中、十常侍トップの張譲から新帝の少帝と劉協を奪う。
入城後は少帝を廃し、劉協を帝位に就かせることで、洛陽を牛耳った。
「暴虐の限りを尽くす董卓を討つ」という大義の下、諸侯は袁紹を盟主に反董卓連合を結成するが、董卓軍はこれを一蹴。連合軍は大した成果を挙げられないまま瓦解する。
最早彼をを止めるものは誰もいないかと思われたが、董卓の暗殺を企む王允と娘の貂蝉、そして彼女と逢瀬を重ね反旗を翻した呂布によって殺害された。


作中初めて「自らの王の形」をはっきりと体現した人物。
これまでの中華を構成していた道徳・倫理や皇帝の権威、即ち「天意」を顧みる事がなく、彼に在るのは自分という存在と、その意志のみ。
よって「宦官ら悪官汚吏の一掃という善政」も「都に蔓延る殺戮と破壊という悪政」も、「刺客であった貂蝉・呂布や、自らを批判し続けていた蔡ヨウを抱え込む事」も「無能な味方を殺す事」も彼にとっては一切の区別がなく、
「王座にありながら皇帝を自称しない事」に矛盾もない。
何にも頼らず、何かにはばかる事もなく、ただただ「董卓」という爪痕だけを歴史に残した。
彼が一つの答えを示した「王とは何か?」「王座に就くとはどういうことか?」という問いは、彼の死後乱世に生きる英雄たちにとっても向き合わずにいる事は許されない普遍的なテーマとなる。


「天下の悉くを意のままにふるい、欲望、快楽を極めつくす!贅の限りを尽くし善悪定かならぬ果てに届いてこそ尊重な王となるのだ!我はその王の姿を垣間見たに過ぎぬ!」






「お 俺は り 龍になるのだ」


洛陽で専横を極める董卓を討つため丁原が送り込んだ刺客…のはずだったが、董卓に説き伏せられその場で丁原を殺害。董卓と親子の契りを交わす。
筋骨隆々の巨体にドレッドヘアーの外見と吃音病気味な話し方が特徴。気が猛ると血管だか神経だかわからんモノが顔全体に浮かびあがる。お前は雪代縁か。


政や謀に関しての造詣は皆無だが、反面彼の武の力は「人間の強さの一つの到達点」ともいえる領域にまで達しており、張遼や高順など、その強さに惹かれて彼の下につく者も多い。
彼の人生の節目節目では
「連合軍との緒戦で活躍した徐栄の頭を握りつぶしながら董卓所有の赤兎馬をゲット。赤兎馬は終生の相棒となる。」
女中の頭を握りつぶしながら貂蝉と逢瀬を楽しみ、董卓に反旗を翻す。」
「献策した軍師の頭を握りつぶしながら曹操を攻めることを決意する。」
「陳宮がお膳立てした袁術との同盟を、使者の頭を握り潰しながら破棄する。」
と、なぜか必ず誰かの頭が犠牲になる。何かのメタファーか?


「武だけはずば抜けているが、非常に獰猛で人としての常識や思考が欠落した獣」
人々が呂布にそのような印象を持つのも無理からぬことであった。
そんな彼だが、袁術が玉璽を持ち天子を僭称した事を切っ掛けに、王者の在り方というものを強く意識するようになる。
前述の様に袁術との同盟を破棄したり、曹操と通じている陳珪らの籠城策を受け入れてしまったりと、相変わらず政と謀はからっきしだったが、そこには「呂布なりの人の上に立つ者のあるべき姿」がはっきりと示されており、其処に魅せられた陳宮もそれを実現しようと誠心誠意呂布に尽くす。
そんな二人の強い意志が力として現れたかの様に、不利と思われた下ヒ城の籠城戦は呂布軍が曹操軍を圧倒する戦いとなった。
しかし最後は曹操側の水攻めによって形成が逆転。数多くの離反者を出し、陳宮も捕縛される。
呂布が曹操に最後の闘いを挑む際に叫んだこの言葉は、「相変わらず自分こそが最強であるという自負」なのか、それとも「王者として覚醒し始めた矢先に皆に見限られた事への悲しみ」なのか、それは本人にしかわからない。


「わ 我はひとり。り 呂布なりーー!!」






「あああ…また次の一手が見えなくなった。仕えても仕えてもこの人は凄すぎる。」


曹操についていけなくなった人第一号。
父が賊に殺された事を切っ掛けに、殺戮と略奪しか知らない青州兵(曹操が吸収した黄巾党の残党)を使って父の護衛をしていた陶謙を攻めると決めた曹操。*2
そのいかなる悪名を恐れない様を見て彼の下から離れることを決意。曹操が陶謙を攻めている隙を突くように叛乱を起こし、以降は呂布を主君と仰ぐ。


「曹操と親睦が深かった張バクを半ば無理やり引き込む」「張飛を手玉に取って城を奪う」など、その手腕は確かな物。
しかし主君が気まぐれな為、彼の献策がそのまま活かされることはまずなかった。
それでも彼は「自分には呂布殿がぴったりだ」と献身的に呂布に仕え続ける。
四肢を曲げられエスパー伊藤達磨にされても、頭突きで城から落とされても、張り手をぶちかまされても彼の忠誠心は変わらない。
その献身さが実を結んだのか、呂布も王者というものを意識し始めてからは彼に信を置くようになり、結果呂布軍はかつてないほどの強さを手に入れる。
しかし前述の通り、最後は水攻めによって呂布軍は瓦解。離反者に捕らえられた陳宮は、持てる限りの力で自分を呼ぶ呂布を見て涙する。
それが「呂布が絶対的な強者ではなく、人を頼る弱さをもった人間だった事に対する嘆きの涙」なのか、「自分を本当に信頼してくれていた事に対する喜びの涙」なのか、それは本人にしかわからない。


「あああ…呂布殿~。は、配下の危機にそれほど心を動かされては、そ、それは呂布殿ではございませんーー。」






「曹操は極めて優れた男だが、生まれた時についていた差は一生のうちでは縮まらん。」


四代に渡って三公を輩出している名門袁家の出自で曹操とは旧知の仲。
群雄の中でも頭一つ抜けた存在である事は間違いないのだが、若い頃から常に自分の一歩も二歩も先をゆく曹操が側にいたせいか、自分を過剰に大きく見せたがり物事を都合のいいようにしか解釈しないきらいがある。
物語当初はその高慢さが仇となるばかりだったのだが、彼はその気質を改めるどころか寧ろ際限なく肥大化させ、逆に自分の強さへと変えていく。
そして曹操との対決を控える頃には「自分の歩む道は王たる栄光の道であり、そこには如何なる障害も凶事も存在するはずがない」と考えるまでになっていた。
これが並の人間であれば只の大馬鹿野郎だが、袁紹にはそれを信じて疑わない底なしの愚昧さと、それを周りに認めさせるに足るだけの力があった。
幾度となく袁紹に諫言してきた田豊を黙らせ、顔良を失った戦いでさえも「勝利」と嘯き、王道という言葉に不安を覚えていた沮授を感服させ、そして袁紹に従う全ての人間が「自分達も主君と同じ栄光の道を歩んでいる」という思いを共有するようになる。
こうして英雄・袁本初は完成し、曹操に「語る術無し、為す術無し」とまで言わせた強大さで曹操軍を追いつめる。しかし、袁紹の心には本来人が持って然るべきあるものが欠けていた…。


人を「御せるもの」とし、全ての兵を己の色に染め上げる袁紹。
人を「御せないもの」とし、戦うも逃げるも、生きるも死ぬも兵に任せる曹操。
その趨勢を見守る夏侯惇の独白。「王道」を巡る袁紹の子らの対立。そして袁紹の心に欠けている物とは?至弱の存在が至強に抗うために必要なものとは?
曹操と袁紹の直接対決は、蒼天航路中盤の山場としてかつてないほどの盛り上がりを見せる。


「孟徳、天下の凶事を吉兆に覆す雄大さをもてぃ!おまえが持て余している才気を余すことなく愛でてやろう。」





「掌中の玉が輝きを増せば、その転がしようでわれらの天下が見えてくるのじゃ!!」


荊州を本拠地とする群雄の一人で、袁・曹どちらにも与せず民を戦から遠ざけ、学者を庇護し学問振興にも尽力している人物。
…と一見非の打ちどころのない清廉の士であるが、その奇麗な外面の下では虚と実を巧みに織り交ぜ他人を操り、乱世を思い通りに動かそうと画策している。
諸葛亮曰く「正と奇がきれいに具わっている」人物との事。


しかし彼には、董卓から始まり、呂布、袁紹、そして君主ではない郭嘉までもが抱くに至った「自らの王の形」というものがなく、孔明に
「彼は天下と交わらず自慰に耽っているだけで天下人になったつもりのお方。これからは自ら交わろうとしない者に乱世の生き場所はない。」
とこき下ろされてしまう。(現に劉表自身の口から「王」という言葉は一言も発せられていない。)
憤激した彼は「自分の脳の中身を学術に乗せれば自分の存在は永遠になる」と天下人たらんとする矜持(と学問振興の本音)をぶつけるのだが、
孔明はそれも「そんなものはおよそ人の範疇を超えている」と一蹴、結果劉表は覇気がしぼんで死の一歩手前の状態にまで衰弱してしまう。
ただ、そう語った孔明自身も「人外として振る舞い、そう見られる事を望んだ」為に、まったく同じ「およそ人の範疇を超えている」という理由で曹操に存在すら認めてもらえぬ事になろうとは、何とも皮肉な話だが。
*3


なお史実の劉表は186cmの長身だが、蒼天の劉表は最初から小柄。
また諸葛亮との対談直前に「最近やたら尿が近い」と呟いていて体調が悪かった模様で、そこに諸葛亮の言葉で止めを刺されたような格好となった。


「ふっ、さ、最後にもう一度だけ、せ、正と奇を操ろう…」


「心に知らせよ。一日と千年の間には何の違いもありはしない! ただ今の自分に集中せよ。今この一日は全人生に等しい! 今ここに生きよ! ここに人生の全てがある!」


終盤に魏国内を騒がせたトリックスター。
かつて曹操軍に敗れた兵士に孔明が託した、出生不明の赤子。孔明からは「いずれこの子の発する言葉は風に乗ります」と予言された。その予言通り、成長した魏諷は類稀なる知性とカリスマ性を発揮し、漢の名門貴族の子息と友誼を結んだ。その姿は若い頃の曹操に似ており、魏諷自身も曹操を尊敬しつつ新世代の「乱世の奸雄」になろうとしていた。


深呼吸によって心を落ち着かせて、今を大切に生きるという崇息観という教義を広め、社会の裏で着々と勢力を広げる。そして曹操を逆賊として誅殺し、魏・呉・蜀の三国が漢王室を奉戴する新体制を作るクーデターを起こそうとする。劉備の漢中王宣言によって一旦は野望を絶たれるが、孔明から「関羽の荊州攻撃に合わせて許都を制圧すべし」という密書を受け取り再起*4。深夜に私軍を率いて宮廷に侵入する。


だが計画は既に把握されており*5、魏諷達は曹丕の大軍勢に包囲された。それでも同志達と共に、玉座に座る曹丕に「奸雄と呼ばれる自分を用いる器量はあるか?」と大胆に問う。
これに対する曹丕の返答は、容赦なき一斉斉射と剣の一閃。「奸雄の類が棲めぬ世」を作ろうとする曹丕にとって、魏諷は時代の流れを読めない愚者でしかなかった。魏諷の首は粛清の証として晒され、彼と関わりを持った者は尽く処罰された*6


「天子まで百歩。乱世の奸雄は今、代を替える」



「北部尉殿!追記、修正されてしまいました!」
「ならばよし!!」



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  • 「他の三國志漫画より劣っている」入らないと思う -- 名無しさん (2017-06-16 09:22:56)
  • ↑”はいらない” が『入らない』になったごめん -- 名無しさん (2017-06-16 09:23:32)
  • 2巻と17巻で耳掃除のシーンがあるのだが妙に見ていると耳がかゆくなる。 -- 名無しさん (2017-06-16 10:13:20)
  • この漫画の孔明って変態・・・。 -- 名無しさん (2017-06-16 10:21:20)
  • 許チョあたりは確実に無双にも影響を与えている -- 名無しさん (2017-06-16 17:46:29)
  • 気合の入った項目乙。俺の中では蒼天曹操は悟空よりもキン肉マンよりも承太郎よりも、変かもしれないが最高のヒーローだと思ってるんだ -- 名無しさん (2017-06-17 00:34:25)
  • 董卓のキャラがよすぎる。少年漫画じゃまずお目にかかれない強烈なキャラクター。 -- 名無しさん (2017-06-17 00:37:36)
  • 主な登場人物に董卓や呂布、袁紹等の紹介も欲しいな -- 名無しさん (2017-06-17 00:43:44)
  • こっちの曹操はどうして天下を取れないのか分からないレベルの超人 -- 名無しさん (2017-06-17 02:03:00)
  • 董卓,呂布、袁紹 -- 名無しさん (2017-06-17 08:06:10)
  • 袁紹は最初は変態揃いのこの漫画の人物になって珍しくまともな人間だったが、デブ化してからは曹操にすら禍々しいほどの福福しさと称される程の気持ち悪い(褒め言葉)人物になったのが印象的 -- 名無しさん (2017-06-17 14:38:50)
  • 今作の曹操は確かに完璧超人で周りのよいしょが気に入らないと言うか意見もわかるけど、他にも有能で魅力的なキャラがたくさんいるので個人的には気にならない -- 名無しさん (2017-06-18 08:55:06)
  • それでも「天地を喰らう」よりはちゃんとした三国志だったよね。↑12 -- 名無しさん (2017-06-19 09:38:35)
  • 董卓の人物像が正に魔王って感じで衝撃的だった。頭蓋を砕けい -- 名無しさん (2017-06-19 12:43:44)
  • 群雄の人々の紹介も欲しい 特にトウタク -- 名無しさん (2017-06-29 12:26:03)
  • 董卓の暴虐のシーンが妙に気に入ってる -- 名無しさん (2017-06-29 22:39:35)
  • この作品の孔明が、馬謖を斬る展開が考えつかない -- 名無しさん (2018-04-02 22:07:34)
  • 蛇足とは分かりつつも、曹操死後の物語も見てみたかったなぁ、ラストシーンの劉備の顔が全てを物語っているが -- 名無しさん (2018-04-10 22:07:20)
  • 躁人って結構若いころから活躍してるはずなんだけど本作では若いころはヘッポコである -- 名無しさん (2019-05-28 18:25:58)
  • 三国志大戦に復活!劉備の声が子安なのがすげー違和感… -- 名無しさん (2020-01-23 20:18:00)
  • 楽進がここまでかっこいい作品はたぶんもう出てこないと思う -- 名無しさん (2020-11-03 06:39:32)
  • 電子書籍版を見てみたら書籍版の周瑜の台詞が差し替えられていたので他の諸々と併せてちょっと更新。しかし「孫策伯符よ!~」が間違っているのはいいとしても、結局「孫策」って言っちゃってるし「荀"イク"文若ついに!~」がそのままなのもよくわからん。(自分から目上に名乗る分にはいいのかしら?)その辺詳しい人いたら教えて。 -- 名無しさん (2020-11-18 03:07:56)
  • 袁紹がちゃんと凄い破格の人の一人で在ると描写された数少ない漫画 -- 名無しさん (2021-04-05 01:33:09)
  • 董卓がここまでかっこいい「強大な悪の帝王」として描かれた『三国志』作品って他にあるだろうか……? -- 名無しさん (2021-07-04 19:16:29)
  • 絵の迫力、物語の勢い、登場人物の強烈なキャラクターとどれをとっても上質でめちゃくちゃ面白い。三国志の誰々と言った時に、蒼天航路の人物で像が固定されてしまった読者も結構いるのでは無かろうか。(一方でメイン人物の印象上げのために史実より矮小化されたり、変な所で死ぬことになる人物も居たりするが。) -- 名無しさん (2022-08-25 12:25:01)
  • 悪役とされてきた人物を格好良く傑物に、は良いんだけど 逆に人気の人物は奇人変人変態化させてやろ。は逆張りが強過ぎるんだよなぁ -- 名無しさん (2022-11-12 20:22:49)
  • ↑でもこの作品の劉備三兄弟は、他作品見回しても一番お気に入りだなぁ。劉備は勿論だが関羽も張飛もいいんだよね -- 名無しさん (2023-01-10 18:44:36)
  • まじで日本人のイメージする曹操ってこれとコーエーのイメージがほぼ大本だよなぁ -- 名無しさん (2023-07-13 11:47:38)
  • 蒼天航路、三國無双2辺りの2000年代前半に来た一大三国志ブーム。猫も杓子も三国志漫画やら小説やってた。 -- 名無しさん (2023-07-27 19:49:06)
  • この漫画読み直したが一番の感想は「惇兄ぃ、マジ曹操のおかん」だった・・・ -- 名無しさん (2023-08-08 17:30:58)
  • 原作いなくなってからは雰囲気でごまかそうとしてる所あってあんまり好きじゃなかったが。最後の惇の下りは好き -- 名無しさん (2024-01-30 08:49:10)

#comment

*1 例えば、関羽が劉備の下を離れるシーンはクローズアップされるが戻ってくる所の描写はない、といった具合
*2 父の死はあくまで切っ掛けであり、曹操はこの決断に一切の私情を挟んでない。現に程イクの「報仇雪恨」の文字を掲げて攻めるという案は曹操自ら却下している。
*3 これは余談だが、董卓を討とうとした王允がかつて言及したように「死後自分の名前がどのように後世に残るか」は当時の中華に生きる群雄達の大きな関心事の一つであり、それに執着した劉表は特別おかしいわけではない。ちなみに曹操は「百年もたてば(自分の)名さえきれいさっぱり無くなろう、清々するな」と口にしていた。「この漫画で」「曹操に」こんな事を喋らせるとはなんともメタくて皮肉な話である。
*4 魏諷は自分と孔明の接点を知らない。また劉備の配下になった訳ではなく、むしろ天子を利用して劉備を従わせようと考えていた。
*5 同志の1人が劉曄に捕縛され、激しい拷問の末に自白した。既に精神は崩壊しており、魏諷の相棒とも言える銭申という猿の首を下げている。
*6 相国として魏の内政を取り仕切っていた鍾繇も、魏諷を官職に取り立てた事で処罰の対象になっている

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