登録日:2018/10/27 Sat 07:01:21
更新日:2024/03/26 Tue 11:23:23NEW!
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インド神話 ヒンドゥー 仏教 スリランカ 羅刹 ラクシャーサ 羅刹女 鬼 鬼神 天ヶ瀬冬馬 アニヲタ悪魔シリーズ アニヲタ妖怪シリーズ ラクシャサ 女人島
■羅刹
『羅刹』は仏教に於ける護法善神、及び鬼類の名称。
インド神話に於ける悪魔の類であるラクシャーサ(Rākṣasa)*1が仏教に取り入れられた物で、速疾鬼や可畏、等とも訳された。
単独の天部としては羅刹天=涅哩底王の名を与えられて、死者の住まう西南を守る十二天の一つにも数えられているが、本来の羅刹は黒い肌に赤い髪の巨駆を誇る鬼だとされる。
ランカー島(スリランカ)を根城としており、羅刹王ラーヴァナに仕えている。
また、先に述べた姿の特徴からアーリヤ人が黒人を蔑視して仮託した存在であると見なされている。
夜叉とは近しい存在であると見られており、仏教では、共に夜叉王クベーラが名を変えた毘沙門天に仕えている。
夜叉もそうだが、中国では夜叉と羅刹が悪をなす妖物の類として民間説話に取り込まれて語られたことから、日本では仏教の護法善神と云うよりは鬼類の名前としての方が強く伝わった。
負の属性の方が強いのはインド神話でも同じなのだが、中国では羅刹の魔物としての属性が強く考えられた末に、非常に豊かな羅刹の姿が描かれることになった。
羅刹に地獄の獄卒の姿を与えたのも中国からで、熱心な仕事ぶりが伝えられている。
鬼のプロトタイプと呼ばれる牛頭馬頭は異名を阿傍羅刹と云うのも、そうした設定付けの現れと言える。
特に羅刹女(ラクシャシー)と呼ばれた鬼女の説話は多く作られており、法華経守護の鬼子母神に従う十羅刹女の名が挙げられた後に、別の括りの羅刹女のグループが生まれたりしている。
この他では『西遊記』でも特に有名な敵キャラである牛魔王の妻の鉄扇公主も、日本では羅刹女という名前で訳されるのが基本となっている。
玄奘三蔵が記した『大唐西域記』には姿が美しいが、性は恐ろしい羅刹女ばかりが住む羅刹国のことが記されており、これは中国でのスリランカ建国の説話だったのだが、日本では女人(女護)島伝説と結びついて昔話や創作の題材にもなったりしている。
【高名なラクシャーサ】
■ラーヴァナ
詳細は当該項目参照。
『ラーマーヤナ』に登場するランカー島の支配者であるラクシャーサの王。
■クンバカルナ
ラーヴァナの弟で巨体揃いのラクシャーサの中でも特に巨大だった。
余りに巨大過ぎて吐く息は強風となり、怒ると熱い息は炎となり、雄叫びは百の雷の様であったと言われる。
ラーヴァナと共に苦行に励んでいたが、クンバカルナの場合は、この世の創造を無に返しかねない程の食欲の持ち主であった為に、祝福の代わりに九ヶ月に一日しか目覚めない呪いをブラフマーにかけられたとされている。
また、この呪いはインドラがクンバカルナに挑むも挑むも力が通じず、逆に愛象アイラーヴァタの牙を片方折って投げつける等、反撃された為にブラフマーに泣きついたことで掛けられたとも言われる。
そんな訳で『ラーマーヤナ』でも最初は眠ったままだったのだが、猿軍団と解放された神々の助力を受けてラクシャーサ軍が窮地に陥ったことで一万のラクシャーサが散々に苦労して目覚めさせた。
その巨体は見ただけで勇猛な猿軍団が逃げ出す程で*2、それでも立ち向かってきた猿達も結局は力が通じず、猿軍団の将軍やハヌマーン、ラーヴァナと同盟を結んでいたバリの子のアンガダ、ラーマの助力によりバリから王位を取り戻した猿王スグリーヴァをも余裕で捕らえて宮殿に持ち帰ったが、運んでいる途中で目覚めたスグリーヴァに耳と鼻を傷つけられ、味方も敵も関係なしに暴れ回っていた所をラーマ王子の矢で四肢を切り裂かれ、尚も大口を開けて食らいつこうとした所に口まで埋まる程の矢を射ち込まれ、トドメにインドラの矢を射たれて首をはねられて漸く殺されたという。
■ヴィビーシャナ
ラーヴァナの弟で、クンバカルナ同様に、兄達と共にラクシャーサの再興の為に苦行に励んだ。
苦行の果てに如何なる苦境の中でも正義を貫くことを誓い、それを叶える祝福を神々に受けている。
兄のラーヴァナが妹のシュールパナカーに唆されてシーター妃を拐ったことでラーマ王子と敵対した時には兄の非道を責めて妃を返すように進言するが聞き届けられず、配下毎にラーマ王子に降りラーヴァナ攻略に協力した。
ラーヴァナが滅ばされた後は新たにランカー島の王となり善政を敷いた。
■インドラジット
ラーヴァナの息子で、本名はメーガナーダ(雷鳴)。
インドラジットとはインドラに勝利した者と云う意味で、 ラーヴァナ軍最強の戦士である。
アイラーヴァタの牙を折ったのはインドラジットだともされる。
武芸ばかりか魔術にも長けており、森で祭祀を行うことで様々な術を使いこなす。
中でも完全に姿を消して行動する術と大量の矢を雨の様に降らせる術が特に強力で、
この術の前にはインドラを始めとした神々も対抗出来ず虜囚にされる他は無かった。*3
魔法の縄を投げて敵を捕らえる術も持っているが、実はインドラジットが使う矢や縄は毒蛇の変身で、この攻撃にはラーマ王子やラクシュマナ、ハヌマーンさえも簡単に打ち倒された程で、ガルーダが介入してやっと対処出来た程だった。*4
多数の神々を捕らえた後にブラフマーに解放を要求された時には不死の祝福を要求し、これを受け入れられて神々を解放するが、敗北を繰り返す中で少しずつ攻略法を探ったラーマ王子と神々は、最後の戦いを前にインドラジットの力の源である火神アグニへの祭祀が途中で失敗するように仕向け、魔術と並ぶ武器であった戦車も破壊される等、強化魔法と装備が不十分な状態で戦いに望まされる。
インドラジットの持ち手を読んで、対抗できる神々の武器を与えられていたラクシュマナと一騎討ちになり、攻撃を相殺され続けた末に、最後は不死すら打ち砕いたインドラの矢により滅ばされた。
【高名な羅刹】
■牛頭鬼
■馬頭鬼
単に牛頭、馬頭とも。
中国の地獄絵図で生まれた畜生の頭をした地獄の獄卒で、羅刹であったり、羅刹に仕える者とされた。
これらのイメージが伝来の中で統合されて日本の鬼の姿が纏められる切っ掛けの一つになったとされる。
■鉄扇公主(羅刹女)
『西遊記』で有名な天から地に降りた風の神、または地仙。
同作を代表する宝貝『芭蕉扇』の持ち主。
原典では鉄扇公主という名前なのだが、日本では解り易い名前にするためなのか“羅刹女”と表記されている。
牛魔王(平天大聖)の第一夫人であるが、牛魔王が妾として玉面公主を作って出ていったままになっていたのでイライラした日々を過ごしていた所に火焔山の火を消す方法を探していた孫悟空の訪問を受ける。
運が悪いことに悟空は羅刹女と牛魔王の子である紅孩児を懲らしめていた後だったので、羅刹女は息子の仇として二振りの青峰の剣を持って襲いかかり戦いに。
戦いは夕刻まで続いたが悟空が優勢となったので羅刹女は芭蕉扇を振るって住み処の翠雲山芭蕉洞より吹き飛ばす。
悟空が一晩も吹き飛ばされて着いたのは、以前に黄風大王の件で世話になった霊吉菩薩の住む小須弥山であり、霊吉菩薩に風鎮めの「定風丹」を貰った悟空は芭蕉洞に取って返し、羅刹女を呼び寄せる。
再び戦いになり、矢張り劣勢となって芭蕉扇を振るった羅刹女だが悟空は丹薬の効能で吹き飛ばされず、洞に逃げ帰る。
しかし、その隙に悟空は一匹の虫に化けて入り込み、更に羅刹女が飲もうとした茶の中に飛び込み飲み込ませると腹の中で散々に暴れ回った。
これには参った羅刹女は芭蕉扇を貸すが、それは偽物で……と云うのが主な流れ。
この後で本物の芭蕉扇を手に入れたい悟空は、かつての義兄弟である牛魔王に助けを求めるが、玉面公主とも諍いが起こり、天界の助けも借りた全面戦争に発展することになる。
■羅刹女
仏教に於いては衆生を誘惑する美しいが本質は残酷な、西洋で云えば吸血鬼や淫魔のような性を持った妖物として紹介される一方、仏弟子となった場合の純粋さを語られたりしている。
【アニメやゲームでは】
邪悪な鬼類を示す名前として創作でも多く使われ、原典や古典を知らずとも名前だけは知っているという人も多いだろうと思われる。
同じような用法をされる夜叉よりも概ね残酷であったり強烈なイメージを持たされることも多い。
『北斗の拳』や『サムライスピリッツ』シリーズなど、修羅と対になる扱いをされることも。
一方、鬼類の名前としてイメージが固定されている羅刹に対して、インドでのイメージからは外れた獣人間の名称としてラクシャーサの名前が用いられることもある。
これは元祖TRPG『D&D』の影響らしい。
「ゲゲゲの鬼太郎」シリーズでは、アニメ第四期の89話「髪の毛地獄!ラクシャサ」に登場。
強大な妖力と高い知性を兼ね備えた大妖怪として大暴れした。
基本的に「ラクシャサ」と呼ばれるが、一度鬼太郎から「羅刹か!!」と呼ばれている。
追記修正は人食いを止めてからお願いします。
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*2 クンバカルナが美味しくいただきました。
*3 父のラーヴァナの様に祝福を得る以前から神々を倒しているのでラーヴァナを越える戦士とされる。
*4 ガルーダが美味しくいただきました。
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