第11次イゼルローン要塞攻防戦

ページ名:第11次イゼルローン要塞攻防戦

登録日:2020/04/18 Sat 06:33:45
更新日:2024/05/17 Fri 11:21:01NEW!
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銀河英雄伝説 銀河英雄伝説の戦役 イゼルローン要塞 架空の戦争 戦争 第11次イゼルローン要塞攻防戦 ユリアン・ミンツ



一戦交えましょう、帝国軍と



第11次イゼルローン要塞攻防戦とは、田中芳樹のSF小説『銀河英雄伝説』内で起きた戦闘の一つ。


●目次


【背景】

ヤン・ウェンリーの死後、イゼルローン要塞にわずかに残った民主共和主義者たちはイゼルローン共和政府を樹立。
銀河帝国にはほとんど無視されるような形で小さな政府機構を維持していた。
しかし、宇宙暦801年に入り旧同盟領における経済混乱に伴って反帝国的な風潮が高まると、帝国軍はイゼルローン共和政府をその間接的原因と目し、対イゼルローン主戦論が唱えられ始める。


一方で抑圧される民主共和主義者側も英雄ヤン・ウェンリーを継ぐイゼルローン共和政府に期待を寄せ、しばしば救援を求めていた。
加えて、前年のロイエンタール元帥叛乱事件において、イゼルローンがメックリンガー艦隊の回廊通過を容認したことで、支持者である旧同盟市民の中にはイゼルローン共和政府への猜疑(イゼルローンは自分たちを見捨てるつもりなのではないか?というもの)が育ちつつあった。(もっとも、この一件は首脳たるユリアンの高い戦略的センスを示すことにもなったのだが)


これらの情報を受け、イゼルローン革命軍司令官ユリアン・ミンツ中尉は帝国軍と一戦交え勝利することを決意。
「巨象が薄氷を踏むよう」と評されたイゼルローン軍初の軍事行動が開始された。


【登場人物】


◇新銀河帝国

  • アウグスト・ザムエル・ワーレン

上級大将。ワーレン艦隊司令。艦隊旗艦は火竜サラマンドル
旧同盟領側指揮官。配下の諸将がイゼルローン軍を侮っているのを見て窘めるが、敵の司令官が地球教討伐作戦で出会った若い「フェザーン商人」だとは想像すらできなかった。


  • ヴァーゲンザイル

大将。ヴァーゲンザイル艦隊司令。艦隊旗艦はバレンダウン
帝国本土側指揮官。連戦連勝の奢りからか、イゼルローン軍のことを『捨犬』『しつけが必要』と呼び侮っていた。


◇イゼルローン共和政府

  • ユリアン・ミンツ

中尉。イゼルローン革命軍指令官。艦隊旗艦はユリシーズ。
帝国との修好と共和主義者の鼓舞を天秤にかけた末、ラインハルトの性格「貴重なものなら命がけで守れ、あるいは奪ってみろ(Byシェーンコップ)」を踏まえ、一戦交えることを決断する。


中将。イゼルローン要塞防御指揮官。


上級大将。イゼルローン革命軍分艦隊司令官。旗艦はヒューべリオン。
上記の「巨象が薄氷を踏むようなもの」の評価は彼のもの。


  • ダスティ・アッテンボロー

伊達と酔狂で革命戦争に参加していると豪語する、革命軍の副司令官。階級は中将。宇宙最強の台詞「それがどうした!」が口癖。本来の乗艦はマサソイトだが、今回はユリアンの補佐役としてユリシーズに乗艦。
上記の通り、ヴァーゲンザイルの自分たちをなめきった罵詈雑言を傍受して激おこ。「俺たちを何だと思っている」にポプランが追い打ちをかけたことに、「よく自分たちの悪口がそれだけ言えるな」とあきれる一幕も。


  • オリビエ・ポプラン

ご存じ女好きの撃墜王。階級は中佐。
馬鹿にされて激おこのアッテンボローに「宇宙の恥さらし」「平和と統一の敵」「血迷った叛逆者」「首に縄をかけて白刃の上でダンスしている血まみれのピエロ」「明日の死を考えもしない楽天主義の純粋培養物」と追い打ちをかけた。さらに、アッテンボローが「よく自分たちの悪口をそれだけ言えるな。それは俺たちの悪口だろう?」と言われた時には「ええ、『あなたたちの』悪口ですよ(=自分は入っていない)」と返した。


  • カーテローゼ・フォン・クロイツェル

空戦隊員にしてユリアンの嫁。階級は伍長。
帝国軍に対し戦うか否かを迷うユリアンに対し、「司令官として認めたときに皆が指示に従うと決めている」「今遠慮なしに決めることこそ期待に応える唯一の道」だと言い、はっきり決断することを後押しした。


【以下、作戦行動の内容とその経過】


◇緒戦

イゼルローン革命軍が意表をついて帝国本土側へ進撃を開始したことは帝国軍の察知するところとなり、2月7日には旧同盟領側に布陣していたアウグスト・ザムエル・ワーレン上級大将に急報が齎される。
翌8日には旧同盟領からワーレン率いる15600隻の艦隊がイゼルローン回廊へと進撃を開始した。


2月12日4時20分、イゼルローン革命軍6600隻は回廊の帝国側出入口付近に達し、同方面の警備に当たっていたヴァーゲンザイル艦隊8500隻と対峙。
間に2.9光秒、87万kmの距離を取って両軍は停止。その15分後、両軍の開戦指令によって戦闘が開始された。


戦闘は一時間以上にわたって一進一退を繰り返したが、両軍の発艦させた戦闘艇部隊のドッグファイトは全く異なる様相を呈した。
オリビエ・ポプラン中佐の指揮するスパルタニアン隊は出撃240機のうち喪失わずか16機、対するワルキューレの損失は104機に上り、キルレシオ6.5倍に達する圧倒的勝利を飾った。
5時40分、イゼルローン革命軍は徐々に後退を開始。6時30分に至り、帝国軍はイゼルローン革命軍を追い完全に回廊への突入を果たす。


このとき帝国軍はすでに秩序を崩しつつあったが、ヴァーゲンザイルは並行追撃によって“雷神の槌トールハンマー”を封じる形でイゼルローン要塞に迫ることを企図していたため、あえて艦列を立て直す必要を認めなかった。


◇イゼルローン要塞周辺宙域での戦闘

イゼルローン革命軍は二日に渡る退却戦によって帝国軍をイゼルローン要塞へと誘引し、ヴァーゲンザイル艦隊に呼応して旧同盟領側から侵入するワーレン艦隊の動きとタイミングを合わせつつ、緻密かつ巧妙に“雷神の槌トールハンマー”の射程内へと引き込んだ。
これに気付いたヴァーゲンザイルはすぐさま全力退却を指令。恐慌状態に陥ったヴァーゲンザイル艦隊は一挙に秩序を乱した
(OVA版ではイゼルローン軍が出鼻をくじく形で攻勢に出て混乱させた後、トールハンマーが発射され、壊乱状態になっている)。


対してイゼルローン革命軍はそれを放置し、ワーレン艦隊との戦闘に突入。包囲を試みた帝国軍に対し数において大きく劣るイゼルローン軍は早々に後退する。
これを見たワーレンは、ヴァーゲンザイル艦隊の撤退を援護するため、“雷神の槌トールハンマー”のエネルギー充填の隙を衝いて一挙に射程内に侵入、要塞に肉薄すべく艦隊を猛進させた。
だが、ワーレン艦隊の先頭部隊が全速力で“雷神の槌トールハンマー”の死角に入りかけた瞬間、要塞至近に潜んでいたイゼルローン革命軍の小部隊が帝国軍側面九時方向から急襲し、ワーレン艦隊の進撃を阻止する。(後述しているが、この艦隊はヴァーゲンザイル艦隊からは発見できていたが、退却に必死だったせいもあり報告されていなかった)
これはユリアンの本隊に先立って出撃していた、ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ提督の指揮する分艦隊による攻撃であり、ワーレンはこの奇襲攻撃をよく防いだが、その位置はすでに“雷神の槌トールハンマー”の完全な射程内であり、ワーレン艦隊は全力をもって射程内から退却せざるを得なかった。


2月14日20時15分、イゼルローン要塞防御指揮官ワルター・フォン・シェーンコップ中将が“雷神の槌トールハンマー”の第一射発射を命令。
さらに200秒後の第二射により、数千隻の帝国軍艦艇が消滅するに至る。ヴァーゲンザイル艦隊の戦場離脱を待ったワーレンは20時45分に撤退を下令し、21時40分には完全に撤退。
戦闘はイゼルローン共和政府の勝利に終わった。


【影響】

この戦いはヤン・ウェンリーの死後初めての民主共和主義勢力の勝利であり、政治的にはイゼルローン要塞が今なお民主共和政治の牙城として健在であることを示すものだった。
帝国軍は報道管制を敷いて敗北を伏せたが、イゼルローン軍のバグダッシュ大佐やフェザーンの自由商人ボリス・コーネフの宣伝工作もあり、2月下旬には旧同盟首都ハイネセンにまで情報が達し市民を歓喜させた。(作中の記述によれば、この勝利を受けて、旧同盟領全域に、ヤンの名前を冠した抵抗組織がいくつも結成されたらしい)


半壊したワーレン艦隊はその興奮と衝突することを避け、一時ガンダルヴァ星系に駐留している。
いっぽう銀河帝国側は未だ混乱する旧同盟領への対処が急務となり、また帝国軍としては力量さだかでなかったイゼルローン革命軍司令官ユリアン・ミンツの指揮能力を初めて認識することとなった。


しかし軍の最高幹部が懸念を抱いたのは、むしろ帝国軍内部の体制に対してだった。
帝国軍首脳としては、善戦したワーレン上級大将に対し帝国本土側を預かるヴァーゲンザイル大将の指揮は劣ったものと判断せざるを得ず(実際の指揮の他にも、ヴァーゲンザイル艦隊からは索敵できていたメルカッツ艦隊の存在をワーレン艦隊に報告していなかったことなどもあげられる)、上級大将以上の艦隊司令官の能力に大将以下の能力との格差の問題が存在することを再認識させられる結果となった。(ウォルフガング・ミッターマイヤー元帥の有能な副将格であるカール・エドワルド・バイエルライン大将も、まだ経験と識見を積む必要がある、と語られている。もっとも、後進が育つまで第一線を維持する必要がある上級大将以上の面々はまだ戦い疲れてはいなかったが)


帝国によるイゼルローン共和政府への実際の対処としては、皇帝ラインハルトが戦闘4日後の2月18日にハイネセンへの親征を表明。
これは翌日の皇帝発熱により延期されたが、2月25日、軍務尚書パウル・フォン・オーベルシュタイン元帥が皇帝の全権代理としてハイネセン赴任と秩序回復を命じられ、翌26日にはナイトハルト・ミュラーフリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト両上級大将が実戦指揮官として補佐につくよう人事が発令された。
この人事は結果としてハイネセンにさらなる動乱を呼び、銀河の趨勢は5月末のシヴァ星域会戦へと雪崩れ込むこととなる。


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  • いきなり旧同盟領の掌握に失敗してる帝国がしょっぱすぎる -- 名無しさん (2020-04-18 19:15:07)
  • ↑いや、ロイエンタール時代はグエン・キム・ホア広場事件なんかもあったけど、基本安定していた。不安定になったのはロイエンタールの反乱が尾を引いて立ってことでしょう -- 名無しさん (2020-04-19 09:15:41)
  • この防衛戦での勝利を見て、ユリアンを見限って出て行った元ヤン艦隊の将兵が戻ってきてくれれば、シヴァでもう少し楽な戦いができたのに、と思ったけど、やっぱり帝国の監視が厳しかったり、今の生活が安定していたり、行くための艦も帝国に処分されていたりで無理だったんだろうなぁ(´・ω・`) -- 名無しさん (2020-04-19 09:19:11)

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