登録日:2015/07/16 Thu 01:48:19
更新日:2025/11/24 Sun 07:27:27NEW!
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金田一少年の事件簿 金田一少年の事件簿r 金田一少年シリーズエピソード項目 r 原点回帰 グロ回 グロ注意 トラウマ回 クローズドサークル 人形 中二病 祟り 呪われし不動高校 伊豆 孤島 見立て殺人 猟奇殺人 死体損壊 人形供養 祟り人形 顔のない死体
彼女と一緒に彼女に模した「身代わり人形」も殺すなんて
これでは二度殺してるも同然だよ・・・・
人形島(ひとがたじま)殺人事件とは、金田一少年の事件簿で金田一少年が解決した事件の一つ。
「R」長編シリーズ第6弾。コミックス8~9巻に収録。全13話。
シリーズ初期を連想させる怪し過ぎる登場人物、グロい死体描写で連載時からファンの間で話題を呼んだ。
登場する怪人は「祟り人形」。
なお、メキシコに存在する「人形島(にんぎょうとう)」との関係はない。
以下、ネタバレにご注意ください。
【あらすじ】
不動高校の社会科教師・朱鷺田忍から、自宅で発見された暗号の解読を依頼された一。
内容を難なく解読した一は、「ヒトガタジマニイケ」という文に従い、美雪とともに、人形供養に向かう人々と共に伊豆沖に浮かぶ孤島・火吐潟島に向かう。
そこでハジメと美雪はかつての幼馴染であった林堂まことと再会することになる。
しかし、一たちが島に到着したその日、事件は起こる。
翌朝、人形の格好をした覆面作家「ペルソナドール」の一人・漢田切裏子が、「人型柱」に見立てた凄惨な死体となって発見された。
火吐潟島に伝わる「祟り人形」の伝説になぞらえ、残る「ペルソナドール」も次々と殺害されていく。
一連の事件は、火吐潟島のかつての長・首代胴玄の怒りによるものなのか?
そして「ペルソナドール」最後の一人の仮面をとった下から現れたのは、ある意外な人物の顔だった・・・。
【事件関係者】
- 朱鷺田忍(ときた しのぶ)
不動高校の社会科教師。34歳。
ボブカットが特徴的なメガネ美人。
ハジメの才覚を見込み、自宅の倉から発見された暗号文の解読を依頼する。
火吐潟島へ向かう当日、親戚に不幸があり行けなくなったという連絡が入るが・・・。
後に紅小路巴の「中身」として、首だけとなって発見される。
- ペルソナドール
人形の格好をした、三人一組の謎の覆面ミステリー作家集団。めちゃくちゃ怪しい
仮面をしているため素顔は見えず、会話もすべて筆談で行うなど徹底している。
人形を題材にした小説でヒット作を飛ばしているが、その中で多くの「人形」を殺してきたため、今回の人形供養に参加するが、順番に死体となって発見される。
紅小路巴(べにこうじ ともえ)
和人形の格好をした「ペルソナドール」の一人。日本語で喋るため、まだ意思疎通がしやすい。
ハジメ曰く「何かを隠している」風で、仲間が殺された際も自室に引きこもりを決め込む。
「ペルソナドール」の印税は一旦彼女が全額受け取り、折半して他2人に渡している。
そのため一時は彼女の印税独占目的の犯行ではないかと疑われたが…。
最期は首代胴玄の人形に見立てられ、人形社の中で首だけになって発見された。正体は朱鷺田忍。
鈴丘魔矢子(すずおか まやこ)
フランス人形の格好をした「ペルソナドール」の一人。フランス語で筆談する。
第1の事件の後何者かから手紙を受け取り、仮面と衣装を脱いで窓から抜け出していたが…。
2人目の犠牲者で、首代胴玄の人形に見立てられ、下半身だけの状態で発見される。
漢田切裏子(かんだ きりこ)
ピエロ人形の格好をした「ペルソナドール」の一人。口調(筆調?)はかなり軽い。「アリガトネ☆」
1人目の犠牲者で、首代胴玄の人形に見立てられ、首と下半身を切断された上半身のみの状態で発見される。かなりグロテスク。
- 蟻塚至(ありづか いたる)
「人形荘」番頭。65歳。
首代胴玄の戒めを信じており、戒めを破った者には祟り人形の怒りがあると騒ぎ立てる。
- 雨野影近(あめの かげちか)
職業不詳の男性。24歳。
大学時代の恋人の形見であるフランス人形を、結婚を契機に供養しに来た。
1話目では年齢が25歳に設定されていて、2話目へ移る過程で年齢が若返る。
- 詩村瞳(しむら ひとみ)
思い詰めたような表情をした女性。19歳。
死んだ祖父から貰ったクマのぬいぐるみを、"色々あって"供養しに訪れた。
常に手袋をしている。
- 星坂花梨(ほしざか かりん)
雑誌記者。27歳。
いつきの知り合いで、ミステリー雑誌「月刊クィーン」の執筆をしている。
「ペルソナドール」の追っかけとして火吐潟島を訪れた。
テンションが高く、野次馬根性が強い。
- 赤神双一郎(あかがみ そういちろう)
黒眼帯が特徴的な男性。40歳。
土砂崩れで壊れた村社に納めてあった年代物の一刀彫の人形を、社の再建の目処が立たない為供養に訪れた。
かなり曰く付きのものらしい。
「ペルソナドール」の影に隠れてはいるが、彼の名前やファッションも相当中二染みている。
- 田中豪(たなか つよし)
おそらく学生。17歳。
強盗に殺された母親の形見である人形を供養しに来た。人形には生々しい血痕が付いている。
実は母親を殺したのは後述の弓月清吾という人物であり、剣持が弓月の遺族の形見と思っていた人形は、実は彼の母親のものである。
事件当初はそうでもなかったが、事件が進むに連れて重要な立ち位置になっていった。
近年の金田一シリーズでは珍しく、普遍的な名前である。
- 林堂まこと(りんどう まこと)
「人形荘」若頭で、ハジメたちの幼馴染。17歳。
幼少期、幼くして事故死した妹の代わりに、女装させられて過ごしていたことがある。
一達と遊んでいたのもこの頃だったため、二人は彼のことをずっと女の子だと思っていた。
ただし、女装については、本人の意思ではなく、娘の代わりにするための両親の意向。であり、本人も、母親とともに島に帰って祖母に指摘されるまで、自分を女の子だと思っていた。
最初こそ一を「はじめちゃん」と呼び、男キャラで唯一その呼び方をする人物だったのだが、途中からは完全に「一君」に。
- 林堂みずほ(りんどう みずほ)
「人形荘」女将で、まことの母。42歳。
美人。
【主要人物】
毎度おなじみ主人公。
暗号をあっという間に解読し、美雪と共に火吐潟島を訪れる。
初日による、まことと美雪の不気味な夢にうなされるが・・・。
ちなみに、彼は、美雪に言われるまでは、まことのことを忘れていたが、言われてすぐ思い出したことから、それなりに仲は良かった様子。
今回、美雪が凄惨な死体を見てショックを受けないよう、第1の事件と第3の事件、計2度も静止して、死体を見るのを止めたあたり、美雪への気遣いが現れているように思われる。
ちなみに、美雪が彼に続いて現場に入ろうとするのを「来るな!!」と静止したことは過去にもあるが、いずれも1事件の中で1度だけ。2度もその気遣いを見せたのは、今回が初めてである。
毎度おなじみヒロイン。
一の悪夢に人形になって出てきた。
一に人形島行きの話が出た際、その島に幼なじみのまことが住んでいることから、同行を申し出た(もちろん、彼女も、再会するまではまことが女だと思っていた)
小説を読んで知っていたらしく、ペルソナドールについての知識を披露したりしていた。
漢田の首と下半身の無い血塗れ死体、そして朱鷺田の生首が発見された際は、一の計らい(前者は「玄関ホールに行くな、俺らと一緒に来い!」後者は「来るな、美雪!」)で、凄惨な死体を見ないで済んだ(特に後者は、見ていなくても朱鷺田の死にショックを受けていたので、見ていたら余計にキツかったと思われる)
特別、活躍と言えるほどのことは無いのだが、終盤、一に頼まれ、いつきとともに納屋の焼け跡を調査、「あること」を確認した。
おなじみ準レギュラーのフリーライター。
長編、短編に続き、最近出番が多い(もっと言えば前回の長編にも終盤でハジメの回想内にて1コマだけ登場している)。
星坂曰く「最近優しすぎる」らしい(同時に「かつてはグイグイいくトップ屋」と言われていたが、悲恋湖での彼の黒歴史態度の悪い言動を見ていると、何となく頷ける)。
終盤、一に頼まれ、美雪とともに納屋の焼け跡を調査、「あること」を確認した。今回はロリコン要素はゼロ
おなじみオッサン。
彼も人形供養に来たメンバーの一人で、逮捕した容疑者の一家が心中し、その形見である人形を持ち寄った。
ちなみに人形自体は既に人形社の中に納めているが、気持ちの整理がつかず、今回で5度目の参加になるらしい。
【その他】
- 林堂まゆみ(りんどう まゆみ)
まことの妹。
島の外で育ったが、ある時轢き逃げ事故にあって死亡。
遺体はまるで胴が欠損したかの如く、首と下半身を残して潰されていた。
まことが女装を始めたのは彼女の死がきっかけである。
- 弓月清吾(ゆみつき せいご)
剣持が逮捕した殺人事件の容疑者。
かつて林堂まゆみを轢殺し、また田中豪の母親を殺した張本人である。
妻曰く本来は悪辣な人間ではなく、まゆみの事故の際に逃げたのも一時の気の迷いだったそうだが、事故をきっかけに身を持ち崩した挙句に強盗殺人という大罪を犯してしまう(その際の被害者が、田中豪の母親だった)。
後者の事件の後、その事件を題材にした小説が出回り、残された彼の家族はその数年後に心中したといわれる。
彼自身もまた、獄中で自殺を遂げている。
この事件の全ての元凶である。
- 首代胴玄(くびしろ どうげん)
火吐潟島のかつての島長。
昔、島が災害に見舞われた際に、自身を首・胴・下半身の三つに分け、それぞれ海・山・畑に埋めさせ、自ら人柱になったという。
それから島には平和が訪れたが、島民は年に一度行われる人形供養祭に必ず参加しなければならず、もしこれを破れば首代胴玄が「祟り人形」となって災いをなすと言い伝えられている。
(以下、事件の核心、さらなるネタバレにご注意ください)
お姉ちゃんは一度死にかけたあたしに命を与えてくれた・・・
時雨お姉ちゃんはあたしの中でまだ生きてるの・・・!!
- 星坂花梨
この事件の真犯人「祟り人形」。
弓月清吾の妻であり、後に一家心中した弓月時雨は彼女の義理の姉。
互いに再婚した両親の連れ子同士という関係だったが、2人は星坂曰く「本当の姉妹のように仲が良かった」という。
星坂が重い腎臓病に侵された時に、真っ先にドナーとして名乗りを上げたのも時雨だった。当時、彼女の夫が林堂まゆみを死なせたことで身辺が慌ただしい状況であるにもかかわらず、である。
しかし、弓月清吾が再び事件を起こし、その渦中の人となった時雨とは連絡が取れなくなるが、ある日星坂は一冊の小説を目にする。
その小説は、清吾が起こした事件を、当事者名をほぼそのままにかなり派手に脚色したストーリーのもので、しかも大ヒット作品となっていた。星坂は住所を調べて義姉のもとを訪ねるが、既に「人殺しの家族しか住んでいないアパート」と認識したゴシップ記者陣が張り込みをしている有様で、その親族と疑われることを恐れた星坂はその場から立ち去ってしまう(この辺りは幽霊客船殺人事件の犯人の過去に似ている。尤も向こうは無実の罪で、こちらは実際に罪を犯しているという違いがあるが。)。この直後に弓月母子は心中し、それは星坂が自分自身をも憎むきっかけを生んでしまった。
その後、復讐を誓った彼女は、時田朋江が別の名で小説を出してもすぐわかるよう、書き方などを頭に叩き込んだ。そしてある日、「ペルソナドール」の名で書かれた一冊の小説を目にする。その小説はかつて義姉を死に追いやったあの作品と書き方が酷似しており、星坂はこの作家がその小説の執筆者である時田朋江(=朱鷺田忍)であることに気付く。
そして彼女は出版社へ入社し、「ペルソナドール」の追っかけ記者、という体で彼女に接触しながら、裏では彼女の小説を付箋だらけになるほど読み漁ったり、合鍵を作って彼女の自宅へ侵入したり、盗聴器を仕掛けたりすることで、火吐潟島のことを知る。
島を訪れた彼女はそこで姪の形見であるぬいぐるみに出会うと共に、その島に伝わる「祟り人形」の伝承を知り、また朱鷺田が「ペルソナドール」をこの世から抹消する計画を立てていることを知った彼女は、その計画を逆に利用して義姉の復讐を遂げる殺人計画を立案した。
姉の仇に対する復讐心と、姉を救えなかった自分に対する自責の念からかなり疲弊してしまったのか、上記のようなストーカー行為もさながら、弓月清吾が田中豪の母親を殺して奪い、娘にあげたフランス人形を見て号泣するなど、その行動はやや狂気染みている。
事件の収束後は逮捕されるが、その後は自暴自棄になってしまったらしく、ろくに食事もとらない生活を送っていた。そんな中、ハジメから朱鷺田もまた自責の念に駆られて彼女なりの善意の行動をしていたことを聴かされ、感謝の意を述べた(盗聴や自宅侵入していたのに知らなかったのか?というツッコミは置いといて)。
全てを聞き終わった後は、涙を流して感謝の言葉を口にした。
演出上の都合があったとはいえ、長編シリーズとしては非常に珍しく、殺害人数が1人しかいない(他には速水玲香誘拐殺人事件や、ノベルス雷祭殺人事件がある(ただし前者は解決編で実行犯が別の人物に殺害され、後者は過去に事件の元凶となった人物が殺害されており、また解決と同時に真犯人が病死する。事件の発端から後日談まで「他殺」による死者が1人なのは長編では初めてである)また、死体を3つに分けることによる「連続殺人と見せかけて被害者1人」というパターンも、シリーズ初となる。
ちなみに、一が美雪といつきに頼んで調査してもらったことは、納屋の焼け跡から「死体が発見されないこと」だった。つまり、燃えた納屋から死体が骨すら発見されない=死体は火事の前に運び出されていた、ということの裏付けであった。
一の推察が正しいとするならば、星坂はフランス語を使いこなせているということになる。
- 弓月時雨(ゆみつき しぐれ)
- 弓月楓(ゆみつき かえで)
弓月清吾の妻であり、星坂花梨の義姉とその娘。
夫が起こした殺人事件に加え、時田朋江による小説が原因で世間中からのバッシングを浴び、ついには心中してしまう。
この時、娘の楓が持っていた人形は人形社に納められ、後に星坂により発見されている。
血の繋がらない義妹のために臓器を提供し、殺人を起こしてなお夫を見捨てず支えてきた人情味のある人物である。星坂の立場から見れば悲劇のヒロイン。
母親よりさらに哀れなのは娘である。
自分自身は何の落ち度もないのに(当然未成年で、責任を問える年齢でもなかったはずである)、父親の犯罪で死んだも同然だからである。
しかし、生きていたらそれはそれで「殺人犯の娘」としていじめの対象となり、その後の人生が両極端になっていた可能性がある。
はたして娘にとってどちらが良かったのだろうか…
- 弓月清吾(ゆみつき せいご)
今回の事件の元凶であり、かつて林堂まゆみを交通事故で轢殺し、また田中豪の母親を強盗目的で殺した張本人である。しかし、交通事故に関しては普段から危険な運転をしていたわけではなく、おそらく不注意と不運が重なり林堂まゆみを死なせてしまったようである。逃げてしまったのも罪から逃れるためではなく、事故を起こし気が動転して逃げてしまい、また彼女はほぼ即死だったらしいので仮に逃げずに救護活動を行っていても結果を同じだっただろう。そのため死亡事故に関しては遺族以外の人間が彼や彼の家族を一方的に非難してはならないだろう。
しかし、強盗殺人に関しては事故で身を持ち崩したとはいえ、何の罪のない人間を金銭目的で殺しているのは全く同情の余地はない。多額の賠償金を背負うことになったのも、死亡事故を起こしたのだからそれに関して責任を取るのは当然である。どうやら自動車保険にも入っていなかったようであり、もし入っていれば全額とはいかなかったかもしれないが、強盗殺人まで犯すまで追い詰められることもなかったので、元々悪辣な人間ではなかったようだが、思慮や配慮などが足りない人間ではあったようである。
- 朱鷺田忍
小説家「時田朋江」であり、「ペルソナドール」の紅小路巴その人・・・というか「ペルソナドール」そのもの。
かつては前者のペンネームで売れっ子作家として活躍していたが、弓月清吾の事件を題材とした小説を書いたことがきっかけで、世間から奇異の眼を向けられると同時に弓月一家を心中に追い込んでしまう。
思ってもみなかったその結末、さらに今度は自分自身がバッシングに晒されたことで、朱鷺田は深く悔恨し、それを機に表舞台から姿を消して、不動高校に教師として赴任した。
しかし、弓月親子を死なせてしまったことに対する償いの念から、彼女らと同じような境遇にある人々への支援団体に対する寄付を始め、その費用を捻出するために「ペルソナドール」として再び世の表舞台に返り咲いた(これは前回の長編のある人物と同じである)。
彼女が「ペルソナドール」として活動を始めてから得た利益は、そのほとんどが寄付に回されていたらしい。
今回、彼女は火吐潟島を舞台にして「ペルソナドール」の2人をこの世から抹消し、それを一への挑戦状とする計画を立てていた。その目的は、「ペルソナドール」としての仮面を捨て、一人の作家として自身と向き合うことを決めたからではないか、と一は推測している。
ちなみに件の小説は、事件を知っている者なら誰でもすぐにその内容に気付き、かつかなりえげつない程に脚色がされていたらしい。
しかし実在の事件をもとに書かれた小説が数多く存在するのは事実で、朱鷺田の場合はそれを「やり過ぎてしまった」と捉えられるかもしれない。
結果として二人の人間を自殺に追い込んだことは非難されるべきだろう。
その一方、その後悔や贖罪の気持ちを伝えきれないまま、暴走した星坂に殺されてしまったという点では、かなり哀れな被害者といえる(伝えて思いとどまるかどうかはまた別の話だが…)。
ただし、ペルソナドールをやめるのであれば、普通に考えてそれぞれの方向性の違いといった諸々の事情などで解散したとして、姿を消せばいいだけであり、わざわざ偽装殺人をする必要性が無い。
また、島に供養に来た人や島の人や駆り出される警察の人たちにとってみれば迷惑この上ない事であり、後悔し償いの気持ちはあっただろうが、自分のした事による影響を思いつかないという所は変わっていなかった様であり、殺されて当然とはいかなくても殺されても仕方なかった気もしないわけではない。
尚、そして第1の殺人、第2の殺人で発見された他の「ペルソナドール」らの身体の部位は、全て朱鷺田一人のものであり、DNA鑑定でばれることを防ぐべく、死体が安置されていた納屋に犯人が放火。死体そのものは一緒に燃えたと見せかけるため、隠された。
なお、一を巻き込んだのは、ペルソナドールを辞める前にいち小説家として「金田一耕助の孫」である一と勝負してみたかったと言う気持ちがあったのかもしれない。
勝ち負けはどうでも良かったのだろう。
- 田中豪
上に書いてある事から分かるように、弓月清吾が起こした強盗殺人事件の被害者側の遺族であり、偶然にもその事件と大きく関係する事件に巻き込まれる事になった。
彼もまた事件後に出されていた朱鷺田の小説を読んだ者の一人で、事件の内容が例の事件をベースにしたものである事に気づき、小説の作者である時田巴江について、調べていた事があったらしく、第3の殺人で、朱鷺田忍=時田巴江だと気が付いた。同じ小説を元に作者の正体を探り出したという点は、偶然にも星坂と似ている。
事件内で、「(朱鷺田が殺されたのは)あの小説のせいかも……。」と言う事を言っているシーンがあったが、まさにその通りだった。
- 鈴丘魔矢子
- 漢田切裏子
朱鷺田が「ペルソナドール」として活動するために創り出した架空の人物たち。
わざわざ3人一組を装ってたのは文体からペルソナドール=時田朋江とバレるのを誤魔化すためと一は推測している。
基本的に彼女らが3人そろってメディアに出ることは滅多になく、大概は誰か一人が出演するケースが多かったという。
これは朱鷺田が1人3役をこなしていたためで、3人揃って出演する際は帰国間際で足の付きにくい外国人を臨時に雇っていた、らしい・・・。
今回鈴丘役に雇われた人物は本当にフランス人(あるいはフランス語圏の国民)だったと思われる。
今回、最初の船上でハジメたちに同行していた彼女らも、朱鷺田があらかじめ雇っていたバイトだった。
朱鷺田の死後は紅小路になり替わった星坂の指示で、それぞれボートに乗って帰ったらしい。
- いつき陽介
彼が依頼した結果巻き込まれた事件ではないためか、今回は(グレーゾーンとはいえ)普段の「犯人がクズor被害者に非がない」というジンクスからは一応外れた。
彼女の腎臓移植の話を聞いて、彼自身が引き取って育てている都築瑞穂と似た境遇である事を知り、事件後に複雑な思いを感じていた。
直接名前は出てこないが、金田一少年の殺人の犯人、都築哲雄の事が少し語られている。
そういった意味では今回も蟻地獄壕殺人事件に引き続き、事件の内容が他人事とは思えない様な内容(犯罪告発の本、犯人が顔見知りの同業者、腎臓移植etc.)であったため、彼にとっては特に辛い事件になったであろう。
【謎解きについて】
犯人自体は最後の殺人事件にて失言と証拠隠滅を同時に行っており、かつ目立つ容疑者もそれほどいないため、当てるのは割と簡単だったりする。
トリック自体は異人館村殺人事件や蝋人形城殺人事件、高遠少年の事件簿の応用ともいえる。
しかし、今回のメインとなる「1人の死体を3人に見せかける」トリックで読者の頭を悩ませたであろう、被害者以外の2人の人物の行方に関しては、過去の写真と背丈の合わないペルソナドール達、鈴丘の格好をした人物が変装を解いてどこかへ去り、そこへもう1人の黒い人物(星坂)が現れるという描写(読者のみのヒント)と、その鈴丘が流暢な日本語を書けるのに今回はフランス語で筆談していた、という伏線のみだった。
また、最後の事件発生後から「謎はすべて解けた」に至るまでの捜査期間がかなり短く、それ故に粗も目立つ。
金田一少年の事件簿の謎解きは猟奇的な殺人の裏にある「なぜ」を探るのが肝であるが、一は今回「なぜ見立て殺人にしたか」を疑問に思うところから始めず、すんなり真相に辿り着いている。
現場検証もほとんどしておらず、人形と遠近法を使ったトリックは「再び小窓を見て何かに気づいた」という点だけで解決している。血まみれになったペルソナドールの部屋の現場を確認することもしていないため、そこから去ったエキストラの足跡が窓の外にあった、なんてことも確認していない。火事になった納屋も美雪といつきに頼んで確認させるだけで終わっている。
同じく謎解きの肝となる「ミッシング・リング」を探るということも、せっかく情報通のいつきがいるにも関わらず、肝心の犯人との接点は推察でしか割り出せていなかった。読者側からしても、失言から犯人を割り出すことはできても、動機である弓月家とのつながりに関するヒントはなく、推察しかできない。
結果的にそれぞれヒントや根拠こそあるものの、
- 朱鷺田の目的。
- 足のつかない外国人を雇い、それぞれ迎えの船も用意してあった。
- 漢田切裏子を模した死体が出る前に、もう1人の外国人との間にあったやり取り。
- 星坂が弓月家の親族。
- 星坂が1人2役をするために着替えやすい着ぐるみ式の着物を用意していた。
といったことが「~だったんじゃないかな?」というような一の推察だけで終わっている。
【余談】
この事件はかの異人館村殺人事件を彷彿とさせるグロ事件となったが、それ以外にもあちらとの共通点がいくつかある。
- 登場人物の名前が「トキタ」「キリコ」
- 遺体を切断することで被害者の正体や人数を誤認させるトリック(向こうでは「今」の事件において使われたトリックではないが)
- 犯人の名字に「星」が入る
- 犯人の年齢が27歳
- 不動高校の教師が殺害される(あちらは本物と偽者(犯人)の両方が殺害された)
- 動機が血の繋がらない家族の復讐(向こうでは1人だけ血の繋がった人間(母親)がいたが)
といったところである。
また、不動高校の教師で殺害されたのは、学園七不思議殺人事件以来である(あっちは自業自得の最期だったが。さらに、女性教師に限定するとオペラ座館殺人事件以来となる)。
某アプリでの調べによると、今回登場した田中という苗字は全国で約133万人いるのに対し、朱鷺田と星坂という苗字は全国でも約10人しかいないレア苗字である(2022年現在)。
追記・修正は人形を供養してからお願いします。
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- 愚痴が多いとのことでリセット -- 名無しさん (2018-03-06 16:29:47)
- 解決したのはあくまでも事件だけで曰く付きの人形はマジっぽいという -- 名無しさん (2018-10-14 16:19:57)
- 死体を分割して複数の被害者に見せかけるトリックは、飛騨からくり屋敷殺人事件にもあったな -- 名無しさん (2019-02-10 00:44:28)
- 思ったんだけど死体出現トリック+星坂の失言さえ揃えば死体分割トリックは解く必要はないんだよね。ならば「星坂は朱鷺田先生とエキストラの計3人を殺した」という事にも出来ちゃうんだろうか。 -- 名無しさん (2019-02-10 23:22:32)
- この犯人がやるべきだったのはマスコミの方では?というコメントがあったけど、この世界は殺人事件が日常茶飯事なんだから覚えている関係者がどれほどいるのかってところだよね。会社の方も記者が狙われないように情報を秘匿してるってこともあるだろうし。 -- 名無しさん (2019-12-24 07:46:25)
- 小説の書き方から作者を割り出すって評論家や探偵みたいなことやっているんだな。蒸発した標的を0からここまで追及したのは、歴代犯人でも珍しい -- 名無しさん (2020-02-20 18:54:20)
- (盗聴や自宅侵入していたのに知らなかったのか?というツッコミは置いといて)←知っているはずのことを知らないまま、知らないはずのことを口走ってボロを出すとは皮肉 -- 名無しさん (2020-02-20 19:58:25)
- この事件の登場人物の苗字のレア度が多いなぁ。 -- 名無しさん (2020-02-23 01:23:09)
- グロ死体は過去いくらでも出てきたけど、善玉系(に見える)デザインの美人のグロ死体描写ってのは斬新な印象。まぁ幽月さんとかディープブルーの奥さんとか前例が無いわけじゃないけど。 -- 名無しさん (2020-05-14 13:13:57)
- まことが女装して生活していた設定に秘宝島の佐伯を思い出す人はどれくらいいるだろうか -- 名無しさん (2021-01-09 12:51:14)
- そういえば一も何か人形を供養したほうがいいんじゃなかろうかと思ったり。異人館村でトリック解明のために切り刻んだ人形とか -- 名無しさん (2021-02-15 21:35:34)
- 星坂が1人分の死体をわざわざ3人分に分けた理由って結局何だったんだろう。単純な手間もあるけど憎いはずの朱鷺田に気を遣って『ペルソナドールが本当は1人だってバレないようにしてあげました』ってやってるみたいでなんか違和感。しかも他2つの死体を隠したせいで死体が同一人物だって証拠がなくなっちゃったし。金田一は正しく解いたからいいけど下手したら『本当に3人殺した』と勘違いされて罪状水増しされるよ。 -- 名無しさん (2021-05-15 16:41:16)
- 一番悪いのは強盗殺人やらかした弓月清吾なんじゃないのかな…何かすっきりしない -- 名無しさん (2021-08-26 11:57:38)
- ↑だね。義兄が生きてたら確実にターゲットになってて、作家はなんらかの方法で社会的信用を失わせ就職も出来なくなり露頭に迷う程度の復讐で済ませてたかもしれない。↑2の手間は義兄への恨みがもう行き場を持たないため作家の遺体へ向いて分断までしたのかもしれない -- 名無しさん (2021-09-30 07:31:46)
- 堂本版ならともかく、今じゃドラマ化もアニメ化も無理だろうな。やるとしたら年齢制限をかけて映画化 -- 名無しさん (2023-03-01 04:21:11)
- 詩村瞳マジで空気だったな。蟻塚もなかなかに空気だった。 -- 名無しさん (2023-04-15 13:59:39)
- たまにコンタクト出てくるよなあ。黒死蝶、魔犬の森あとなんかあったっけ -- 名無しさん (2023-04-26 11:51:42)
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