- 西では元々、航海と星と錬金術の神であるブレンと言う名の神を崇めていた。しかし、この大陸の他の三国と併合する際、国家間の足並みを揃えるためにアウレリアも同一の宗教に改宗している。
- アウレリアの祖神ブレンまたは聖ブレンタンの祭壇は巨石と決められている。
- 連合王国の宗教は、南のイグニシアが崇めていた南方の大陸由来の一神教。
- イグニシアの宗教は他宗教の神に寛容である。この宗教では統治政策の一環として、他民族の神を天使や聖人として取り込む。かくして、アウレリアの神ブレンは、イグニシアの神に仕える聖人、聖ブレンダンとなって、今日も信仰を保っている。
- 〈来航者の一族〉の正死観には転生説があり、前世の記憶が吉兆扱いされる。(書籍版)
- 南の教えでは、魂は永遠だと説く。神の元で罪は赦され、束縛は解かれ、栄光と安息が与えられる。(葦生い茂る冥府)
- 西では、魂は流転すると考えられている。個としての自己は洗い流され、新たな生命に生まれ変わる。(葦生い茂る冥府)
<伝令の島4>
イグニシアはこの連合王国に唯一神の信仰を運んできた国だ。竜だけでなく、教会やら聖堂やらの本場なのである。
しかし、ガチガチ宗教国家と言うわけでもない。
南のカルキノス大陸の古代の帝国──ロムレス帝国の元属州だったイグニシアは、帝国から寛容な異民族支配の方法と宗教と自由を学び、イクテュエス大陸支配の折りにそれを実践した。
神様の習合や、聖人・天使としての取り込みによる現地宗教との融合。
現地の宗教を完全に上書きしない方針によって、連合王国の宗教事情は成り立っている。
そのお陰で、北のルーカンラントは神狼ホレの信仰を続けているし、東の多神教も未だに有効だし、西のブレン信仰もご覧の通り現役だ。
北のルーカンラントの祖神ホレは聖ホラティウスになった。
東のハーファンは多神教だが、主神は唯一神と同一視され残りの神は天使や精霊とされた。
西のアウレリアの祖神ブレンもご存知の通り、聖ブレンダンだ。
どうやらイクテュエス大陸にくる前のイグニシアも、異教の神を抱えていたらしい。
<運河の都2>
イグニシア祭式の祭壇は近隣の唯一神の信者から、信仰心に由来する魔力を集めている。
集められた魔力は、天使に変質した幻獣達専用の力に変換され、分配される。
概ねそんな感じのシステムになっているのだそうだ。
その祭壇から得られる信仰の力は、ここ数十年で徐々に減少してしまっていたのだという。
パリューグが〈伝令の島〉にいた頃、彼女は人々の信仰心が唯一神や天使から離れてしまったのが原因だろうと推測していた。
各地に派遣された他の天使との連絡も途絶えていたので確認する方法もない。
孤独と不安の中で、もはや自分は忘れられていく存在なのだろうと思い込んでいた。
しかし、実際にはそうではなかった。
唯一神や天使への信仰は、今でもバリバリに現役なのだから。
「イグニシア周辺では信仰のあからさまな衰えもなく、祭壇も充分に手入れされていたわ。
ここ数ヶ月で確認した範囲内では、〈春の宮殿〉や〈秋の宮殿〉周辺にも問題は無い。
そうすると遠隔地にある重要な祭壇が破棄されている可能性があるのよ」
<学園生活7>
信仰を祭壇によって集めて天使の力にするシステムがある。
それがイクテュエス大陸、カルキノス大陸に構築されていた祭壇ネットワークの正体だ。
ただし、ここ百年以内に徐々に祭壇が汚染されていたせいで、五十年前から天使たちに信仰のまともな供給が無くなった。
力を使い果たした天使たちは機能停止し、次々と死んでいくのだという。
天使とは、実はヒトが滅びないように唯一神が組み上げたシステムの端末みたいなものらしい。
人類は充分に強く賢くなったから、そろそろお役御免なのよね、なんてパリューグは言っていた。
ちなみにパリューグの話を聞いていると、彼女の言う神も幻獣っぽいような気がしてきた。
うまく想像できないけれど、少なくとも天にいるみたいなイメージとはまったく違った。
神は人のすべてに、また、その他もろもろの生き物のすべてに宿る。
神は肉の衣を持たず、しかし、あまたの肉の一つ一つは神の御座なり。
パリューグが言うには、唯一神というのはそんな生き物らしい。
精神や細胞に寄生している幻獣なのだろうか。
ミトコンドリアなどのように、進化の過程で細胞に取り込まれたのかも知れない。
〈伝令の島〉の壁画に描かれていた怪物の形の小さな組織が、細胞の中にあるのだろうか。
唯一神にはどんな人間でも直接接続できるけど、それはお勧め出来無いらしい。
脳内に「私はあなたを愛してる」みたいな言葉が溢れて多幸感に満ちた狂気に至るとか。
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