登録日:2024/11/21
更新日:2024/11/21 Thu 20:13:37NEW!
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1968年(昭和43年)12月10日朝、東京都府中市で金融機関の現金輸送車に積まれた約3億円の現金が白バイ警察官に扮した男に奪われた窃盗事件。正式な事件名は「現金輸送車強奪事件」。後に有楽町三億円事件・練馬三億円事件との区別のため、「府中三億円事件」とも称されることがある。犯人検挙に至らなかったことから、1975年(昭和50年)12月10日に刑事訴訟法250条における公訴時効が成立し、未解決事件となった。また1988年12月10日には、除斥期間の経過により損害賠償請求権も消滅した。
日本犯罪史において最も有名な事件に数えられ、「劇場型犯罪」でありながら完全犯罪を成し遂げ、フィクションやノンフィクションを問わず多くの作品で取り上げられている。
概要
1968年12月10日、雨の降る東京都府中市で発生した窃盗事件。
日本信託銀行から東京芝浦電気へボーナス約3億円を運んだ現金輸送車が府中刑務所北側を走行中、白バイ隊員に化けた犯人に呼び止められ、「車内に爆弾がある」と巧みな話術で運転手達を動揺させ、発炎筒を使って爆弾と騒ぎ立てて運転手達を降ろさせ、その隙に現金ごと車を運転して強奪。
大量の遺留品があり、一応容疑者として上がった人々もいるのだが、結局犯人が誰かは分からずに1975年に刑事時効、1988年に民事時効が成立。
若き日の高田純次も容疑者リストに入っていたという。もちろん無実である。
なお、時々イタズラにこの事件の真犯人だと名乗り出る者もいたのだが、「ある2つの事柄」の内どちらか1つを質問すれば、嘘かどうか簡単に判ってしまうのもこの事件の特徴である。
これは警察が今まで詳細を一度も公表した事が無く、正解を知っているのは真犯人以外には有り得ないからである。
その2つの事柄とは
「ジュラルミンケースにはお金以外に何が入っていましたか?」
「発炎筒をどうやって発火させましたか?」である。
多磨農協脅迫事件
三億円事件発生の半年ほど前、1968年4月25日から同年8月22日にかけて、多磨農業協同組合(多磨農協/現:マインズ農業協同組合)に対して現金恐喝や放火爆破予告をする脅迫事件が計9回発生した。手口は脅迫状送付、脅迫電話、壁新聞投げ込みによるものだった。
この事件は、脅迫日が東芝の給料日だったこと、脅迫状の筆跡が1968年12月6日に日本信託銀行国分寺支店へ送付された脅迫状の筆跡と同一とされたことなどから、3億円事件と関連があると分析された。
3億円事件を捜査する警視庁府中警察署・「現金輸送車強奪事件」特別捜査本部は、のちに「3つの事件」を同一犯による犯行であると結論付けた。
6月25日に多磨農協を脅迫する文章の中では「よこすかせんはひきょうもん」という文言が入った脅迫状を送っている。「よこすかせん」とは脅迫状を送る9日前の6月16日に国鉄横須賀線大船駅で発生した横須賀線電車爆破事件について触れたと言われている。なお、脅迫状作成当時は横須賀線電車爆破事件の犯人は不明だったが、三億円事件発生1ヶ月前の11月9日に純多摩良樹をペンネームとする犯人が逮捕され、1975年12月5日に死刑執行された。
影響
その暴力を一切使わず計画的に計略のみで大金を強奪し、未解決事件となった犯行から、日本の犯罪史上屈指の事件となった。
謎の多い事件ゆえ、様々な推理や解釈、都市伝説、陰謀論が飛び交い、後年度々ドラマ化や映画化がされた。
社員に手渡しするボーナスを運んでいたところを狙われたものであったことから、それまでは手渡しが一般的であった給与やボーナスの支給が銀行振り込み方式へと移行していくきっかけとなったと言われている。
また、解決に行き詰まった理由の1つとして、モンタージュ写真を使った捜査の失敗も大きなものとされ、現在は使われなくなっている。
事件の特殊性
事件名称が強奪事件であるのは、他に適切な表現ができる言葉が存在しないからである。
真っ先に浮かぶのは強盗罪だが、本事件は強盗罪の構成要件のうち「暴力、脅迫」を完全に満たしているとは言えない。あくまで運転手たちは「白バイ警官を本物だと思って自主的に降りている」からである。偽白バイ警官に「爆発するぞ」と危機感を煽られてはいるが、その偽白バイ警官に抵抗することができなかったわけではない。故に強盗罪は成立しない。
人を騙して財物を得ているので、詐欺罪に当たりそうだが詐欺も不成立である。なぜなら詐欺罪は「被害者が相手に財物を与える意思」が必要だからである。本事件では現金輸送車の運転手も、もちろん銀行も会社も、犯人(=偽警官)に金を与える意思は無いので、詐欺罪は成立しない。
故に本事件はあくまでも「窃盗罪」が適用される。しかし三億円窃盗事件では言葉のインパクトが弱いため強奪と言う言葉が使われる事が多い。
事件を題材にした作品例
- サザエさん
事件当時にこれを題材にした4コマが新聞掲載された。
- サイボーグ009
「ひとことだけいいたくてきたんだ その才能をもっとデカイいいことに使え!!」
- クレージーの大爆発
大胆にも、事件発生ほどなくして三億円事件をモチーフにした映画。植木等が、最初の「犯人」を演じた。
- スケバン刑事
連載開始当初、ちょうど本事件の刑事時効が目前だった為、それを題材としている。
- こちら葛飾区亀有公園前派出所
これをまねたり、題材にした回が度々登場。
- ルパン三世
TV第2シリーズ第73話『花も嵐も泥棒レース』に犯人が登場している。
三億円事件を起こしたという設定の架空の人物が登場し、その人物を中心に新たな事件が起きた。ドラマ版とアニメ版では四億円に変更されている。
- クロコーチ
主人公が警察の暗部を探ると同時に、三億円事件の真相に迫る。
- 府中捕物控
タイムボカンシリーズ、燃えよドラゴンズなどでお馴染み山本正之の手がけた曲。THE ALFEEが歌ったものがリリースされるはずだったが・・・
- 府中三億円事件を計画・実行したのは私です。
小説家になろうで掲載されていた真犯人を名乗る者の手記、というより小説。2018年12月には書籍化される関係で非公開となった。なろうで異世界転移及び異世界転生カテゴリー以外から書籍化されるのは『君の膵臓をたべたい』以来。出版したポプラ社は小説として扱っている。その一方で、なろうのガイドラインで第二次世界大戦を区切りに実在人物を題材にした物を禁止しているガイドラインがあるため、規約違反ではといわれたが、運営はこれといって問題があったとして動いたわけではなさそうである。ネット上では話題になり書籍化されるほどなので運営は作品に気付いていたはずなのだが。本編非公開後、プロローグとして主人公と有力な容疑者として知られる人物との出会いを描いた短編がなろうに掲載されていたがサイト退会により削除された。
- 真!!男塾
色々あって塾長が三億円事件を起こすことになる。もちろん、塾長たちの目的は現金などではなく、一緒に運搬されている「ある物」なのだが…(なお、その「ある物」とは上記にある「ジュラルミンケースに入っていた現金以外のもの」ではない……ハズである)。
- 三億円事件奇譚モンタージュ
三億円事件から十数年後を描いた漫画作品。父親が三億円事件に関与していたのではないかと疑う主人公が三億円事件の秘密に迫っていく。
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