殺意の階層 ソフトハウス連続殺人事件

ページ名:殺意の階層 ソフトハウス連続殺人事件

登録日:2023/04/10 Mon 02:25:49
更新日:2024/03/03 Sat 00:19:18NEW!
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ファミコン上に展開された日本初の本格推理アドベンチャーゲーム



【概要】

1988年1月7日にHAL研究所から発売されたFC用推理アドベンチャーゲーム。
開発は、ハル研究所、ハイパーウェア、MGP。
HAL研究所とはリンク先にある通り、現在のハル研究所のことである。
プロデュースには、後の任天堂の社長となる岩田聡氏の名前がある。


原作・脚本の"さえき いちたか"が樫畠明人から聞いた話を元にしたと言っているものの、当然ながらフィクションであり、実在の人物とは関係はない。
さえき いちたかも実在しない人物である。


なぜかゲーム中のタイトル画面では「パワーソフト連続殺人事件」と誤植されている。



【あらすじ】

探偵、樫畠明人の元に友人の西河正人が崖から転落死したとの電話が入る。
その死を偽装殺人と見破った樫畠明人は、彼が務めていたパワーソフト社に中村警部と共に捜査に向かう。
それは、更なる連続殺人事件の幕開けを意味していた。



【登場人物】


警察・捜査関係者

  • 樫畠 明人(かしはた あきひと)

このゲームの主人公の探偵でありプレイヤーの分身。28歳。
説明書には現代日本に現存する5人の名探偵の一人とか、司法試験に合格したが自主退学したなどの学歴が書いてある。
最初に死亡した西河正人は大学時代の友人であり、その無念を晴らすために捜査を開始する。
中村貴継警部とは遠い親戚にあたる。
名前は高橋名人を捩ったもの。

捜査を進めていく中で、実は彼の行動により新たな殺人事件が誘発されたという真相に辿り着き、ひどく後悔していた。
エンディングによっては死亡してしまうが、最も正解とされるルートでは、美沙子に西河が生前秘めていた想いを伝えるが…。



「これで…、これで本当に良かったのかい?西河…。」


  • 中村 貴継(なかむら たかつぐ)

警視庁捜査一課の警部。42歳。
この事件以前から樫畠明人の推理力に度々世話になっているらしく、説明書によると警部まで出世したのは樫畠の助けあってのものらしい。
とはいえシナリオ中では役に立たない訳ではなく、アリバイや各種証言の裏を取っているなど、地道な捜査でしっかり協力している。
捜査は足で稼ぐタイプなのだろう。

真に活躍するのは犯人の指名パートと言える。
真犯人を指名するパートで間違った犯人を指名した時、中村警部はその人物の動機を勝手に推測し、面白い理由を上げてくれる。
また、犯人に「全員」と選んだ際には「オリエント急行に乗って行ってしまえ」と他の推理小説に掛けたネタを披露してくれる。


  • 林さん

警視庁の鑑識。
事件現場にて死体の死亡推定時刻や状態を詳しく教えてくれる。
ちなみに固有グラフィック持ちの中では唯一犯人の容疑者リストには入らない。当たり前


【パワーソフト社について】

富野裕氏によって設立された会社であり、本社は富野裕氏が建設した富野ビルにある。
富野ビルはオフィスだけでなく、住居としての機能もあり、社長の富野氏と娘の美沙子は4階に住んでいる。
また、男性の社員達はビル内の部屋を自室として与えられており、そこで寝泊まりしている。


【パワーソフト社関連人物】

  • 西河 正人(にしかわ まさと)

最初の被害者。28歳。
自殺に見せかけて突き落とされ殺害された。
フェアリーコンピューター用のソフト、『スーパーマルクスブラザーズ』を開発、それがヒットしたことからマスコミに度々取材を受ける様になる。
次作の『イメルダの伝説』の開発を行い、完成間近というところであった。
プログラマーでありながら文学も好んでおり、手帳には意味深な短歌が残されている。

『スーパーマルクスブラザーズ』『イメルダの伝説』どちらも有名な任天堂のゲームのタイトルを捻ったもの。
美沙子との婚約にはかなり乗り気だったようであり、捜査を進めていく中で美沙子の描かれたパネルを自室に飾っていたことが分かる。


  • 富野 裕(とみの ゆたか)

パワーソフト社の社長。55歳。
ゲーム中では「しゃちょう」と表記されることが多い。
西河正人を殺害した犯人は社内にいるのではと考え、樫畠明人に3日間だけ調査を依頼する。

妻に民子がいたものの、事故で先立たれている。
民子の死因は失血によるものだったらしく、彼は「自分はO型だからどの血液型の人にも輸血できる」と言っていたが、実際はできなかったという。
また、2年前に娘の「小夜子」を事故で亡くしている。
そのためか残った娘の美沙子の幸せを考えており、西河正人と美沙子の婚約を決めている。


  • 富野 美沙子(とみの みさこ)

社長の娘。23歳。
パワーソフトでは事務等雑用担当。
専用BGM持ちで、ヒロインの一角。

実はソフトウェアの仕事はあまり好きではなく、ブティックをやりたいらしい。
また、西河正人とは婚約しているが、父が決めたことだと言い、ソフトウェアの仕事は好きではないこともあり当人は乗り気ではない。
AB型なので突飛な行動をするという証言があり、選択肢次第では樫畠明人と結婚する。


  • 富野 小夜子(とみの さよこ)

社長の娘。故人。
2年前に交通事故で亡くなり、社長はその悲しみから部屋をそのままにしてある。

部屋には日記やイニシャル入りのブローチが残されている。
それによると、事故ではなくイニシャルK.I.の人物と別れたことが原因での自殺だったと思われる。
該当するイニシャルの人物は社員のなかに一人いるが…?


  • 松丘 順次(まつおか じゅんじ)

企画開発部長。27歳。
社長の甥で、会社設立を持ちかけ、一緒に会社を作り上げている。

電気系に詳しく、針金をヒューズと判定したり、オルゴールを手作りのものだと見抜くなど、捜査を進める上での証拠集めにも協力してくれる。
実は会社立ち上げ時に専務になる予定だったが、社長がその約束を反故にしたため仲が悪い。
社長の娘の美沙子と西河の婚約も、実質的に西河が会社を継ぐことになると考えており、面白くなかったらしい。


  • 石橋 和彦(いしばし かずひこ)

広報及び営業担当の男性社員。28歳。
車好きで西河正人から金を借りている。
愛車はホワイトのRX-7。

説明書には趣味ナンパ、特技ナンパと書かれるほど、かなりナンパ男。
現在は吉川慶子と付き合っているが、別の女性社員もナンパしている。
美沙子にもオルゴールをプレゼントしていたりしている。


  • 森田 陽祐(もりた ようすけ)

営業担当の男性社員。24歳。
自室にはエキスパンダーや柔道着があるなど、わかりやすい体育会系。

吉川慶子と付き合っていたらしいが、振られている。
その吉川慶子と石橋和彦が付き合っていることは幸せなら良いと割り切っている。


  • 諸尾 託也(もろお たくや)

グラフィックデザイン一般担当の男性社員。25歳。
「もろ"おたく"や」と名は体を表すがごとく、わかりやすいオタク。
趣味はビデオ鑑賞。
自室には6台ものビデオデッキがあり、アニメキャラのポスター(おそらくミンキーモモ)も貼ってあることから、おそらくアニメ鑑賞が趣味。

捜査をする上で有益な証言はあまり得られない。


  • 吉川 慶子(よしかわ けいこ)

販売及び事務担当の女性社員。23歳。
美人のお姉さん系のヒロインの一角。

森田陽祐と付き合っていたものの、性格が合わなかったのか別れている。
その後石橋和彦と付き合い出した。
真犯人逮捕後は花枝や里歌と共に残務処理に追われている。


  • 長嶋 里歌(ながしま りか)

店舗での販売担当の女性社員。22歳。
若干天然というか、アホの子疑惑のあるヒロインの一角。

捜査をする上で有益な証言はあまり得られない。
松丘順次と付き合っている。
彼女のいる店舗ではテレビを操作すると低確率であるBGMを聞ける。
捜査が進むと店舗から消えてしまうが、松丘と森田の諍いを目撃したことがきっかけであり、そのことを証言してくれる。


  • 片桐 花枝(かたぎり はなえ)

事務担当の女性社員。
他の女性社員は二十代前半だが、この人だけは33歳。
噂話が好きな、いわゆるお局様枠。
お局様枠で33歳は若い気もするが…。

噂話好きということで人間関係の話を聞け、他の人の証言を聞き出すには彼女から話をする必要がある。
この人から先に話を聞くようにしようと、説明書では暗に推奨されている。
犯人逮捕後は、とあるルートでは会社を訪れた樫畠に会社の内情を教えてくれる。



【システム】

当時のFCの推理アドベンチャーに似たオーソドックスなコマンド選択式だが、コマンドを実行する毎にゲーム内時間が経過するのが特徴。
一定の時間になると一日が終わり、捜査完了までの間に必要なフラグが立っていなければゲームオーバーとなってしまう。
したがって、コマンドを考えなしに総当たりすれば無駄に時間が経過してしまい、解決できない。
加えて他の人の証言を得る前後で台詞が変化するギミックも随所にある。
特に、人間関係の不和や恋愛の話に関しては他の人からの証言を得ないと話してくれない場合が多い。


ゲームオーバーになっても最初からプレイし直せば不要な行動を避けられるが、プレイヤー自身の推理力が直接問われる硬派なゲームデザインであり、一筋縄ではいかない。
推理が必要になるのはキャラの台詞だけでなく、ゲームグラフィック、BGMからの推理も要求される。
捜査の進展を示す様なフラグはほぼ表示されず、捜査情報はメモを取らないと厳しい。


真犯人の指名の直前には原作者の「さえき いちたか」氏からのメッセージが送られ、事件解決は「作者からの挑戦状」という形式を取っている。
セーブは真犯人の指名の直前まではいつでも可能だが、真犯人の指名をする場面からは不可能となる。
犯人の指名だけでなく動機、証拠の詳細も聞かれるのにセーブポイントここからというのは若干不便さを感じるところではある。


ちなみに何故か「Aボタンがキャンセル、Bボタンが決定」という、一般的なボタン配置と逆の配置となっている。



【この人はこうして捜査に失敗した!!】

説明書にある失敗談という体のヒントコーナー。
3人の架空の人物による失敗談が語られる。


  • 一人目

総当たりでやれば解ける、と舐めてかかり、最初の西川の捜査にて探偵事務所に帰るを選択してゲームオーバー。
解説には探偵事務所に帰るのは捜査時間がなくなるためリスキーというアドバイスがある。
しかし実際のところ、最初の西川の事件の捜査では探偵事務所に帰ると即座にゲームオーバーになる仕様であり、微妙に噛み合っていない。


  • 二人目

ミステリーは得意だというプレイヤーで、メモを取らずに捜査を開始。
犯人を指名するところまで進んだが、動機などを正答できずゲームオーバーとなってしまった。
被害者のそれぞれに対する殺害動機やトリックなど、進展を適切にメモを取らなかったことが災いした。


  • 三人目

潔癖症で、全ての選択肢を試してから別の人のところへ行くという方針を立てて捜査を進める。
しかし、他の人の話を聞いてから別の人に話を聞くとまた違う台詞になっており、あれこれ戸惑っている内に時間切れとなってしまった。
上述の様に会話のフラグ管理があるため、話をする順番に気をつけたいという内容のアドバイスがされる。


【事件の展開】



捜査を続け特定の行動を行うと、新たに三人もの犠牲者が出てきてしまう。
諸尾託也、石橋和彦、森田陽祐がそれぞれ一日おきに死亡、さらに松丘順次が容疑者として捕まってしまう。


この連続殺人事件、犯人は複数存在する。
最初の西川を殺害した犯人は西川の謎を解いたところで自供するため、残り三人を殺害した犯人を指名、その動機を明らかにすることになる。
捜査すべき事柄はそれら複数の犯人に対して存在しており、情報整理も人数分必要となってくるのである。
そこから西川の残した短歌の謎を解くことでいよいよ真犯人を指名することになるのだが…。




以下更なるネタバレ




西河を手にかけたのは松丘 順次。
社長への恨みから産業スパイ紛いの事を行ない、それが彼にバレ、追い詰められて崖から突き落としたのである。
そして森田とも諍いを起こしており、彼が殺されるきっかけを作ってしまうこととなった。



犯人は富野社長。
日記のイニシャルの件で小夜子の死の原因が石橋和彦だと考えて問い詰めるも、石橋がはぐらかしたため、思わず殺害してしまった。
その後、石橋が諸尾を殺して逃げたように偽装し、石橋が愛車のRX-7で海に転落死した様に細工した。
RX-7の座席の位置が明らかに不自然なことがその証拠となる。


諸尾託也は何か物音を聞いたと思われたため、口封じのために富野に睡眠薬を大量に飲まされた挙句、ヒューズとビデオデッキを利用した装置で殺害されてしまった。
完全なとばっちりで殺されてしまった今作最大の被害者。
彼の頭上に落下したビデオデッキを固定していたヒューズは最後の推理で重要な証拠となる。


森田陽祐は正義感の強さから以前から西河と揉めていた松丘を問い詰めるが逆上した松丘と格闘になり気絶、自分の犯行を勘づかれたと勘違いした富野に絞殺されてしまった。
彼を絞め殺した際に使われたロープは最後の推理で重要な証拠となる。



しかしながら、ここまでの推理を行ってもおかしな箇所がある。それは、ナンパ師の石橋が手作りのオルゴールなんてこったプレゼントをしていたという点。
オルゴールと西河のフロッピーの音源から、石橋が小夜子への死の原因ではないこと、会社に届いた手紙から、ある人物が嘘を言い、社長を焚きつけた可能性に行き当たることとなる。
そして富野裕氏と、美沙子の血液型まで考えた樫畠は美沙子を西河が死んだ城ヶ崎に呼び出し、真相を問い詰めることになる。
最も正しいルートのエンディングでは、美沙子は樫畠から「イメルダの伝説」の隠された西河の思いを知った後、崖から転落して死亡してしまう。



【評価】

難易度が高いものの、時間を掛ければ事件の背景を解き明かし、犯人逮捕までたどり着くのは可能な範囲ではある。
シナリオもかなり入り組んでおり、その驚愕の展開に自力でたどり着けた場合の達成感はかなりのもの。
BGMも雰囲気にマッチしており、登場人物も個性的で印象に残りやすい。
しかし、発売時期が悪かったと言え、このゲームの発売日の一ヶ月後の社会現象に飲まれ、他のFCソフト共々隠れた名作扱いされている。
取扱説明書には「HAL研究所のアドベンチャーシリーズ第1弾」とあるものの結局第2弾は発売されなかった。



追記、修正は真犯人を指名し、美沙子さんにプロポーズしてからお願いします。


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  • これの項目が出来るとは。dq3の直前に売られてたのか。 -- 名無しさん (2023-04-10 08:18:44)
  • 真相判明時に分かるけど、タイトルがうまい。それはそれとしてネタバレで閉じるなら真相まで載せちゃって良い気が。 -- 名無しさん (2023-04-10 09:08:33)
  • ゲームセンターCXで今の所唯一有野課長が挑戦失敗した推理ゲーム。まあと言っても推理自体は当たってて最後の判断をミスしただけだけど。 -- 名無しさん (2023-04-10 19:18:53)
  • ↑2 ゲームカタログの方の記事でも、犯人は隠している(人数はバラしているが)ので、載せないのが妥当だと思う。・・・そろそろスイッチオンラインに来てほしい。 -- 名無しさん (2023-04-11 11:16:59)
  • 良質のサスペンスドラマみたいなシナリオ -- 名無しさん (2023-04-11 15:46:12)
  • ↑2 ゲーカタ基準にする意味が分からん。このwikiでネタバレを避ける基準に引っかかるとかなら理解できるが。 -- 名無しさん (2023-04-12 13:51:50)
  • ↑4最後の判断ミスが真犯人を当てられてない故に発生してるからな。バッドエンドにも何がなんだか分からん表情で終わった。推理ゲーは非常に勘が良い課長にしては異例だし、改めて本作の奥深さ感じる場面だったな。 -- 名無しさん (2024-02-18 03:40:45)

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