登録日:2022/08/01 Mon 03:13:53
更新日:2024/06/24 Mon 13:59:14NEW!
所要時間:約 10 分で読めます
▽タグ一覧
ラーメンズ 採集 コント ネタ 中学校 体育館 小林賢太郎 片桐仁 ネタバレ項目 検索してはいけない 難解 検索してはいけない言葉 衝撃のラスト atom 怖いコント
「採集」は、2002~2003年に行われたラーメンズ第12回公演『ATOM』にて上演されたコントの一本。
公演では6作品のうちの5本目として上演され、このコント一本で公演時間が25分を越えるラーメンズとして行われたコントでは歴代最長の作品である。
他のコントと同様にパントマイム劇であり、舞台セットは一切使われていない。
その時間に裏打ちされた重厚なシナリオ展開と、序盤から張り巡らされた伏線回収の巧みさから、ファンからの人気はとても高い*1。
◆あらすじ
久しぶりに地元へと帰ってきて、中学時代の同級生・片桐と再会した小林。片桐は母校の中学に勤めていて、理科の教師になっていた。
二人は夜中の体育館へと忍び込み、卓球と思い出話で盛り上がる。当時のクラスのマドンナとも今日、再会できるようだ。
片桐はしばらくして、マドンナを迎えに行こうと校舎を出る。一人切りになり、取り残された小林は、暗い体育館の中である”発見”をしてしまい……
◆登場人物
- 小林(演:小林賢太郎)
あだ名は「プリマ」。上京し、都会で花屋を営んでいる。
マドンナと再会できると聞いて、恋人をほったらかしにして東京から地元へ帰省してきた。
卓球ではサービスがやたら優雅。
- 片桐(演:片桐仁)
あだ名は「ジャック」。母校で理科教師をやっている。本人いわく専門分野は生物。
中学時代は昆虫の標本を大量に作っていた。
卓球が上手く、カットが強烈で上記のあだ名も切れ味鋭い「切り裂きジャック」から。
- マドンナ
小林・片桐の会話においてのみ登場。中学時代、小林に惚れていたらしい。
かなりの美人らしく、片桐いわく「天から舞い降りた美の女神」。
離婚して、今は独り身のようだ。
◆ストーリー解説
ネタバレ注意!
「っあ!」
「っだ!」
「おっし!」
「くっそ!」
地元の母校にて再会した片桐と小林は、久しぶりに二人で卓球をしている。
生物マニアだった片桐は、理科の教師になっていた。片桐のスマッシュにかなわない小林。
どうやら片桐は、時々この体育館で練習をしているのだとか。
一方の小林は、上京して花屋をやっている。東京の暮らしを満喫していると語る小林だが、片桐は不服そう。
「もっとこう、お前は、東京の暮らしに疲れてて、久しぶりに地元の友人に会って、昔の輝きとかを取り戻せよ!」
都会を下げて田舎を持ち上げろ、というひねくれた片桐の思想にあきれる小林。
その後しばらく、夜中の体育館で思い出話に花を咲かせる二人。
三年の文化祭の後、ウォッカを染み込ませた跳び箱に火をつけて飛んだこと、片桐が昆虫の標本をつがいで500、合計千匹作っていたこと、そして、クラスのマドンナを二人はどう思っていたのか……という話まで。
そんなマドンナも、今日この学校へとやって来るのだ。どうやら小林に会いたいらしい。
小林はこの日のために、東京の恋人には“徹夜で棚卸しをする”と言ってこっそり地元に帰ってきたのだ。
「きっちり嘘ついてるじゃねぇかよー!」
「お前が嘘つけっていたんだろ!」
小林は美人との再会に期待が隠せない。片桐にもマドンナのことをどう思っていたのか尋ねる。
片桐いわく、『奇麗な人だなあ』とは思っていたが、理科と卓球にしか興味が向かなかったらしい。さすがの生物オタクっぷり。
今ごろレベルアップして動物の剥製でも作っているのかと思ってた、とからかう小林。
「まぁ俺の話はいいじゃねぇか。ほら、飲もうや」
“夜の体育館は俺の箱庭だ”と言い張り、三角フラスコをジョッキ代わりに、スポイトでビールを飲む片桐。
小林も飲むが、実験みたいな味がするらしい。ちゃんと洗ってるのか?
おつまみは焼き豚。切れ味の良い包丁でカットしながら食べる。さっき研いだばかりのようだ。
「おい!これ生焼けもいいとこだぞ? これじゃ豚のタタキだよ」
「しょうがねぇだろ手作りなんだから」
なんと自前でブタを一頭拝借して、片桐自身がさばいたものだった。そりゃ研いだばっかだったわけだ。
アルコールランプでは焼ききれなかったらしい。弱火すぎる。
そのうえ、焼き豚にしなかった内臓などの部位は捨ててしまった様子。
「俺別に中身に興味ねえから」
そういった矢先、片桐は腕時計を確認する。件のマドンナが働いてるスナックがそろそろ閉店するようだ。
迎えに行こうとする片桐。ついでにウォッカを買ってくる、と宣言する。
「眠くなったら体操のマットあるから」
「こんな時に寝れねぇよ」
「違うよ。眠気覚ましに三点倒立でもしてろ」
そんなやりとりを交わした後、片桐は別れ際に一つだけ忠告をする。
「破けて綿出てるマットだけは触んなよ。俺のお気に入りだから」
そう言い残して片桐は学校を出て行った。さっそくそのマットを見てみる小林だが、ただボロボロなだけで、お気に入りの意味が分からない。
以下、コント中盤以降のネタバレに注意。
片桐がいなくなったので、舞台には小林だけが残り、ここからはほぼ一人芝居としてコントが展開される。
誰もいないのをいいことに、小林はマドンナと再会するときのための練習を始める。
「うぃーっす。俺、誰だか分かる?」
「……おう」
「(いったん隠れて)オレー!」
「弾ける!弾けるよ!これなんだ!自分の気持ちに素直になればよかったんだ! ……結婚しよう」
「君は……よかった、会えて……ずっと、好き、でした……(ガクッ)」
いろいろシミュレーションしたあげく、冷静になる小林。今の彼は全体的に間違っていた。
その後も一人でいろいろ思索にふけっていると、片桐の置いていたカバンにつまずいてしまう。つまづいた衝撃で荷物が崩れる。
荷物の一部だったノートを、好奇心に耐え切れずに開いてしまう小林。
- カエル
- ハツカネズミ
- モルモット
- 豚
- ウサギ
- ニワトリ
- 人間
多種多様な生物の名前がずらり。解剖日記のようにも思えるが、そのリストの末尾にはなぜか“人間”。気持ち悪りぃ、と言ってノートをカバンに戻す小林。
まだ片桐がマドンナを連れてくる様子はない。相変わらず暗い夜の体育館のなか、一人まちぼうけ……。
ふんふん♪ふふふふん♪ふふふふんふんふんふんふんふん♪
薄気味悪さを紛らわすために、歌を歌ってみる。
「ワン!ワンワン!いぬー!」
犬になってみる。
いぬ♪いぬいぬ♪いぬいぬいぬ♪いっぬ♪
犬で歌ってみる。
怖くなーい!と大声を出してごまかす小林の姿は一見の価値あり。
黙ると静か。周りになんにもない田舎……。不安を感じた小林は、突如ラップを始める。
以下歌詞
INAKA(仮) 作:小林(プリマ) ここはド田舎だ 超ド田舎だ 来たけど彼女はちょうどいなかった Yeah Yeah INAKA Yeah INAKA Yeah? 俺はこの村を捨て超都会へ ここで暮らすのはちょっと大変 仕方ないがしばらく働く 仕事ないさここにはおそらく Yeah Yeah INAKA Yeah INAKA Yeah INAKA Yeah? 夢を抱いてみんな上京 けど現状はこんな状況 たまに親の顔見に来るのは 唯一正月とお盆 息子の成長見せに来るのさ So it’s show must go on! Yeah Yeah INAKA Yeah INAKA Yeah INAKA Yeah? 戻ってくるか否かこんな田舎 そんでもっていつか彼女といい仲 Yeah Yeah 怖くねぇぞ Yeah お化けなんてないさ Yeah Ah COME ON! お前のことなどぶっ飛ばす
……恐怖心を紛らわすためのものにしては、やたら手の込んだリリックを披露する小林。
その独特のノリの良さは必聴である。
そんなことをやっていても片桐はまだ帰ってこない。現実に戻る。扉を開けて外に出てみると、飼育小屋を見つける。その小屋の中にはウサギとニワトリがいた。
「なんであいつ上着持ってきてねぇんだよ。地元なんだったら夜冷え込むことくらい分かるだろうが、なーウサギ? コケッコケッ」
しかし動物たちからの反応は無い。試しにニワトリを持ち上げてみると……。
以下、核心に迫るネタバレ注意! コント全編視聴後の閲覧推奨。
ニワトリを持ち上げてみても、まったく抵抗する様子はない。動物たちは剥製で、もう生きてはいなかった。
片桐は動物をまるごと一体剥製にすることに成功していたのだ。なぜ隠していたのだろう?
ウサギ、ニワトリ……彼が捌いた豚。
このラインナップには見覚えがある。先ほどのノートに書いてあったリストだ。
あれが剥製にする動物のリストだとしたら、次の“対象”は、恐らく……。
生まれる疑惑。そしておそらく、ヒトの剥製を作るとしたら、ターゲットとされるのは……。
「……俺か?」
顔色が変わる小林。片桐は人間の剥製を作るために、俺をここに……。
それでも彼は、“馬鹿げてる”と自分の頭で生まれた推論を否定しようとする。
「こんなところで剥製を作るなんて無理だ。だいたい刃物がいるじゃねぇか」
そんな言葉を吐いた直後に目に入ったのは、焼き豚がよく切れる研ぎたての包丁。
「中に詰める綿がいるじゃないか」
視線の先には、片桐お気に入りの破けたマット。
「消毒に使うアルコールだって……」
フラスコに入ったビール。
「いや、ビールじゃ消毒なんて。そういうとき使うならもっと度数の高いウォッカとか……」
片桐が買いにいこうとしたものはウォッカだった。
「もしそうだとしたら、理科室に呼び出すはずじゃないか。こんな机も無い体育館には、手術台の代わりになるものなんて……」
卓球台。
「やだよ……俺やだからね!」
よろよろと後ずさる小林。自暴自棄になり、包丁を手に取って、刀のように構える。
狼狽して、どこから見てるんだ、と一人で怒鳴る。
「かかってこいよ、切り裂きジャックさんよぉ!俺の剥製作ってもなぁ、どんなに隠したって、すぐに……」
そう言いかけて、小林は自身が“東京にて徹夜で棚卸しをしている”ことに気が付く。
一人切りで喋っているうちに、なぜか眠くなってきた。
ビールに睡眠薬でも仕込まれていたのかもしれない。寝るわけにはいかない。眠気を覚ますために、三点倒立。
「お前の睡眠薬なんて全然効かねえからなぁ!」
と、そう叫んだ瞬間、
ピロロロロロロロロ……
携帯に突然着信が。電話を取る小林。発信者は片桐だった。
マドンナが一人、タクシーで学校に向かっているという連絡。二人きりで楽しんでこいよ、俺は時間をつぶすから、という報告の電話だった。
小林は電話を切り、安心した表情でひとりごつ。
「バカバカしい。そりゃそうだ! 俺ミステリー作家の才能……ミステリー作家とラッパーの才能あんじゃねぇの。馬鹿げてるよ、人間の剥製なんて。はーはっはっは」
そう笑う小林の元へ、片桐が後ろから速足で駆け寄って……
暗転。
コントはそこで終了。
DVD版では最後の観客の音声が消えミステリアスなBGMが流れる*2。
◆余談
後半の伏線回収が大きな魅力の作品であるが、想像してみると楽しい余白の部分も残されている。
- マドンナはもうすでに剥製にされているのか否か
- いつから片桐は小林に目をつけていたのか
- 片桐の話したことはどこまで本当だったのか
ファンからの人気も高く、トピックに上がりやすい本作。自分なりに考察してみるのもまた一興だろう。
劇中での小林のあだ名「プリマ」と、クラスの「マドンナ」を組み合わせると、“第一の女性”を意味する『プリマドンナ』という外来語になる。
このことから、マドンナはすでに剥製になっている可能性が高い、という意見も。
2chにかつて立てられていたスレ『何故か怖かったネタ』ではこのコントが真っ先に挙げられている。
『ATOM』のDVDでは片桐が小林の後ろからシーツを被せて暗転するが、公演によっては違うパターンのオチもあったそうな。当時の掲示板や記事などを調べてみても面白いかも?
2022年8月現在、『ATOM』を始めとしたラーメンズ本公演に収録されているコントのほとんどが、YouTube上のラーメンズ公式チャンネルにアップされている。もちろんこの「採集」も例外ではないので、今この項目を読んでいるWiki篭りはぜひ閲覧してみてほしい。
追記・修正はグリーンマート高橋の店員がお願いします。
[#include(name=テンプレ2)]
この項目が面白かったなら……\ポチッと/
#vote3(time=600,8)
[#include(name=テンプレ3)]
▷ コメント欄
- シーツをかぶせて暗転ならそれは………『世にも奇妙な物語』でやってほしいけれどもひっかかりそう -- 名無しさん (2022-08-01 06:58:38)
- これ観客がけっこう笑ってるの怖かった -- 名無しさん (2022-08-26 06:31:38)
- ↑ジュニア「なんでウチのでは笑わへんのやろ」 -- 名無しさん (2022-10-20 22:12:36)
#comment(striction)
*2 YouTube版では無音
コメント
最新を表示する
NG表示方式
NGID一覧