冬浦めぐみ

ページ名:冬浦めぐみ

登録日:2021/03/20 Sat 08:00:18
更新日:2024/05/27 Mon 09:27:27NEW!
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乙女ゲー主人公 ヤンデレ 月影の鎖 依存体質 闇属性 魔性の女 女将 月影の鎖 -錯乱パラノイア- 所要時間30分以上の項目 闇堕ちが異様に似合う女 頭はいい 傍にいると言ってくれたのに傍にいると言ってくれたのに傍にいると言ってくれたのに傍にいると言ってくれたのに傍にいると言ってくれたのに 闇の乙女ゲー主人公 柘榴ちゃんは親戚 takuyoのやべー奴 いつものtakuyo 意外と人気は高い 11の病み方を持つ女



一人きりになった。
私はこの時間が好きだった
誰にも邪魔されることはない、静まり返った空間
そこには他者がない
息衝くものは己だけ
そう、私だけが存在できる場所
永久にこのままで在りたいとすら思った








冬浦めぐみはTAKUYOの乙女ゲーム『月影の鎖 -錯乱パラノイア-』のヒロイン。


紅霞市の外れにある小料理屋『月の畔』で女将として働いている。
現在は血のつながらない兄と二人暮らし。


……ここまでなら普通のヒロインだが、彼女の本質は内面の闇の深さ
TAKUYOヒロインがイカれているのはいつものことだが、その中でも群を抜いて頭がおかしく、ヤンデレ属性の乙女ゲーヒロインという中々稀有な属性を持っている。
一部ルートでヒロインが病むのはまれによくある。殺人鬼に惚れて攻略対象皆殺しにした某女子高生とか。しかし作中一貫して病んでいる人は流石に珍しい。
同じく闇が深い「SWEET CROWN」のヒロインである樫野柘榴ちゃんとは親戚みたいな扱い。
公式曰くめぐみが狐で柘榴が狸。



年齢:17歳
誕生日:10月12日
身長:155cm
血液型:AB型
好きな言葉:『平穏無事』
好きな食べ物:りんご飴
好きなもの:月


【人物像】


「月の畔」の女将。副業としてお使い業も営んでいる。
幼いころに実母が亡くなり、現在の義母である大井川蛍に引き取られた。
1年前に蛍が亡くなったことで「月の畔」の二代目女将となった。


物静かだが大人びていて気立ての良さを持つ少女。一部例外を除き常に敬語口調で話す。
『自分の家にでもいるような心地よさを提供すること』という店の理念を忠実に守っており、来てくれたお客が心地よい時を過ごせることを何よりも大切にしている。
穏やかながらも相手を立てつつ話すセンスが高く、どんな話にも笑顔で付き合ってくれるということで客からの人気も高い。隠れファンも多いのだとか。


店をよくするためには努力は惜しまず、先代女将にはまだまだ到達しない技術があると理解しながら、出来ることからコツコツやっていこうとする向上心も兼ね備えている。


その一方で個人的なお付き合いを求めてくるお客はそれとなくかわし、兄を除くすべての人間と「女将とお客」としての一定の距離を取り、あまりプライベートを明かさないというミステリアスな面を持つ。


唯一兄に対しては年相応の少女らしい砕けた口調で話す。
というか兄に対しては完全に口うるさい妹。護も妹について評するときは褒めつつも最後にしれっと「たまに怖い」と付け加えていた。
めぐみおにいちゃん?(それを聞いて)



このようにお客から好かれる理想的な女将。
……というのは全て彼女の表向きの姿。実際は精神的に不安定な依存体質



【めぐみの過去と本質】


全ての始まりは幼いころ、めぐみの実父が亡くなったことだった。
めぐみの母・雪乃は夫を深く愛するあまり心を壊し、夫が死んだこととめぐみの存在を忘れてしまった
母が大好きなめぐみはなんとか自分を思い出してもらおうとするも、母は思い出さず、むしろ誰だかわからない子供にイラついていき終いには「あなたは誰なの? 迷子の子が勝手に入ってきたの?」と言うほどだった。


このことが原因となりめぐみは自己肯定感が低い子どもになってしまった
そのこともあり心の奥底に「誰かに愛されたい、受け入れられたい、必要とされたい」という大きな欲望を持つようになった。
そして自己肯定感が低いために他人に迷惑をかけることをひどくおそれるようになる。


その後母は亡くなり、彼女の従姉妹である大井川螢に引き取られることになる。
自分に存在価値がないと本気で信じていためぐみは、大井川家で子どもゆえに迷惑をかけることも多くそのたびに「自分なんていなければよかった」と考えてしまっていた。
けれども蛍と護はめぐみを慰め、無償の愛を与えてくれた。



このような壮絶な過去から生まれてしまったのが現在のめぐみ。
上述の人物像は全て義母である蛍の言動を真似ているだけに過ぎない


きっかけやはり大井川家に引き取られたことだった。実母とのすれ違いで自分の存在価値を失いかけていためぐみ。
そんな彼女が蛍と護に無償の愛を与えられ、感じたことは「二人はこんな私にも居場所をくれた。だから私はせめて誰にも迷惑をかけずに生きていかなければならない。そして私はこの家のために生きていく」というものだった。
つまり「私に存在価値は無いが、居場所を護る私には価値がある」というのがめぐみの根底。
そして自己肯定感が低いがゆえにそれだけが自分が価値のある人間になれる方法だと勘違いしてしまっている。
……この時点で色々と歪んでいるがめぐみちゃんだから仕方がない。


それからめぐみは誰にも迷惑をかけず生きていくために、元々存在価値のない自分が自分のために行動することは大それたことだと考えるようになる。
だから心の奥底にあった「愛されたい」「受け入れられたい」という自分の感情を押し殺すようになっていった。
迷惑をかけずに生きるためには欲望を持った本来の自分は必要ないと考えるようになっていったのである。



「愛されたい」という願いを抱いていたはずなのに、いつの間にかその願いを殺してしまうという大きな矛盾を抱えている。


そうして誰にも迷惑をかけず店のために生きるべく、自分に愛を与え指針となってくれた蛍の理念や言動を模倣するようになった。
このように上述の人物像はめぐみではなく、蛍の人物像を演じているだけ。



自分の居場所を守るために、『居場所』という鎖に縛られ、そして依存している。
自分が生きていれるのは居場所を守っているからであり、そうでなければ自分に存在価値はないと信じて疑わない。
依存しているがために物語開始時の彼女にとってはそれに尽くすのが本望であり、序盤では「自分に与えられた役割を全うするために」とか「私は希薄な感情で生きなければならない」とか口にしていた。
またとあるイベントで「恋に興味はある?」と聞かれるが「はい」と答えると「いつかの将来兄は誰かと結婚する→店は兄の嫁が守ってくれれば言うことはない→だがその時に自分がひとりだと優しい兄は心配する→だから兄を心配させないために恋に興味を持ち恋人をつくらなければならない」という歪な価値観を見せてくれる。
恋自体については「理解できていないので興味を持てない」が本音。




本来のめぐみは女将としてのめぐみとは真逆の根暗で人見知りな少女。
相手に不快を与えない上で一定の距離を保ちプライベートでは好んで人と深く関わろうとはしない。
『自分の家にでもいるような心地よさを提供すること』という理念の為なら、本来は客とは距離の無い付き合いをしていかなければいけないため、めぐみは本質的には理念を理解していないと言える。
自分を押し込めた結果成長できず大人になったため視野が狭く、ただ理念だけに縛られている。



ついでにネグレクトの影響か、人間性が一部ぽっかりと欠落している節がある。
兄と共に実母の墓参りに行ったとき思ったのは、「兄はこんなにも熱心に祈ってくれているのに、自分は何も感じていない」ということだった。



何より「本来のめぐみ」は長い間抑圧されていたために精神的にとても未発達な状態
本来は自己肯定感が低く精神的に脆い自分を見つめなおし成長しなければならなかった。
けれどもめぐみは蛍を模倣し仮初の人格を得てしまったことで自分の弱さから目を背けてしまった。
だから、「本来のめぐみ」は精神的に幼い少女だと言える。
幼いゆえに自分の欲望を制御する術を知らず、その癖蛍の人格を演じることで自分の欲望に無理矢理封をしているという危険な状態。


本人はそんなこともお構いなしに封じ続けたため、いつ狂気に蝕まれてもおかしくないことになっている。
もしも何かの弾みで「女将のめぐみ」が崩れれば、「本来のめぐみ」は未発達な幼い子どもであるために自分の欲を押しとどめる手段を持っておらず、「愛されたい」という欲望のままに暴走してしまうことになる
このように愛ゆえに暴走するのがめぐみちゃんがヤンデレヒロインを言われる所以。
実際望月依存エンドでは理性では間違っているとわかっているが、それでも気が付けば望月のことを考えてしまうという欲望を抑えきれない最悪の事態になっていた。



物語では街の事件で居場所を守れなくなってしまうかもしれないこと、
何より初めての恋で押し殺し続けていた「本当の自分を受け入れてほしい」という考えが表に出るようになったことで不安定さを増していく。


こんな彼女がどのような結末を迎えるかはめぐみの選択次第。


純愛エンドでは街での事件に立ち向かう中でようやく自分の心のいびつさに気が付き成長していく。
そうして自らを縛る鎖から抜け出し、恋人と共に幸せな道を歩んでいく。


依存エンドでは逆に成長できないままでめぐみが壊れ、暴走していく。
ルートごとに行動は変わるが、恋人のために殺人の覚悟を決めたり心中しようとしたりアクティブなヤンデレさんになる。
自分を抑圧し続けていた反動か、その言動は歯止めがきかず狂気的になっている。
依存エンドで共通しているのは、愛してくれた相手に対する独占欲


依存エンドも力の入った内容であるためか、ヤンデレに覚醒しためぐみちゃんが印象に残っているプレイヤーも多いらしく、こっちのめぐみが好きという人もそこそこいる。
酷い人だと「めぐみちゃんは闇堕ちする方が輝いている」と言い出す。


個人差はあるだろうが、各ルートの病み具合は
望月>榛名>神楽坂≧猪口>>>>>>>>兄貴


くらい(無印限定に限る)。
望月依存エンドは割かし長めということもあってめぐみちゃんは完全に錯乱パラノイアしている。


なお依存エンドに到達した場合、攻略対象は高確率で破滅もしくは闇堕ちする。
……とんだ疫病神である。



こんなプロフィールのために意外に感じるかもしれないが、自己肯定感が低いだけで頭は結構よかったりする。
そもそもしれっとやっているが蛍の言動を完コピしている時点で地味におかしい
特に話術に長けており、猪口ルート終盤のスパイ活動でその一端を見ることが出来る。
また榛名ルートでは「才能があった」ということにはなっているがかなり短時間でピッキングを覚えていた。才能がピッキングであるあたりが本当に闇属性のヒロイン。
だが頭が良いせいで自分の闇を周囲に気が付かれないようにしてしまったという意味では、それが仇になっている。



長々と語ったがめぐみの本質的な部分は『月』
一般的な乙女ゲームのヒロインもしくはこの作品の神楽坂や望月のように、みんなを支える太陽にはなれないかもしれない。
けれども、月のように優しく誰かを支えることは出来る。
そしてそんな風に月が必要な人間は決して少なくない。
『本来のめぐみ』は気弱で人見知りする性格ではあるが、同時に優しく責任感の強い少女でもある。



完全に余談だが精神が未成熟な反面、肉体的には成熟しているらしくボンキュッボンであることが示唆されている。



【各ルートでの行動】


◆神楽坂ルート


ふとした縁で神楽坂と祭りを回ることになり、仲を深めていく。


このルートでは深海の策略により神楽坂が軍人であることが明かされ、クソ市民どもは青年団に敵意を示すようになる。
朝のクソ市民ども「神楽坂くんならきっとなんとかしてくれるさ!」
夜のクソ市民ども「神楽坂のせいでこの街はめちゃくちゃになったんだ!」
※同じ日の出来事です。


めぐみの方でも問題が起きていた。水道税について、商店街で利益の集中を防ぐためにすべての店で値段を2割増しすることが義務付けられる。
それは店の理念に反することでありめぐみにはどうしても納得できないことであった。
仕方がなく町内会長と直談判を試みるが、「上げないなら商店街は月の畔を見捨てる」という冷たいものだった。
めぐみは悩みに悩んだ末に値段を据え置くことを決めた。


それからのめぐみの生活は苦しいものになった。
水道税によって材料費と料理の値段が釣り合わず、売れば売るほど赤字になっていく。
もちろん「理念」があるのでお客の前で暗い顔を見せることは許されない。
夜になれば同じ商店街の人々がめぐみを「裏切り者」と糾弾する。
そんな生活が続き、めぐみはついに倒れてしまった


目が覚めるとそこには神楽坂がいた。偶然看病することになったらしい。
彼はめぐみに穏やかに、しかし厳しく諭す。
商店街が疲弊しているのは事実であり、その状況でめぐみの店に客が集中するのは商店街をさらに傷つける行為だと。たしかにめぐみの「理念」は大切なものだがこの場では我儘だったと
この言葉でめぐみは自分を客観的に見つめなおし、自分が店に依存しとらわれていたことに気が付く。
そんなこともあり、このルートのめぐみはあまり病まない。


それからめぐみは自分の行動を少し変えた。
店は続ける。しかしこの期間の売上金全てを迷惑をかけた商店街の人々に渡していく。
本人なりに理念を貫いたつもりだった。
そうして在庫がなくなり、店は閉業することになる。
店を終わらせたにもかかわらず、めぐみの表情はどこか晴れやかだった


その後めぐみは青年団に入ることを決めた。
めぐみは今回の一件で自分の視野の狭さを知った。だからこそ物を知り島を変えていこうとする青年団に協力したいと考えた。
神楽坂からの了承を得て正式に入団が決まった。



……しかしその直後神楽坂が倒れてしまう。
そこでめぐみは望月と共に、医者から火傷の後遺症で彼がもう永くないことを知ってしまう。


このことは極秘事項であるためこのことは胸に抱えめぐみは仕事をすることになる。
そんなある日、町内会会長がめぐみの家を訪問する。彼女に謝りに来たのだ。
神楽坂は演説でめぐみのことを引き合いに出して商店街を非難したのだ。そのことで商店街の面々はようやく自分の行いを理解した。
謝る町内会会長に、自分にも非があったとめぐみも謝罪する。ともかくこれでめぐみは和解することができたのだった。


そして神楽坂の行動によってめぐみは自分の恋心を自覚し、永くない彼の為にも想いを伝えることを決める。
問答の末にその想いは実ることとなった。……このルートのめぐみちゃんはたくましい。
また、彼の家族や火事に関する過去についても教えられる。


次の日、めぐみは青年団として本土にとある手紙を届けるように命じられた。
実は深海は裏では武器商人を担っていた。それについての証拠が集まり本土の有力者に見せるつもりだった。


その仕事は猪口たちの助けもあり困難はあったが成し遂げられた。
深海の罪状が明確となり、深海は警察に連行され、島を追い出されることになる。


深海は倒されたが、まだ終わったわけではない。
むしろ明確な敵がいなくなったこれからが本当の戦いと言える。


しかしそんなつかの間、紅華楼で大火事が起こる
さらに神楽坂が少女をかばい大けがをし、中から出られなくなっていた。
めぐみは兄を振り切り紅華楼へと走る。


ようやく神楽坂を見つけるが、彼はここで死ぬつもりでいた
元々彼は過去に大切な人を助けられなかった体験から死に場所を求めていた。


ここでルート分岐。


もはや生き残る気はない神楽坂。ただめぐみだけでも逃げろと言う。
それに対しめぐみは、彼の頭を膝に乗せた。


……俺と共に死ぬというのか?
貴方を見捨てて生き残るより、私はそちらを選びます
俺は見捨てた
だから、悔やんでいると?
自分こそが二人の代わりに死ねばよかったと
もしも、そんな風に思っているならば、貴方が私にしている仕打ちはなんだというのでしょう
私に同じ思いをしろと貴方は仰るのですか?



めぐみはここで神楽坂と共に死ぬつもりだった。
神楽坂は多くを照らす太陽で、めぐみは太陽に照らされて輝ける月。


神楽坂もその決意を受け止めた。
ただ、最後に自分の名前を呼んでほしいと言う。


律成さん……。貴方を行く末永くお慕いしております



花柳街を突如襲った大火は甚大な被害をもたらした。
発生当時の強風により、火は発生個所と思われる廓から瞬く間に燃え移り、数十あった廓を全て燃やし尽くした。
夕食時であったが、花柳街の花魁含めた殆どの人間が開かれていた宴に参加していた為、負傷者十余名と少なく済んだ
しかし、残念なことに、逃げ遅れた子供を助けに戻った紅霞市の英雄神楽坂響氏と彼を助けようとした女性二名の尊い命が犠牲となった
被害額は数百万とされ、財政破綻寸前だった紅霞市は花柳街を立て直すことができず、花柳街は十数年という短い歴史に幕を下ろした




めぐみは神楽坂を助けようとするが、彼はそれを拒む。
ここで死ぬつもりであったし、何よりめぐみも死んでしまう可能性があったのだから。


助かる気はなく彼女だけを逃がそうとする神楽坂に、めぐみは怒りをぶつける。


貴方はそれで良いかもしれませんが、私は嫌です!
例えば、貴方が寿命で死ぬならそれは仕様がありません
私は貴方を看取り、貴方のことを心にいつまでも残し、貴方を誇りに思うでしょう
ですが、今、貴方は息をし、私もまだ動けます!
貴方は生きている! まだ生き残れる可能性がある!
それなのに諦めてしまうのは自殺です!
生きることを諦めたお人を私は英雄とは認めません!
ですから、貴方が死ぬ気でも私は最後まで諦めません!
そして、私は貴方の死も自分の死も選びませんっ!



このエンドのめぐみちゃんはやたらと男前


その言葉により神楽坂は生きる決意を固めた。
そして神楽坂は言う。もしも生き残れたならこの永くはない命をめぐみのために捧げると。
なおこのシーンでめぐみは神楽坂が自分を愛してくれたことではなく、生きると決めたことを喜んでおり、彼女がかなり成長していることがうかがえる。


そうして駆け付けた望月と護の助けもあり2人は救出された。


花柳街を突如襲った大火は甚大な被害をもたらした。
発生当時の強風により、火は発生個所と思われる廓から瞬く間に燃え移り、数十あった廓を全て燃やし尽くした。
夕食時であったが、花柳街の花魁含めた殆どの人間が開かれていた宴に参加していた為、
死者はなし、負傷者十余名という奇跡的な数字に済んだが、肝心の花街は壊滅した。
被害額は数百万とされ、財政破綻寸前だった紅霞市は花柳街を立て直すことができず、花柳街は十数年という短い歴史に幕を下ろした。


……しかし様々な事態に立ち向かっていた紅霞市の人間は悲観に暮れることなく街の再生に尽力した。



それから3年が経過し。
神楽坂と結婚しためぐみは正式に「月の畔」を継ぐことになった。裏の畑で農業を勤しみながら店の営業を続けている。
また真秀という息子も生まれている。


そして神楽坂は寝たきりでありもう永くはない状態だった。
それでもめぐみは彼の傍で添い遂げている。



『自分の家にでもいるような心地よさを提供すること』
商いとは、真心を持って、相手のことを第一に考え、相手の立場で行動し、理解すること
そして、その上で相手を喜ばせたい、満足させてあげたい、そういった心持が重要なのだ
それは、まるで家族のように
私はこんな大切なことに気が付けなかった
分かった振りをして、お客様と自分の間に距離を置いたまま、ただ蛍さんが実践していた理念だからとそれに固執していた。
今考えると、とても愚かしく、恥ずかしい間違いだった
気づけたのは、三年前の騒動でもあり、店を再開した後のお客様との遣り取りのおかげだった
私は人に助けられている
だからこそ、又、私も人を助けたいと思うのだ
人と人との繋がり、それを大事に思い、相手を思い遣ることこそが、蛍さんの目指した真の理念
そして、今の私の理念でもある



◆望月ルート


こちらでは祭りで青年団のために弁当をつくった時、望月と共に運ぶことになり少しずつ仲を深めていく。
自分の存在価値の為に一度は望月と離れようとするも、彼のまっすぐさに惹かれ友達から始めることになる。


序盤は神楽坂ルートと同じ流れ。つまりクソ市民どもが青年団に疑惑を持ち、めぐみが店の値段を据え置きする。
話が神楽坂ルートから変わってくるのは、めぐみが過労で倒れてから。
望月と仲が良かったこともあり、めぐみは紅華楼にかくまわれ、暮らすことになる。
……だがこちらでは神楽坂の助言がないために立ち直ることができず、自身が店を破滅に導いたという事実がめぐみの胸にのしかかっていく
ついには自分を「役立たず」とののしるほど心に深い傷を負っていた。


そんな中、望月はめぐみの世話をしてくれた。
話し相手になってくれ、彼女が出来る仕事を探し、散歩に付き合ってくれた。
何より「あなたの顔が見たいから」と言ってくれた。
めぐみは少しずつ望月に想いを寄せていき、彼のために何かをしたいと考えるようになっていく
愛を知らずに生きてきためぐみにとって誰かに想ってもらえることは何よりもうれしいことだった。


……だが紅華楼で起きたのは嬉しいことだけではなかった。
めぐみは気が付けば望月の愛を求めるようになる。けれども、望月はいつでも「友人」として一歩引いた線引きをしていた。
さらに望月に片思いをする紅華楼の少女・サエに一方的に罵倒をされる。


不安に思っためぐみはさらに望月のためになろうとする。


しかし望月は真逆のことを考えていた。
めぐみは望月のために生きようとしている。言い換えれば、自分のせいでめぐみを縛り付けていた。それを優しい望月は良しとしなかった。
だからこそ、善意でめぐみが紅華楼以外で働けないかと提案した。


もちろん望月の近くにいたいめぐみにとっては拒みたいことだった。
しかし彼の善意であると考えると断ることはできなかった。



そんな時、事件が起きる。暴徒と化した市民に青年団たちが襲われるようになったのだ。
望月はまだ帰っていなかった。心配になっためぐみは、無理を言って彼を探しに行く。
だが理性を失った市民たちによってめぐみは監禁されてしまう。


そこで気味の悪い青年に見張りをつけられるめぐみ。
そしてその青年は……あろうことか、めぐみを犯そうとした


逃げ続け、すんでのところで駆け付けた望月に何とか助けられた。



もちろんこの出来事はめぐみのトラウマとして残ることになる。
この時点での依存度と愛情度によりルート分岐。




満月夜想」は紅華楼で流行っている怪談。
恋の実らぬ娘が、紅い月の日に心中をしてあの世で結ばれようとする悲恋物語。


こちらのルートで心が壊れてしまっためぐみは望月を誘惑するようになる
またあんな目に遭うくらいなら、望月に抱かれ彼の物になってしまいたかった


この日からめぐみは紅華楼で病人のような扱いを受けるようになった。
そんな彼女を望月は以前に増して親身に世話をしてくれるようになる。
めぐみは望月を束縛しているに等しいけれど、もはやそれでもよかった。
望月が暗い表情をするたびに自分を愛しているから傷ついているのだと嬉しくなってしまう。
それほどにめぐみは壊れていた


けれども同時に自分の欲を止められない自分が怖いという気持ちもあった。
それも含め、望月は穏やかに「ずっといますよ」と言ってくれた。


ある日、またサエが現れた。口汚く罵倒するも心が壊れかけためぐみにとってそれはほとんど聞こえていないようなものだった。
ただ、『望月さんは誰にでも優しいだけ』という言葉が心の奥に残っていた。


奇しくもその日、望月は帰りが遅かった。
『望月は優しいだけで自分を愛していない』という思いが頭の中にこびりつく。


望月さんが戻ってこない。……傍にいると言ってくれたのに
もしかしたら仕事をしているのかもしれない。……傍にいると言ってくれたのに
傍にいると言ってくれたのに
傍にいると言ってくれたのに
傍にいると言ってくれたのに
傍にいると言ってくれたのに
傍にいると言ってくれたのに



ようやく望月が帰ってきた。
望月はまた優しく接してくれるが、その優しさが善意なのか愛なのか、めぐみはもう考えたくなかった。
焦っためぐみは正気を失い、気が付けばまた彼を誘惑していた。


結局のところ望月はめぐみを愛していた。
けれども、花街での生まれ故に不道徳な行為には抵抗があった。
だからこそ一生独り身でいるというのが望月の信念だった。


混乱するめぐみを見つめる望月の目は、確かに哀れみが浮かんでいた。
哀れみの目。それはめぐみが何よりも嫌うものだった
両親を亡くした時も、ただ誰かの愛がほしかった。けれども周囲はめぐみを哀れむばかりで何も与えてくれない。


「……私のことを哀れに思いますか?」
「……? 落ち着いてください、冬浦さん。俺の話を……」
「私のことを哀れに思いますか?」
「……」
「……いいえ」
「じゃあその目は何なのですか! 惨めなものを見るような、その目は!」
「ほら、ほら! その顔! やっぱり私を哀れんでいるんだ!」


最早、めぐみの精神状態は限界を迎えていた。
そんな時めぐみは、部屋の外から覗く赤い月の光を目にする。
それを見ためぐみは――――衝動的に望月の首を絞めていた


彼女が思い出したのは『満月夜想』。
結ばれなかった男女が死の果てに結ばれるという哀しい物語。
全てを失っためぐみがすがれるのは、もはや真偽も分からぬ怪談だけだった。


愛なのかどうかわからない優しさはめぐみを傷つけるだけ。


後どれくらい締めれば彼は死んでくれるんだろう
早く、早く、


――そうしたら、あの世で幸せになれるんだ



望月さんっ……望月さんっ……


お願いだから私を受け入れて
お願いだから私を必要として
お願いだから私を見捨てないで
お願いだから……


…お願いだから死んでぇ…………ッ




その時望月に変化が起きた。めぐみの頬に手を添えうっすらと笑顔を浮かべた。
そして本当に小さくだが、確かに「ふゆうらさん」そうつぶやいた。
まるで、彼女を安心させるかのように。



……それからめぐみは廃人のようになってしまった。望月以外とは話すことも苦痛になっている。
そんな彼女の世話を望月は青年団との活動と両立しながら行っている。当然彼の精神も限界が近い。
見かねた神楽坂が「共依存にだけはなるな」と忠告するがどこまで通じているかはわからない。


望月は想う。自分がもっと彼女に踏み込んでいればと。
けれども同時に、もはや手遅れであるということも理解していた。
だからこそ今のめぐみが喜べることを少しでもやってやりたいと考えている。
たとえそれによって、自分の命が失われるとしても



助けてくれた望月だが、態度はどこか固かった。
自分がなにかしたのかもしれない。そう考えためぐみは弁解するが、ただ望月としては敵の本拠地にいる以上静かにしていてほしいだけだった。
考えの至らない自分を恥ずと同時に「自分は望月が好きだが、望月がどうなのかはわからない」という事実に怯えるようになる。


ある日めぐみは気晴らしに港で月を見ていた。そんな時、偶然深海と出会ってしまう。
彼はめぐみと望月の仲を知っており(元々深海と望月は犬猿の仲)、望月の気持ちが知りたいのなら「愛してほしい」と言えばいいとめぐみを混乱させる。
そしてひとつ賭けをしようと言い出した。もしもふたりが結ばれたなら自分は島から出ていくと。
無知な子どもである望月を嫌う深海ゆえの賭けだった。


それからしばらくして、望月はついに「めぐみの転居先が決まった」と告げた。
これ以上望月に迷惑をかけてはいけないという「表のめぐみ」と、望月に愛されたいという「本来のめぐみ」が心の中でせめぎあう


気が付けばめぐみはうわごとのように「好きです」と呟いていた。
だが彼の答えは「貴方は俺の友人です」だった。
結局彼の自分を受け入れてはくれない。めぐみは衝動的に望月を押し倒す


……ねえ、一体何が違うって言うんです? 望月さん
私の何が、いけないんですか?
ねえ、一体何が駄目だって言うんですか?
私……貴方になら――



望月の「しっかりしてください!」という言葉でようやく正気を取り戻すめぐみ。
もうこれ以上ここにはいられないと考えためぐみは、紅華楼を後にした。



家で何をするわけでもなくぼんやり過ごしていためぐみ。
そんな彼女の下に訪れたのは――望月だった。
望月は言う。めぐみに隠していたことを全て言いに来たと。
生まれ故に紅華楼に来る客のことは納得できない。けれども自分にはそんな男の血が流れていて。割り切ろうと思っても割り切れなくて。だからこそ独り身で生きようと考えていて。
だからこそ、めぐみを受け入れるということはその考えを覆すということだった
それでも悩みに悩んでめぐみを受け入れる覚悟を決めたのだった。
こうして二人は結ばれた。
なお一連の流れを兄貴は陰から見守っていた。


次の日めぐみは望月と共に商店街に向かい、彼らとどうにか和解することができた。


残る課題は深海のみ。めぐみは青年団たちの手伝いをするようになる。
そこで深みの情報が開示されていく中、めぐみはどこか違和感を覚えた。
港で話した彼の過去とは食い違いがあり、何より深海には陰がありそれだけの人間ではないように思えた。
賭けの結果を知らせるためにも、めぐみは望月と共に深海に会いに行った。


深海は当然、話に来たというふたりを小ばかにする。
それでもめぐみたちは深海のことを真摯に理解しようとした。
それに折れたのか、深海は「作り話」と断った上で自身の過去を話した。
だがめぐみにはその話が作り話のようには思えなかった。
思うことがあったのかはたまた、次の日深海は島を出て行った



それからしばらくして。
めぐみはまだ店を休業していた。まだ学ぶべきものがあると思い、近いうちに紅華楼に勉強に行く予定だった。
『居場所』という鎖に繋がれていためぐみは、ようやく解放されたのだった。
一方望月は本土に向かっていた。自分はまだ足りないものがあると思い学びに行ったのだった。戻ってきたら先生になるつもりだった。



ずっと狭い世界で生きてきた
人に不快感を与えないために自分を捨て、誰かの仮面を被り続けた時点で視野は狭くなった
考えることを放棄し、傷つくのを恐れ、また誰かを傷つけるのも恐れ
人と関わらないよう、自己中心的にならないよう、また目立つことのないよう
そうして繰り返すまったく波の無い日々をわざと選んで暮らしていた
そんな中、愚かにも自分を必要としてくれる人をどこかで求めていた
……己から他者との関係性を絶っていたというのに虫が良すぎる話だ
そんな状態の私に、貴方は積極的に関わろうとしてくれた
貴方が私を必要としてくれたから私はここにいられる
素の私を好きだと言ってくれたから今も笑っていられる
ずっと独りだと思っていた私の周りには沢山の人がいる
――貴方に会えて本当に良かった




◆猪口ルート


猪口とはノアをかばったことで縁が生まれ仲良くなっていった。
祭りの日、アクシデントが重なったことで2人で楽しむことになる。
そんな中猪口は「ノアのためにも差別のない平等な世界をつくりたい」と口にする。
それを聞きめぐみはまっすぐな猪口に感銘を受けると同時に、自分も存在価値のない人間ではなく他人のために出来ることがあるのではないかと考えるようになる。
こんな経緯から猪口ルートのめぐみはあまり病まずまっすぐな性格をしている。


そうしてめぐみは猪口とノアで遊ぶ機会が増えていった。
そんなある日事件が起きる。ノアが「月の畔」にいるのを市民に見つけられる。
さらに、本人には伝えられなかったがノアが迫害されているのは外国人差別などではなく、猪口家が村八分を受けているからであると言われる。先代の猪口家で起きたことは、今でも島で根強く残っていたのだ。
めぐみに猪口家とは縁を切ること、そして切らないのであればめぐみたちも村八分の対象になることを伝えると去っていった。


めぐみに迷惑をかけることを良しとしない猪口は、もう自分たちに会わないように言う。
けれどもめぐみはそれに対して食い下がる。
自分に生きる希望を与えてくれた猪口のためにも、こんな志半ば終わることはしたくないと。
兄の後押しもあり村八分を受けてでも猪口たちと会い続けるということを決める。
……このルートのめぐみちゃんは比較的たくましい。


しかし村八分というのは彼女の想像以上に厳しいものであった。
まず商店会から除名されているため市場で物を買うことができない。当然「月の畔」を開店することも難しい。
さらに変わりゆく街に市民はめぐみを悪意の矛先にしており、街を歩くだけで「疫病神」と罵られ、その上連日家を荒らされる。


そんな中でも猪口の部下や榛名が手助けをしてくれた。
そして榛名の言葉によってめぐみは自分がまっすぐな猪口に恋心を抱いていることに気が付く。


そうして日々を耐えていく中、兄と榛名がある事実をつかむ。
それは深海が裏では武器商人をやっており、駐屯地誘致計画はそのため。そしてこの計画を実行するために軍の上官と組んで不正をしていると。


深海を倒すため猪口たちは作戦を組む。
まずは本土にいる、黒幕らしき上官を島に呼ぶ。そうして適当な方便で紅華楼で宴会を開き、上官を酔わせて話の裏を取り、深海を追放するというものだった。
そして話術のうまさと話を核心まで理解しているということから、上官の酌の相手はめぐみが務めることになった。


しかしめぐみは猪口の助けになりたいと考える反面、悩んでいた。
もしこの作戦に間違いがあれば猪口は夢である軍人を除名されるかもしれないのだから


ここでルート分岐。



猪口が軍から追われることを恐れためぐみは、深海本人を相手にできないかと提案する
もちろん全員が渋るが榛名が受け入れたことでその作戦を実行することになる。
榛名が深海の書斎を荒らし、彼一人で港までくるように脅して罠にかけるつもりだった。


しかしそこに来たのは深海ではなく市民だった。
何故か彼らは「猪口と深海にはつながりがあった」と言いながらめぐみたちに襲い掛かる。
やむを得ず刀で倒す猪口だが、これ自体が深海の罠だった。


悠然と現れる深海。一連の事態は「軍人である猪口が市民を傷つけた」という状況を作り出す彼の罠だったのだ。
この時点で猪口たちは成す術なくなっていた


あなたたちの理想は甘いと猪口の夢を嘲笑する深海。


それを見て、めぐみは覚悟を決めた。
深海の懐から拳銃を抜き取ると彼に構えた。
ここで深海を射殺してしまい全ての罪を自分で背負うつもりだったのだ。
全ては、愛する猪口のために。


愛する人のためなら、なんの躊躇いもなく、人だって殺せる



めぐみは躊躇いもなく銃口を引いた。……そうして深海は死んだ。


駄目ですよ。私なんて抱き留めたら血が付きます
何を言っているんだ……。どうしてお前がこんなことを……
私なら構いません。これからずっと、牢獄の中だとしても貴方の武勇伝がこの世界に轟くのなら


ここのスチルで返り血を浴びて妖艶に微笑むめぐみちゃんは無駄に美しい。


深海の罠であるはずなのにめぐみが捕まることは誰も良しとしなかった。
猪口に連れられめぐみは島を出て誰も知らない場所で暮らすことになる。
結局猪口の夢は途絶えてしまったのだった。
結局めぐみの覚悟は甘すぎたのである。


それから、私達は、自分たちの過去など誰も知らない、誰も訪れようのない、人々から忘れ去られた寒村に移り住んだ
重い罪を背負いながら、それをひた隠し、毎日ぎこちない笑みを浮かべる日々
これで本当に良かったのだろうかと思うことがある
けれど、もう後戻りなど出来るはずがないのだ
ここからの私達は、本当の”覚悟”の下に生きていく……



猪口の覚悟を信じためぐみはその作戦を受け入れる。
神楽坂たち青年団の助けもあって舞台は円滑に作られた。


手筈通り、めぐみが例の上官の相手をする。
上官が上機嫌だったからか酔っぱらっていたからか、はたまためぐみの口が上手いためか、案外あっさりと駐屯地誘致計画の裏をつかむことができた。
安堵するのもつかの間、下手に出るめぐみに気をよくした上官はそのまま手を出そうとする。
怯えるめぐみだが、そこにかけつけたのが猪口だった。
部下に止められた上官は憤り剣を抜いたため、斬り合いとなる。
戦いは続いたが猪口が傷を負ったものの彼の勝利で終わった。
それを青年団や新聞記者としての兄が見ていたことで、実質的に深海の計画は頓挫した。


どうでもいいがここのスチルでついでに上官の顔も映る。しかしその顔が乙女ゲームよりかは凌辱もののエロゲに出てそうな汚ねえオッサン顔である。……いや、マジで。


その後めぐみは家に戻り、猪口の手当てをしていた。
そんな中、めぐみはついに想いを告白する。


貴方が私にして下さったように、私も貴方に安らいで頂ける存在になりたいのです
……私、貴方のことが好きですから
突然で申し訳ありません。でも、今素直にそう思ったんです
沢山の人達の為に尽くす貴方の傍で、貴方を支えると同時に
私は、貴方がこうして心を休める時に、癒すことの出来る場所でありたいなと思いました



猪口はその告白を受け入れた。気持ちは同じだった。



深海が追放されたことで混乱する者もいたが少しずつ街はまとまっていった。
ある日猪口は市長に、次期市長になることを提案される。今回の猪口の活躍ぶりを見てのことだった。
猪口は考えた末にその提案を受けることになる。平等な世界をつくる方法は、軍人だけではないと感じていた。
めぐみもそれについていくことを決めた。


そうして街に平穏が戻る中、猪口の義母により村八分についての話し合いが行われる。
当然義母を罵倒する市民たち。気が付けばめぐみにも飛び火する荒れた場になる。
それでも良識のある街の権力者や菖蒲たちの活躍により市民たちの説得に成功する。
全てが解決したわけではないが、それでもノアやめぐみは村八分を受けないことになった。



それから一年して。
猪口は市長になるために様々なことを学んでいたが、祭りの季節になったということで兄やノアもつれて行くことになった。
月の下でしか歩けなかったノアは、ようやくみんなと歩けるようになったのだった。
そうして、猪口はめぐみにプロポーズをした。
めぐみもそれに頷く。これからの幸せのために……。


触れ合う唇から、彼の優しい温もりが伝わってくる
胸の中を溢れんばかりの幸せが満たしていく
来年は愛しいこの人と、新しい家庭を築くのだ
永遠を誓うこの指輪の輝きのように、色褪せることのない日々を送るのだ
私こそ、是非お嫁に貰ってください
そして、一生涯を寄り添って生きていきましょう
――渉さん




◆榛名ルート


元々榛名と出会ったのは母の墓参りの帰り道だった。
兄が熱心に祈っている傍らで、自分は何も想っておらず形を取り繕っているだけ
空っぽの自分の心がどうしようもなく嫌で、一人夜の港をうろついていた。
そんな時出会ったのが榛名だった。
榛名はとりとめもなく、自分の内心を口にする。だがその内心とはまるでめぐみの心を見透かしたように彼女と瓜二つの物だった。ふたりはお互いに興味を抱いていく。
そして榛名はめぐみの店の常連客になった。


お互いに似ているとは感じていたが、あえて常連客と女将の関係を保ち続けていた。


このルートで話が大きく動き出すことになるのは客同士が税金を巡って喧嘩を始めるシーンから。
仲裁するめぐみだが、客は何を思ったのかめぐみにまで因縁をつけ始める。しかもめぐみが貰われっ子であることや、新しい税金の始まる前日に偶然買いだめしたことなど全く関係のないことを持ち出して。ホント死ねよクソ市民ども……
それに対して怒りを露わにしたのが榛名だった。彼は客に対して、正論で相手の甘さを糾弾していく。
……しかしそれは火に油を注ぐに等しいことであり、次の日からめぐみは村八分に近い扱いを受けるようになった。
本当にめぐみのためを思うなら、事態を小火で終わらせるために、口出ししてはいけなかったと悔やむ榛名。
まあめぐみは全ルートで迫害されているので榛名がどう行動しようともこうなる気はするが。


ある日紅市へ買い出しに向かったが店での一件は既に広まっておりめぐみは市民たちから糾弾を受ける。
それをまた救ったのが榛名。榛名はめぐみを連れて市民たちから逃げ出す。そして「安全なところがある」と言ってめぐみをとある場所に連れて行った。
それはまさかの深海コンサルティングだった。めぐみは彼が深海の会社の一員であることを知らされる。


この会社に入った経緯、そして自らの過去を話す榛名。
それを聞き、めぐみは自分たちがやはり似ていると感じると同時に、自分を受け入れてくれる榛名への愛を自覚するのだった。
……しかし榛名はこれから会わずにいた方がいいと言い出す。
めぐみの現状は元をただせば榛名が原因であるともいえる。そのことを榛名は悔やんでいた。
なし崩しに二人は会わないこととなる。



それからしばらくして。
めぐみはほとぼりが冷めるまで店から出てはいけないと神楽坂に忠告されていた。
けれども孤独、何より自分を受け入れてくれた榛名に出会えないことはめぐみにとって何よりも苦しいことだった。
そうして店先まで足を運ぶと、そこには偶然榛名がいた。ふたりは共に港まで足を運ぶ。
そこでめぐみは初めて自分の内面を話す。「女将の仮面」を被った自分の内面を。めぐみにとっては卑しいと思っていた内面だったが、それでも榛名は受け入れてくれた。
そして榛名は何事もないように言う。「もう生きていても苦しいだけだから心中しないか」と。


めぐみにとっては嬉しい誘いだった。けれど結局価値のない人間は自分だけであり榛名は死ぬべきではないと考えた。
だからめぐみは榛名の手を払い、自分だけ海に飛び込んだ。ちょっとアクティブ過ぎませんかねぇ
めぐみちゃん基本的に「これだけはやるな」って場面で一番アクティブになるので……
海に沈んでいくめぐみ。それを榛名は必死で助け上げる。
結局二人は心中をするべきではないと考え、共に想いを寄せ合うことになる。



だがそれから榛名は仕事の関係でめぐみと会えない日が続いていた。
めぐみは考えた末に深海の会社に向かう。彼の会社で働き、榛名を支えられるように。
深海の会社は実質的なワンマン経営だったため、掃除や雑用から始めることになったが。



だが深海の会社で働いていたある日、事件が起きる。
掃除の途中に深海の引き出しから武器の発注書を見つけてしまう。深海は武器商人としてこの島で活動しているのだった。
しかし書類には深海が関わっているという部分だけが消され、何より深海本人はこれがあったところで2人には何もできないと暗に脅してきた。
深海を信じていた榛名にとって、この事実は裏切られたに等しく深く傷つけられることになる。
……しかし考えた末に2人は深海を倒すことを考える。今は傷つくとしても、未来で幸せになるために


2人は紆余曲折の末に青年団たちと協力して深海と戦うことになる。
そのためにも、例の書類を手に入れる必要があった。


めぐみにピッキングの才能があるとわかったこともあり、榛名と2人で会社に潜入することになる。
書類がある可能性がある部屋は2つ。そのためめぐみたちは二手に分かれることになる。
めぐみが向かったのはどちらかと言えば確率の低い部屋。
めぐみが部屋に入ると……そこには書類を持った深海が立ちふさがっていた。
榛名たちの作戦はバレていたのだった。


そこで深海はめぐみに疑惑を植え付ける。「青年団は榛名たちを裏切るつもりである」と。
元々榛名は深海側の人間である。何より混乱する紅霞市を鎮静化するためには誰かに罪を被せるのが一番効率的だった。そのためにも青年団はめぐみ、榛名、深海を島から追放する気であると。
つまり、深海を倒したとしてもめぐみたちには居場所がなくなる。
それは2人の未来のために戦ってきためぐみにとっては、行動が根底から崩されるものだった
深海はもしめぐみたちが自分たちにつくのであれば2人だけで愛し合える場所を与えると提案する。


ここでのめぐみの選択によって分岐。



めぐみは屈してしまった。
市からの迫害や誰を信じればいいのかわからない状況に、もう限界だった。


未来にも世界にも希望がないのならば、愛する榛名だけがいればいい
そう考えてしまった。


このルートのテーマは「痛みは未来で幸せになるための手段であり目的ではない」だが、自分で言ったくせに自分で大幅にはき違え目的にしてしまうのが依存エンド。
愛し合うのではなく依存しあうようになってしまったとも言える。
こっちのめぐみちゃんは榛名が深海に傷つけられる姿を見て「自分のために傷ついてくれて嬉しい」と恍惚とした表情を見せるというアレなことをしていた。
挙句の果てにはめぐみのために榛名がつくった切り傷を見て「もっと苦しめば愛されている証になるのだろうか」と考え衝動的に傷口を押そうとしていた。
ちなみにめぐみにとっての愛は「貴方が私のために傷つくなら、その分私は癒してあげましょう」なので某ユベリズムとは真逆の物である。


壊れてしまっためぐみは、あれだけ求めていたはずの書類を容易く破り捨ててしまった。


そこに榛名が入ってきた。
様子がおかしいめぐみを見て、榛名は深海を責める。
だがそれだけでめぐみは半狂乱になり「私だけを見て」と叫び続けた。
今のめぐみとって榛名だけがいればいい。だからこそ彼がわずかでも自分以外に興味を移すことは耐えられなかった。


榛名をめぐみは抱き締めるように引き寄せ倒す。
壊れてしまっためぐみ。榛名は思わず目を伏せてしまう。


気に入らないところがあったら直します! 貴方好みの女になります!
だから、どうか、愛してください……


そんな彼女を……榛名は受け入れた
もう彼女を悲しませたくも傷つけたくもなかった。
そのためにもめぐみと2人きりだけの世界で生きていくと決めてしまった。


2人は愛を確かめ合うように口づけをする。


そんなめぐみたちを見て、深海は高笑いをあげながら去って行った。
ほんのわずか、誰であるか疑問に思ったが、めぐみにとってはどうでもよかった。
もう自分から離れていく人間なんてどうでもいい。
榛名という絶対に手放すことのできない恋人がいてくれるのだから。


……可哀そうな人
私の為に嘆いて、私の為に苦しんで、彼は私だけを盲目的に愛するが故にその身体や心を痛めている
けれど、大丈夫
貴方がその声に、体に、刻み付ける私への愛情は、私が受け入れてあげる
受け入れて、傷ついた貴方を、私が癒してあげる
そしてまた私の為に傷ついたら、もっと深く癒してあげる
……愛してあげる
だから、貴方のことは、私という鎖で縛りあげるの
貴方という鎖に縛られた、私のように
いつまでもずっと……永遠に変わらず繰り返すことができるように



深海の言葉に揺れるめぐみ。けれどもその言葉は間違っていると断言した。
めぐみが求めていたのは、2人だけの閉じた世界ではなく、お互いの未来であるのだから


めぐみの気迫に驚く深海。その一瞬の隙をつき、彼の腕にかみつくと書類を奪い取った。
それとほぼ同時に榛名が部屋に入ってきた。


めぐみが書類を奪ったことで必要なものはすべてそろった。
部屋に何故か深海がいたように、深海は榛名が水面下で行っている作戦を読んでいたつもりだった。
しかし榛名はさらにその先を読んでいた。深海が読んだと思わせたさらに水面下で計画を実行していた。深海が榛名のことを鎖で縛られた臆病者であるという先入観を抱いていたが故の結果だった。


そんな榛名の前に敗北を喫した深海はこんな男に捕まってもいいことはないとめぐみに悪態をつく。
めぐみは知らされていなかったが、実は榛名の作戦の一つに「商店街の住民にめぐみが全ての元凶である」と噂を流すというものがあった。一時的に悪意のスケープゴート先を作り、市全体をまとめるための作戦。
深海の「青年団はめぐみたちを裏切るつもりである」という言葉も榛名の作戦に騙されたためのものだった。
めぐみを傷つけるものだったが、「痛みは未来で幸せになるための手段」と誓い合っていたこと、何より榛名はたとえ彼女に嫌われようとも最終的に彼女の世界が守られればいいと考えていたためにこの作戦を実行した。


この事実を知ってもめぐみの答えは変わらなかった。


はい、愛しております
そういう彼が、私は好きなんです



それを聞いた深海は閉口すると、青年団の下に連れていかれた。



……それから4年が経過した。
神楽坂の言葉もあり、めぐみは迫害を受けなくなり、以前のように暮らしていた。
榛名は市の再生に力を入れていた。彼の尽力もあり、少しずつではあるが街には活気が戻ってきた。
そんなある日榛名は本土に向かうことになる。彼の活躍が注目されとあるコンサルティング会社にスカウトされたのだった。
めぐみにも共に来てほしいという榛名の言葉に、彼女もそれに迷いなく頷いた。
めぐみの幸せは、榛名と共に支えあうことだったのだから。



――人を本気で愛し、人に本気で愛されること
それは相手の言動の一つ一つに一喜一憂し、様々な感情を得ては、入り乱れる想いに頭を悩ませること
そして尽きず、それを繰り返し続ける幸せのこと
尽きない悩みと歓びを抱えながら、自分なりの答えを見つけて乗り越えていく
時には痛みを伴ったとしても、彼とならそれすら幸せなのだ
もう、私たちに纏われていた鎖はないのだから――







【余談】


公式人気投票ではまさかの2位
当たり前だが乙女ゲームの主人公としてはかなり高い順位。
なんだかんだで理解はともかく同情できるタイプのキャラであったため順位が高かったとか言われている。
??「ちなみに私は『彼氏にしたいキャラ投票』で2位でした(ドヤァァァ)



月影の鎖メインキャラ全員に言えるがツイッターアカウント持ち。
既に更新は止まっているがアカウント自体は残っている。
月の畔での日常をツイートしてフォロワーを和ませたり、唐突にヤンデレツイートをしてフォロワーを心配させたりしていた。
なお攻略対象たちのアカウントはゲームのスチルを使った「彼氏と○○なうに使っていいですよ」という企画をやっていた。
めぐみちゃんもあったのだがまさかの描きおろしイラストだったうえに何故か丑の刻参りの衣装を身にまとった「彼女と丑の刻参りなうに使って良いですよ」というイラストだった。
使いたいけど使い道が限定され過ぎてませんかね……。
それにしても描きおろしが丑の刻参りであるあたりが相変わらず闇属性のヒロイン。


ファンディスクにて新ルートがIF展開の物も含めて8つ追加された。
そしてこの8つすべてに依存エンドが存在している。
実質的に兄貴が病んでいる護依存エンドは除外するにしても、めぐみちゃんは11の病み方を持っていることになる。


病みすぎだろ……












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  • TAKUYOのヒロインはみんな個性的で大好きだわ。「死神と少女」の紗夜ちゃんもオススメ。 -- 名無しさん (2021-03-20 23:06:05)
  • めぐみちゃんも風羽ちゃんも大好きだけど頭おかしいって言われたら何一つとして反論できない自信がある -- 名無しさん (2021-03-21 21:30:01)

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