登録日:2017/11/02 Thu 20:55:38
更新日:2024/02/15 Thu 13:44:15NEW!
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アニヲタ悪魔シリーズ アニヲタ神様シリーズ ゾロアスター教 天使 大天使 アフラ・マズダ ペルシャ 聖なる不死者 不滅の聖性
『アムシャ・スプンタ』は七柱、または六柱からなるゾロアスター教の上級神、或いは大天使の群。
『富める者』や『不滅の聖性』と訳されている場合もある。
元来は唯一至高神アフラ・マズダの分霊達であり、
善と悪の勢力が其々に生命を生み出して創造した世界に於いて、人の善性を目覚めさせて、アフラ・マズダの「天則(アシャ)」を選び取らせるように働きかける役目を持つ。
開祖ザラスシュトラの革命以前の古代ペルシャの信仰には存在していない、
或いは、原型があっても役目を変容させられた新しい神々であり、ザラスシュトラの掲げた法の下で、至高神アフラ・マズダの分霊としてミトラやアナーヒター等の上位に置かれた。
後には、自らが善神として語られるようになるアフラ・マズダの眷属として語られる様になり、悪神アーリマンの率いる『ダエーワ』と対立する構図が定着した。
この、唯一至高神を頂点に、その役目を補助する神性が存在するという構図は、
敵対していたユダヤ系の一神教の系譜にも組み込まれて天使の概念を生んだとも言われる。
この為、ゾロアスター教の神系譜を説明する際に『アムシャ・スプンタ』を大天使、
それ以外の神々が組み込まれた下級神群『ヤザタ』を天使と呼ぶ解説例も見られる。
【誕生から現在】
『聖なる不死者』、或いは『富める者』と訳される七柱、乃至は六柱の神。
それぞれが至高神アフラ・マズダの分霊であり、世界を構成する要素の内の『善』を支配し、また、そこに生きる人々をアフラ・マズダの『天則』に従わせて『善』に導くように働きかける。
しかし、ザラスシュトラの掲げた峻厳で深奥な理念は、後の世の信徒達には扱い切れるようなものではなく、同時に古くから存在していた信仰も人々は捨てきれなかった。
そうして、中世までには反対にアムシャ・スプンタの役割をヤザタが代行していくようになった。
【善なる神】
■スプンタ・マンユ(アフラ・マズダ、オフルマズド)
『聖なる霊』
『アムシャ・スプンタ』の支配者であり、『創造』を司る『最勝霊』。
元来は宇宙の創造者であるアフラ・マズダより生まれ出でた世界を創造する権利を与えられた双子神の内の一柱で、
世界の始まりの時に双子であるアンラ・マンユと出会い、スプンタ・マンユは『善』を選びとり、その法に則って世界を創造したとされる。
言うなれば物質世界の支配者であり、高位世界に居るアフラ・マズダであっても、物質世界で何かを生み出す場合にはスプンタ・マンユを介して行う。
後に『キリスト教』等と同じく、アフラ・マズダ自身が『善なる神』とされるようになったことで同一視されるようになり、スプンタ・マンユに対してアフラ・マズダの名前も用いられるようになった。
つまり、ゾロアスター教や、その後に派生したズルワーン教、ミトラ教に於ける主神にして、善神であるアフラ・マズダとは、実はこの神のことである。
『悪』を選びとり、悪神となったアンラ・マンユ(アーリマン)とは敵対しつつも、互いを補完し合う存在であったが、後には世界の終わりにスプンタ・マンユ(オフルマズド)がアーリマンを倒すとする考えが定着。
更には、両神の対決により破壊された世界を再生する為に、オフルマズドはミトラに主権と新世界創造の役目を託す、とする思想が生まれた。
これは、ザラスシュトラが本来掲げていた思想とは異なる為に、後の世の信徒達は元来の唯一至高神としてのアフラ・マズダの役目を、時間を人格化した神であるズルワーンに担わせることで補完し、
ズルワーン教やミトラ教といった後期ゾロアスターの派生宗派ではズルワーンからアフラ・マズダ(スプンタ・マンユ)とアーリマン(アンラ・マンユ)が生まれたとする説が定着した。
対立する『ダエーワ』は悪の創造主たる大魔王アンラ・マンユ。
【六大神(天使)】
■ウォフ・マナフ(バフマン、ワフマン)
『善き思考』
元来はスプンタ・マンユの誕生以前より創造されていた至高神アフラ・マズダの分霊たる六柱の善なる霊(アムシャ・スプンタ)の筆頭であり、天啓を得てトランス状態に陥ったザラスシュトラをアフラ・マズダの下へと導いた存在として語られていた。
前述の様に、スプンタ・マンユ(アフラ・マズダ)を『アムシャ・スプンタ』に含む場合には第二位の霊となり、スプンタ・マンユに助言を行う。
ザラスシュトラが、元来はアフラ・マズダ=古代インドで云う司法神ヴァルナと近しい関係にあった契約の神ミトラと分離させて、ミトラの役目を担わせるべく台頭させた霊であると推察される。
中世以降は、善なる勢力が生み出した“善き物”の内、家畜の守護者として捉えられるようになった。
ただし、これには人間に都合のいいもののみを“善き物”と呼ぶ思想が見える。
対立する『ダエーワ』は悪意の王アカ・マナフ。
■アシャ・ワヒシュタ(アルダワヒシュト、オルディーベヘシュト)
『天則』『火』
「正義」と「真実」の化身であり、ザラスシュトラの掲げる、法に従い義に生きる者(アシャワン)の守護者。
ザラスシュトラの語る善き『天則(アシャ)』その物を名前とする霊であり、
更には文明の光である火(ワヒシュタ)の守護者である。
更に後には、ゾロアスター教に於いてアフラ・マズダを象徴する聖火の守護者とも捉えられるようになった。
また、不浄と対立することから清浄も象徴する。
火で不浄を灼き清めるのは、他の宗教や神話にも見られる。
対立する『ダエーワ』は不義の王ドゥルジだが、後にドゥルジが死の化身ナスと習合してドゥルジ・ナスとして死の女王に、
更に後代にはドゥルジ・ナスの名が不浄の女悪魔達の総称として用いられるようになった為に、インドラが敵対者となった。
■アールマティ(スプンタ・アールマティ、スパンダルマト)
『敬虔なる者』
『スプンタ・アールマティ』とすることで、特に神聖に『敬虔な者』であることを強調した呼び名もある。
大地母神の役割を持つ女性達の守護者であり、その名のように献身的で信心深い者を守り、憶測や不誠実さに対抗させる。
アフラ・マズダの娘とも呼ばれ、マニ教では自分以外の元素(大地以外の空、火、水、風)を司る霊を一つに纏めて五面の姿でも顕される。
水源の大女神アナーヒターの役割を担う形で成立したと思われるが、後代になりアナーヒターが復権すると役目を奪われ、女性の守護者としての認識を強くされるようになった。
イスラムでも、ほぼ元の属性通りに天使の一つとなっており、護符の作成の際に守護者として召還される。
対立する『ダエーワ』は不実と背教の主タローマティ。
■フシャスラ・ワルヤ(クシャスラ、シャフレヴェル)
『善き統治』
ザラスシュトラの掲げる法による“理想的な統治”の化身にして守護者。
秩序を生み出し、守る。
天空と鉱物の守護者でもあり、真気(虚空)を司る。
虚空で鉱物では結び付かないと思うが、これは、古代ペルシャでは天空が鉱物により出来ていると思われていた為である。
鉱物の守護者であることから、地下世界の財宝の守護者ともされた。
……なんか、人間の方の勝手な見方で天空から地下までとお疲れ様です。
虚空の支配者の為、宗派によっては大地のアールマティよりも前に名前が挙がる場合もある。
対立するのは、無秩序の化身サルワ。
■ハルワタート(ホルダート)
『完全なる者』
規則正しい季節を司る水の霊。
女神と考えられている。
後述のアムルタートとは姉妹であり、分けることは出来ないとされる。
イスラム教の天使ハールートの原型と考えられる。
対立する『ダエーワ』は熱の悪魔タルウィ。
■アムルタート(ムルダート)
『不滅なる者』
食物の守護者たる風の霊。
女神と考えられている。
アムルタートとは姉妹であり、分けることはならないとされる。
イスラム教の天使マールートの原型と考えられる。
対立する『ダエーワ』は渇きの悪魔ザルチェ。
【この他】
スプンタ・マンユの扱いをどうするか以外は、殆どメンバーが固定されてザラスシュトラのマズダ教、ゾロアスター教、ズルワーン教、ミトラ教、マニ教、弥勒教、ミトラス教……etc.にも名前と概要が引き継がれているアムシャ・スプンタだが、
この他に宗派によっては伝令の神(天使)としてスラオシャの名前が挙がる例があると云うが例外的な事例であるようだ。
アフラ・マズダの伝令を伝えたり、人々の祈りの言葉を届ける下級神としてはナルヨー・サンハが居り、これは後のキリスト教等の伝令の天使に近い。
個人に憑いて、その働きを助ける守護霊的な霊としてフラワシが居り、これも後のキリスト教等の下級天使に近く、ゾロアスター教の神系譜の影響が後の世界宗教に与えた影響の顕れとも捉えられる。
追記修正は『天則』に従い、正しく生きてからお願い致します。
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