登録日:2022/07/16 (土曜日) 20:57:00
更新日:2024/06/24 Mon 13:01:16NEW!
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秋田書店 チャンピオンred バレエ 漫画 スポ根 群像劇 舞台少女 cuvie
ううん ちがう あれは……
妖精さんだ
『絢爛たるグランドセーヌ』は、Cuvieによる漫画作品である。
秋田書店はチャンピオンRED誌にて2013年9月号より連載中、2023年夏には10周年を迎える。2022年12月時点で既刊21巻、単行本年2〜3冊ペースの安定した連載が約10年にわたり続いている「成年漫画の仕事を続けつつこのペースなの⁉︎」「トータルの仕事量は週刊連載を抱える漫画家と同じぐらいなんじゃないか?」とはよく言われるところ。
クラシックバレエをテーマとしており、主人公の少女を軸にしてバレエの美しさと厳しさ、同世代のライバルと書いてともと呼ぶとの交流や成長を描く、あえてジャンル分けするのであればスポ根作品。
成年出身漫画家と赤い核実験場という組み合わせでありながら、露骨なエロはもちろんサービスカットといえるような描写はほぼ存在しない。レオタード姿の女子小中学生が180度開脚しているような姿を性的と捉えるかどうかは人による。たぶん。ちなみに、作者による成年漫画では割と肉感的なヒロインが多いが、こちらではバレエを主題としているだけあって筋肉質でスレンダーな少女がほとんどである。
他の著名なバレエ漫画が多く有するような特徴とは異なり、主人公はひたすら明るく前向きであり、暗い情念や女の世界特有の怨念じみた感情、男女の縺れた関係などギスギスした人間関係とはほとんど無縁。
しかし、ただ慣れあっているというのではなく、等身大の挫折や嫉妬といった試練は数多く描かれるなど、題材とキャラクターはスポ根少女漫画の王道でありながら、少年漫画的な熱さと爽快さが持ち味の作品である。
あらすじ
有谷奏は幼い頃に、隣に住んでいる梨沙が踊ったバレエに魅せられ、梨沙と同じバレエ教室「滝本伸子バレエスタジオ」に通うようになった少女。
少しずつ、自分の身体を自由に動かせる楽しさを知りながら成長していたある日、憧れとしていた梨沙が脚を傷めたことから大舞台につながるコンクールの前哨戦で転倒、それをきっかけとしてバレエから引退することとなり、ようやく梨沙と共に立てた初舞台は同時に梨沙の最後の舞台となってしまった。
それから数年。高学年になった奏はバレエを続けていた。以前から有していた、「綺麗な踊り」を構成する動きを理解して自分のものとする観察眼と向上心に加えて、成長して手足が伸び踊るための身体ができてきたこと、そして年の近いライバルとの交流により、奏の才能はやがて、世界的な指導者たちの目に留まるほどに伸びていく。
登場人物
奏と、同世代のライバルたち
有谷奏
先述のように、幼馴染の梨沙のダンスに憧れ、自らもバレエダンサーとしての道を踏み出した少女。
第一に踊ることが楽しいという感情が前にくるタイプであるが、その一方で持ち前の観察眼は自分に対しても発揮されるので、自分がカッコよく踊れないことには苦しみもする。
また、楽しさがあまりにも前にきてしまい、大舞台では演技を忘れて暴走することもしばしば。
ダンサーとしての才能がもともと高いというわけではなく、作中で幾度も壁にぶちあたるも高い観察眼と身体能力を用いて他人の踊りの長所を見取り自分のものとして、誰もが驚くほどの成長を遂げるまさに主人公属性。
ダンサーとしては高い身体能力を生かして自分の踊りをするタイプで、ジャンプの高さについては男子にも劣らないほど。
性格はとにかく明るく前向きで、話を聞きたい相手には男女年齢問わずぐいぐいといく、コミュ力お化け。
彼女に想いを寄せる男子も少なからず存在するのだが、彼女自身はあくまでバレエが一番であり、恋愛フラグに関してはへし折るとかいう以前に立つ気配すらない。
当初はバレエ教室でのレッスンを楽しんでいたが、出場したコンクールで高いレベルのダンスを目にしたこと、そして後述するニコルズとの出会いから、より高いステージで踊り続けるために海外留学を願うようになる。
ただし、有谷家は庶民の家庭であり両親に負担をかけないよう、コンクールでの上位入賞により留学のための奨学金を手にすることを当面の目標とした。*1*2
伊藤翔子
奏と同時期に同じ教室でバレエを習い始めた1歳年上の少女であり、奏の最も近い親友にしてライバル。年下である奏に抜かれまいと切磋琢磨し努力を欠かさない、ストイックな秀才タイプ。
とはいえ才能があることに間違いはなく、破天荒なタイプの奏とは対照的に、バレエの正しく美しい踊りを完璧にこなすことができるタイプであり、クラシックバレエの指導者から見れば理想的な生徒。
裕福な家庭であり、奨学金に頼らずとも海外への長期留学を狙える立場であり、奏にも素直にうらやましがられている。
栗栖さくら
奏と同じ年齢だが、奏がようやく舞台の楽しさに目覚めた頃には既にジュニア帯でのバレエコンクールで上位入賞の常連であり、雑誌のインタビューも受けるなど将来を期待されている有名人。
年少の頃から、海外のバレエ団でプロとして踊ることを意識しており、奏や翔子が将来を考えるきっかけともなった。
母親が実質的な専属コーチであり、高い血統と才能に恵まれた環境、プライドも高く実力も実績も主人公の数歩先を行き、そして厳しい物言いと、まさに少女漫画の正統派ライバル。
だが、コンクールで翔子に敗れたことをきっかけにして一皮むけ、人間としても成長する。ついでに、「あなたのことが嫌い」と言い放った当の相手であるコミュ力お化けにあっさりと落とされデレた。
ダンサーとしては、テクニックもメンタルも身体の使い方も高水準な、教科書通りの踊りを完璧に踊りきるタイプ。
当初は母親の教えこそがすべてという考えだったが、奏との出会いにより成長し、彼女をライバルとして認めるとともに、自分なりの理想を追い求めるようになる。
藤田絵麻
翔子と同じ年齢で、同じ英会話スクールに通っている。
ダンサーとしては天才型で、踊りの振りをすぐに覚えて自分のものにしてしまえるが、そのせいもあり反復練習を嫌うなど周りからはやる気が見えないタイプ。
以前にはさくらの母が指導者である栗栖バレエスタジオでレッスンを受けており、その頃にはさくらが自分と同じくらいの実力だと認めるほどだったが、役を得た公演に向けて厳しいレッスンを続けているうちにスネを疲労骨折したせいで役を降りざるを得なくなり、そのショックで休んでいた結果、レッスンについていけなくなりスタジオを辞めた過去がある。
翔子やさくらからは、才能があるのに練習に打ち込まないように見え、良くは思われていない。その一方でコミュ力お化けとはすぐ仲良くなった。
アンドレア・メンドーサ
ベネズエラ出身の、褐色肌の少女であり高い肉体能力を使ったダイナミックな踊りが持ち味のダンサー。
YAGPで圧倒的なパフォーマンスを見せつけ、同じく出場していたさくらに圧倒的な敗北感を植え付けた。
その後、奏のマルセイユ国立バレエ団への短期留学においてルームメイトとなる。
小早川暁人
YAGPの予選に備えて滝本バレエスタジオに移ってきた男子ダンサー。奏より1歳年上で、身体能力もテクニックも標準以上だが、感情を表情にまったく出せないという欠点がある。
高井亮
栗栖バレエスタジオの「楽しく踊ろう」クラスに在籍しており、そこで奏にピルエット(回転)のコツを教わっていた、年下の少年。
その後、バレエを本気で学ぶことにしたようで、友人の暁人に勧められて滝本バレエスタジオに移ってきた。
年齢もありダンスのクオリティはまだまだだが、負けん気の強さによる向上心は高い。
バレエダンサー・指導者
滝本伸子(リュドミラ・ノブコ・タキモト)
奏と翔子が通う教室の講師。
フランスのバレエ界でプロダンサーとして活躍していたが、引退後、ルーツの一つである日本に移り、指導者としてバレエ教室を開いた。
現役時代は名の知れた存在であったようで、イギリスやフランスのトップクラスのダンサーや指導者とも知己である。
指導者としては長所を伸ばすタイプのようであり、奏や翔子とのようなタイプの違う生徒の才能をそれぞれ花開かせている。
アビゲイル・ニコルズ
英国ロイヤル・バレエの元プリンシパルであり、奏が初参加したコンクールの決選で踊ったスワルニダ*3の参考とした人物。
ロイヤル・バレエ団では振付家として活動しながら、ダンサーとしても世界トップクラスのバレエ団にゲストとして呼ばれる現役のトップダンサー。
後に、奏が出演する舞台『眠れる森の美女』の振り付け講師として、奏と対面を果たした。
滝本とは現役時代の知り合いで「リューダ」と親しげに呼ぶ人物であり、その縁で滝本スタジオで奏にレッスンをつける。
そうした中から、奏の中にある才能を評価し、自ら彼女をロイヤル・バレエ・スクールへと誘う。
……のだが、実は世界中で同じように見込みのある少女に声をかけており、奏は「日本部門」だったことにショックを受けることとなる。
ウジェーヌ・ガレル
パリ・オペラ座バレエ団の元エトワールで、現在は有名バレエ団の芸術監督。
奏と翔子の初コンクールの審査員として来日し、彼女たちの演技を評価する。
ニコルズと同様に滝本を「リューダ」と呼ぶ。
玉木
栗栖バレエスタジオの「楽しく踊ろう」コースの指導者であり、現役のコンテンポラリーバレエのダンサーでもある。
『コンクールで負けたら「楽しく踊ろう」コースを受講する』というさくらとの約束を果たしにきた奏に、自由に踊ることを教えた。
橘梨沙
奏の憧れだったダンサーであり、滝本先生からも将来を嘱望されていたが、右ヒザを傷めていたことを隠し無理を押してコンクールに出場するも、転倒して結果を残せなかった。
有谷家と同じように一般家庭の出身であり、コンクールに勝って奨学金を得てバレエ留学する道が絶たれたことを悟り、一線から身を引く。
その後は裏方としてバレエの世界にかかわり続けることを選び、服飾担当として奏のドレスを作成するなど彼女の最大の協力者であり理解者として接している。
余談
- 作者のCuvie先生は少女時代にバレエを習っており、その時の経験がこの作品に生かされているとのこと。
- 単行本の帯には毎巻、日本人のバレエダンサーによる推薦コメントが寄せられている。(残念ながら電子書籍には未収録)
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- なんでカオス雑誌のREDにこんなマトモなスポ根漫画が…と思ってたが愛憎の絡まないストイックなバレエ漫画ってある意味異端だからREDで正解なのかも。他誌だったら編集の指示で恋愛要素とか入れられそうだし -- 名無しさん (2022-07-16 21:34:10)
- ↑よう俺。実際、少女が主人公のスポ根漫画って大抵ドロドロした人間関係があるのにこの作品はかなり爽やかでそういう意味では確かに異端な作品かなと。ダンス・ダンス・ダンスールがアニメ化されたんだしこれもアニメ化して欲しいなぁ。 -- 名無しさん (2022-07-16 22:11:03)
- 本屋さんに並んでたら普通に女の子が買うと思う。 -- 名無しさん (2022-07-22 00:15:45)
- Cuviesa -- 名無しさん (2022-12-17 12:00:16)
- Cuvieさん、女性だったんか -- 名無しさん (2022-12-17 12:00:42)
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*2 両親はフルタイムの共働きではあるものの、その収入でどうにか奏の夢をかなえるための最低限の支出に耐えられる、という描写が幾度か描かれている。
*3 バレエ作品『コッペリア』の主演である、可憐な村娘
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