登録日:2011/05/07 (土) 23:04:59
更新日:2023/08/18 Fri 10:32:20NEW!
所要時間:約 11 分で読めます
▽タグ一覧
映画 洋画 ティム・バートン ホラー アンハッピーエンド 浜田雅功 不朽の名作 20世紀フォックス ダニー・エルフマン メルヘン 寓話 おとぎ話 ファンタジー 魔女狩り 孤独 バートンの本気 ハサミ クリスマス クリスマス映画 ジョニー・デップ ウィノナ・ライダー ブッダ「シザーハンズは止めた方が…」 尖端恐怖症の人は注意 シザーハンズ 運命の出会い 雪が降る理由 衆愚 ジョニデの本気 第五人格 identity v
ねえ、雪はどこからやってくるの?
それを話すには、まず両手がハサミだった人の話から始めないとね。
ハサミ?
むかしむかし、あそこに見える山の上の屋敷に老発明家が住んでいて、彼は心も体も人間そっくりの人造人間を生み出したの。
でもね、あと一息で完成のところで彼は死んでしまったの。
だからその人造人間の手はハサミのままだったの。
彼の名前はエドワード……
汚れを知らない優しいエドワード。
天使の心を持つ彼、その美しさに彼女は魅せられていく。
"His story will touch you, even though he can't."
概要
シザーハンズ(原題:Edward Scissorhands)は1990年12月7日公開のアメリカ映画。
日本では1991年7月13日に公開。
監督は[[ティム・バートン>ティム・バートン]]。
主演の最有力候補には当初トム・クルーズが挙げられていたが、
「ハッピーエンドにしないとヤダよ」というトムと「ハッピーエンドはヤダよ」というバートンの間で意見が分かれ結局実現せず、当時ティーンアイドルだったジョニー・デップが選ばれた。そもそも高校時代はレスリング選手で毎日ケンカ三昧と、バリバリの体育会系であるトムと、オタクのバートンが合うはずなどなかった。挙句の果てにエドワードのキャラが「男らしくない」とまで言い出す始末……トムのキャラは根本的に作品とマッチしてなかった。
アイドルだったデップはこの頃、商品同然に消費されゆく運命や、世間の認識と自分の意識のギャップに苦しんでいた。
そんなある日、この映画の脚本が送られてきた。これを読んだデップは号泣し、あらゆるイメージや幼い日の思い出がどっと押し寄せるほどの衝撃を受けたのだという。
すっかり魅入られたデップは「エドワード役をできるのは自分しかいない!」と意気込む一方、他に有名な俳優たちにもオファーが来ていたことに、諦めに近い気持ちも感じていた。*1
その後、面会の場が設けられ、デップはバートンに会うことになった。
この時のバートンへの第一印象を、デップはこう語っている。
前夜、明らかに枕の上で寝返りしまくったに違いない髪をした、青白く、ひ弱そうで、悲しげな目をした男だった。
脚のついた櫛なら、この男の髪の毛を一目見ただけでジェシー・オーウェンズ*2さながら逃げ出しそうだった。
茂みは東向き、四本の小枝が西向きで、巻き毛やこの種のまとまってない残りの髪は、北と南のあらゆる方向を向いていた。
最初に「少し眠りなよ」って思ったことを覚えている。もちろん口にはしなかったけど。
それからこの髪が、二トンの大ハンマーみたいに僕の額の真ん中を直撃した。
彼の両手は――彼が抑えきれずに両手を空中でぐるぐる振り回し、神経質そうにテーブルをコツコツたたくやり方、おおげさな話し方(僕らに共通した特徴)、
大きく見開かれていて、どこからともなくにらみつけているような目、奇妙で、たくさんのことを見てきたようでいて、いまだにあらゆることをむさぼるように見たがっている目。
この過敏症の狂人こそが、まさしくエドワード・シザーハンズだ。
引用元:ティム・バートン[映画作家が自身を語る] P10
その風貌について語彙力フル回転なのはさておき、話し合いを経て、彼とウマが合うと確信したデップ。
だが、立場上エドワード役を射止める可能性は、万に一つもないくらいだろうとも感じていた。
それでもデップは、その役に強烈な使命感を感じるほど渇望していた。
「これは単に演じたい役柄なんじゃない。自分が演じなくちゃいけない役柄なんだ!」
何週間も役を研究しながら待ち続けたが、返事は来ない。
ああ、結局自分はいつまで経ってもテレビ業界の若造でしかないのか……
諦めかけたその時、電話が鳴った。
「ジョニー……君がエドワード・シザーハンズだ」
デップの熱意は届いた。主役を大スター以外に任せるという大きなリスクを取ってでも、バートンは彼を選んだのだ。
こうして、デップとバートンの黄金コンビが誕生した。
それ以降、2022年現在まで二人は実に8度ものタッグを組んでいる。
ストーリー
とある町で化粧品のセールスをしている女性・ペグは町外れの古びた城へと足を運ぶ。
そこには天才発明家が生み出した人造人間・エドワードがたった一人で住んでいた。
発明家が完成間近で急逝した為、エドワードの腕は無数のハサミがついたままという奇怪な姿になっていた。
彼を不憫に思い、エドワードを引き取る事にしたペグ。
不器用ながらも純真な彼に、町の人は次第に心を開いて行く。
しかし、その無垢さの先には
悲しい結末が待っていた…
登場人物
吹替キャストは劇場公開版&映像ソフト収録版/テレビ朝日版(日曜洋画劇場にて1994年6月5日放送)の順。単独表記の場合は両媒体で共通。
- エドワード・シザーハンズ
天才発明家が作り上げた人造人間。
脚本では「荒っぽく切られた髪に、底知れない水たまりのような大きな目を持つ、青白い顔の痩せた若い男性」と形容されている。
両手がハサミである事以外は人間と変わらず、食事を取ったり喜怒哀楽を見せたりする事が出来る。
その体を生かし、ペグの家で庭師として働き天才的な腕前を見せつける。また、犬のトリミングや女性のヘアカットも得意。
- キム
(演:ウィノナ・ライダー 吹替:玉川砂記子)
ペグの娘で高校三年生。友達と遊びに行っていた為、エドワードが住み込んだ事を知らず悲鳴を上げる。
当初は彼の事を気味悪がり遠ざけていたが、エドワードの思いを知ることで彼女も変わってゆく。
- ペグ
(演:ダイアン・ウィースト 吹替:鈴木弘子/藤田淑子)
化粧品のセールスをしている中年の女性。親切で面倒見が良く、エドワードを親身になって世話する。
……結果的に彼女の善意が、エドワードを追い詰めたのかもしれない。
- ビル
(演:アラン・アーキン 吹替:嶋俊介/堀勝之祐)
ペグの夫。妻同様エドワードを息子のように接しており、酒を勧めながら娘の愚痴をこぼしたり、留置場に入った彼に善悪を教えようとしたりした。
- ケビン
(演:ロバート・オリヴェリ 吹替:合野琢真/松岡洋子)
キムの弟。エドワードのハサミを「カッコいい」と評し、学校に連れて行こうとする。
- ジョイス
(演:キャシー・ベイカー 吹替:吉田理保子/一城みゆ希)
ペグの近所に住む噂好きな主婦のリーダー格。エドワードに一目惚れし、彼を誘惑して誰得なセクシーシーンを披露する。
(いや、ウドちゃんとか春日とかロバート秋山やピース綾部とかならもしかしたら…)
彼に拒まれた瞬間(そりゃ拒むわ)「レイプされた」と言いふらし、エドワードの株を下げたクソババァ。後半の展開を考えると彼女の行動がエドワードに致命傷を与えたかは微妙
- ジム
キムのボーイフレンド。厳格な父に育てられ、車を買って貰えなかった腹いせにキムをそそのかし、エドワードを使って父の金を強盗する計画を立てた。
最後は逆上したエドワードによって……
この末路についてバートンは、
「あれにはたぶん、奥深いどこかで、いくらかジュニア・ハイ、あるいはハイスクール的な復讐幻想があったんじゃないかと思う。分からないけど、たぶん僕は鬱憤を晴らそうとしていたんだ」
と語っている。
- アレン巡査
(演:ディック・アンソニー・ウィリアムズ 吹替:池田勝)
ジムの差し金で一人だけ残されたエドワードを逮捕した警官。
善悪の区別がつかない彼を心配するが、その不安は最悪な形で実現してしまう。
- 発明家
(演:ヴィンセント・プライス 吹替:大木民夫/加藤精三)
エドワードを造った天才老人。キャベツの千切り等の作業をしやすくする為に彼の腕をハサミだらけにする。
作中に登場する完成予想図では人間と寸分違わぬ姿にする予定だったらしく、現にエドワードにゴム製の腕を嬉しそうに見せるが、装着する前に「眠って」しまう。
異形の姿のまま残されたエドワードが不思議そうに彼の顔に触れると、その顔は傷ついていった……
ちなみに、中の人は戦後アメリカを代表する有名なホラー俳優で、バートン自身も幼いころから大ファン。
そしてこの作品が遺作になっている。
余談
〇『カラフルな町並みと対照的なモノクロームの異形』『発明家が生み出した無機質な機械たち』『最初は好意的に見ていたが些細なことで手の平を返す隣人達』
『純粋故に幸せになれない結末』等、本作は後のティム・バートン作品に繋がる雰囲気がある。
実際彼にとっても特に思い入れの深い作品らしく、
この映画にはぼくの育った映画の都バーバンクの思い出がいっぱい詰まっているし、
ぼく自身、ナーバスになっている理由は、これまでのどんな作品よりもこの映画には特別な意味があるからだ。
これまでぼくは、自分の感情を完全に表現する機会を一度も与えられたことはなかった。
この映画は、映像で自己確認を初めてやれた作品だった。
引用元:キネマ旬報1991年7月上旬号 P21
と語っている。
〇キム役のウィノナがエドワードを「童話の全てのキャラを集めた人物」と評している通り、
脚本のキャロライン・トンプソンはこの映画を「現代の寓話」としている。
〇「両手がハサミの異形」のイメージは、バートンの「青春時代に感じた、周りから理解されず、何かに触れたり感じたりすることができない苦しみや悲しみ」という潜在意識から生まれたもの。
それと同時に、ハサミには創造と破壊のメタファーも込められている。
〇エドワードのモデルには色々あり、ハサミ芸のモデルはニューヨークのトップスタイリスト、エドワード・トリコミ氏と言われている。
バートンがカットしてもらった時に思いついたのだとか。*3
その他、見た目については『ザ・キュアー』のロバート・スミスがモデルとされる。
そして内面のモデルは前述の通り……
〇本作でスクールカースト最上位の象徴であるチアリーダー役を演じたウィノナだが、実際の立場は真逆で、『ビートルジュース』のゴスっ娘・リディアの方が本来の性格に近い。
同じく、ジム役のアンソニー・ホールも元はオタクやガリ勉の役を多く演じていた俳優。
本来の性格を逆転させたかのような役柄は、学校社会へのバートンなりの皮肉なのだろう。しかしよく考えたら、イジメた相手の役をやらせているわけで、バートンもなかなかイケズである。
〇日本公開時は何と同時上映が『ホーム・アローン』だったため、カルキン坊やの活躍を楽しみにしていた子ども達にちょっとしたトラウマを与えた。
〇『リンカーン』の企画『1000円ヒーロー』ではダウンタウンの浜田雅功が狂気に満ちたエドワードのコスプレをしている。
〇ブッダと二人で立川に住むキリストがイメチェン候補としてジョニー・デップの作品をいくつか挙げるのだが、流石にシザーハンズはブッダに止められた。
〇本作公開から31年後の2021年、まさかの“続編”が作られた。
それは第55回スーパーボウルで放送された、キャデラックのハンズフリー技術搭載車の90秒CM。
「エドワードに息子がいた」という設定で、その息子エドガーを演じるのは『君の名前で僕を呼んで』などで知られるイケメン俳優ティモシー・シャラメ。
キム役はウィノナが再演しており、当時観た人にとっては感慨深い内容となっている。
さらにバートンからも、
誇りにしている作品が、30年経っても時代と共に進化し続けていることは稀なことです。
エドガーが新しい世界に対応している姿を見ることができて嬉しく思います!
ファンの皆様も、初めてシザーハンズを観られる方も、楽しんでいただければと思います。
と、お墨付きをもらっている。*4
こちらは尾籠な話になるので閲覧注意
人気作にはパロディ作がつきものだが、本作にはズバリ『Edward Penishands』というエロパロ作品が存在する。
驚いたことにデップはこの作品を把握しており、「低予算でくだらなかったけど、超面白かったよ。あの手は……まあ、すごく役に立ってたよな」と、意外と気に入っている模様。
実際、メイクやパロディシーンなどはかなりよく出来ていたりする。
まあ、ジャンルがジャンルなだけに、化粧品ではなく大人のおもちゃのセールスレディが出てきたり、雪のシーンは感動を返せレベルなことになっているのだが。
デップ曰く、ビデオはバートンかジョン・ウォーターズ*5から送られたのだという。また、「両者からもらったかもしれないな」とも発言している。*6
バートン自身も、トーク番組『Late Night with Conan O'Brien』で「どの時点で自分が成功したと思いましたか?」という質問に対し、「エロパロのネタにされた時だね」と発言。
さらにこの作品について、「左右に5本ずつ付いてるのかと思ったら1本ずつしか付いてなかったね」などとコメント。おまけに続編の存在まで確認したことも明かしたのだった……*7
このように、パロディには結構寛容な方のようだ。
バートンの次回作は、バットマンの続編にして、前作で発揮しきれなかった作家性を全開にした怪作であった。
アニヲタwikiが出来るまで、この町に雪が降った事は無かった…
だけど、wiki籠りが来てからはこの項目が追記・修正されるようになったのよ…
今でも彼等は、wikiに書き込みをしているハズだわ…
参考文献
キネマ旬報1991年7月上旬号(キネマ旬報社)
ティム・バートン―期待の映像作家シリーズ (キネ旬ムック―フィルムメーカーズ)
ティム・バートン[映画作家が自身を語る](フィルムアート社)
月刊Cut2005年10月号(㈱ロッキング・オン)
コタク・ジャパン・ブロマガ【閲覧注意】史上最高のお色気SF映画(1961年~1991年)
[#include(name=テンプレ2)]
この項目が面白かったなら……\ポチッと/
#vote3(time=600,13)
[#include(name=テンプレ3)]
▷ コメント欄
- コトブキヤのHORROR美少女シリーズでエドワードが女体化してたけど、見た目が仮面ライダードライブのメディックに似てるし -- 名無しさん (2016-05-01 22:19:09)
- 塩沢兼人さんの吹替がめっちゃ好き。 -- 名無しさん (2019-04-05 21:34:58)
- 浜田のシザーハンズ仮装は凄かった 狂気に満ちたという表現が的確過ぎる -- 名無しさん (2019-04-05 21:38:51)
- 警官の人が善良なのが良かった(黒人だったしマイノリティ的な立場というのもあったんだろうけど) -- 名無しさん (2022-09-12 09:15:22)
- どうしてこの街に雪が降るのかって?が有名 -- 名無しさん (2022-09-12 21:00:57)
- 荒らしコメントを削除。 -- 名無しさん (2022-09-13 15:55:55)
- 名前が似ているシザーマンとはいろいろと全然違うので注意 -- 名無しさん (2022-10-16 19:10:52)
- 鋼の錬金術師の主人公の名前の由来だとか -- 名無しさん (2022-10-17 19:16:49)
- ↑5 銃を発砲(もちろん明後日の方向)し、エドワードを射〇したようにみせて逃がすシーンが幼少期ながら一番記憶に残ってる。 -- 名無しさん (2022-10-23 10:40:09)
- 真サムスピの右京のエンディングがシザーハンズのオマージュだった。スタッフにファンがいたんかな。 -- 名無しさん (2022-11-28 19:40:43)
- 実はやたらゲイファッションと揶揄される遊戯の服装の元ネタという(作者画集のインタビューより) -- 名無しさん (2022-11-28 20:45:40)
- エロパロ作品について語るバートンの動画だけど、それへのコメントも面白いんだよな。「このエロパロの存在を知った時は物凄く腹が立ったけど、これに対するティムの態度を見たら…みんな、彼のことを根暗とか言うのやめよう」「ティムが実際にこれを観たという事実に大草原不可避」という具合で -- 名無しさん (2022-12-20 08:38:10)
- lakkaさん、ちょっと細切れな編集が多すぎませんか?編集回数が多すぎると、荒らしとみなされることもあるので、ご注意ください -- 名無しさん (2022-12-20 13:47:58)
- 確か『DEATH NOTE』13巻で「キャラクターデザインのモチーフ」に挙げられていたけれど、リュークは言わずもがな。シドウも「両手首を掲げ細長い指を垂らすように佇む姿」とめっちゃ納得がいった。 -- 名無しさん (2023-01-15 21:30:24)
#comment
*2 オリンピックの黒人短距離選手
*3 出典:https://www.gqjapan.jp/new-york-minute/shop/20150521/warren-tricomi-new-york
*4 出典:https://collider.com/timothee-chalamet-edward-scissorhands-commercial-tim-burton-thoughts/
*5 デップの初主演作『クライ・ベイビー』の監督。『ピンク・フラミンゴ』など伝説のカルト監督として知られる
*6 出典:月間Cut2005年10月号 P39
*7 出典:https://youtu.be/A2H9eCTgtJw
コメント
最新を表示する
NG表示方式
NGID一覧